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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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初雪
こちらは本日UPの新作です。

拍手[2回]


◇◆◇

 その年初めての、雪が降る。
 雑音を吸収するかのように、音もなく静かに。そして、いつの間にか周囲を白く染めていく。
 その様子は、とても懐かしさを感じさせた。

◇◆◇
「冷えると思ったら…ダミ様、雪が降って来ましたよ」
 開けた窓から外を眺めながら、少しだけ身を乗り出して手を差し出すと、その掌の上に落ちて来る欠片に小さく笑いを零した。
 吐き出す息も白い。一頻り落ちて来る雪と戯れていると、ぶるっと身震いを一つ。流石に遊び過ぎたかと窓を閉め、振り返った。
「この分だと積もりそうですよ」
「そうかい?なら、風邪をひかないようにしないとね」
 くすっと笑いながら、熱い御茶を淹れたカップを彼へと差し出す。
 身を乗り出していたので、その頭の上にもうっすらと雪が積もっていた。その姿が余りにも無邪気に見えて、笑いが零れた。
「ルーク。頭もちゃんと拭かないと、雪で濡れているよ」
「え?…あ、ホントだ」
 掌で頭を払いながら、差し出されたタオルを頭から被る。そしてわしわしと水分を拭うと、やっと椅子に腰を下ろす。目の前には…その一部始終を、微笑みで眺めている恋悪魔。けれど…その柔らかな眼差しの奥に見えたほんの少しの影に…ルークは、首を傾げた。
「…どうか、しました?」
「…うん?いや、別に何もないけれど?」
「…なら、良いんですけど…」
 何処か、奇妙な感覚。それを感じながら…何もないと言われたのだから、それ以上何も問いかけられない。
----まぁ、良いけど…
 何はともあれ、相手も楽しそうだし。そんな想いで、些細な違和感を飲み込んだ。
 ただそれだけの…本当にそれだけの話。……だったはず。
 少なくとも、ルークにとっては。

◇◆◇

 数日後。執務室の窓からぼんやりと雪の積もる景色へと目を向けていると、不意に声をかけられた。
「…ダミアン様?」
「…うん?」
 声をかけられ、そちらへと視線を向ける。そこには、書類を持った副大魔王の姿。
「ぼんやりとして、どうしました…?」
「あぁ…何でも……」
 そう言いながら…視線が再び窓の外へと向く。
「…窓の外に、何か…?」
 デーモンもそう言いながら、窓の外へと視線を向ける。そこには別段、何も変わったところはない。ただ、雪景色が見えるだけ。
 ただ…白い、世界。
「……白…白……白……???」
 白に何か引っかかるのか…と、何となく記憶を辿ってみる。自分が知っている何かに、ダミアンが引っかかる"白"があっただろうか?
 だが、少し考えても何も思いつかない。
「あの……」
 声をかけようとしたが、ふと思い立って口を噤む。
 窓の外に目を向けるその眼差しが…何か、懐かしいものでも思い出しているかのように、細められている。
----白い……何だ?ダミアン様の、懐かしいもの………
 そこで、ハッとして再び窓へと視線を向ける。
「…真白き…神の、産物……ルークの真白き翼、ですか?」
「…デーモン?」
 ダミアンの視線が、ふっと戻って来る。
 驚いたようなその眼差し。けれどやがて笑うように細められた。
「そこに辿り着くとは…流石デーモンだね」
「やっぱりそうですか…」
 微笑むダミアンに、デーモンは小さな溜め息を一つ。
 かつて、ルークの背中にあった、真白き神の産物。もう随分前になくしてしまった。今更どうにもならない訳で…だからこそ…黙っていたのかも知れない。
「どうにもならないことは、百も承知だよ。今の蒼黒の翼だって、彼奴に良く似合っているからね。文句がある訳ではないんだ。ただ…一緒に初雪を見ていたら…ふと、彼奴の泣き顔を思い出した。母の形見と言っていた翼を失って、一番辛かったのはルークだ。我々が、残念だ…だなんて、口が裂けても言えることじゃない。だから、前を向いて…蒼黒の翼を背負った彼奴を、褒めるしかなかった。わたし自身、それが心残りだと思っていた訳じゃないんだ。ただ…時々、思い出す。有翼種ではない我々に、その翼の価値はわからない。見た目で綺麗だとか、似合うだとか…そんなことしか言えない。その言葉が…本当に、ルークの救いになったのかどうか…」
 窓の外に向ける眼差し。懐かしさと憂いさが入り混じったその意味が、漸くわかった気がした。
「…御前は良いね。エースの翼、御前の好みだからね」
「それはそうなんですが…」
 そう答えながら…デーモンもふと考える。
 エースの翼は大好きだ。けれど、恋心を覚えた翼は別悪魔のもの。良く似てはいる。だが、別物。それでも、愛おしいと思うのは…やはり、愛おしい相手のものだから。
「…確かに、真白き翼は戻りませんが…我々の言葉が、ルークの救いになっているかどうかは…御自分で、確認されるしかないのでは…?」
「御前のように、翼を背負ったその裸の背中を見せて貰えと…?」
「ちょっ……!なんでそんなことを…っ!?」
 途端に真っ赤になるデーモンに、ダミアンは笑いを零す。
「御前も十分可愛いね。これはエースも喜ぶ訳だ」
「……吾輩の話はどうでも良いんです…っ!」
 真っ赤になったまま声を上げるデーモンに、ダミアンは相変わらず笑いを零していた。
 それで自分の気持ちの何かが変わるのなら…そんなに簡単なことはない。ただ、それでも…募る想いには、変わりない。
 真白き…神の産物。その翼を背負ったルークに…惚れていたのだと言う事実は、何も変わらない。
「…ルークには、絶対言うんじゃないよ。彼奴の所為でもないし…護ってやれなかったのは、見抜けなかったわたしの責任だ。蒼黒の翼だって、彼奴に良く似合っているんだ。だから…何も、言うんじゃないよ」
 念を押すようなダミアンの言葉に、デーモンも口を噤む。
 勿論、ダミアンの責任でもない。だから、ダミアンが責任を感じる必要もなかったはず。けれど…ダミアンだからこそ、の想いなのだろう。
「…少なくとも…ルークは、前向きですから。ダミアン様が似合うと言えば、素直に喜ぶはずです。貴殿に…愛されていると、本心から感じることが出来れば」
 デーモンのその言葉に、ダミアンはくすっと笑いを零した。
「御前も前向きだからね。わたしも…前向きに頑張るよ」
 持つべきものは、心強い仲魔。その前向きな心が、とても温かいと思えた。


