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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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夙夜夢寐 後編
こちらは、以前のHPで2007年11月24日にUPしたものです

拍手[4回]


◇◆◇

 翌日。石川は、予定の時間よりも早めに現場に着いた。
 湯沢は、まだ来ていない。
 取り合えず、話は本番が終わってから。今日こそは…何が何でも、湯沢を引き止めなければ。
 そう思いつつ、早めに準備を終える。そして、コーヒーで一服。
 何から、伝えたら良いだろう。
 そんな思いが過ぎるが、今はまず、これから控えている本番を全うせねば。
 そう、気持ちを切り替える。
 話は、それからだ。

 時間通りに湯沢も到着し、打ち合わせ以外では特に話すこともなく、無事に本番を終えた。
 石川にとっては、これからがもう一つの本番のようなもの。否、本番よりも緊張する。
 手早く帰り支度を終え、湯沢のいる控え室へと向かう。そして、そのドアを軽くノックした。
「…湯沢くん、いる?」
 それに対する答えは返って来ない。だが、確かに話し声はする。どうやら、電話をしているようだった。
 邪魔をしない方が良いかな…と思ったのも束の間。直ぐにドアは開き、携帯を片手に湯沢が顔を出す。そして、話を続けながら、石川を手招きして部屋の中へと促した。
 別に、聞き耳を立てるつもりではなかったのだが…何気なく、その会話を耳にする。どうやら相手は篁のようだった。
 湯沢は、うん、そう、わかった、しか言わなかったので、話の内容までは把握出来なかったが。
 暫くして、携帯を切った湯沢。そして、石川に話しかける。
「御免ね、篁からでさ。何だか前に打ち合わせしたのと違うことになってるらしくて…今日も、これから行かなきゃいけないんだけど…何か用があった?」
 そう言いながら、湯沢は手早く帰り支度を始める。
 話の内容からするに…どうやら、昨日の相手も篁だったようだ。
「うん…ちょっと……」
 この慌しい雰囲気からは、どうも言い出し難い…。
 湯沢は…昨日のことを、何とも思っていないのだろうか?ふと、そんな思いも過ぎる。
 もうすっかり、割り切ってしまったのだろうか…?
 そう思いながら、湯沢の姿をぼんやりと眺めている。そこでふと気が付いた。
 それは…ついこの前までの、自分の姿のようで。
 全く気が付かなかったとは言え…多分湯沢は、自分たちの関係のことを、何度も石川に問いかけようとしていたのだろう。
 何だか、今更ながらに情けない気持ちで一杯になった。
「…石川くん?」
 石川は、声をかけられ、ハッとしたように顔を上げた。
 湯沢の帰り支度はもう出来ている。
「俺、もう行かなきゃいけないんだけど…それに、今日は打ち上げに参加する予定だったから、電車だし…石川くん、どうする?」
 そう問いかけられ、一瞬どうしようかと迷う。だが、次の瞬間には行動を始めた。
「俺も行く。俺も電車だから」
「…あ、そう…」
 きょとんとする湯沢。まぁ、当然と言えば当然…かも知れない。大慌てで荷物を手に取ると、廊下で待っていた湯沢と合流する。
「他の出演者に挨拶して来ないとね…」
 湯沢がそう言いかけた時、廊下の向こうからデーモンが姿を見せる。
「…なんだ、もう帰るのか?」
 荷物を背負った二名を前に、きょとんとした表情を見せたデーモン。
「うん、御免ね。俺は篁から呼び出し」
 申し訳なさそうに口にした湯沢。
「…俺は……」
