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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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愛しさ故の… 3
こちらは、以前のHPで2000年5月27日にUPしたものです
 3話完結 act.3

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◇◆◇

 ルーク何とか朝のうちに書類をまとめ、皇太子の元へと提出することが出来た。
 そして、後はいよいよ戦地に立つのみとなって、意気揚々と帰って行った彼と入れ違いに、皇太子の執務室に現れたのはエースだった。
「ご苦労だったな」
「いえ」
 短い挨拶の後、エースは徐に書類を皇太子の机の上に置いた。
「ルークは、予定通りに出発ですか?」
 問いかけた声に、皇太子はにっこりと笑った。
「あぁ、先程書類が揃ったよ。初めて大任を任された割りに、しっかり期限も守って来たからな、上出来だ」
「そうですか」
 笑いを噛み殺したエースを見て、皇太子は首を傾げる。
「どうかしたのか?」
「いえ。責任感は強いみたいですね。それよりも…」
 エースは表情を引き締め、話題を変えた。
「今回の任務、俺はこれで手を引きたいと思います」
「どう言うことだ?」
 常では口にするはずもない言葉に、皇太子も表情を引き締める。
「これ以上…苦しめたくないのです。"あの方"は、もう十分苦しんだはずです。これ以上、追い詰めてどうすると言うのです?直に…消えてしまうと言うのに」
「自己崩壊、か。ルークが魔界に降りたことがきっかけと言われているが…それだけではあるまい?」
 報告書を片手に問いかける声。
「罪悪感、ですよ。ルークのみならず…その母親を死へ追いやったへの罪悪感が、"あの方"を追い詰めたんでしょう。"あの方"は、ある意味我々以上に純粋だったんでしょう。自身を壊す程の罪を背負った"あの方"を、これ以上追い詰める必要はないと言っているんです」
 皇太子の面前でも臆することのないエース。常に屈することのない態度が、皇太子が気に入っているところでもある。
 だが、今はそんな呑気なことを言っている場合でもない。
「ならば御前は、"あの方"がルークに接触しても良いと?ルークが大事な時に余計な不安を与えるなと言ったはずだ。"あの方"は必ず…ルークに接触する。自分の生命が尽きる前に」
 皇太子も、これには引かない。ルークを思えばこその親心なのだから。
「しかし、それはルークが選ぶことのはずです。父親に会うことは、強制的に拒まなければならないことですか?会うことが、何の罪になると言うのです?せめて一目会いたいと言う気持ちは、父親なら当然でしょう?」
「いつからそんなに保守的になったんだ?冷酷無比の情報局長官ともあろう御前が」
「好きで冷酷無比になった訳ではありませんから」
 大きな吐息を吐き出すエース。
「マラフィア殿は何と…?」
 この件に関わっているもう一名の名前を口にするエース。
「マラフィアは、わたしに同意見だ」
 皇太子の答えに、エースは暫し絶句していた。
「何故…です?ルークが魔界に降りるまで、"あの方"の一番傍近くにいたはずのマラフィア殿が、何故…」
「それは、マラフィアに聞いてみればいい。直に来る」
 エースとこれ以上言い合ったところで、結論は出ないのだ。それをわかっているのか、皇太子は大きく息を吐き出し、椅子に凭れかかって目を閉じた。
 エースは、何を言い返すことも出来ずに、ただそこに佇んでいた。

 数刻の後、マラフィアが皇太子の執務室に現れた。
 皇太子の面前に立ったマラフィアに、唐突に問いかける。
「御前に尋ねる。御前は、"あの方"とルークが接触することを阻止するか?それとも…賛成か?」
「…殿下…?」
 突然の問いかけに、マラフィアが戸惑いの表情を浮かべたのは言うまでもない。
「どう…なさったのですか?」
 問い返す声に、皇太子は大きな吐息を吐き出した。
「エースが手を引きたいと言って来た。これ以上、関わりたくないようだ。父親が会いたがるのを、何故阻止しなければならないとな」
「…そう言うことですか」
 傍らに立つエースに僅かに視線を送り、一旦眼差しを伏せたマラフィア。だが、直ぐに開かれた眼差しは、はっきりとした意志を持っていた。
「わたしは、皇太子殿下に賛成致します」
「マラフィア殿…っ」
 思わず声を上げたエース。その声に、静かな一瞥をくれるマラフィア。
「貴公らしくない。"あの方"に執着なさるなど」
「ですが…見捨てるおつもりですか!?一番傍にいた貴公が…っ」
「傍にいたからこそ、ではないですか?エース殿」
「……っ」
 言葉を、返すことが出来なかった。
 唇を噛み締めたエースを、皇太子は宥めるように見つめた。
「とにかく、任務は遂行する。関わりたくないのなら、口出しするな。いいな」
「…御意…」
 納得出来ない表情を浮かべながらも、エースはそれに従うしかなかった。

