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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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愛しさ故の… 2
こちらは、以前のHPで2000年5月27日にUPしたものです
 3話完結 act.2

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◇◆◇

 その日、忙しい中、副官に何故か野暮用を言いつけられたルークは、皇太子の執務室へと向かっていた。
 ドアをノックしようとしたその時、中から聞こえた声に、ふと手を止めてしまう。
『…で、情報局の方は?連絡はあったのか?』
 それは、皇太子の声。問題は、もう一つの声だ。
『いえ。まだ連絡はありません。直に入ると思いますが…』
----マラフィア殿…?
 任務で遠出をしている予定のマラフィアが、何故ここにいるのだろう。そんな意識が、ルークをその場に留まらせた。
『流石の情報局もまだ動きを掴めないとはね。確実に居場所を突き止めなければならないことは、御前が一番良くわかっているだろう?』
 いつになく低いトーンの皇太子の声に、マラフィアの声も低い。
『わかっております。懸命の捜索をしているところです。ルークよりも早く、彼に接触しなければならないことも』
 そこに自分の名前が出て来たことに、ルークが慌てないはずはない。
 話の趣旨は掴めないが、何やら尋常ではない。
『とにかく、阻止してくれ』
『…御意に』
 部屋の中を動く音がする。慌てたルークは、一瞬ドアから離れ、そして今来たかのように、改めてドアをノックした。
「ルークですが…」
 そう声をかけると、ドアを開けたのはマラフィアだった。
「久し振りだね、ルーク」
 マラフィアはそう言って、ルークの髪をくしゃっと一混ぜする。
 そこには、いつもの微笑みがある。
「いらっしゃったんですか、マラフィア殿」
 わざとらしいかと思いつつも、ルークも微笑みを浮かべる。
「殿下に任務の報告をね。君の方はどうだい?」
「まぁ…順調です」
「そうか。それは良かった。結果報告を楽しみにしているよ。では、わたしはこれで」
 皇太子に軽く頭を下げ、マラフィアはルークと入れ違いに執務室を出ていく。
 その後ろ姿を見送っていると、執務室の中から皇太子の声が聞こえた。
「入らないのか?」
「あ…はい」
 未練がましくマラフィアの姿を目で追いながら、ルークはやっと執務室に足を踏み入れた。
「どうした?」
 皇太子に尋ねられ、小さな吐息を吐き出す。
「いえ。マラフィア殿は遠方にいるとばかり思っていたものですから…」
 それは、正直な気持ち。
「あぁ、そうだね。つい今し方、報告に戻って来たんだよ。御前も何か用なんだろう?まさか、無駄口を叩く為に、任務を抜け出て来た訳ではあるまい?」
 にっこりと笑って、そう問いかけられる。
「はい……」
 そう、自分は、任務の為にここに来たのだ。
 改めて自分にそう言い聞かせ、ルークは持って来た書類を皇太子に渡す。
 だが、先ほどの皇太子とマラフィアの会話が、完全に脳裏から消えた訳ではなかった。

◇◆◇

 それから更に数日後、やっと目標の兆しが見え始めた頃。
「おや、随分綺麗になったじゃないの」
 日も落ちて、終了時間もだいぶ過ぎた頃、やっと任務地から帰って来たラルは、片付いたルークの机を見て、そう感嘆の声を零す。
「でしょ?あとこれだけ。残業も今日でおしまい!」
 最後の書類をまとめにかかっていたルークは、上機嫌である。
 しかし…
「あ…れ?なんだ、これ?」
「ん?」
 ラルの机の上に、ぺらりと一枚の紙が落ちている。
「こんなの、受けたかなぁ…」
 手に取り、読み進むうちに、その眉間が寄せられる。
「どした?」
 手を休め、問いかけたルークの声に、ラルは黙ってそれをルークへと差し出す。
「ん…?」
 受け取って、文書を読み進むうち…ルークの顔色も変わった。
「やば…っ!これ、ウチのじゃん!!」
 それは、情報局に提携を頼んでいた書類の一部、だった。
「直ぐに、情報局に行かなきゃ…っ!」
 慌てて席を立ったものの、既に勤務時間外、なのである。
 あれだけマラフィアに言われていたにも関わらず…ある意味、自業自得なのだが。
「ちょっと待てよ!直ぐに情報局にって、もう閉まってるぞ?あそこは時間に厳重だから…それに、ここからどれだけかかると思ってるんだよ」
 ラルの言う通り。広い王都の中で、情報局の建物はその一角の広大な土地。軍事局からは枢密院を挟んで、丁度反対側にあたる為、かなりの距離はある。5分や10分で着く距離ではないのだ。歩いていけば、軽く数時間はかかりそうである。
「でも、明日じゃ間に合わないのっ!あんだけでっかいアンテナを一日中上げてるんだから、誰かしらいるよ!空を飛べば時間は稼げるから!」
 そう叫ぶと、ルークは書類を握り締めて走り始めた。
「…ばぁか…管理部が閉まってたら、意味ないんだよ…ったく…」
 何故それを早く言わないのかと言うような台詞をぽつりと吐き出したラルは、気の毒そうに、小さな溜め息を吐き出していた。