 その夜。ダミアンの私邸へとやって来たルーク。その顔は、変わらずにこやかで。
「ここはまだ結構積もってますね。また少し降り始めたから、消える前にまた積もりますよ」
「あぁ、そうだね。ここは木が多いから、なかなか消えないからね」
 頭や肩、足元に付いた雪を払いながら機嫌良くやって来たルークを、いつものように迎える。
「エースから、良い御酒貰ったんです。一緒に呑みたいと思って、持って来たんですよ」
「そう。それは楽しみだね」
 ダミアンの声に、使用魔がグラスや氷、水などを用意する。そしてルークから酒の瓶を受け取ると、グラスの準備をして部屋を出て行く。その背中を見送ると、ルークは笑いながらテラスへと出る掃き出し窓へと歩み寄る。当然、テラスにも雪が残っており、振り始めた雪がはらはらと落ちて来るのが見えた。
「…そう言えば…面白いこと、考えたんです」
「面白いこと?」
 首を傾げるダミアンの前、ルークはにっこりと笑うと、掃き出し窓を開ける。そして躊躇うことなくテラスへと出て行った。
「…ルーク?」
 首を傾げながら、掃き出し窓へと歩み寄るダミアン。そこで、宵闇の中、天を仰いで立つその姿を見た。
 背中に構えたのは、蒼黒の翼。その翼へと、雪が落ちて来る。
 その姿は…とても、綺麗で。
 小さく息を飲み、その姿に暫し見入る。すると、ルークが少しだけ頭を動かしてダミアンの方へと視線を向けた。
「ほら、俺の髪も翼も闇に紛れるでしょう?でもこうすると、闇の中でも姿が見える」
 まだ外に出たばかり。髪の毛や翼に落ちて来る雪も、積もるところまでいかずに溶けてしまう。それでも、雪の中に立つルークは雪に塗れているつもりらしい。
「…元気…出ました…?」
 じっとルークの姿を見つめているダミアンの様子を窺うように、そっと問いかけたルーク。
「…わたしが、元気がないとでも…?」
 思わず問いかけたその声に、ルークは小さな溜め息を一つ。
「…この間から、ちょっと元気がないように見えたから…ほら、ダミ様、俺の前の翼、気に入っていたでしょう?だから…こうしたら、少しは白い翼に見えるかな、って……」
 その言葉に、ダミアンも大きな吐息を吐き出す。
 まさか、見抜かれていたとは。ルークには気付かれまいと平然としていたつもりだったのだが…ほんの少し見せただけの憂いを、ルークはちゃんと見ていたのだ。
 その想いを…無駄には出来ない。
  ダミアンはテラスへと足を踏み出し、ルークの傍まで行くと、手を伸ばして頭に少し積もり始めた雪を払う。
「…馬鹿だね、御前は…風邪をひくだろう…?」
「…だって…」
 心配そうな、黒曜石の眼差し。その眼差しを前に、ダミアンは軽く微笑む。
「翼が白くなるまで外にいるとしたら…まだまだ外にいることになるよ?」
「え?って言うことは、まだほとんど積もっていないって言うことですか?もう結構積もったと思ったんだけど…」
 自分の背中を振り返るものの、翼の上の方はなかなか見えない訳で。一生懸命振り返ろうとしているその姿が可笑しくて、思わず笑いを零す。そして、ルークの手をそっと握った。
 来たばかりで、身体も温まってはいない。その上で更に雪の中に立っているのだから、更に冷えて冷たくなっていた。
「ほら、こんなに冷えているじゃないか」
 握ったダミアンの手が、とても温かい。
「…じゃあ……ダミ様が、温めてくれます…?」
 思わず、上目遣いで問いかけた言葉に、一瞬ダミアンの笑いが止まる。
