聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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circumstance
赤い、血のような満月。
漂うのは、生暖かい血の香り。
それは、甘く、後を引く。
甘美な血の味。それは、事実であろうはずがない。科学的に考えても、甘いはずはないのだ。
けれど、一度覚えた味は、忘れることがない。事実…それを知っている者が存在するのだから。
いつの頃からか…彼はその場所に足を踏み入れるようになっていた。
広い魔界の外れに位置する一角。そこは、魔界でも名高い吸血一族が住まう土地だった。
「おや、ゼノンじゃないか」
久方振りの来訪であるにも関わらず、名前は覚えられていたようだ。通りかかった道先で出会った村魔がそう声をかけてきた。
「ご無沙汰。元気そうだね」
こちらも見知った顔である。小さな笑みを浮かべ、そう声をかけた。
「長はいる?」
「あぁ、あれから出歩いている様子もないがな。屋敷にいるだろう」
「そう。有り難う」
軽い挨拶を済ませ、俺は足を進めた。
目的の場所は、この道を暫く進んだ先にある屋敷。それは、この小さな村の長の屋敷である。
暫く歩みを進めると、屋敷の門の前についた。その門柱に凭れかかり、俺をじっと見つめる眼差しがある。
「久し振りね、ゼノン」
「あぁ、ご無沙汰。長の様子を見に来たんだ」
「言わなくてもわかっているわ。貴殿がここに来る理由はそれだけだもの」
拗ねたような口調。説明じみた挨拶をした俺もいけなかったのかも知れないが。
「終わるまで待っているわ。長に挨拶していらして」
「…あぁ」
その声に促されるように、俺は屋敷の敷地内へと足を踏み入れた。
俺がこの村に立ち入るようになったのは、この村の長から、医師としての来訪の要請を受けたからだった。
魔界でも名高い吸血一族…"夜の眷族(けんぞく)"の異名を持つ彼らの村には、好んで立ち入るものはいない。否、部外者を受け入れられない種族であると言った方が良いかも知れない。
勿論俺とて、要請を受けなければ立ち入らなかったであろう場所である。
部外者を受け入れられない種族が、何故王都から医師を要請したのか…その理由は、長にある。
理由は簡単。病に侵された長を、村の医師では助けることが出来ないからだ。だから、医師としてだけではなく、研究者としても有名と言われている(自分で言うほど恥ずかしいものはないけれど…)この俺が呼ばれたのかも知れない。
俺は興味本位もあり、呼ばれるままにこの地に足を踏み入れた。長の病状はと言うと、正確な診断は難しいものの、色々と研究した甲斐もあり、小康状態を保っている。何もしないよりはずっとマシな処置であったはずである。
そして、その功績(?)により、俺はよそ者であるにも関わらず、長の主治医として割合すんなりと村魔たちにも受け入れられて来たのだ。
さて、それが何年前であったか…俺も良く覚えていなかった。
ここにやって来るのは、今は数年に一回。まぁ、始めの頃は割合頻繁に足を運んだものだけれど、今は病状も落ち着いているので、マメに通う必要もないから…と言う理由もある。
けれど、疎遠になる理由はもう一つ…。
あの、門柱の前で俺を待ち構えていた姿にあった。
長の診断を終え、当たり障りのない穏和な会話を終えて帰路についた俺を待ち構えていたのは、またもや門柱の前の姿、だった。
「今日は長かったのね」
不機嫌そうにそう声が届く。
「長の機嫌が良かったからね」
そう答えを返すと、その姿は身体を動かし、道を塞ぐように俺の前に立ちはだかった。
「日の出まで、もう少ししか時間がないわ。付き合ってくれるわよね?」
そう。彼らは吸血一族だ。だから、夜の間しか行動することが出来ない。当然、俺の来訪も夜になる訳で…直に日が昇るのを示すかのように、遠くの空が白くなり始めていた。