 どう説明したら良いか…と言う表情を見せた石川に、デーモンは何かを察したようだ。小さく笑いを零す。
「あぁ、わかった。他の演者には、吾輩から言って置くから。心配しないで帰って良いぞ」
「ホント?悪いね~。じゃあ…」
 申し訳ない、と言う表情を浮かべ、湯沢は軽く手を上げて挨拶をすると、石川を促して踵を返す。
「…御免ね」
 石川も、デーモンにそう声をかける。
「あぁ、頑張れよ」
 くすっと笑いを零し、デーモンはそう言葉を送る。
 その言葉に…溜め息で返事をしたのは、言うまでもない…。

 駅へと向かう道すがら。
 足早に向かいながらも、貴重な時間なのだから、話を切り出さなければ。そう思いながらも、なかなか本題が口から出ない。
 他愛もない会話をしながら、小さな溜め息を飲み込んだ石川。
 ついに、駅へと到着したが…肝心な話は、まだ何一つ始まっていない。
「…石川くん、どうする?」
 湯沢が、心配そうにそう声をかけた。
 湯沢が向かう先と、石川が帰る先は、反対方向。何処まで着いて来るのかわからない状況が、そんな表情を見せたのだろう。
 人通りの多い駅前。そこでいつまでも立ち止まっていたら、否応なしに人目にも付く。ついでに言えば、湯沢には時間もない。
 大きな溜め息を吐き出した石川。けれど、その覚悟は決まった。
 今、言わなければ。
「…俺…」
「…え?何?」
 駅前の雑踏の中では、小さな言葉など直ぐにかき消されてしまう。案の定、石川の声は湯沢に届いていない。
 大きく息を吐き出し、石川は、声を上げた。
「俺、湯沢くんのこと、好きだから!」
「……ちょっ……」
 瞬間、湯沢の顔がバッと赤くなる。
 石川の声は、周りを通り過ぎようとしていた数名にも聞こえ、奇妙な眼差しが一斉に向けられる。
 だが…石川は、言わなければ、と言う思いが一杯で、それに気が付いていない。
「俺の気持ちは、変わらないから!だから…っ」
「もう良い!わかったから…っ!!」
 慌てた湯沢は、石川の手を掴み、改札とは逆の方向へ走り出す。
「ちょっ…湯沢くん?!」
 突然方向転換した湯沢に引きずられるように、石川は湯沢と共に走り出す。そして、暫く走って、人気のない公園の片隅へとやって来ると、やっとその足を止めた。
「…何…急に…」
 ゼイゼイと息を切らし、訳がわからないと言った表情を浮かべた石川に、湯沢は大きな溜め息を吐き出した。
「何なのさ…っ!あんなに人が多いところで叫ぶことじゃないでしょう?!」
 どうして、それがわからないのだろう?そんな表情を浮かべて口走った湯沢の言葉。けれど直ぐに、今自分が発した言葉を戻してしまいたかった。
 勢いに任せた言葉は、確実に相手を傷つけた。
 それは…目の前の石川の表情を見れば、一目瞭然、だった。
「…御免…言い過ぎた…」
 湯沢は直ぐにそう口にした。
「…ううん…俺も、御免…気持ちが焦っちゃって…」
 石川も大きな溜め息を吐き出し、頭を横に振る。
 自分は、何をやっているんだろう?まるで、そう言っているように。
「…ちょっと待ってて」
 湯沢は石川にそう声をかけると、ポケットから携帯を取り出し、石川に背を向ける。そして少し離れると、何処かへ電話をしているようだった。
 その背中を見つめつつ、石川はいかに自分が不器用だったかを改めて思い知った気持ちだった。
 今まで…こう言う時には、ゼノンに任せて置けば良かった。ゼノンなら、ライデンのことを良くわかっているのだから、あんな醜態を晒すことはなかっただろう。
 誰よりも不安だったのは…自分自身。そして、いつの間にか大きくなっていた湯沢との溝。そして…その深さを思い知らされ、焦った挙句、あんなに人の多い場所で、あんなことを口にするとは。自分でも呆れるくらい、無様だっただろう。
