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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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再應
こちらは、以前のHPで2001年09月15日にUPしたものです

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◇◆◇

《目覚メヨ、我ガ下僕タチヨ。今コソ、我ガ元ヘ集エ…》
 霧のかかった場所に、そう谺する声。
 総ては、この場所から始まる。
 全ての世界に通ずる場所、"GOD'S DOOR"。幾つもの空間を結ぶそこには、無数の扉がある。
 その場所で、俺は生を亨けた。
 そして、その呼びかけに気が付いた。
《目覚メヨ、我ガ下僕タチヨ。今コソ、我ガ元ヘ集エ…》
 それが、どの世界からの呼びかけなのかはわからなかった。だが、俺を呼んでいると感じたことには間違いなかった。
 俺はゆっくりと身体を起こし、顔を上げる。
 すると、俺の瞳にもう一つの姿が映った。
 俺と同じように生を亨け、目覚めた者。
 それは、とても目映い金色の髪、だった。
 相手も俺の存在に気が付き、その視線を向けた。
 ヴァイオレッドのその瞳に映る俺の姿は、黒を纏っていた。その姿で、俺は自分が何処へ向かえば良いかを導き出した。
 そして。
「…またな」
 もう一つの、金色を纏う姿に、そう言葉を与えた。
 深い意味があった訳じゃない。ただ、同じ場所で、同じように生を亨けた者としての、挨拶程度に受け取って貰えたらと思って。
 今度逢う時は、恐らく敵同士になるだろう。だが、そんなことはどうでも良かったのだ。
 ただ、このまま忘れてしまうのが、惜しいような気がして。
 立ち上がった俺は、黒い色の扉を押し開けた。
 それは、地獄・魔界に通ずる扉。
 白い顔に、赤い紋様。そして、額に開かれた第三の瞳、邪眼。俺の姿は、悪魔の姿に他ならない。
 邪眼族、最後の生き残り。
 俺が抱えた運命は、そこから始まった。


 生まれ出づる場所は、疾うの昔に記憶の底に封じてしまった。
 そして、再び巡り逢うことを夢見ていた存在も。

 それは、某ミサツアーの最中のことである。

◇◆◇

「エースぅ…まだいるよぉ~」
 会場の通用口には、いわゆる"出待ち"の信者が、そこここにわらわらと屯(たむろ)していた。
 そしてそれを、数階上の廊下の窓から覗き込んでいたライデンが、隣にいたエースに愚痴を零したのである。
「いい加減にして欲しいよねっ。気持ちはわかるけどさぁ、こっちにも都合ってモンがあるのに…っ」
 いつになったら、打ち上げに行けるんだよっ!
 そう愚痴を零しながら、ライデンはふとエースへと視線を移す。
 窓辺に凭れ、煙草の紫煙を燻らせているエースは、実に呑気そのものである。
「…ちょっと旦那!聞いてんの!?」
 思わず声を上げたライデンに、エースは小さくつぶやく。
「放っておけ。デーモンたちの支度が済んだら、彼奴等には関係なく出発(転移)するんだから」
「…ったく…呑気なんだから…」
 溜め息を吐き出すライデンは、恐らくもう空腹の限界に近いのだろう。それを察したエースは、くすっと小さな笑いを零し、銜えていた煙草の紫煙を吐き出した。
 僅かに開けてある窓の隙間から吹き込んで来る風は、とても生温い。今夜も凌ぎにくそうだと思いながら、エースは眼下の信者たちをその視界の端に映していた。
----毎度毎度、良くも飽きずに同じことを繰り返すモンだな。ライデンが吠えるのも、無理ないか…
 ぼんやりとそう思っているうちに、帰り支度の出来た残りの構成員が廊下に現れる。
「おぉ、いるいる。良くもまぁ…」
 窓から下を覗き見て、呆れたような、感心したような…とにかく、そんな声を上げたのはルーク。
「じゃあ、今回もいつも通りに…」
 そう言いかけたデーモンの声を遮るかのように、ルークが大きな溜め息を零した。
「俺、今日チャリンコなんだよな~」
「俺も…」
 ルークとライデンは、これからまた一運動しなければならないと、溜め息を零す。
「仕方ないだろう?乗って来たのは御前等なんだから」
「だよね~。しょうがないか。じゃライデン、先に行こうか」
「了解。じゃ、また後でね~」
「おう」
 ルークとライデンは、溜め息を吐き出しつつ、早速行動に出た。
 その背中を見送ったデーモンは、背後を振り返る。
「じゃ、我々も行くか」
 そう言った直後、怪訝そうに眉が寄せられる。
「…エース、どうした?」
「…あ?」
「ずっと下ばかり気にしているようだが…何かあったのか?」
 普段、眼下の信者には余り興味を示さないエースが、珍しくいつまでも下を見ていることが不思議だったのだ。
「…いや、別に」
 曖昧に答え、エースは煙草の火を、備え付けの灰皿で揉み消す。
 エースが気になっていたのは、実は信者ではない。何処からか流れて来た波動が、エースを誘っていたのだ。
 ただ、波動を放つ目的のモノが邪眼でも捜せず、彷徨っていた視線が、偶然信者の用を向いていただけで。
「…大丈夫?邪眼、開いてるけど…」
 心配そうに声をかけるゼノンに、エースは心配いらないとばかりに、小さく微笑んでみせた。
「先に行くぞ?」
「あぁ」
 先に姿を消したデーモンとゼノンを追いかけるかのように、邪眼を閉じたエースは、目的地へと転移をした…はずだった。