「私の気持ちは、わかっているはずよ?そろそろ答えを聞かせて」
徐にそう問いかけられる。
目の前の姿…彼女はまだ、少女、だった。尤も、出会った当初はまだ子供だったから、それだけ時間が経ったのだろうが…どう言う訳か、彼女はよそ者の俺に、必要以上の好意を示したらしい。そして、ここ数年、会う度にこうして告白されるのだ。それが、疎遠の理由でもあるのだが…
「…何度も言っている通り、俺は部外者だから。それに…」
「恋悪魔もいる、でしょう?聞き飽きたわ」
「だったら、納得したらどう?」
「イヤ」
「……あのねぇ…」
思わず零れた溜め息に、彼女の眉間の皺が深くなる。
「私は、貴殿でなければイヤなの。そう でなければ……」
語尾は、聞き取れない程小さい。だが、俺にはその答えは何度も聞いてわかっていた。
----一族を、抜けられない。
唇をきゅっと噛み締めた彼女。まだ身体の線も細く、年頃になるまでにはもう少し時間がかかるかも知れないと言う年端である。当然、彼女の告白を受け入れる訳にはいかない。それに、彼女に言った通り、俺には恋悪魔がいるのだ。
「何度言われても、俺は君を受け入れることは出来ない。わかっているだろう?どうしてそんなに一族を抜けたいのかはわからないけれど、それは俺でなくても良いはずだろう?」
「駄目よ。私たちの一族を上廻る魔力を持つ悪魔なんて、そうそういないもの。それに、貴殿以外に、この村にやって来る部外者もいないわ。貴殿しかいないの」
胸のあたりに、抱きついた彼女の感触。
「ローザ。長に見つかったら……」
「大丈夫よ。長は部屋から出ないもの」
しっかりと腕を回す彼女の力は、俺が予想していたよりも強くなっている。
「…ローザ」
もう一度声をかけ、絡みついた腕を放そうとする、けれどそうすればする程、彼女も力を入れる。
「…私…知っているわ。どうして、長が貴殿を選んだのか」
「……研究者兼医者だから、でしょう?」
俺は彼女の腕を振り解くことを諦め、小さな溜め息を吐き出す。
けれど彼女は俺の言葉に意味深な笑いを零した。
「それだけじゃないわ。もう一つ、理由があるのよ。わからないの?」
「…どう言うこと…?」
一瞬、ドキッとする。
明らかに彼女は、俺が自分の奥深くに埋めておいたモノを見つけているようだった。
彼女が、俺を見上げる。
俺は…どんな表情をしていたのだろう。
「わかったようね。どうして、貴殿が選ばれたのか」
「………」
「貴殿が、"鬼"だからよ。血を好み、その身を喰らう"鬼"だから。だから、長は貴殿を選んだのよ。同じ、血の匂いのする貴殿を…ね」
「……」
彼女は、いつからそれを知っていたのか…。俺でさえ、思い出さないようにしていた自分の本性を。
俺の顔を見て、くすっと笑う彼女。
「貴殿の恋悪魔は、知っているの?貴殿の本性」
「…一応、話してはあるよ。尤も…昔はともかく、今の俺は鬼面を被るつもりはないから、君が思っている"鬼"になることもない。君が言っているのは、昔の俺、だよ」
そう。俺は、彼奴と…恋悪魔と出逢ってから、一度も鬼面を被ってはいない。血を好み、その身を喰らう本性を持っていたとしても、今はそれを封印しているのだから。
それでも、彼女の態度は変わらなかった。
「長は、貴殿に期待しているのよ。いつか貴殿を一族に引き入れ、最強の一族にするつもりだわ。それでも良いの?」
「良いの、って言われても…俺は、一族に入るつもりはないよ」
思いがけない方向に話が進み、俺は慌ててそう口を挟む。
「でも、長はそのつもりよ。だから、この村の者みんなが、貴殿を受け入れたのよ。そんなこともわからなかったの?」
「………」
確かに、奇妙だとは思っていた。この警戒心の強い吸血一族の村で、よそ者の俺がすんなりと村魔に受け入れられたことは、奇妙この上ない。その理由が、そんなところにあったとは。
