聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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初恋 1
「貴方が、好きです」
幾度…そう、事前に練習したことか。それでも、実際に相手を目の前に知ると、その言葉を口にすることが出来なかった。
そうして…時は流れていく。隣にいることが、ごく普通の日常となりつつあった。
けれど、その日常はある日突然消えてしまった。
ごく自然に…そして、不自然な日常が戻る。
言えなかった言葉は…一生、聞くことの出来ない言葉となった。
「…どうした?」
ふと声をかけられ、顔を上げる。そこには、怪訝そうに首を傾げた愛しい恋悪魔。
「あぁ…何でも…」
何でもない。その一言すら、きちんと言えなかったのは…心の奥に、引っかかった疚しい想いがあったから。
手に持っていた書類をさり気なく伏せ、他の書類と混ぜる。そうして、恋悪魔の視線から隠した。
「何か、用があったんじゃないのか?」
そう。呼び出しがかかったから、恋悪魔はここにいるのだ。そうでなければ、執務時間中にわざわざ他の局へとやって来る理由はなかった。
「あぁ、そうだ。えぇっとな……」
本来の目的を思い出し、別の書類へと手を伸ばす。
そうして…先ほどまでの疚しい想いを、胸の奥へと隠したつもりだった。
恋悪魔がそれに気付いているかどうかは…その顔を見てもわからなかった。ただ、今一時…共にいるのは自分なのだと、己に言い聞かせて。
もしも…あの事件がなければ。今、恋悪魔の隣にいるのは…果たして、誰だったのか。
そんな些細な傷が、今はとても痛いと思った。
とても…自分が敵う相手ではないのだと。
その日の執務終了後。
デーモンの執務室に呼ばれたのはゼノン。
「どうしたの?急に来てくれだなんて」
呼ばれた理由がわからない。全く心当たりのない呼び出しに、当然ゼノンは首を傾げている。
「あぁ…まぁ……」
それを問いかけても良いのだろうか?そんな葛藤はあったものの…相手を良く知っているのは、恋悪魔たるエースと、このゼノンだけ。当然、恋悪魔にはそんなことは聞けない訳で…だったら、ゼノンに聞くしかない。
そんな想いを巡らせながら、デーモンはソファーに座ったゼノンの前へと腰を下ろして、大きく息を吐き出す。そして。
「…あのなぁ……レイラ=クーヴェイのことなんだが…エースの恋悪魔、だったんだろう?その……一体、何処までの関係だったのかと……」
「……は?何で急にそんなこと…?」
今更、何を聞かれているのだろう?そんな表情を見せたゼノンに、デーモンは溜め息を一つ。
「いや、わかっているんだ。もう昔の話だし…今更、気にすることではないことは。だから、エースには何も言っていないんだが……偶然、これを見つけてな…」
そう言いながらデーモンがゼノンに差し出したのは、昼間エースの目から隠した書類。それは、あの時の報告書。
「情報局から出された、任務失敗の報告書、だ。ルークから届いた書類の中に紛れていた。あの時は、天界軍の襲撃を受けての不測の事態だった。そう、結論は出せた。だが…情報局にとっては、長官の補佐官であるレイラ=クーヴェイを失った。当然、エースの怒りも買った訳だ。長年恨まれるほど、エースはレイラ=クーヴェイを大事に思っていた訳だろう?だからな、その……」
自分で言い出したものの…なかなか言い辛い。だが、話の凡その意味合いを察したゼノンは、溜め息を一つ吐き出した。
「…まぁ…レイラとは、同じ種族で、同じ地区の出身で、一番長い付き合いだったけど…あくまでも仲魔であって、俺はエースでもないし、レイラでもないからね。何処までの付き合いだったかは、レイラの話を聞く程度しか知らないんだけど?因みに、エースからは補佐官としてのレイラの話しか聞いてないからね」
そう、前置きをする。ゼノンとしても、その言葉の通り。何処までの付き合いだったかなど、事細かに知るはずもないのだから、それは仕方がない。
「エースは…何も話さなかったのか…?」
思わず問いかけたデーモンの声に、ゼノンは小さく頷いた。