◇◆◇

「…何…だ…?」
 ふと気が付くと、そこは目的地ではなかった。
 完全に目的地を見失った俺は、転移空間を彷徨っていた。
 感じるのは、とても懐かしい気流。そこでやっと気が付いた。
 あぁ、そうだ。この空間の先には、俺の生まれ故郷があるのだ。
 だが、どうしてここへ転移(と)んで来たのかは、俺にもわからなかった。
 その時、ミサ会場で俺を誘っていた波動を捕まえた。
 この先に、俺を呼んでいる奴がいる。
 ここまで来たら、相手を確認するしかないだろう。
 俺は、生まれ故郷である"GOD'S DOOR"に、目的地を変えた。

 霧のかかった場所。
 生まれてからこの方、ここへ訪ねて来たことはなかった。
 そこに、俺を呼んでいた奴がいた。
「…御前は…」
 微かに、見覚えはあった。
 俺と同じように生を亨け、目覚めた者。
 目映いばかりの金色の髪は長く、腰まで届いている。
 そして、俺を見つめるヴァイオレッドの瞳。
 俺が、生を亨けて初めて見た者。
 何故俺を呼んだかなんてことは、聞く必要もないように思えた。
「御前の名は?」
 その問いかけに、奴…どう見ても女性型だったので、彼女と、呼んでおくが…彼女は、首を横に振った。
「それを問えば、貴方は敵になってしまうかも知れません。だから、私には…」
「しかし、俺の姿と見比べれば、答えは必然的に出て来るだろう?今更気にすることじゃない」
 そう。結論は、既に出ていたのだ。
 黒を纏う俺と、金色を纏う彼女では…明らかに、属す世界は違うのだと。
「それでも、私は……」
「…わかった、もう良い」
 こんなことに時間を費やしている場合ではない。
 俺は小さな溜め息を一つ吐き出すと、彼女に視線を向けた。
「…何故、俺を呼んだ?」
 その問いかけには、彼女は小さく微笑んでみせた。
 懐かしさを感じさせるその微笑みは、俺だけに向けられている。
 ふと、俺がしたのは愚問だったことに気が付いた。
 ここへ呼ぶ理由など、一つしかないのだ。
「逢いたかったんです。貴方に…」
「……」
 予想的中、だった。
 この"GOD'S DOOR"で生を亨けた者は、数多くの世界に旅立つが故に、同郷の友を持たない。
 それ故に、その郷愁の念が、同郷の種を呼ぶことが多いのだ。
 俺が、今までそんな思いに刈られなかったのは…ただ一つ。俺が、修羅場で生きていたと言うこと。
 そんなことを考える余裕もなく、やっと落ち着いた頃には、愛しい恋悪魔がいた。だから、この場所を思い出すこともなかった。
 だが、彼女は違ったのだろう。
 選んだ世界が、自分の目指すものとは違っていたのかも知れない。だからこそ、寂しかったのだろう。だから、呼んでいたのだろう。
 同郷の、種を。
 俺は、ゆっくりと息を吐き出してから、その言葉を紡いだ。
「…言って置くが…生憎俺は、郷愁の念なんか持ち合わせていない。ただ御前の波動に引かれ、その主を確かめる為に、一時的に戻って来たに過ぎない。だから、俺に期待するだけ損だぞ」
 冷たい言い方だと、自分でも感じた。
 だが、余計な期待をさせるよりは、余程マシだろう。
 それを察していたのか…彼女は小さく微笑んだ。
「わかって、います」
 溜め息しか、出て来ない。
 こんな些細なことで、罪悪感を感じてしまうなんて…。
 その想いを振り払うかのように、俺は彼女にそれを告げなければならないと思った。
「今後…敵同士になるかも知れないから、良く覚えておけ。俺は、地獄中央情報局長官、エースだ。尤も今は、任務で地球と言う地に降り立っている。後数年はいる予定だ。そして、もう一つ…俺には、恋悪魔がいる。だから…」
「…わかって、います」
 再び、彼女は微笑んだ。
 その可憐な微笑みが…酷く俺の胸に焼き付いた。
 だが俺は、こんなことで仲魔を…大切な恋悪魔を、裏切る訳にはいかないのだ。
「じゃあ…な」
 踵を返した俺に、彼女は小さくつぶやいた。
「来てくれて…有難う、エース」
 その声は、とても柔らかかった。
 もしもこれが夢なら……覚えていたいと、思っていた。

◇◆◇

「遅かったじゃないか~」
 最初の目的地…打ち上げ会場に辿り着くと、仲魔のそんな声が俺を出迎えた。
「あぁ、悪い。ちょっと寄り道してたから」
「寄り道ぃ~?」
 怪訝そうに眉を潜めたのは、俺が生涯唯一と決めた恋悪魔。
「そう。寄り道」
 例えこいつにどれだけしつこく問いかけられたとしても、それ以上詳しく話すつもりはなかった。
「ま、駆けつけ三杯ね」
「よし、望むところだっ」
 俺は仲魔の差し出したグラスを手に取り、その中身を満たす酒の味に酔い痴れることにした。

 夢なら、覚めても忘れない。
 それが現実ならば、尚更。
 俺たちの再会は、最早、遠い記憶でしかなかった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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