彼女の話を鵜呑みにする訳ではないけれど…そう言われると、不安を感じざるを得ない。
「…でも、その話と君の告白と、どう繋がる訳?」
そう。一番の疑問はそれだ。
すると彼女は俺からすっと離れ、真剣な眼差しで俺を見据えた。
「…私が、貴殿をこの一族から護ってあげる。だから…貴殿も私が一族を抜けることに協力をして欲しいの」
「ちょっ…その為に俺に近付いて、俺を利用しようとしていた訳?」
「違うわ。私は、本当に貴殿が好きなのよ。だから、長の思い通りにされるのは嫌なのよ」
真剣な表情を崩さない彼女。けれど、だからと言ってその提案に素直に従うはずもない。
「…悪いけれど、長の思い通りにはならないよ。俺がこの村に立ち入らなければ、長の思い通りにはいかないだろう?君の助けを借りなくても…」
そう言いかけた時、彼女は小さな溜め息を零した。
「…無理よ。一度長の目に適ったからには、そう簡単には抜け出せないわ。村に立ち入らなくても、貴殿を一族に引き込む手段は幾つでもあるわ。その為に、私たちの一族は固い絆で結ばれているのですもの。どんなところまででも、追って行くわよ」
「……」
確かに、彼女の一族を侮るのは危険過ぎる。俺にも、それはわかっていた。けれど、彼女の言い分が何処まで本当のことなのかがわからない以上、そう簡単に身を委ねることも出来ないのが実情なのだから。
俺が迷い始めたことを、彼女も察したのだろう。幾分その表情を和らげ、小さく笑って見せた。
「…もう一度言うわ。私が、貴殿を一族の手から護ってあげる。だから…私が一族を抜け出す為の協力をして。貴殿でなければ駄目なの」
真っ直ぐに、俺を見つめる瞳。
彼女の想いは…今の俺には、とても重い。そしてそれ以上に…俺の身に迫り来る、吸血一族の陰謀の信憑性が、何よりも重く感じた。
「…もう直、夜が明けるわ」
彼女の声に、俺は大きく息を吐き出す。
「…直ぐには結論は出せないよ」
それが、今は最善の答え。
「そう。なら、時間をあげるわ。今度貴殿がここへ来る時に、答えを聞かせて。でも…侮らないでね。私たちの一族は…"夜の眷族"は、一度見つけた獲物を、そう簡単には手放さないと言うことを」
その言葉が、ずっと耳の奥にこびりついて離れなかった。
それから数年が過ぎ去っていた。
俺は、地球任務の活動が忙しくなり、滅多に魔界へも帰れなくなり…それに伴って、吸血一族の長のところに行くこともなくなっていた。
けれどそんな時、その一報は俺の耳に届いたのだった。
それは…あの、吸血一族の長が亡くなった、と言う訃報だった。
ツアーが終わったその日、俺はみんなに内緒で魔界へ戻り、あの一族の村を訪れていた。
けれど、村に入る直前で、俺を待ち構えている姿に出逢った。
「…そろそろ来る頃だと思っていたわ」
「…ローザ…?」
「久し振りね、ゼノン」
俺を待ち構えていたのは、俺がここへ来るたびに俺に迫っていた少女。…否。もう、彼女は少女ではなかった。一族独特の妖艶さを称えた、大人の女になっていた。
「…長が亡くなったって、本当なの…?」
そう問いかけた声に、彼女は小さく頷く。そして、村とは反対の方向へ、俺の手を引いて行く。
「…村へ入っては行けないわ」
「どうして?」
「前にも言ったでしょう?貴殿、狙われているのよ?村へ入ったら最後、もう二度と出ることは出来ないわ」
「狙われているって…」
そうこうしている間に、俺たちは村から離れた一本の大きな木の下まで来ていた。
そこでやっと歩みを止めたローザは、呼吸を乱す俺を振りかえると、真っ直ぐに俺を見つめた。
「あの時言ったこと、忘れてはいないわよね?長は、貴殿を一族へと引き込むつもりでいることを。あの言葉、嘘じゃないわ。長が亡くなった今、長の後を継いだ長の息子は、一族を再建させる為に貴殿を利用しようとしているの。貴殿の生命を、狙っているのよ」
