聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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初恋 3
翌日。職務終了時間が過ぎた頃。情報局の長官の部屋に、文化局の局長の姿があった。
「…で?今日は何の用…?まだ何かあるの?」
ソファーに座ると、徐ろにそう切り出したゼノン。
前日からの話の延長だろうと察したのは…当の主…エースが、浮かない表情をしていたから。
「いや…昔のデーモンのことは、御前の方が詳しいかと思ってな…」
「…昔?」
昨日の今日で、今度はデーモンの過去と来た。当然、ゼノンは奇妙な表情を浮かべている。
「あぁ…士官学校の頃の…出来れば、そのもっと前の…」
「自分で調べれば良いのに。得意でしょ?エースの情報網なら」
「……出来ないことはないが…ちょっとな…」
いつになく投げやりな色を見せるゼノンの答えに大きな溜め息を吐き出しつつ、エースはゼノンの前へと場所を移す。
「彼奴…何であんなに飢えてるんだ…?」
「…それくらい満たしてあげれば良いじゃない?まだ一晩ぐらい続けられる体力はあるでしょ?」
「…何の話してるんだよ…」
「…性欲の話じゃないの?」
「ばぁ~か。ちげぇよ」
溜め息を吐き出しつつ、頭を掻くエース。勿論、それで済むのならそんな相談などするはずもない。
「…何かに飢えてるんだ…満たされない何か。俺が…傍にいるだけでは足りない、何かが。御前なら…俺よりももう少し、彼奴のことを知っているんじゃないかと思ってな…」
すっきりしない何かがある。そんな表情を浮かべるエースに、ゼノンも溜め息を一つ。
「…悪いけど…俺も詳しいことなんか知らないよ?デーモンと出逢ったのは士官学校の卒業間近の頃だし…その前のことは、俺は知らないもの。デーモンのことなら…当時の仲魔に聞くのが早いんじゃないの?上層部にも何名かいるでしょう?ダミアン様だって、知っているんじゃないの?」
「聞けるかよ、ダミアン様に…」
確かに、大魔王たるダミアンならば、詳しいことを知っているかも知れない。けれどそれをダミアンに問いかけるのは流石に違うと思う。大事な仲魔の過去を軽々しく口にすることなど…ダミアンには決してないことだろう。
溜め息を吐き出したエースは、ソファーから立ち上がるとゼノンに背中を向けた。
「悪かったな、もう良い。自分で…何とかするから」
「…エース…」
その背中が…いつもよりも小さく見えたのは…。
「…似合わないでしょ?そんなに、肩を落とした姿なんて…」
「…悪かったな、似合わなくて」
幾度目かの溜め息に、ゼノンもソファーから立ち上がった。
「明日まで待ってて」
「…ゼノン?」
エースが振り返った時には、ゼノンはもう執務室の扉の向こうにいた。
いつになく迅速。怪訝そうなエースの表情は、ゼノンには見えていなかった。
翌日の夕方宣言した通り、ゼノンはエースの執務室へとやって来ていた。
「はい。これが俺の一日の精一杯」
そう言いながら机の上に置いた、一綴りの書類束。
「デーモンの過去のことは…まぁ、エースも知ってることかも知れないけれど、当たり障りのない話しか出て来ない。一族が滅ぶ前は一族の後継者として有望だって言うことぐらい。滅亡後は、一族の再建。士官学校にいたから、一名だけ生き延びたからね。だから結局…ずっと、デーモンの背中には一族の影が纏わり着いている。その影を払拭するかのように、生家は残ってるけれど殆ど足を踏み入れていない。デーモンが自分の一族を嫌っていたのは知っていたけれど…確かに、過剰な期待が嫌だったのかもね」
書類を捲りつつ、ゼノンの言葉に耳を傾ける。
「あぁ、一族再建の話は俺も聞いた。尤も、副大魔王になる頃だが…御前から聞いたような記憶があるな。子供の頃からずっと、その重荷を背負っていた、って言うことか…」
だが、それが枯渇する愛情に影響するのかどうか。それは疑問に思うところだった。
「あとは…士官学校でデーモンと同室だった悪魔に聞いてみれば?王都にはいなかったから、俺は話は聞けなかったけど…所在はわかってるよ」
そう言って、もう一枚、懐から書類を取り出す。
「軍事局のクルアール司令官。旧名は觜輝(しき)。軍事局に入って少しして登録名が変わったみたい。今は王都を離れて、地方の軍部にいる。一度王都に戻って来ていたんだけど、直ぐにまたいなくなっちゃってね。ルークはその間に会ったらしいよ」
「…ルーク、ね…まぁ、軍事局だしな…」
二名の関係を知っていれば…ルークなら興味津々で色々嗅ぎまわっただろうか。もしそうであるなら、確かにルークならもう少し話が聞けているかも知れない。
「…ルークには貸しがあるからな。聞いてみるか…」
