聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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夜の眷族
その年のツアーが終わり、俺たちがこの屋敷に帰って来て、もう三日になる。
しかし…ゼノン一名だけが、何処かへ行ってしまったまま…まだ戻って来ない。
デーさんには勿論のこと、この俺にも何の連絡がないなんて。
----ゼノンの奴、一体何処に行ったんだよ…俺たちに、連絡もしないで…
一応、デーさんとルークが魔界にも手を伸ばしてくれている。俺とエースは、屋敷で待機、と言うことになっているんだけど…魔界に戻っている様子もないらしい。
それに魔界にいるのなら、情報局経由で一番にエースの元に連絡があるはずだろうけど…それすらも入ってはいない。
まさか…あのゼノンが、誘拐された…なんてこともあるはずもないだろうけど。
「ライデン。御前は少し休んだ方が良い。ろくに寝てないんだろう?御前の方が先にどうかしちまうぞ」
「…うん…でも、もう少し…」
俺は、リビングのソファーに座り、膝を抱えていた。
見兼ねたエースが、そう声をかけてはくれたものの…丸二日ほぼ徹夜の上の夜中だと言うのに、とても部屋に帰って眠る気にはなれなかった。
エースは溜め息を一つ吐き出し、窓辺へと向かう。そして、閉められていたカーテンを少しだけ開けた。
「…今日は満月、だ。変な胸騒ぎがするな…」
何処か苛立ったようにカーテンを閉め、俺の向かい腰を降ろしたエース。
「満月は…本来の自分を見失う」
「…ライデン…」
思わずつぶやいた言葉に、エースは眉を寄せる。
勿論、他意があった訳じゃない。でも…エースじゃないけど、俺だって変な胸騒ぎはずっと感じてた。
得体の知れない何かが…蠢いている。そんな、嫌な空気。
俺が溜め息を一つ吐き出した時、エースは迷惑そうな視線を窓辺へと向ける。
「何か来たぞ」
「……っ?!」
突然、ソファーから立ち上がったエース。
奇妙な魔力は、確かに俺にも感じ取れた。
嫌な…纏わり着くような…でも…感じ慣れた魔力も、それに混ざっているようだった。
「…ゼノン…だ」
「…ちょっ…ライデン!」
駆け出した俺を追いかけて、エースも駆け出したようだった。
向かうは玄関。その奇妙な魔力は、そのドアの向こうから感じられた。
勢い良く開け放ったドアの向こう…俺とエースの視界に入ったのは、壁に寄りかかるようにして、ぐったりと座り込んでいるゼノンの姿、だった。
「ゼノ…っ」
手を伸ばした瞬間、エースの手が俺の腕を引き留めた。
「ちょっと待て。様子が可笑しい」
視線を向けてみれば、真っ直にゼノンを見つめるエースのその眼差しが、不快な色を浮かべている。
「見ろよ」
エースは警戒しながら、ゼノンの首筋にかかる髪をそっと掻き上げた。
「…それは…」
エースの指先によって曝け出された"それ"…満月の光を受けたピアスが煌めいた耳朶の下、首筋に見たのは、二つの吸血痕。
「…まさか…ゼノンが…?」
「どうやら、そのまさかだな。恐らく、ゼノンを襲ったのは…纏う気から察して、"夜の眷族"だ」
その声を聞きながら、俺は無意識に空を見上げていた。
俺の眼差しの先にあるのは…赤い…満月。
ふと我に返った意識。
「エース、離れて!」
「……っ!!」
しかし、その声は一瞬遅く、エースの腕は瞬時に目を見開いたゼノンに掴まれていた。
その顔は、普段の穏やかなゼノンの表情とは全く違う…獲物を捕えた、獣の形相(かお)だった。
「ゼノン、駄目だ…っ!」
ゼノンが掴んだエースの腕から、溢れ出す深紅の血。
鋭い刃のような爪が食い込み、更に傷を深くする。
咄嗟に魔力を使おうとしたのだろう。エースは小さく口を動かした。しかし、それも叶わぬまま…エースは目を見開いて、茫然とゼノンを見つめていた。
----"魔眼"…っ!