「…まさか…」
「…信じていないのね」
大きな溜め息を吐き出したローザ。
勿論、前に彼女に言われたことを忘れた訳じゃない。ただ、本当に信じられることなのかどうかの判断がつかなかったのだ。
それは今も同じこと。けれど、俺が置かれている状況は…あの時よりも悪くなっていることは確かだった。
「あの時、約束したわよね。貴殿の生命は、私が護ってあげる。その代わり、私が一族から抜けるための協力をして貰いたいと。あの時の返事を聞かせて。もう、待っている余裕はないわ」
ローザの表情は真剣で…もう、子供の戯言ではなくなっていた。
そして俺も…その決断を、せざるを得ない状況になっていた。
「…俺に…何をしろと言うの?」
大きな溜め息と共に問いかけた声に、彼女は大きく息を吐く。どうやらそれは、安堵の吐息だったようだ。
けれど…その後放たれた言葉は、俺も予期してはいない言葉だった。
「…私を、抱いて」
「……は?」
自分でも、間抜けな声を出したと思う。慌てて口を抑えたものの、その声は既にローザの耳まで届いていた。
「…何処をどうしたら、そう言う手段が出て来る訳…?」
思わずそう問い返すと、ローザは小さく笑いを零した。
「言い方がまずかったかしら?」
「まずいね。言ったはずだよ。俺には、恋悪魔がいるって。だから、君の想いには答えられない、って…」
「わかっているわ。私も何度か人間界へ行って、貴殿たちのことを見て来たもの。あの悪魔が…違うわね、雷神族の皇太子、だったわね。その彼が、貴殿の最愛の恋悪魔ね」
「………」
いつから見られていたのだろう。それすらも気が付かなかった。それだけ、ローザも立派な"夜の眷族"になった、と言うことなのだろうが…。
けれど、表情を曇らせる俺をよそに、ローザは笑いを零していた。
「私を抱いて、と言うのは冗談よ。貴殿に、そんなことが出来ないくらいわかっているわ。私だって、もう子供じゃないもの」
「…冗談は、場所と状況を選んで欲しいね…」
少なくとも、今のローザは昔ほど俺に執着はしていない。その事実に、俺は安堵の溜め息を零す。
「本当は、私の牙に落ちて欲しいの」
「…牙に?」
吸血鬼に噛まれたらどうなるかぐらい、子供だって知っていること。つまり、俺を一族に引き入れる、と言うことではないか。
「どっちにしても、俺は一族に引き込まれるってことじゃないの?」
「そうね。でもそれは一時的に、と言うこと。私が、貴殿を一族に引き入れたことにするの。そうして、貴殿がその呪縛を破ることが出来れば、私は貴殿を一族に留められなかったことで一族から追放されるわ。そして貴殿は、吸血一族に対する免疫が付いて、もう一族に引き入れられることもない。どう?良い考えでしょう?」
「…考えは理想的だね。でも、そう上手く行くと思っているの?第一、"夜の眷族"の呪縛は、どの吸血一族よりも強いんだよ?幾ら俺でも、簡単に呪縛を解くことは出来ないよ」
溜め息を吐き出しながらそう言った言葉に、ローザはまだ微笑んでいる。
「あら?ゼノンたる悪魔が知らないの?方法はあるのよ」
「…方法?」
「そう」
にっこりと笑うローザ。その微笑みは…ぞっとする程、美しかった。
「愛する想いが、何よりの鍵よ」
「…ライデンに、呪縛を解く役目をさせろと言うの…?」
「そうよ。愛されているんでしょう?それならば、簡単じゃない?それとも…愛されている自信がないのかしら?」
「…冗談じゃない。俺は、ライデンをそんな危険な目に合わせたくないだけだよ」
そう。愛されている自信がない訳じゃない。危険な目に合わせることだけはしたくないだけ。
「君の言う通りにやるとすれば…俺は、ライデンに…いや、ライデンだけじゃない。もしかしたら、他の仲魔たちまで、傷付けることになるかも知れない。それだけは…嫌なんだ…」
臆病者だと言われても仕方がない。それだけは、譲りたくはないから。