 ルークが情報局の前に辿り着いた時には既に…と言うよりも、案の定、入り口の鉄の門は固く閉ざされていた。
「…ちっくしょぉ…誰かいないのかよぉ…」
 門を掴み、力づくで開けようにも、そう簡単に開く訳もない。
 高い塀を乗り越えていこうにも、そこを乗り越えれば一発で捕まることぐらい、ルークにもわかっていた。
 諦めかけた時、局員用の通用口が隣にあることに気がついた。
「…こっちは開くのかな?」
 手をかけてみれば、こちらは造作もなく開いた。
「ここまで来たら、忍び込むしかないじゃん?」
 腹を据えたルークは、情報局への進入に成功(?)したのである。
 高い建物を見上げ、誰かいないかと確認していた時、既に闇に閉ざされた局の一番上の一室に明かりが見えた。
「…ラッキー…」
 にんまりと笑いを零し、ルークは背中に翼を構えた。
 目指すは最上階の一室。
 そこが誰の部屋なのか、ルークはこの時、知る由もなかった。

 その悪魔は、唯一明かりの点った部屋の主…情報局長官、エースだった。
「ん~~っ、もうこんな時間かぁ」
 大きく伸びをして、溜め息を一つ。
 連日の超過勤務に、そろそろ疲れも出て来た頃だった。
「そろそろ帰るかな…」
 机の上の書類を一瞥して、つぶやく。
 まだ終わった訳ではないが、余り根を詰めると、捗る仕事も捗らない。潔く切り上げるのも技なのだ。
 思い立ったら直ぐ行動。椅子から立ち上がった瞬間、それに気がついた。
「……?」
 背後に、誰かの気配がした。
 机の上の書類をしまい、振り返って見れば、窓の外に誰かいる。
「何だ…?」
 背中には真白き翼。顔には蒼い紋様。
『開けてよ』
 その謎めいた蒼き悪魔は、そう言葉を発したらしい。
 驚きながらも窓を開けたエースは、そこから飛び込んで来た蒼き悪魔を、暫し眺めていた。
 蒼き悪魔は、その視線に気がつき、ハッとしたように翼をしまった。
「御前は…?」
 問いかけた声に、彼が答えた。
「俺はルーク。軍事局参謀部に属してる」
「…ルーク?…」
----それでは、こいつが…?
 記憶を手繰り寄せるエース。それを不安げに眺めるルークは、エースの顔も名前も、まだ知らなかった。
 白い顔に赤い紋様。赤い唇。黒い髪。それは魅惑的な面持ちだとしか、感じなかっただろう。
「あんたは?」
 ふと、問いかけられて、視線を彼に向けた。
「え?」
「あんたの名前は?ここは、あんたの執務室?」
「…あぁ、そうだ。俺は、エース…」
「そう。宜しくね。あぁ、こんな時間に御免」
 エースの御位を知らない所為だろうか。若しくは、自分と然して年も変わらないと踏んだ所為だろうか。どうも敬語ともかけ離れている。寧ろ、友達感覚だ。
「何の用だ?時間外の訪問は受けないことになってるんだが」
 どうやって入った、などとは聞かない。それは、エースも通用口が開いていることは知っていたからだ。そしてエースもまた、そこから帰ることになるのだから。
 問いかけたエースの声に、ルークは床に両の膝を付き、ポケットから皺になった書類を取り出して床に置き、丁寧に皺を伸ばした。
「あんたに頼みがあるんだ。これを見てくれない?」
「…は?」
 唐突な言葉に、思わず差し出された書類を受け取ってしまう。
「…管理部は、締まってるぞ。明日出直して来い」
 それが、管理部と提携していた書類だとわかると、無情にも突き返した。
「生憎、俺はこれから帰るところだ。わかったら、さっさと帰った方が無難だぞ。俺がここから出たら、自動的にセキュリティが作動する。御前は直ぐに捕えられるって訳だ」
 背中を向けたエースに、ルークの悲鳴のような声が聞こえる。
「明日じゃ駄目なんだ!頼む、もうあんたにしか頼めないんだっ!」
 振り返ってみれば、床に付いてしまうほど頭を下げ、助けを乞うルークの姿があった。
 その姿に、溜め息を一つ。
「多少遅れたところで、咎められはしないだろう?その程度の任務なら、それくらいは大目に見てくれる」
 物珍しそうに返す声に、ルークは首を横に振った。
「駄目!俺が手をかけた、最初の任務だもん…っ!ここで遅れたら、参謀長にも、ダミアン様にも、顔向け出来ない…っ」
「……」
「お願い…します…」
 尚も変わらずに頭を下げるルークに、エースは溜め息を一つ吐き出した。
 エースとて、そこまで無情ではない。
 自分が手がけた初任務のことを思い出せば、彼がどれだけ真剣であるかもわかることだった。
「…ここで待ってろ。局内は夜間の警備が特に厳しいからな。自動防衛システムに見つけられたら、一発で御前の将来は真暗だからな」
「…エース…」
 一転して、嬉しそうな表情を浮かべたルーク。
 その視線を受け、エースは溜め息交じりに執務室から出て行った。
----今日も、残業か…
 それは、エースには無情の宣告だった。