動きを止められ、成す術のないエースの喉元に牙を立てようとしている光景は…悪夢以外の何モノでもなかった。
「やめろっ!!」
声を上げた瞬間、ゼノンの動きが一瞬止まった。
それと同時に、"魔眼"の呪縛が解けたエースは、咄嗟に邪眼を開き、その能力を以ってゼノンの魔力を強引に封じた。
魔力を封じられたゼノンは、"魔眼"の赤い瞳を閉じて力尽きたようにそのまま地面に倒れる。
「…ゼノン…っ!」
ぐったりとして動かない姿。それは、酷く不安を煽る。
エースも大きな呼吸を繰り返しながら、ゼノンの横に座り込む。
その腕からは…深紅の血が流れ続けたまま。
「…何で…こんな…」
状況が上手く理解出来ず、困惑した声を零した俺に、エースは大きく息を吐き出した。
「…邪眼で能力は封じたが…操られているのは間違いないな。それよりも…俺の心配は?」
エースの茶目っ気なんだろうけど…状況が悪い…。
「…御免…でも、今はゼノンの方が先決。目覚める前に早く運ばないと。手伝ってくれる?」
「…ったく…しょうがないなぁ」
溜め息を一つ吐き出したエースは、邪眼を閉じて、血の溢れる腕に唇を寄せた。
だが、その瞬間。
「……想像以上、だな…」
「…どしたの?」
奇妙な声に、俺はゼノンに向いていた視線を、再びエースへと向けた。
エースは、血の溢れる腕を見つめたまま、神妙な表情を浮かべていた。
「血が…止まらない」
「…へ?」
確かに、エースの腕からは、未だに鮮血が溢れ出している。それが何を意味しているのか…明確、だった。
俺たちは…厄介な奴を、相手にしてしまった。
「ゼノンを運んだら、応急処置するから」
「…はいはい」
申し訳なかったけど、エースの服の袖を破り、(もう既にゼノンの爪で破れてたんだけど…)その腕を縛ると、ゼノンを運ぶことに再び意識を戻した。
「ちょっと、肩貸して」
「…怪我悪魔に、良くやらせるよな~」
「文句言わない!またゼノンに襲われるよりはいいでしょ!?」
「…はいはい。手伝えばいいんだろうが」
溜め息を吐き出すエース。まぁ、ここはしょうがないでしょう。
俺はエースを従え、ゼノンを担ぐと、その自室へと運び入れると、俺がそのドアを封じた。
今は…それしか、出来なかった。
翌朝になって帰って来たデーさんとルークは、溜め息を零していた。
その視線の先には、エースがいる。その腕の包帯には血が滲んでいて…どう見ても、回復傾向にあるとは思えない。
「…で、あんたはぼんやりしててやられた訳だ」
ルークは、珍しいエースの失態に呆れているようだった。
「しょうがないだろう?相手は恐らく"夜の眷族"だ。普通の吸血鬼なんか、比じゃない。まぁ…ゼノンだからと迂闊に近寄った俺にも非はあったけどな」
「ルーク。それくらいにしてやれ。エースの包帯を取り替えてやってくれないか?」
流石にデーさんは心配してるみたいで、ルークにそう声をかける。その顔色は…当然、優れない。
「しょうがないなぁ~。ほら、こっちに来て」
ムッとしているエースを引き摺るように、ルークはリビングから出て行った。
それを見届けると、デーさんは俺へと視線を向けた。
「…で、実際のところ、どうなんだ?エースの傷は」
医師たるゼノンがあの状態だからと言って、俺だってまるっきり放っておいた訳じゃない。手は尽くしたはずなのに…昨夜から、傷は塞がらなかった。
それをデーさんに伝えると、その眉間に一筋の皺が刻まれていた。
「"夜の眷族"…か」
溜め息と共に、小さくつぶやいた声。その言葉の重みが、今更ながらに身に染みる。
俺は…噂聞いたくらいだけど…"夜の眷族"の異名を持つ吸血一族は、どの吸血一族よりも強い絆で結ばれていると言う。彼らは相手が何者であろうとも、その気になれば敵に回すことも恐れはしない。それだけ、その強い能力に絶対の自信を持っているのだ。
ましてや、昨夜は満月…"夜の眷族"の能力が、一番満ちる時。俺たちは完全に、相手にしてやられたんだ。
「デーさん…ゼノンは、元に戻るかな…」
