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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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太陽の腕 月の瞳 7
こちらは、以前のHPで2000年5月16日にUPしたものです
 7話完結 act.7

拍手[1回]


◇◆◇

 魔界に修業に来て、一番最初に行ったところは、大魔王陛下のところ。そこで形式的な挨拶を交わし、次に訪れたのは、皇太子の執務室だった。
 久方ぶりのダミアンは、にこやかに彼を迎え入れてくれた。
「やぁ、ライデン殿。お久し振り」
「ご無沙汰です。ダミアン殿下」
 お互いに微笑みながら挨拶を交わす。
 しかしながら、今ライデンの中には、前回来た時にいた姿が一つ、見えないことが引っかかっているのだ。
「あのぉ…ダミアン殿下…デーさん…いえ、デーモン殿の姿が見えないようなんですが…」
 以前は確か、皇太子補佐と言う役職にあったにも関わらず、お茶汲みなどさせられていたはずである。だが、今お茶汲みをしているのは、明らかに初対面の悪魔、だった。
「あぁ、デーモンねぇ…彼奴はね、どれくらい前だったかなぁ。もうわたしの補佐は辞めたんだよ」
「…辞めた…?」
 その意外性に、彼は眉を顰た。
 ダミアンも将来有望だと言っていたはずだった。それなのに、辞めていたなど。
----じゃあ…もう、デーさんとは会えないの…?
 ふと、胸に過ったのは、寂しさと空しさ。
 敬語は使わないと、お互いに言い交わした、唯一の友だったはず。
 その友に会えると、意気揚々とやって来たはずの魔界の皇太子の執務室に、彼の姿がないことが、余りにも不釣合いに思えて。
 期待して来た自分が、余りにも愚かに思えて。
 陰りを見せた彼の表情でその想いを察したのか、話を切り替えるかのように、ダミアンは口を開いた。
「貴殿が魔界で修業の間、当座の衣食住の面倒を見てくれる奴を紹介していなかったね。暫くは、魔界内での余計な争いを避ける為に、貴殿の身分は、上層部の一部を除いて伏せてある」
「はぁ…」
「面倒を見てくれるのはその一部の者なんだが、いざと言う時に、貴殿を護れるとなると、それなりの身分も必要でね。結局、わたしの次に権力を持つ、副大魔王閣下にそれをお願いしたんだ」
「はぁ………え?ふっ…副大魔王閣下…っ!?」
 ぼんやり聞いていた意識が、思いがけず引き戻された。
「ちょっ…ダミアン様っ!?」
 驚く彼を後目に、にっこりと微笑みを浮かべる。
「仕方ないだろう?貴殿を養うには、それなりの身分が必要なんだから。書類の整理が終わったら来ると言っていたから、もう直ぐだろうね」
 チラリと時計に目を向けるダミアン。そのにこやかな表情と裏腹な表情なのは、当然ライデンである。
 風の噂に、前副大魔王の辞職から、新たに就任したのはまだ若い悪魔だと聞いた記憶がある。確か、同年代だったはずだ。
 だが、その副大魔王とは面識がなく、一度も顔を合わせたこともなければ、名前も聞いていない。突然、そんな悪魔に面倒を見て貰うと言われても、彼が動揺するのは当然。
 それを知りながら、話を勧めたダミアンを恨めしく思う気持ちもまた当然。何せ、デーモンが補佐を辞めたことすら、教えてくれなかったのだから。
 極度の緊張で固くなった彼の耳に届いたのは、ドアを叩く音だった。
「お、来たな」
 ダミアンのつぶやきの後、声が聞こえた。
「失礼します」
 緊張するライデンの前、ドアは開かれる。
 そして、その問題の副大魔王が姿を現した。
 しなやかな赤い生地に金の装飾を施した礼服を身に纏い、マントは敬意を表わす純白。
 短めのオールバック。その髪の色は鮮やかな黄金色。
 白い顔に纏う紋様は青。そして、頬に灰色の陰。
 その優美な身の熟しに思わず見とれていたライデンは、ダミアンの笑い声で我に返った。
「ライデン殿下、紹介しよう。本日より、貴殿の警護及び当座の衣食住の養い主、副大魔王のデーモンだ」
「宜しく、ライデン殿下」
 ダミアンと同じように、笑いを含んだ声でそう言って手を差し出したのは…ダミアンの紹介に間違いがなければ、副大魔王であるはず。
 そして名前は…デーモン。
「え?…何で……?」
 まだ状況をきちんと把握出来ていない彼は、茫然とした表情でその姿を見つめていた。
「何でって、さっき説明しただろう?デーモンはわたしの補佐を辞めたと。まぁ、副大魔王に任命されたから辞めたんだが…説明が足りなかったかな?」
 くすくすと笑うダミアン。
 その言葉に、ハッとしたように、彼はうつむいた。
----やられた…
 からかわれたと察するまで、そう時間はかからなかった。
「…ば…っ」
「ば…?」
 鸚鵡返しをするダミアンとデーモン。
 彼は、その感情を一気に放出することとなった。
「ばっかやろーっ!!ホントに…ホントに心配したんだからなっ!!あんたが辞めたなんて言うから…ホントに心配して……っ!!」
 不意に緊張の糸が切れた為、感情の制御もままならない。
 彼の目から、はらはらと涙が零れ落ちた。
 その突然の姿に驚いたのは、ダミアンもデーモンも同じである。
「あっ…えっと……こ、こら、ライデン、泣くなっ!悪かった!黙ってたことは謝るから、もう泣くな!」
 慌ててそう繕うデーモン。ダミアンは…と言うと、くすくすと笑いを零すだけである。
「もうすっかり…だな、デーモン」
 笑いを堪えてそう言ったダミアンの声に、デーモンは頬を膨らませる。
「ダミ様がいけないんですよっ!ライデンには黙っていよう、なんて言うものだから…」
「まぁ、そう怒るな。ほら、ライデンも」
 彼を宥めるように、その頭をポンポンと軽く叩く。そして、その耳元で優しくつぶやいた声。
「悪かったな。泣かせるつもりはなかったんだ。ちょっと、驚かせようと思っただけでね。わたしなりの歓迎だ。許してくれるかい?」
 その余りの穏やかさに、ライデンの涙もピタリと止まった。
 そして、首を大きく横に振ると、袖口で頬の涙を拭った。
「俺も…御免なさい。ちょっと、びっくりして…」
 以前魔界へ来た時よりも、確実に成長しているはずであるのに、まだ何処か幼さが抜けない。それだけ彼が純情なのだとわかっているダミアンとデーモンは、にっこりと微笑んで彼を受けとめた。
「これからは、ゆっくりやっていこう」
「…御意に」
 にっこりと微笑むライデン。
「宜しくな、ライデン」
 改めて彼にそう言ったデーモン。
「宜しく、デーさん」
 デーモンが改めて差し出した手をしっかりと握り締め、彼は、魔界の一員になったことを、その手の温もりによって実感したのだった。