 大きな溜め息を吐き出した石川。そして、背負ったままの荷物を肩から下ろし、自分も近くのベンチへと腰を降ろす。
 暫し、頭を抱えて自己嫌悪に陥る…。
「…大丈夫?」
 暫くして、そんな石川に声をかけたのは、電話から戻って来た湯沢。
「…今さ、篁に電話して、今日はキャンセルさせて貰ったから」
「…キャンセルして大丈夫なの?」
 思わず問い返した石川の言葉に、湯沢も溜め息を吐き出しつつ石川の隣へと腰を降ろす。
「だってさ…そんなことしてる場合じゃないじゃん。気になって打ち合わせどころじゃないし…あんたのあの姿を見て、放置しておけるほど俺もまだ薄情じゃないしね。きちんと…あんたと向き合わないとね」
 再び小さな溜め息を吐き出した湯沢は、ポケットから煙草を取り出す。
「御免、ちょっと一本だけ」
 相手が煙嫌いなのは重々承知。でも今は、自分の気持ちを落ち着かせることが先決。そんな思いで、石川の返事も聞かず、湯沢は煙草に火をつけた。勿論、煙がかからないように配慮することは忘れないが。
 大きく紫煙を吐き出し、やっと一呼吸つく。
「…御免ね…」
 申し訳なさそうに吐き出した石川の声。その表情は、自己嫌悪で一杯で。
「…俺も、御免ね。あんたの気持ちも考えずに…酷いこと言ったよね」
 石川の様子を伺いつつ、湯沢もそう口を開く。
 さて…何から話せば良いのだろうか。それは、御互いの胸の中にあった思い。
 煙草を吸い終えた湯沢は、携帯灰皿にその吸殻を放り込むと、徐ろにベンチから立ち上がり、数歩進むと、大きく深呼吸をした。
 そして、石川に背中を向けたまま、ゆっくりと口を開く。
「…昨日、俺がデーさんに言ったのこと…気にしてるんでしょ?」
 気にしていないはずはないだろう。そう思いつつも、問いかけてみる。
「…気にしているって言うか…」
 気にしていない、と言えば確実に嘘になる。気にしている、と言えばその通り。けれど、そんな単純な言葉で良いのだろうか?と言う疑問符が心に残る。だから、そんな中途半端な言葉が口を突いて出た。
 情けない。その一言に尽きる。
 そんな表情で俯いた石川。ふと、その視線の先に見えたものは、今日の御守り代わりに着けて来たブレスレット。それは…彼の悪魔に貰ったもの。
 それを指先で辿り、大きく息を吐き出す。
 前を、向こう。その先に何があっても。それが…自分たちが選んだ選択肢。
「別にさ…良いんだよ、そんなに気にしなくても。今が不自由な訳でもないし。あんたを見ない生活にも、もう結構慣れたしね」
 小さく笑いを零した湯沢が、そう言葉を放つ。けれど石川は、その言葉を遮るかのように、声を上げた。
「さっきのこと、本気だからね」
「…は?」
 突然石川が発した言葉の意味が繋がらず、首を傾げた湯沢。だが、石川はそのまま言葉を続ける。
「嘘じゃ、ないよ。冗談でもない。俺は…今でも、湯沢くんのこと、好きだから」
「…石川くん…」
「あんなところで、あんな言い方したのは俺が悪かった。俺が鈍かったから…気付かなかったから…変な諦め方をさせちゃったんだと思う。それも反省してる。でも…誤解しないで貰いたいんだ。俺は…何も変わらない。今でも湯沢くんのことが好きだし、一緒にいたいと思う」
 顔を上げ、真っ直ぐに湯沢を見つめる眼差し。その瞳の奥に見える光に…湯沢は思わず苦笑した。
「別に俺は、あんたが変わったとは思ってないよ?」
「…でも…」
 困惑する石川の表情を前に、湯沢は笑いを零す。
「あんたさ、夕べゼノンに会ったでしょ?」
「……何で…?」
「多分、ゼノンなら、そう言うだろうから」
「………」
 湯沢の鋭い読みに、石川は思わず口を噤む。
「確かに…ゼノンに会ったよ。やっぱり…一番の相談相手なんだって、改めて感謝した」