「君が必要なのは、他の仲魔じゃない。この俺だけ、だろう?他の仲魔を巻きこむつもりなら、俺は君の言う通にはならない」
その言葉を聞くと、流石のローザも表情を変えた。
目を伏せ、きつく唇を噛み締める。その表情は、何とも悲痛げだった。
「…そうよね。私は、貴殿に愛されている訳じゃないものね。私よりも…大事な仲魔を取るのは当然ね」
「…ローザ…」
「…でも、お願い。今夜一晩だけは…何処にも行かないで、私の傍にいて。それ以上、我侭は言わないから…」
いつも強気だったローザが…何だか急に小さくなってしまったような気がしたのは…俺の気の所為、だったのだろうか…それとも…それが、ローザの作戦だったのか…それは、俺にはわからなかった。
ただ…子供の時から知っているローザを無碍に出来ない、と言う思いも合ったのは確か。
一晩だけなら…共にいても良いと。その後は、関わるのは止めようと思っていた。
「…君は…どうして、一族を抜けたいと思ったの…?」
ローザと共に、大きな木の下に腰を下ろした俺は、ずっと疑問に思ったことを聞いてみた。
子供の頃から、ずっとその言葉を口にし続けて来たローザ。俺に告白に来るたびに、毎回同じ言葉を繰り返していたローザは…どうしてずっとそれを願って来たのだろうか。
じっと、ローザからの答えを待つ。ローザは、先程から全く顔を上げず…ただ、自分の膝を見つめているだけだった。
「…どうして、って…羨ましかったのよ」
ぽつりと呟いた言葉。
「貴殿が村に来るようになって…村から出られない自分が、酷くつまらなく思えてならなかった。だから、貴殿に連れ出して貰いたかったのよ。でも、貴殿は私の思いには応えてはくれなかった。私は、一族に捕われたままでいるのは嫌だったの…好きなヒトを、追いかけていくことも出来ないもの」
「…好きなヒト…いたの?」
思わず問いかけた言葉に、ローザはやっと顔を上げ、俺を見つめた。そして、くすっと笑いを零した。
「何を言っているの?貴殿のことじゃない」
「…そう、か…」
一族の絆が強かったが故に、その思いだけが募ってしまったのかも知れない。そして…そのきっかけを作ったのは、この俺。俺が、あの村へ行かなければ…そう思うとキリがないけれど…俺は、ローザに負い目を感じてしまった。
俺もローザも黙ったまま…時間だけが、ゆっくりと過ぎて行く。
何も話せないまま、遠くの空が白み始めた時…俺は、一つの覚悟を決めていた。
「…ねぇ、ローザ」
声をかけると、ローザは顔を上げ、俺を見つめた。
「約束…してくれる?俺が…君に協力するのは、一度だけ。それ以上は…手は貸さないよ」
「…ゼノン…?」
「俺を、噛んで良いよ」
そう言った時、ローザは驚いたように目を丸くした。
「だって…仲魔は傷付けたくない、って…」
「そう。その思いは変わらないよ。でも…俺は、仲魔たちを…ライデンを、信じているから。きっと、わかってくれる。だから…俺のことは、心配しなくても良いよ。その代わり、さっきも言ったけれど…一度だけ、だよ。もし、上手く行かなくても…その時は、今度は自分で何とかするんだよ」
俺のその申し出を、ローザは黙って聞いていた。そして、暫しの沈黙の後…小さく零れた言葉。
「…有り難う」
ローザは、俺の手を握り締めていた。
ローザの想いを受け入れることは出来なかった。けれど…その想いを抱くに至ったことに対しての償いのつもりであることは…ローザもわかっていただろう。
次の満月の晩…俺は、"夜の眷族"の呪縛を解いて貰うべく…仲魔たちの…恋悪魔の元へと帰って行った。
全ては、計画通りに。
そう、計画通りに……。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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