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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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太陽の腕 月の瞳 6
こちらは、以前のHPで2000年5月13日にUPしたものです
 7話完結 act.6

拍手[1回]


◇◆◇

 どれくらいの時間が経っただろう。
 気持ちが落ち着くまで…と、デーモンはずっとライデンの傍らに座り、当たり障りのない会話が淡々と続いていた。
 だが、そんな長閑な時間に区切りを付けたのはデーモンだった。
「…さて、それでは吾輩はそろそろ帰らないとな」
「え?もう帰るの?」
 思わぬ言葉に、ライデンはデーモンを見つめた。
「…一体、何しに来たの?」
「いや、それはだな…」
 当然と言えば、当然の問いかけ。
 ここに来てデーモンがやったことと言えば、ライデンを宥め、とりとめもない話をしていただけなのだから。
「何か、用があって来たんじゃないの?」
「…ダミアン様がな、様子を見て来いと…」
「は…?」
 そう言葉を紡ぐデーモンは、何やら照れくさそうに横を向いてしまった。
「様子って…?」
 まるで言いたいことが伝わらないライデンは、当然、目を丸くする。
「いや、その…だからな…この前、変な別れ方をしてしまっただろう?だから…」
 気にしてたんだ、ダミアン様は。
 そう言い切ったものの、デーモンは相変わらず横を向いたままである。
 と言うことは、気にしていたのはダミアンではなく……
「そっか。有り難う」
 何となく察しのついたライデンは、にっこりと微笑んだ。
「いや…」
 僅かに朱に染まったデーモンの頬。
 今まで、同じ年代の友と呼べる存在がなかったライデンにとっては、それは新鮮な感覚であった。
「…何かいいな…」
 ぽつりとつぶやいた声に、デーモンはふと視線を向けた。
「何が…だ?」
 ふと我に返ったデーモン。その顔も、常と同じに戻る。
「友達って、いいね。今まで知らなかったな…と思って」
「ライデン…」
 幾ら、デーモンが厳しい環境で育ったとは言え、士官学校にいた頃は、やはり同年代の友がいた。だが、自分が枢密院に入るまで、ダミアンも友がいなかったと聞いたことがある。そう思うと、皇太子と言う身分が、いかに窮屈なものであるかが想像できる気がした。
「いつか…魔界に来ないか?」
 思わず、そう口走ってしまう。
「…え?」
 唐突な展開に、彼の思考が付いていけなかったことは、取り立てて取り上げることでもない。
 戸惑いの表情を浮かべたものの、目の前のデーモンの表情は、真剣そのものだった。
「今直ぐに、と言うことではない。勿論、御前にとっては、雷神界を護ることが先決だからな。だが…いつか、御前の気が向いたら…魔界に来ないか?魔界には、ダミアン様や吾輩を含めて、御前と同じ年代の者が大勢いる。もっと、色々なことを知り得ることが出来ると思うんだ」
「…そうかも、知れないね」
 今まで、考えてもみなかった。自分が、この地を離れるなど。
 そう考えると、答えは直ぐには出て来ない。
 けれど…それも、悪くないかも知れない。
「…前向きに、考えるよ」
 軽く微笑んで、そう答えた。
「それから…ユーリスの…"月の瞳"のことは、ダミアン様には吾輩から伝えておくが、アディエラには、御前から伝えた方がいいだろう…?」
「そうだね。親父に相談してから考えるよ」
「わかった。魔界に来る時には、また是非寄ってくれ。まぁ、吾輩は暫く任務で留守にすると思うが…ダミアン様はいらっしゃるから」
「うん。色々と有り難うね」
 手の傷は、もうすっかり直っている。いつもはもっと長引くはずの、憂鬱ささえ、今はすっきりとしている。
「じゃ…な。もう時間がないんだ。次の任務に行かねばならないから」
「うん。御免ね、マント汚しちゃって…」
「気にすることじゃない。どうせ、黒いマントだ。目立たんよ」
くすくすと笑うデーモン。その心の雄大さに、ライデンも惹かれるところがあった。
 デーモンの手を借りて立ち上がった彼は、神殿の外までデーモンを送っていった。
「またね」
「あぁ」
 軽く手を振って、踵を返すデーモン。
「いつか…きっと、行くからね」
 彼がそうつぶやいた時には、もうデーモンの姿は小さくなっていた。
 彼の中で、何かが変わり始めたような気がした。
 デーモンと言う、友のおかげで。