元を正せば、レイラ=クーヴェイの書類を誤ってデーモンに渡したのはルークなのだ。それを謝罪に行ったのはエースなのだから、それが貸しとなるだろう。
「それから…エースなら知ってるかも知れないけれど…聞いたことない?デーモン一族の噂」
「…噂?」
「そう。デーモン一族は、長が一名で作り出した種族だって。だから、一族全員、長の魂と繋がっている。一族が簡単に滅亡したのは、その所為だ、って…」
僅かに声を潜めてそう口を開いたゼノン。その言葉に、エースはふと記憶が甦る。
辺りが騒がしくて、落ち着かなくなった。そのうちに、誰かの声がする。
「…おい、御前」
「……」
それが己を呼んでいる声だと気付いた彼は、己が目を開ける。未だ頭から被った外套は彼の視界の半分を遮っていたが、自分を呼んでいる者の姿は辛うじて見て取れた。
白い顔に赤い紋様を戴いた悪魔。その顔を縁取るのは、やや襟足の長い黒髪。
「大丈夫か?」
そう声をかけられ、ふと吾に返る。まるで飛び起きるように身体を起こした彼は、何故自分がここにいるのかが理解らない。
「…生きて…いるのか?死んだのでは…」
つぶやいた彼の声に、赤き悪魔は眉を潜める。
「デーモン一族の者か?」
そう、尋ねられる。
「誰の姿も見当たらないんだが…御前は奴等の行方を知っているのか?」
瞬間、彼は赤き悪魔から逃れるかのように走り出した。
「あ…おいっ!」
自分を、追いかけて来る足音が聞こえる。
いつの間にか厚い雲は切れ、月の光が覗いている。
懸命に足を動かしているつもりでも、醒めたばかりの彼の足はほとんど動いてはいない。だから、当然の如くその腕に捕まってしまう。
「離せ…っ」
抵抗を見せる彼に、赤き悪魔は小さな溜め息を吐き出した。
「…何か、知っているんだろう?教えてくれ。デーモン一族は、何処に行ったんだ?」
抱き締められて、相手の鼓動が確実に伝わって来るのを感じ、彼は僅かにその頬を染めた。
「…知らない」
「嘘を付け。それなら、何故御前は長の部屋にいたんだ」
「…知らないと言ったら知らないっ!」
赤き悪魔の腕を撥ね除けた拍子に、その外套が僅かに彼の表情を覗かせた。強い光を見せた眼差しは、他を寄せつけない程の気迫を持っていて。
一瞬見せたその眼差しに、赤き悪魔は目を細める。
「…御前が、殺ったのか?」
「…知らない」
「殺ったんだろう?」
赤き悪魔の眼差しもまた、他を圧倒させるだけの威力を持っていた。
「…あの一族は…一つの魂で繋がっている。長さえ殺せば後は勝手に滅びる種族だ…」
諦めたように口を開いた彼の声に、赤き悪魔の吐息が答える。
「それで?理由は」
「……」
「御前みたいなガキが殺せる相手じゃなかったはずだ。幾らその能力のほとんどを自分の息子に託したと言っても、かなりの魔力があったはずだ。御前が刃を向けようと思っても、そう簡単に首を取れる相手じゃないだろう」
「…そんなこと、知るか。第一…長がその全盛力を注いだのは、跡取りに…ではない。魔界に革命を起こし、己が権力を握ることを企むことに…だ」
「御前…何故、そんなことを知ってるんだ?やはり御前も一族の者か?」
「一族だったら、とっくに死んでいる」
そう言葉を放ったものの、彼ですら己の存在が良く理解らなくなっていたのは事実だった。
「…まぁ、いい。御前がどんな理由で長を殺したのか…長が、何を企んでいたのか…そんなこと、俺には関係ないからな」
そうつぶやきを返した赤き悪魔は、彼に踵を向ける。
「俺の気が変わらないうちに、早く行きな」
「…捕えないのか?」
「捕えたところで、御前はプライドが高そうだしな。面倒なことになるのは御免だ。第一俺はまだ研修中だ。御前を捕えるだけの権力はない」
「……」
「早く、行けよ」
その一言が、彼を正気に戻したのかも知れない。
「……エース?」
急に物思いに耽ってしまったエースに声をかけたゼノン。その声にふと我に返ったエースは、小さな溜め息を吐き出す。
あれは…本当に、デーモンだったのか。今でもそう言い切れる自信がない。何より、デーモンがそれを認めていないのだ。
「…なぁ、ゼノン…もしも…血族の絆を断ち切る方法があるのだとしたら…何だと思う…?」
ふと問いかけたエースの声に、ゼノンは小さく首を傾げる。
「血族の絆を断ち切る…?」
その言葉の意味を考え、眉根を寄せたゼノン。
「彼奴だけが、一族の中で生き残った。それには何か理由があったはずだ。そうだろう?若しくは…」
「…デーモンだけが、長の子供じゃなかった…って言う理由もある?」
「…そればっかりは、俺は何とも言えない。だが…その辺りの何かが、引っかかっているのかも知れない。それに彼奴は……」
そう言いかけて、エースは口を噤んだ。
そこから先の話は…ゼノンにはしていなかったはず。そして、それが現実だったのかも良くわからない。
ただ……納得の出来ない想いは、そこにあった。