「…そうだよね。俺もそう。結局、他のヒトには言い辛くても、ライデンならきっとわかってくれるだろうって…今でも頼っちゃう」
 そう言いながら、笑いを収めた湯沢。その表情は、不思議と穏やかだった。
「ホントは…今するべき話じゃなかったよね。もっと早く、話をするべきだった。多分…俺の中でずっと気になってたのは、そのことだったんだと思う。忙しさに感けて、後回しにしたツケが今頃回って来たんだよね、きっと。自分で選んだ道だもん。後悔はしてないよ。勿論、石川くんが決めた道に対しても。それなのに、どうしてこんなにもやもやした気持ちが残るんだろうって思ってたから…デーさんに対しても、変に力説しちゃってさ。直ぐに、聞けば良かったんだよね。俺たちの関係、これからどうなる?って。たった、その一言で良かったのに…それだけのことが言えなくて、後回しにして。それが今になって、あんたを困らせたんだろうなって」
 再び、石川の隣へと座った湯沢は、その手をそっと石川の手に重ねた。
「…真剣に考えてくれたことは嬉しいよ。でもさ、現実問題として…俺たちはもう、昔には戻れないんだよね。何が変わったとか、変わらないとかじゃなくて…過去に戻ることなんか、誰にも出来ないんだもん。勿論、俺だって石川くんのことは好きだよ。あの頃と、何にも変わらない気持ちでいると思ってるよ。だけど、だからと言って、昔と同じことが出来るかって言ったら…それは無理なんじゃないかと思う。溝を埋めることは出来ても…一度出来た溝は消えない。何かあれば、必ずそこに戻っちゃう。人って、そう言うモンじゃん」
 笑ってそう言う湯沢。その姿を…石川は、目を細めて見つめていた。
 そして、石川は小さな溜め息を一つ。
 彼は、何も変わらない。否…寧ろ、随分強くなった。
「俺もさ、ライデンに言われたんだ。前を見ろ、ってね。確かに、それしかないんだよね。だから…俺は、前を向くよ。後悔しない為に、自分の足でちゃんと歩いて行く。その先に何があるのかはわかんないけど…そこでまた、あんたと会えると良いなって思うよ」
「…湯沢くん…」
「それで、良いじゃん?」
 重ねた手を握り締め、そう問いかける湯沢の言葉。石川は、それをもう一度自分の中で噛み締める。
「…そう、だね。自立出来るようになったと思えば良いのか…」
「そう言うこと。主たる悪魔からも離れて、やっとオトナになったんだよ?俺たち。良い年して、何を言ってるんだって思うかも知れないけどね」
 くすくすと笑う湯沢。それは、誠に彼らしい笑顔だった。
 本当に、その通りだと思う。
 石川は小さな吐息を吐き出し、やっとその顔に笑みを浮かべた。
 もっと早く…気が付いていれば良かった。けれど、目の前の笑顔を失う前に気が付いて良かった。
 それは、もう後悔ではなかった。
 そう。今更、もう一度戻ることは出来ない。けれど、戻れないのなら…進めば良いのだ。自分たちの、納得のいく方法で。
 そう思うことで、石川もやっと、何か吹っ切れたような気がした。
 幾度目かの吐息と共に零した、柔らかな微笑み。それは…昔と、変わらない笑顔。
 その微笑を見つめ、湯沢はふと言葉を漏らした。
「でね、俺ね…思ったんだけどさ…」
「何?」
 不意に表情を引き締めた湯沢。その雰囲気に、石川は問い返す。
「…性欲って、暫くしてないと減退するのね」
「…は?」
 真面目な顔をして何を言い出すかと思えば…と言う表情を浮かべた石川に、湯沢は相変わらず真面目な表情で言葉を続ける。
「だってそうじゃない?こんなにあんたの手握ってるのに、全然ムラッとしない…」
「…オトナになったんじゃない?いつまでも、十代二十代の性欲じゃないんだから…」
「俺の体内年齢はまだ二十代だよ?まだまだ現役のはずなんだけど…」
「…御前の体力は特別だから…」