「そうだよ。元々、幾らプレイボーイだモテ悪魔だって言われてたって、軽い付き合いで食い散らかしていた訳じゃないもの。それはあくまでも周りが見たイメージであって、そう見せかけてたのはエースの方だからね。本心を隠す為に、それで良いと放っておいたのはエース自身だし。でも中身が堅実なのはデーモンだって知ってるでしょう?あんなに一途じゃないの」
「まぁ……」
「そんなエースが、軽々しく話す訳ないじゃない。でもね、大事に思っていたのは確かだと思うよ」
「…そう、だよな…」
それは、納得出来る。デーモンの恋悪魔となってから、一度も浮気など疑ったこともない。勿論、疑われるような行為も一切ない。デーモンへの想いが一途であることは、当然デーモンもわかっていた。
だからこそ…真っ直ぐなその想いが、自分以外に向けられていた事実に、今更ながらに胸が痛む。
そんなデーモンの表情を見つめながら、ゼノンは小さな溜め息を一つ。
「でも…エースが無傷だったことを考えると、多分、身体の関係はないと思うよ。あぁ見えてもレイラは俺よりも"鬼"の性質に忠実だったからね。レイラは制御ピアスもしてなかったし。俺だって制御ピアスをしていない時は相手を殺しかけたくらいだもの。そう考えたら、身体の関係があればエースが無傷であるはずがないしね。まぁ…その辺も、本魔たちからは何も聞いたことはないけど…あくまでも、俺の憶測として、ね」
ゼノンの"鬼"としての性質は、血を好み、肉を喰らう。レイラ=クーヴェイが同じ種族であるなら、同じように血を好み、肉を喰らう性質なのだろう。
エースが情報局の長官になってから、補佐官としてレイラ=クーヴェイが付いたと聞いている。それまでは関わりはなかったはず。そしてその後、エースが大怪我をしただとか、長期休養を取った、と言う話も聞いたことはない。だからこその、ゼノンの判断だったのだろう。
ただ、一つゼノンの中で引っかかっていたこと。
「…前にね……ライデンから言われたことがあるんだ。ほら、エースがレイラの仇討ちに行った時、あったでしょう?」
「あぁ…」
記憶を辿るように、デーモンは僅かに視線を伏せる。
「あの時にね…ライデンが言ってた。強く残った想いは、そう簡単に消えない。薄らいだって、消える訳じゃない。残った記憶は良かったことばっかりで…そんな相手と戦ったって、敵う訳ない、って。確かにそうだよね。俺だって、レイラに関しては腹が立つ思い出なんてないもの。新しく欠点が出て来る訳でもない。だから、自分は敢えて戦わない。ライデンはそう言ったんだ。俺たちは、当事者側だったから気付かなかったけど…ライデンが外から見ていた立場だからね。その辺は俺たちよりもはっきり感じ取ったんだと思う。だから…不安は沢山あったと思う。それは、御前も同じだと思う。だから今更、そんな古い話を引っ張り出したんでしょう?」
真っ直ぐにデーモンを見つめる、ゼノンの碧の眼差し。その眼差しの前に…溜め息しか、出て来ない。
「まぁ…な。エースや御前は、吹っ切ったのかも知れないが…吾輩は、エースを見送った側だ。吾輩の気持ちが本当に割り切ることが出来ていたのか…不安は残るんだ。勿論、エースがどうのと言うことじゃない。ライデンの言う通り…エースの記憶に残るレイラ=クーヴェイは、良い記憶ばかりだ。だが、吾輩に対してはそうじゃないだろう?喧嘩もするし、気に入らない事だって山ほどあるはずだ。今更レイラ=クーヴェイに戻ることはないとわかっているが…まだ何処か、割り切れない自分がいるんじゃないか、とな…」
そう言いながら、溜め息を吐き出す。
「…エースは…多分、吾輩の知らない、色んなものを背負って来ているんだろうな。だからこそ、自分を守る為の仮面が必要だった。それを外したのは、御前やライデンであり…一番信用していたレイラ=クーヴェイだろう?吾輩の知らない彼奴の過去を、根掘り葉掘り聞こうと思っている訳じゃないが…彼奴は、吾輩には何も話してくれないんだ。だから……」
いつか見た…自分に向けた背中。まだ子供だった自分が抱いた、初めての想い。それが、エースだと言う確証は未だない。
勿論、それはそれで良い思い出だと、御互いに割り切ったはずだが…自分にとっての"初恋"は、そんな不確かなもので良かったのだろうか?そんな想いが、ふと過ぎったのだ。
もしも…あれが、エースでなかったら。自分の初恋は…全くの、別魔だったとしたら。
「…なぁ、ゼノン…吾輩が見た"背中"は…エースだったんだろうか…」