◇◆◇

 彼がやっと、魔界での生活に慣れて来た頃のこと。
 デーモンに、極力外出を控えるようにと言われていたものの、昼間の安全と思える時間帯になると、必ずデーモンの執務室を抜け出して空中散歩に繰り出すライデンの姿があった。
 幾ら言っても聞かない。
 毎日のことに、既にそれはデーモンに任意のものとなりつつあった。
 そして、デーモンや彼が厄介になっている枢密院からかなり離れた森の上空にやって来た時、不意に目の前を鳥が横切った。
「…っ!」
 思わず、翼を閉じてしまう。当然彼は、そのまま森の中へと落ちていく羽目になった。
 運良くその下には枝が張り出していて、クッションになって地面への直撃は免れた訳であるが……
「…って~っ!!俺様としたことが、何たる不覚…っ!」
 クッションになったとは言え、それは柔らかかった訳ではない。しこたま打ちつけた腰をさすっていると、ふと自分を見つめる眼差しがあることに気がついた。
「あ……」
「………」
 目の前にいたのは、"鬼"だった。しかも、散乱した鳥の羽根を頭に乗せて…と言う、なんとも剽軽(ひょうきん)な姿で。
 暫し、妙な沈黙が流れたが、彼の方から口を開いた。
「あの…っさ、悪かったね。あんたが折角、鳥たちと戯れてるのを邪魔しちゃって…」
 そう言って、相手の頭に乗っている羽根を取ってあげる。そのままでは、余りにも剽軽過ぎたから…だ。
「いや…それは構わないけど……」
 相手はそう言いながら、自分を観察しているようだった。
 そして。
「御前…誰?」
 ふと、問いかけられた。頬の模様で、種族は察しているようだ。
----悪い奴じゃ、ないよな…?
 精神の歪んだ奴は、鳥なんかと戯れない。
 それは、彼なりの直感だった。
「あ、俺ね、ライデンって言うんだ」
 彼は、警戒心など全くないように、小さく笑って答えた。
 すると、目の前の相手は小さく笑いを零す。
「な…んだよぉ…」
 笑われた意味がわからず、彼はちょっと頬を膨らませた。
「御免ね。悪気はなかったんだ。ただ、あんまり可愛かったモンだから、つい……」
「可愛かったって…俺ゃあもう大人だっつーのっ」
「御免、御免」
 相手は、そう謝った。でも、その眼差しは相変わらず彼をじっと見ていた。
 そして、再び問いかけられた。
「御前、悪魔じゃないよね?紋様からして、雷神族。違う?」
「そう…だけど…」
「何の為に、魔界に…?」
 そう問いかけられ、ふと自分の身分を思い知らされた。
 自分は、何処にいてもいい訳じゃない。今は、誰にも知られてはいけなかったはず。
 デーモンが、余りにも簡単に空中散歩を黙認してしまったものだから、その重要性すら忘れてしまっていたのだ。
 だが、目の前の悪魔は、彼の動揺を直ぐ様感じ取ったようだった。
「俺は別に、御前をどうこうしようって言う訳じゃないよ。ただ、見慣れない顔だったから、ちょっと心配でね。ほら、魔界の全般が安全とは言い切れないから」
 その眼差しと声に、労りの色が見えた。
 彼の直感は、満更間違いではなかったのかも知れない。
 自分自身に言い聞かせてみれば、それは簡単に安心出来た。
 思わず、それを口にする。
「…何?」
 余りにも小さい声で、相手には届かなかったようだ。
 改めて、言葉を発する。先程よりは、少し大きい声で。
「…名前」
「は?」
 相手は、問いかけの意味がわからないようだ。
「あんたの名前、まだ聞いてない」
「あぁ…そう言うこと」
 にっこりと微笑む姿が、そこにあった。
「ゼノン、って言うんだ」
「ゼノン…ね」
 噛み締めるように、もう一度その名前を口にした。
 彼はこの時、この出逢いが後に彼の運命を大きく変えることになるとは、思いもしなかっただろう。
 全ては、運命によって、決められていたかのように。

◇◆◇

 そして、時は流れる。
 "太陽の腕"と"月の瞳"の存在は、いつしか関係者の記憶からも消えてしまっていた。
 そして。
 彼の愛した雷神界が、正式に彼の手によって護られることになるのは、一体いつになることだろう。
 その傍らの存在も。
 それは、これから彼が切り開いていく運命と共にある未来、だった。
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但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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