 思わず、溜め息を吐き出す石川。けれど、その後直ぐに笑いが込み上げて来た。
「何さ…」
 ちょっとムッとしたように頬を膨らませた湯沢に、石川は握られていた手をそっと放すと、湯沢の頭を抱き寄せた。
「年相応に、落ち着いたんだよ。無理に今まで通りの関係でいる必要はないんだもの。ゆっくり、歩いていこうよ」
「…そうね」
 くすっと、湯沢も笑いを零した。そして、大きく息を吐き出す。
「…傍から見たら、何やってんだろうって感じだよね、きっと今の俺たち」
「…だろうね。単なるいちゃついてる変なカップルだ」
 くすくすと笑う石川に、湯沢は身体を離すと、石川の顔を真っ直ぐに見つめた。
「ね、石川くん…」
「何?」
 暫しの沈黙。何かを考えているような湯沢の表情。
 そして、口を突いて出た言葉。
「…現実問題として…やっぱり、今生では一緒になれない訳でしょう?だったらさ……来世で、一緒になろうよ」
「…はい?」
「来世。俺、必ず、石川くんのこと、見つけるから。だから…そしたら、一緒になろうよ。ね?」
「…湯沢くん…」
 思いがけない言葉。そして、それは…ライデンが、ゼノンに言った言葉と酷似していて、思わず…笑いが零れた。
 尤も…彼らが生まれ変わったとして、また同性だったらどうするのだろう…と言う疑問もあるのだが、湯沢はそれに気付いているのかいないのか。
「…本気、なんだけど…?」
 石川が笑ったことで、冗談と思われたと思ったのだろう。頬を膨らませ、ムッとしたような表情を浮かべる。
「うん、わかってるよ」
 笑いを零しながら、石川は頷く。
 彼らに、来世があるかどうかは定かではない。
 生まれ変わる前に…人類が滅亡する可能性。悪魔の媒体として生きて来たのなら、それはわかり切っているはずのこと。
 でも、それでも…そんな不確かな先の未来へ、希望を託すこと。それは、既に彼らが"人間"として、それぞれの道を歩いていることに他ならない。
 そんな自分たちを…"悪魔"たちは、どう思うだろう?
 そんなことを思いながら、それはそれで…楽しみだと思う自分もいる。
「…楽しみだね」
「でしょ?」
 くすっと、湯沢が笑った。
 昔と同じでなくても良い。これから歩むべき道が、必ずしも同じでなくても良い。
 例え、別の道を歩いたとしても。今は、それを不安だとは思わない。
 彼らが結んだ固い絆は、解けることはないのだから。

◇◆◇

 窓から差し込む日差しは、ゆっくりと傾き始めている。
 窓辺に腰掛け、御茶のカップを両手で持ちながら、その日差しを眩しそうに眺めている眼差し。
「…ねぇ、幸せって、何だと思う?」
 不意に、そう尋ねられる。
「…さぁ…それは、ヒトそれぞれだしね…まぁ少なくとも、悲しい顔を見ないで済むこと、かな」
 そう答えながら、カップを片手に窓辺へとゆっくりと歩いて行く。
「そりゃそうだ」
 くすくすと笑いながら、その姿が到着するのを待つ。
「夕べね、湯沢が相談して来たんだ。石川のことで」
 隣に並ぶ姿に、そう話しかける。
「あぁ…こっちも。初めて向こうから連絡が来たと思ったら。まぁ…結論を出すのは、あの二人だけどね。多分、もう大丈夫だよ」
「だと良いけど」
 細めた眼差しは、かつての媒体たちの幸せを願って。
「あいつ等が、幸せになれますように」
「以下同文」
 笑いながら、カチンとカップを合わせる。
 今は、遠く離れているけれど。でも、それでも…愛しい、媒体たちの為に、せめてもの願いを。
 それは、彼らからのささやかな祈りだった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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