不安をあからさまにつぶやいた俺の声に、デーさんも小さな溜め息を零す。
「まぁ…吾輩も詳しくはないが…多分方法はある。ゼノンだって、馬鹿じゃない。どう言う経緯でそうなったのかはわからないが…策もなく、されるが儘に…と言うのは、違うと思う。エースの邪眼が魔力を封じたとは言え、安心は出来ないが…なるべく早く、その方法を調べないとな。それまでは、迂闊に近寄らない方が身の為だ」
言葉が途切れ、沈黙が訪れた時。リビングにルークが戻って来た。
「エースの様子は?」
デーさんが問いかけると、ルークは溜め息を一つ吐き出して首を横に振る。
「駄目。傷がまるで塞がらない。邪眼を使って魔力が減った所為もあるだろうけど、それだけじゃないね。"夜の眷族"の邪気が相当流れ込んでる。直ぐには完全に浄化出来ないから、治るまでにはまだ時間もかかる。ゼノンの奴…操られていたとは言え、エースに相当の深手を負わせたよ」
その言葉に、ドキッとする。
「…やったのは、ゼノンじゃない」
「ライデン…」
「だってそうだろ!?ゼノンの意志じゃないんだからっ!ゼノンだけの所為にしないで…っ!!」
「落ち着け、ライデン」
見兼ねたデーさんが、俺とルークの間に入った。
「確かにな、ライデンの言うことも尤もだ。今の状態で、ゼノンを責める訳にも行くまい」
デーさんがそう言った時、エースもリビングに戻って来た。
腕に巻かれた包帯は、相変わらず痛々しい。その傷を付けられた瞬間を目の当りにした俺は…あの時のゼノンの形相が、未だ脳裏に焼き付いて離れなかった。
「俺のことは心配するな。魔力が戻れば、直に直る傷だ。だが、問題はゼノン、だな。"夜の眷族"の呪縛は厄介だ。その方法を探しに行かないとな」
「侮るなかれ、"夜の眷族"…か」
溜め息と共に吐き出された、ルークの言葉。
その言葉の重みは、常に俺の胸を苛んでいた。
作戦を決行するには、"夜の眷族"の能力が最も弱くなる新月を狙うしかなかった。
とは言うものの、まだ満月を過ぎたばかり。新月までは、半月もあるのだから、その間の不安と言ったら…どう表現して良いのかわからなかった。
幸い、エースの傷は徐々に回復の兆しをみせ、目指す新月までには完治したと言っても十分なくらいだった。
呪縛を説く方法も、魔界へ行って調べた結果…半分賭けのような状態ではあるけれど…これ、と言う方法は一応見つかった。
あとは、時を待つのみ。
ただ、俺は…その間ロクに眠れずに…いつも、嫌な夢を見て目が覚めた。
ゼノンが、"夜の眷族"として、俺を除いた他の構成員をその牙にかけている夢。
皆が血に塗れて倒れ、その血を浴びたゼノンは、虚ろな…嫌な赤さを持つ"魔眼"で、俺を見つめていた。
言葉は、ない。でも…その眼差しが、俺に助けを求めているようで。
早く助けてやりたい。その想いだけが、いつも先走る。
その夢が、事実無根であったとしても、今現在、ゼノンは自分自身と戦っている。
元に戻る為に。"夜の眷族"に、負けないように。
俺はただ…祈ることしか、出来なかった。
新月の夜。時は満ちた。
エースが魅入られた"魔眼"の威力を弱めたのが俺であったこともあり、ゼノンの能力を押さえる役目は俺が引き受けた。そしてデーさんは、"夜の眷族"の呪縛を解く。エースとルークは、その援護。と言うことになった。
「ホントにこれで大丈夫なのかな…?」
珍しく不安を零したルークに、デーさんは溜め息を一つ。
「他に、方法はない。ゼノンを切り捨てる訳にも行かないんだ。やってみるしかないだろう?」
「そりゃまぁ、そうなんだけどさ…」
ルークが渋る気持ちもわかる。
呪縛を解く方法はあった。でも、"夜の眷族"の呪縛を解いた、と言う前例はなかった。それが意味するのは…成功する可能性は、限りなく低い。そう言う事、だ。
みんな、不安がない訳じゃない。でも…それに押しつぶされてしまったら、本当に…ゼノンがいなくなってしまう。それだけは…受け入れる訳には行かないから。
俺もまた、溜め息を吐き出しかけたその時。
ドゴン!!