 皇太子の執務室から帰る道すがら、マラフィアと肩を並べて歩くエースは、自身よりも多少低い位置にある横顔に向け、小さく言葉を紡いだ。
「…貴公なら…殿下の意見に、賛成するはずはないと思っていました」
 その声に、マラフィアは視線をエースに向けた。
 紺碧の眼差しが、一瞬揺らめき…見せたのは、悲色。その眼差しに、エースも一瞬、ドキッとする。
「何故、貴公は…"あの方"とルークの接触に拘わるのです?」
 反対に、そう問いかけられた。
「何故って…」
 答えに詰まったエース。だが、ゆっくりと歩きながら息を吐き出し、その答えともなる言葉を探し出した。
「…昨夜、ルークに初めて逢いました。容姿も性格も…似ていますね、"あの方"に。それで、親子なのだと、改めて感じました。自然発生のわたしには、親はいません。ですが…最期の時にはきっと、愛しい者の傍にいたいと思う気持ちはわかります。ルークが…いえ、"ルカ"が"あの方"と同じ蒼を纏った時、どれだけ辛かったかと言うことが、自己崩壊とつながるのでしょう。これ以上…苦しめてどうするのです?貴公には、その苦しみを解放してやることが出来ると思っていました。だから…」
 不意に、マラフィアは小さく笑った。
「貴公は、ロマンチストでいらっしゃる」
「…マラフィア殿…冗談を言っている場合では…っ」
 思いがけない言葉に、頬を赤く染めたエース。だが、マラフィアは冗談を言っているようには見えなかった。
 すっと表情を引き締めたエースは、マラフィアの顔をじっと見つめた。
 マラフィアは眼差しを伏せ、柔らかく言葉を紡いでいた。
「確かに…"あの方"は、もう十分苦しんだことでしょう。それは、わたしにもわかります。ですが…わたしには、"彼"を解放する術を知らなかった…いえ、知っていたのかも知れませんが、それを探し出すことはしなかった。何故だと思います?」
「…傍に…居過ぎたから、ですか…?」
「…御明答。流石エース長官」
 誉められているのだろうか…。エースの思考は、そこまで回っていなかったが。
「幾らわたしたちがルークに包囲網をかけて"あの方"を捕えようとしたところで、"あの方"は捕まりはしませんよ。それは、わたしが一番良くわかっています」
「…では…それを知った上で…?」
 くすっと、小さな笑いが零れた。
「まだ若い貴公には、わかり得ないことかも知れません。ですが、こうしておくことが、一番良いことなのです。"あの方"の為にも…ルークの為にも」
「マラフィア殿…」
 それが、マラフィアの想いの深さなのかも知れなかったが…エースには到底、理解は出来ない領域であるようだった。