「…それって、あの"初恋"の相手の"背中"?」
「まぁ……」
思わずつぶやいた言葉。その言葉に、ゼノンは溜め息を一つ。
まだ、デーモンが副大魔王になる前。かなり親しくなった頃、デーモンから聞いた記憶がある。
一族が滅亡した時…見かけたと言う悪魔。赤い紋様で、黒を纏ったその相手。勿論、名前など知るはずもない。ただ、その場にいたその悪魔に、心を奪われたのだと。
状況からして、現場の調査に来ていたのは情報局だったはず。そして、その調査団の中には、エースもいたと聞いている。但し、その当時、赤い紋様で黒を纏った若い悪魔はエース一名ではなかった。それはゼノンも知っていた。
「今更だけど…気になるなら調べれば良いじゃない。調べられないはずはないでしょう?デーモンが見た"背中"がエースだったかどうか、俺に聞いたってはわかる訳ないじゃない。俺はまだ士官学校にいて、そこにいなかったもの」
「…そうなんだが……」
そこまで言われても、デーモンには踏ん切りはつかない。
心底迷っている。そんな表情を浮かべるデーモンを前に……ふと、ゼノンの頭を過ぎったこと。
「…そう言えば……ねぇ、デーモン。その頃は、御前もまだ士官学校にいたはずだよね?顔を合わせたことはなかったけど、俺たちは年も同じだし、同期だったはずだよね?なのに、どうして…一族の拠点にいたの…?現場でその赤き悪魔を見た、って言うことは、そこにいた、って言うことだよね?」
「………」
ゼノンの問いかけに、思わず口を噤むデーモン。
昔から、士官学校の宿舎は警備が厳しく、外出など以ての外。ある程度階級が上がれば、外出することは可能になるが、宿舎となるとまた別問題。余程の理由がない限り、外泊は厳禁。消灯時間を過ぎてから宿舎内を出歩くことでさえ、厳重注意されるほど。
そんな状況の中…デーモンは、どうやって外へ出たのだろうか?
「…その場にいたのは…吾輩じゃ、ない」
躊躇いがちに、小さくつぶやいた言葉。
「…え?どう言う事?だって、見たんでしょ?」
「……いや、だから…それはだな……」
言い淀むデーモンの姿に、そこに何かがあるのだろうとは察した。多分、それはエースにも話していないことなのだろう。だからこそ…いつになっても、話が噛み合わないのだろう。
溜め息を一つ、吐き出す。それは、御互いに。
「…わかった。もう良いよ。多分、俺が聞くべき話じゃない。ただ…どうして、エースに言わないの?レイラのこともそうだけど…迷うなら、はっきり聞けば良いじゃない?エースが何も言わないんじゃない。デーモンが、何も聞かないんでしょ?エースなら、ちゃんと話してくれるんじゃないの?」
いつになく、強い口調のゼノン。はっきりしないデーモンの姿に、苛立っているのは察した。
けれど…それでも。
「…なら、御前はライデンに聞かれたら、何でも話すのか?御前の過去を、洗いざらい伝えられるのか?ライデンの過去を、全部聞き出せるのか?」
「…デーモン…」
「…確かにな、ライデンなら…御前に問いかけられたら、躊躇うことなく話すかも知れない。御前はライデンの初恋の相手だし、雷神族は成体になる為の儀式も必要としない。他に関係を持った相手もいない。その心に、疚しいところなんか何もないだろう。だが、御前はどうだ?全部、打ち明けられるのか?御前が殺しかけた相手の事も、過去の恋悪魔のことも…全部話せるのか…?」
真っ直ぐにゼノンを見つめた、金色の眼差し。
何処から話が捩れたのか…そう思いながら、ゼノンは大きな溜め息を一つ、吐き出した。
「…まぁ、ね。ライデンなら…全部話してくれるとは思うよ。そこまで聞こうとは思わないけどね。それに…俺が殺しかけた相手のことなら…俺は、ライデンに話したよ。話の成り行きだったけど…それが儀式の相手だと言うことは話した。そこからライデンと出会うまで…恋悪魔なんかいないよ。ヒトを、好きになれる訳ないじゃない…?俺たち"鬼"は…能力を制御しない限り、関係を持った相手を喰い殺す。俺にとっては、儀式は大きなトラウマだもの。俺は…想いを寄せられたって、簡単に応えることなんか出来なかった。それに耐えられたのは…ある意味、レプリカだけなのかも知れないけれどね」