「何だ!?この音は…」
眉を潜めたルークに対して、エースは咄嗟に駆け出していた。
「封印が破られた!」
エースの声の通り…直ぐに不快な気が、辺りに漂い始めた。
エースの後を追って、俺たちはゼノンの部屋の前へとやって来た。
幸い、まだドアは壊されていない。ゼノン自身にかけた封印と、ドアにかけた封印は、エースと俺と、同時に破られることを回避する為に別々にかけている。だから、力技だけでは封印を壊すことは出来なかったらしい。
もう、待ってはいられない。
「行くよ!」
ドアに手をかけた俺を、エースの手が留めた。
「待て。焦るな」
「…エース…」
「御前の封印が破られるまで、ゼノンは部屋から出られない。御前も冷静になる時間がいるだろう?」
俺の焦る気持ちを、エースが押し止めた。
大きく息を吐き、俺はエースの言う通り、気持ちを沈めようと努力した。
その間に、デーさんもエースもルークも、解呪の手筈を整える為、魔力を高めている。
「"魔眼"には気をつけろ。"あれ"に魅入られたら、俺の二の舞だ。幾ら御前だって…どうなるかわからないぞ」
「…わかってる」
大きく呼吸を整え、デーさんを振り返る。
「準備は?」
「OK。いつでも良いぞ」
「じゃ…行くよ」
「気をつけろよ。御前にもしものことがあったら…ゼノンの殺されるからな」
「大丈夫」
未だ心配そうな表情を浮かべるエースに向け、俺は笑ってみせた。
大丈夫。ゼノンは…俺が必ず、助けるんだから!
デーさんとエース、ルークがぎりぎりまで下がるのを確認した俺は、意を決して封印を解くと、そのドアを開けた。
「……っ!」
瞬間的に俺を包み込んだのは、物凄い魔力。
纏わりつく不快な気は、死臭を含んでいて…流石の俺も、気持ちが悪くなって来た。
「…ゼノン…」
その、渦巻く魔力と死臭の中に立っているのは…虚ろな赤い"魔眼"を持ったゼノン。
「…ゼノン…助けに来たよ」
声をかけても、反応はない。
ただ…その表情が、あの夢のゼノンとだぶって見えて…
「あんたを、見殺しにはしない。必ず…助けてやるから」
意を決した俺は、一歩を踏み出す。
その刹那。
「…クルナ…ライ…デ……」
「…ゼノン…」
僅かに聞こえた声。意識の大半を"夜の眷族"に支配されていながらも、まだ僅かにゼノンとしての心が残っていた。
----これなら…助けられる!
安堵感からか、俺の緊張が一瞬緩んだ。
その隙を突くように、ゼノンの表情が豹変した。
エースを襲った時の、あの獲物を見つけた獣の形相。
「…っ!」
気がつけば、目の前に"魔眼"があった。
俺は咄嗟に目を逸らす。多分、"魔眼"に魅入られたら最後、俺は自分自身で、その呪縛を解くことは出来ない。
あの時の、エースと同じように…餌食にされるのがオチだろう。
----御免な、ちょっと…我慢してよ!