◇◆◇

 情報局の管理部が所有する巨大な資料室。以前、ルークが入りそびれた場所である。
 この資料室の一角に、うろうろしている姿が二名。
 一名はラル。もう一名は、明日から任務に出かける予定のルーク。
 束の間の休息を利用して、資料集めに励んでいたのだ。
「…確か、この辺にあったはずなんだけど…あ、あれかな?」
 高い天井まで届く程の書物棚の上方を眺めながら、腕を伸ばす。
 身長は決して、小さくはない。寧ろ、平均よりは多少大きいかも知れない。だが、精一杯腕を伸ばしても、目当ての本には届かないのである。
「大丈夫?」
 問いかける声に、うん、と小さく零しながら、更に踵を上げる。
「届いた!」
 指先が本の背表紙に触れる。ここぞと思い切って、指先を背表紙の下に潜り込ませ、思いっ切り引っ張った。
 途端。ビリッと言う鈍い音…
「あいやぁ~…やっちまったねぇ、ルーク…」
「まずいなぁ…」
 本は手元に落ちて来たものの…その背表紙は見事に本から切り放されてしまっている。
「これってさぁ、年代物の重要書物じゃ…」
「ラルぅ……そう言うことは先に言ってくれる?」
 大きな溜め息を吐き出した二名。
 とその時、背後からくすくす笑いが聞こえた。
「高いところの本は、踏台を使うべきだよ」
「あ…」
 第三者の声に振り返った二名は、その声の主を視界に入れた。
 黒が良く似合う。それが、第一印象だった。
 ストレートの腰までの長い黒髪。その顔には、蒼い紋様。黒の戦闘服を身に纏っていて、彼らよりも、幾分背は高かった。
「あの…済みませんでした。破いてしまって…」
 資料室を管理する局員だと思ったのだろう。ルークは素直に謝った。
 だが、第三者はそうではなかった。
「わたしは局員でないよ。ここを利用しに来た一名だから…言わば、君と同じだ」
 軽く微笑み、第三者はそう言う。
 だが、破損した本を受け取り、魔力を以ってそれを修復すると、再びルークの手の中へと本を戻した。
 そして。
「わたしの名はルシフェル。君は、軍事局の…ルーク、だね?」
「はい…」
 第三者は、ルシフェルと名乗った。その名前の意味するところは、ルークにはまだわからなかった。
 不思議そうに首を傾げたルークの頭に手を置き、にっこりと微笑んだ。
「君は…きっと強くなれる。"彼女"も、それを望んでいたはずだ。君自身が、どちらの世界でもいい、きっと自分の運命を切り開くことが出来ることを。君を、素直に受け留められなかったわたしは、卑怯者だったのかも知れないが…今の君を見て、安心したよ。君は立派に成長している。"彼"も…良く教育してくれた。それだけで、満足だ」
「……」
 何を言われているのか、ルークには咄嗟に理解出来なかった。
 ただ…ルシフェルの声が、余りにも優しかったものだから…動くことが出来なかったのだ。
「…"彼女"を…知っているんですか?」
 思わず問いかけた声に、ルシフェルは軽く頷いた。
「あぁ。君は、"彼女"に良く似ているよ」
 その髪を一混ぜして、ルシフェルは一歩下がった。
「もう…逢うこともないだろうね」
 つぶやいたルシフェル。
「……」
 口を噤んだままの、ルーク。
「…元気で。ルーク……いや、"ルカ"」
「…あ…」
 ハッと気がついた時には、ルシフェルは姿を消していた。
「ルーク…今のは…?」
 幻聴…?
 幻覚…?
 つぶやいたラルの声も、ルークの耳には届いていなかった。ただ…すっかり直って戻って来た本が手元にあることで、それが事実であったことを感じていた。
 きつく、本を胸の中へと抱き締める。
 そんなルークの横顔を見つめながら、ラルは先程までそこに立っていた姿を思い出していた。
 あの悪魔は…誰だったのだろう。
 ルークと酷似の…第三者の正体は。