一方的にゼノンに惚れ、傍で尽くすことを選んだレプリカ。想いに応えられなかった分、ゼノンも面倒を見る、と言うカタチに落ち着いた訳だが…恋愛に発展しない理由を茶化したようで、デーモンの方が気が重かった。
「……悪い…深入りした…」
「…別に良いよ。それ以上の疚しいことなんかないから」
ゼノンの吐き出すような言葉に、デーモンは気まずそうに視線を伏せる。
そう。わかっていたはず。自分で散々言っていた通り…ゼノンの…"鬼"の性質は、恋愛には向かない。誰もが予想だにしなかったくらい、"鬼"への耐性が高かったライデン。だからこそ、あっさり"鬼"の性質を受け入れた。そしてゼノンもまた、能力を制御することに前向きになれた。この二名にとっては、出会えたことそのものが、奇跡なのだ、と。
再び、溜め息を吐き出したゼノン。この執務室に来てから、何度溜め息を吐き出したことだろうか。そんなことを思いながら…俯くデーモンへと視線を向けた。
正直…ゼノンにも、エースの過去は良くわからない。エースが士官学校を卒業してからのことは何となく把握は出来るが、その前の話となると全くわからない。階級が少し上だったこともあり、士官学校にいる間は御互いに全く出会う機会などなかった。そして、ゼノンもエースの過去に深入りはしなかった。勿論、それで何の問題もなかった。
けれど…自分とデーモンでは、立場が違う。デーモンが聞けなかったと言う理由も、わからなくはない。
「…御免ね。俺もつい…言い過ぎた」
大きく息を吐き出したゼノン。デーモンはその言葉に首を横に振ると、立ち上がってコーヒーを淹れに立つ。そしてコーヒーを淹れたカップを二つ持って来ると、ゼノンの前にカップを一つ置き、自分のカップを持ったまま再びゼノンの前へと座った。
そして、口を噤んだままのゼノンを前に…一口コーヒーを啜ると、ゆっくりと口を開いた。
「…あの時の事は…一族の滅亡の時のことは、吾輩自身にも、良くわからないんだ。ただ…少なくとも、吾輩は宿舎を出ていない。ずっと…自分のベッドにいたはずなんだ。そう考えると、あの場にいたのは吾輩じゃない。だが…吾輩は、あの場にいた…」
「…どう言う事…?」
突然の告白に眉を潜めながら、ゼノンが問い返す。その声に、デーモンは再び首を横に振った。
「あの頃は…多分、色々不安定だったんだろう。自分の気持ちも上手く制御出来ない。一族からのプレッシャーと、周りからの期待に挟まれて…先の未来に…何の、希望もなかった。当然、一族の後を継ぎたいとも思っていなかった。ただ、士官学校に入って卒業さえすれば、文句は言われない。だから、大人しく学校にいたようなものだ」
そう。極力、目立たないように。注目を浴びて、一族の跡取りと期待されないように。ただ、それだけの時間。楽しくもなければ、目的もない。そんな時間を、じっと耐えていたようなもの。
そんな時に訪れた、一族の滅亡。その瞬間に何があったか…ゼノンが知る由もない。そしてデーモン自身…自分に何が起こったのかも良くわかっていなかった。だからこそ、説明も出来ない。
「…あの時の御前に何が起こったのか……調べるつもりがあるなら…協力するけど…?」
デーモンの様子を伺うように、そう問いかけてみる。けれど…デーモンは、小さく首を横に振った。
「いや…今更、そんなことを調べたところで何も変わらない。吾輩のことは…どうでも良い。どうして吾輩だけが生き残ったのか…それだって、長が消えてしまった以上…きっと一生わからない」
「…デーモン…」
今更ながらに…一族の中で、デーモンだけが生き残った理由。それが、奇妙に引っかかる。
けれど…それに触れてくれるな、と言わんばかりに話を切り上げたデーモン。そして、ソファーから立ち上がった。
「忙しいところ、悪かったな。レイラ=クーヴェイのことも…もう、良い。凡そのことはわかったから。職務時間も過ぎているんだ。そろそろ帰るとしよう」
「………」
背中を向け、帰り支度を始めたデーモン。
亡くなった者を相手にしても…敵うはずはない。それをわかった上で…踏み込んだデーモン。そして、絡まった記憶と現実に…ゼノンは、溜め息しかでなかった。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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