「あぁ……御免なさい、大丈夫です…素直に、暖炉の火に当たります…」
 流石に拙かったと思ったのだろう。慌ててそう言い直したルークだったが、小さく息を吐き出したダミアンは、そのままルークを抱き寄せた。
「全く御前は…そこで臆するんじゃないよ」
「…ダミ様…」
 寄せられた身体の温もりに、ルークはうっすらと赤くなる。勿論、宵闇の中。はっきりとは見えないものの、ルークが照れているのはわかっていた。
「可愛いことを言われて、わたしもちょっと驚いただけだ。御前の頼みを、断れる訳あるまい…?」
 耳元でそう囁き、軽く唇を触れる。冷たい感触だが…寧ろそれが心地良い。
「ちょっ…ダミ様…」
 当然、ルークの方は既に真っ赤になっている訳で。けれどダミアンは、そのまま動かない。
「…御前は、御前だから」
 耳元で、再びそう囁かれる。
 そのいつになく低い声に、ルークは一つ息を飲む。
「…翼の色なんて…どちらでも良いんだ。御前が…変わらずに、いてくれれば…」
「…変わりませんよ、俺は」
 ダミアンの背中へとそっと腕を回したルーク。
「俺は、何も変わりません。翼の色が変わったって…俺は、俺ですから。誰に何と言われようともダミ様の傍も離れませんし、何処にも行きませんから。だから…心配しなくても、大丈夫です」
 その背中を軽くポンポンと叩くと、ダミアンから笑いが零れる。そしてその身体を離すと、ルークの顔を覗き込んだ。
「そうだね。御前は御前だ。ここにいてくれれば、それで良いんだ」
 柔らか笑顔。その微笑みに、ルークもにっこりと微笑む。
「さ、冷え切らない内に中に入りましょう。エースから貰った御酒もまだ飲んでないし」
「あぁ、そうだったね」
 くすくすと笑いながら、ダミアンはルークの手を引いて部屋の中へと入る。ルークもダミアンと一緒に部屋へと戻りながら、その背中の翼を身の内へとしまう。
 と、その様子を見ていたダミアン。
「そう言えば…デーモンが、エースの翼の生え際がとても色っぽいと言っていたが…折角だから、御前の背中も見せて貰おうかな?」
 くすっと笑いながらそう言ってみると、ルークはその頬を赤くした。
「…もぉ…二番煎じじゃないですか…」
「二番煎じの何が悪い?楽しいことは、試してみないとね。勿論…ヒトの真似ばかりじゃないよ?わたしのやり方で…ね」
「……っ」
 更に真っ赤になるルークに、ダミアンは笑いながらその頭を撫でる。
 何の、問題もない。ただ、愛おしいと想う心があれば、それで。
「さて、それでは御相伴に預かろうか。御愉しみは、それからだ」
「…御愉しみって…」
 その言葉の意味合いに、真っ赤のままのルーク。だが、そんな姿も当然愛おしい訳で。

◇◆◇

 翌朝早く。共にベッドに収まったまま、未だ眠りの淵にいるルークの姿をぼんやりと眺めていたダミアン。
 その寝顔は、実に平和そのもの。前夜の余韻も相まって、愛しい以外の何物でもない。
 裸の背中に構えたその蒼黒の翼は、とても綺麗で。デーモンがエースの背中に見惚れる理由にも納得出来た。
 真白でも蒼黒でも、どちらでも良い。どちらにしても、綺麗で良く似合う事には変わりないのだ。
 そしてデーモンの言う通り。自分が気にしなければ、ルークは翼の色など何も気にしないのだろう。
 前向きで、真っすぐで。その心が、真白である限り…ルークは、何も変わらない。
 それを実感したダミアンであった。
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