俺は、体内の魔力を一気に高める為、一歩後ずさる。けれど、丁度その時、俺を捕まえようとゼノンが腕を伸ばしたところだった。
「…っ!!」
咄嗟に身体を捻ったものの、運悪く左腕を掴まれた。その瞬間、あの鋭い爪が、俺の腕に突き刺さる。
「つっ…!」
鋭い爪は、容赦なく俺の皮膚を切り裂き、そこから"夜の眷族"の魔力が流れ込んで来るのを感じた。
----マズイ…逃げられない……
動きを留められた俺の首に、その手がかかる。小動物をいたぶるかのように、徐々にその手に力を込めたゼノンの表情は…その力とは裏腹に、とても切なくて。
「…ゼノ…」
"魔眼"は、開いていなかった。
そこにゼノンの残された僅かな意識を見た俺は、もう迷っている場合ではないことを察した。
僅かに力の抜けた腕を、思いっ切り跳ね退ける。
その弾みでバランスを崩したゼノンの両腕を掴み、俺は一気に床へと押さえつけた。
まだ僅かに抵抗を見せるゼノンの耳元で、俺は小さく囁いた。
「…愛してるよ。あんたは…誰にも渡さないから」
ゼノンを組み敷いたまま、俺はその首筋の二つの吸血痕に口付ける。そして一旦唇を離すと、もう一度…今度はその唇に、深く口付ける。
"夜の眷族"の呪縛を解く鍵は…誰にも負けない、強い"想い"。
それが、本当かどうかはわからないけど…今は、それにすがるしかない。
口移しに魔力を流し込むと同時に、解呪の呪を唱える。
一瞬、ゼノンの身体がビクンと震えた。
「デーさんっ!」
声を張り上げると、エースとルークの浄化の魔力を感じ、デーさんの姿を確認するや否や…不覚にも俺の意識はそこで途切れてしまった。
気が付くと、そこは俺の部屋だった。
「…大丈夫?」
声をかけられ、視線を向けてみれば、ルークが心配そうに俺の顔を覗き込んでいた。
「…ゼノンは?」
問いかけると、ルークは軽く微笑む。
「大丈夫。デーさんが上手くやってくれたから。それよりも、あんたの方はどう?気分は悪くない?」
「ん…今のところ、大丈夫そう」
俺は、ベッドから身体を起こして、そうつぶやいた。
怪我をした腕には包帯が巻かれており、多少痛むものの、たいしたことはないみたいだった。
「頑張ったな」
くすっと笑ったルークは、俺の頭を掻き混ぜた。
「見ず知らずの奴に、ゼノンを取られてたまるかっつーの」
「まぁ、その想いに勝るな」
俺の答えに、ルークはくすくすと笑いを零したままだった。
「あんたの調子がいいなら、顔でも見せて来たら?愛するゼノンさんの顔でも…ね」
「…うん。そうする」
ルークはくすっと笑いを零したまま、軽く手を振って俺の部屋から出て行った。
暫くして、俺はゼノンの部屋の前に立っていた。
今はもう、封印もされていない。エースとルークが浄化してくれたから、嫌な気も感じない。ただいつも通りのゼノンの部屋、だ。
軽くノックをすると、中から小さな答えが返って来たので、俺はそのドアを開けて部屋の中に入った。
既に目覚めていたゼノンは、ベッドに横たわったまま、じっと天井を見上げていた。
「久し振り、だね」
小さく、発せられた言葉。
「うん」
俺は、軽く微笑む。
「…御免ね」
「ゼノ…」
ふと、ゼノンが目を閉じる。その表情は…酷く、苦しそうに見えた。
俺は、ベッドの傍まで歩み寄ると、ゼノンの手を握り締めた。
「あんたに…俺は必要だった?」
小さく問いかけた言葉。その言葉に、ゼノンはゆっくりと目を開けると、俺へと視線を向ける。
あの"魔眼"は、もうない。あるのは…いつもにも増して、柔らかくて暖かい眼差し。
「…勿論。御前がいてくれるから、俺は……」
それ以上、言葉が続かない。
でも…必要とされていることが確かであれば、それで良い。
「愛してるよ」
にっこりと微笑んで、ゼノンの耳元でそう囁く。
「…俺も、愛してるよ。そう言うのは、御前だけ、だからね」
ゼノンの真っ直ぐな眼差し。その想いは、ちゃんと届いている。
「あんたが、元に戻って良かった」
「…有難うね」
戸惑いながらも、ゼノンは笑ってくれた。
それだけで…俺は大満足。
何故、ゼノンが襲われたのかと言う理由は、きっといつか、ゼノンから話してくれると思う。それまでは、知る必要はないんだと思う。
今は…こうして傍にいられること。それだけで、幸せだった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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