◇◆◇

 その後、ルークは任せられた大任を見事に勝利で納め、上層部の信頼も得てから、数千年が過ぎ去った。
 その間に色々なことが起こり、それが更にルークを強くしていくこととなった。
 そして運命の日。彼が、新任の副大魔王閣下の参謀としての職務を命ぜられた日。
 その日、自分の執務室を整理するマラフィアの後ろ姿を見つめるルークがいた。
「…何も、辞職なさらなくても…」
 ルークが副大魔王の参謀に選ばれたのをきっかけに、マラフィアはその御位を辞すると言う決断を下したのだ。
 その意味が、ルークにはわからない。ただ、かつてぼんやりと思っていた不安がそこにはあった。
「まだ…在籍していただきたいのに…教えていただきたいことも、まだ沢山あるのに」
 そう零した声に、マラフィアは一旦身体を起こしてルークへと向き直った。
「いや。ここから先は、君の領域だ。わたしが教えることは、もう何もないよ。君は、わたしを越えるんだ。これからは、君自身が切り開いていくんだ。それにわたしは…行かなければならないところがあるからね。馴染みの仲魔を弔わなければならないから」
 そう言って微笑む姿。それは、既に意を決していて、誰にもその意志を奪うことなど出来ないとわかった。
 溜め息を一つ吐き出したルークは、そっとマラフィアに問いかけた。
「一つ…伺ってもいいですか?」
「何だね?」
 そう問い返され、ルークは小さく息を吐き出し、言葉を紡いだ。
「ルシフェルと言う名前を…御存じですか?」
「…ルーク…」
 思いがけない問いかけに、マラフィアの手が止まる。そして、驚いた眼差しのまま、ルークを見つめていた。
「何処で…その名を?」
 問いかける声に、ルークは僅かに目を伏せた。
「昔…わたしが初めて大任を任された時です。任務に出向する前日に、管理部の資料室で逢った悪魔が、そう名乗りました。その時は気がつかなかったのですが、調べてみれば直ぐにわかりました。前総参謀長の…ダミアン様のお付だった、堕天使であったことを」
「……」
「"彼の悪魔"は…わたしの母のことも、わたしの昔の名前のことも知っていました。そして、貴公のことも」
「…そう、ですか」
 ふっと、吐息を吐き出したマラフィア。
「"彼"は、わたしの上司だったのだから、知らないはずはない。しかし、まさか逢っていたとはね。殿下は、貴公と"彼"とのの接触を、殊の外拒まれておられたのに…」
「でも、貴公はそうなることを予測しながらも、それを黙認した。違いますか?」
「何故…そう思う?」
 ルークの推測には、興味があった。だからこそ、問いかけた言葉。
 ルークは、その思いに応えるかのようにゆっくりと口を開いた。
「貴公が…"あの悪魔"を想っていればこそ…だと思います。その言葉だけで、貴公には通じると思いますが?」
「…成程」
 くすっと、小さな笑いが、マラフィアから零れた。
「君の見解は納得出来る。流石、作戦参謀だね。立派になった」
 マラフィアは、目を細めてルークを見つめた。
 まるで、眩しいものでも見つめるかのように。
「君から…"彼"を奪ったのは、このわたしだ。救おうと思えば、救うことは出来たかも知れない。だがわたしは、"彼"の意志を尊重したいと思った。このまま、"彼"を眠らせてあげたいとね。君には最後まで黙っているつもりだったが…まさか、逢っていたとは思わなかったよ」
 ルークがあの時逢った第三者の面影を重ねつつ、マラフィアは言葉を続けた。
「君は…"彼"に良く似て来た。そう言われて、嬉しいかどうかはわからないが…わたしは嬉しく思うよ」
「…愛して、いたんですか?」
 問いかけた声に、くすっと笑いが零れる。
「そう。わたしの、最後の恋悪魔だったよ。それなのに、わたしは"彼"を見捨てた。君は…わたしを恨むかい…?」
「恨むだなんて、そんな…」
 吐息を吐き出したルーク。
「"あの悪魔"もわたしも、貴公を恨むことはありません。寧ろ、感謝しています。"あの悪魔"も…貴公がわたしを教育してくださっていることを、喜んでいましたから」
「そう、か」
 マラフィアは、小さく微笑んだ。
 何かを吹っ切ったようなその微笑みに、今度はルークは目を細めて見つめた。
「"あの悪魔"を…弔いに行くのですね?だったら…伝えてください。わたしは…貴公の知っている"ルーク"は…"ルカ"は、副大魔王閣下の軍事参謀になったと」
「あぁ、伝えておくよ。必ず…ね」
 笑いを零したマラフィアは、ルークの頭に手を置いて、その髪を一混ぜした。

 それ以後、マラフィアは二度とルークに逢うことがなかった。
 しかし、魔界の何処かで、参謀として活躍するルークの姿を喜んでいることは間違いないだろう。
 ルークが逢った、第三者の魂と共に。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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