◇◆◇

 辺りが暗くなった頃、雷帝は天界から帰って来た。
 直ぐに広間を訪れたライデンを、雷帝は目を丸くして迎えた。
「…今日は随分、立ち直りが早かったな…」
 いつもなら、一晩経っても泣きやまないこともあるのに。
 そう言いたげな雷帝に、彼は小さく笑ってみせた。
「魔界から、友達が来てくれたんだ。いつもの傷も直してくれた。でも何より…立ち直る道を、教えて貰ったような気がする」
「…そう、か。御前も良い経験をしたな」
「うん」
 よくよく考えてみれば、デーモンが彼に伝えたことは、雷帝である父から言われたこととそう変わらないのだ。ただ、それが友からの言葉であったことが、何よりも嬉しくて。
「それで、どうだったの…?」
「あぁ、そのことだが…」
 雷帝は、天界で得て来た情報を話して聞かせた。
 "月の瞳"…ユーリスは、確かに死んでいたと言うこと。それに、アストレアが関わったと言う証拠もないと言うこと。
「アストレアを責めることは出来まい。何の証拠ないのだ。自害したと言われれば、それまでだ」
「…そう…」
 何と、言葉を返していいのかわからなかった。
 相手は、大天使長である。闇雲に責めたからといって、こちらが適うはずがない。
 諦めの溜め息を吐き出した時、小さな金属音が聞こえた。
 眼差しを向けてみれば、雷帝はその手に握り締めたものを、彼の前に差し出した。
 それは、蒼い宝石が飾られた、金色の首飾りだった。
「…それ…ユーリスの…」
 見覚えのある首飾りに、問いかけた彼の声に、雷帝は大きく頷いた。
「せめてもの形見に…とな、預かって来たものだ」
 先日見たユーリスの首に、その首飾りはかかっていた。そして、ユーリスが説明してくれたのだ。
 これは、アディエラから貰ったもの。またいつか、巡り会える為の、目印として…
「…アディエラに…届けてあげてもいい?」
「あぁ。そのつもりで預かったのだからな」
 雷帝から首飾りを受け取り、ライデンは再び溜め息を吐き出す。
「…結局、言い伝えは無駄足に終わっちゃったね。こんな結末になるなんて、思わなかったけど…」
 その言い伝えが叶うとは、端っから期待はしていなかったはず。だが、いつの間にかその言い伝えを信じていたのだ。
 中立を…雷神界を、護りたかったばかりに。
「…中立は…もう、護れないの…?」
 不安げに問いかけた声に、雷帝は低く笑った。
「案ずるな。護ろうと思えば、何とかなる土地だ。言い伝えがなんだ。今までそうして来たように、御前がわしの後を継ぐまでは、わしが護り抜いてみせる」
「…親父…」
「父上、だろう?御前がいつまでもそんなでは、安心も出来ないではないか」
 雷帝の口から、くすくすと笑いが零れた。
「御前とて、素晴らしいものを手に入れただろう?」
「…素晴らしいもの…?」
 意味がわからずに問いかけた彼に、雷帝は微笑んでみせる。
「仲魔と言う、素晴らしい友をな」
「…そうだね…」
 信じられる友。それは確かに素晴らしいものを手に入れたと言えるだろう。
 そう考えてみれば、無駄足ではなかったかも知れない。
「これから、まだ出来ることは幾つもある。御前がその気なら、手伝って貰うことは山のようにあるのだ。しっかり前を向いて、着いて来られるか?」
 いつもと同じように、真剣な表情になった雷帝に、問いかけられる。
「…はい。父上」
 それは、当然の答え。
「よし。では、御前がやるべきことを、しっかりと見つめるのだぞ」
 雷帝の声は、とても暖かだった。
 一国の主として、常にライデンが見て来た雷帝の姿が、そこにある。
 そしてそれは、誰よりも尊敬し、愛している父の姿だった。

◇◆◇

 彼がユーリスの形見を持って魔界を訪れたのは、それから数日後のことだった。
 前回同様、マラフィアに付き添われて行った岩牢に、アディエラは変わらずにそこにいた。
「アディエラ」
 呼びかけた声に、アディエラは小さく微笑んだ。
「殿下、言わずともわかっております。ユーリスの、ことでしょう?」
「…そう…」
 アディエラは、何故それを知っていたのだろう。
 一瞬、そんな想いが過ったが、今はそれが大した問題ではないようにさえ思えた。
「お気を落とさずに。殿下の精一杯のお気持ちはとても嬉しく思いました。ですが…わたしたちが捕われた時に、もう二度と会うことはないと言うことはわかっていたのです。ですから、御自分をお責めにならないでください」
 最初から、わかっていたこと。それが、アディエラの全ての答えだった。
 決して、結ばれないからこそ…引かれ合うのだろう。
 それが、摂理ならば。
 彼は大きく息を吐き出すと、ポケットから首飾りを取り出した。
「…これね、親父が…雷帝が、天界から預かって来たんだ。あんたに、どうしても着けてあげたくて…マラフィア殿、いい?」
 問いかけると、マラフィアは小さく頷いた。
 彼が呼ぶと、マラフィアは鉄格子の前までやって来る。
 鉄格子越しに、ライデンはその首飾りをアディエラにつけた。
「せめて…想いだけは、届けたくて。あんたの傍には、いつもユーリスがいることを、忘れないで」
「…有り難うございます、殿下」
 軽く微笑んでみせるアディエラ。首飾りの宝石が僅かな光を放ち、アディエラを美しく飾っていた。
 それはまるで、ユーリスの微笑みのようだった。

◇◆◇

 それから、どれくらいの月日が過ぎ去ったことだろう。
 幾度も過ぎた季節を数えるのも面倒だったが、その間に、彼は、前とは比べものにならないくらい、逞しく成長していた。
 付け加えるのならば、精神年齢はまだ少し、実年齢よりは低かったが…。それは扠置き。
 どれくらい迷っていたのかは忘れてしまった。だが、彼はついに雷神界を離れることを決意した。
 魔界へ、修業へ行く。
 それは、彼が自らに下した決断だった。
 雷帝もその気持ちは汲んでくれたのだろう。小言の一つも言わず、魔界へ修業に出られるよう、手配をしてくれたのだから。
 そして、旅立ちの日は訪れ…ライデンは、再び魔界へと足を踏み入れたのだった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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