「…取り敢えず、ルークのところに行って来る。血族の絆を断ち切る方法が何か見つかったら教えてくれ」
そう言って話を打ち切り、エースは椅子から立ち上がる。
「悪かったな。忙しいところ余計な仕事頼んで」
「別に、御前ほど忙しくないしね。あんまり…思い詰めないでね。過去がどうであれ、今は御前が一番傍にいるんだから」
「あぁ、わかってる」
軽く微笑み、エースは未だ心配そうな表情のゼノンを先に帰す。そして身支度を整えると、ルークがまだ執務室に残っていることを確認し、軍事局へと向かったのだった。
すっかり日も落ちた頃、軍事局のルークの執務室を訪れて来たエース。
「悪かったな、待っていて貰って」
「いや、大丈夫。仕事してたしね」
エースをソファーへと促すと、ルークの方から言葉を投げる。
「昨日は御免ね。嫌な役割押し付けて…」
「あぁ、それは別に何ともない。デーモンも、別に御前に対して文句は言っていなかったしな。ただ…ちょっと気になることがあってな」
「…気になること?」
ルークはそう問いかけながら自分もソファーに座り、エースと目線を合わせる。
「まぁ、色々前置きはあるんだが…取り敢えず、クルアール司令官は今何処の部隊にいる?王都から離れていると聞いたんだが」
そう切り出したエースに、ルークはちょっと首を傾げた。
「クルアール司令官…?それを聞いてどうする訳?彼が何かしたの?」
その言葉には、警戒する色がある。まぁ、総参謀長としての責任もある訳で、闇雲に情報を漏洩することも出来ないことは、エースも重々承知だった。
「いや…クルアール司令官が何かしでかした訳じゃない。ただ、俺が聞きたいことがあるだけで」
「…聞きたいことって何さ…」
未だ、ルークの警戒は解けない。そんな姿に、エースは溜め息を一つ。
そして。
「…クルアール司令官は…士官学校時代、デーモンと同室だったんだろう?ちょっと…その頃の話が聞きたくてな…」
そう言った言葉に、ルークはソファーに背を預ける。
「まぁ…俺も一回話はしたことあるけどね。でも、あのヒトに聞いても、ただデーさんと同級生だった、って笑うだけだよ?俺だって、それ以上の何も聞き出せなかったもん」
「御前こそ、何を聞きだそうとしてるんだよ…」
ルークの直感と行動力は侮れないと思いつつ、ルークもクルアールとデーモンの関係は引っかかっていたのだとわかると、きっとそれは偶然ではないのだろうと思い直す。
「まぁ…何処にいるかだけ教えてくれ。そうしたら、自分で聞きに行くから」
「…後で報告してくれるなら、教えても良いけど?どうせ、昔の事探って、何か埋めようとしてるんでしょ?あんたの心の歪み」
「…ルーク…」
「そう顔に書いてあるもん」
くすっと笑うルーク。だが、直ぐにその笑いを治める。
「昨日の書類もそうだけど…恋悪魔の過去が気になるって言うのはさ、わかるんだ。でも…気をつけないと、そこが綻びになるよ?あんたとデーさんの仲が拗れない、って確証はないんだからさ」
「あぁ、わかってるよ。そこまで深入りしようと思ってる訳じゃないんだ。ただ…彼奴と共にいる為に…彼奴が何を欲しているのか、それが知りたいんだ。彼奴の中で、いつまでも満たされずに枯渇しているものは何なのか。それを満たしてやらないと…彼奴は一生、何かを求め続けるんじゃないかと思ってな…」
「枯渇、ねぇ…」
エースの言葉に、ルークは少しだけ考えを巡らせる。
「枯渇しているもの、って言ったら…まぁ普通は愛情じゃないの?」
その言葉に、エースは思わず口を挟む。
「愛情なら、俺だって十分…」
「違うよ。あんたじゃなくて、"親"だよ、"親"」
エースの言葉を遮り、ルークはソファーに預けていた背を戻すと、言葉を続けた。
「"親"…?」
「そう、"親"。一族の長だったんでしょ?デーさんの父上様。だったら、尚更じゃないの?満たされないその"想い"は、"親からの愛情"じゃないかと、俺は思うけどね」
そう言われ、何となくその言葉の意味がすっと腑に落ちた気がした。
「…成程な…」
確かにその発想は、自然発生のエースやゼノンでは思いつかなかった。
「まぁ、士官学校の同級生なら、その辺のことは少し聞いてるかもね。クルアール司令官には連絡入れとくよ。後で報告宜しくね」
すっかり興味津々になったルークは、あっさりクルアールの所属をエースに教える。その顔は勿論、エースが何処まで聞きだせるかを楽しみにしている顔、だった。
「…しょうがない、か…」
ルークに協力を求めた以上、こうなることはわかっていた訳で。
小さな溜め息を吐き出したエースは、ルークから聞いたクルアールの所属している部隊を目指して、王都を後にしたのだった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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