 暫くして戻って来たエースは、片手に一枚のディスクを携えていた。
「ほら。持ち出し禁止だからな、見るならここのコンピューターで見ていけ」
 律儀に管理部まで行って、借りて来たものらしい。
「有り難う!」
 それを受け取るや否や、エースの許可を得て、隣室のコンピューターを使わせて貰うことになった。
「…やれやれ」
 ルークが隣へ消えるや否や、エースは大きな溜め息を吐き出す。
 ルークがいる以上、エースも帰る訳にはいかないのだから。
「…しょうがない。こいつを片付けるか」
 溜め息を吐き出しつつ、エースは一度しまった書類を取り出し、それに向かった。


 空が明るくなり始める時間。
 ふと顔を上げたエースは、結局徹夜をしてしまったと溜め息を吐き出した。
 さて、隣室のルークはどうなっただろう?と、ドアを開けて覗き込んでみれば、コンピューターのキーボードの上に突っ伏して眠っているようだった。
 自分と、そう年も変わらない割りに、寝顔はまだ幼く見える。
「…知らない方が、倖せでいられることもあるのにな…」
 ドアに寄りかかったまま、ふと零れた言葉。
 エースが抱えている任務の当事者が、まさか飛び込んで来るとは思ってもみなかった。
 皇太子から内密に受けた任務。それは、ルークの父親を保護しろとのことだった。
 それに関わっているのは、後一名。ルークの上司であるマラフィアだけ。
 そんなことをルークが知ったら、どう思うだろう。
 小さな溜め息が零れる。
 ルークの素性は、調べれば直ぐにわかった。その境遇が、皇太子の興味をそそり、情を注ぐことになったとは、常では考えられないことでもあった。
 他悪魔を引きつける魅力は、十分あった。それは、エースも認める。
 だが…父の素性を知らせるべきかについては、エースも悩んでいたのだ。
 皇太子からは、父のことは何も知らされていないと聞いた。
 行方は掴んだとは言え、それを伝えるべきであるのかは、エースにもわからない。
 本来の選択肢は、ルークのみが選ぶことが出来るのではないだろうか。
 皇太子は、伝えるつもりはないと言った。だが、調べると言うことは、何れ知らせるかも知れないと言うことだ。それが、エースには不快なのだ。
「…ま、決めるのは俺じゃない。俺にはそんな権限はないもんな。悪く思うな」
 ルークの寝顔に向け、そうつぶやく。
 せめて、心に背負う罪を軽くしたいばかりに。
 エースは部屋に足を踏み入れ、窓を開けた。冷たい風が吹き込み、エースのその黒い髪をなびかせた。
 外が騒がしくなり始めた。そろそろ、局員の第一陣がやって来るはずだ。
「起きろ、ルーク。朝だぞ。書類は出来たのか?」
「ん…」
 エースに肩を揺さぶられ、やっと目を開ける。
「皇太子のところに持っていくんだろう?」
「ん~…そうだ、帰ってまとめなきゃ…」
 大きな欠伸を零し、目を擦る。
「御免ね。御邪魔しちゃって」
「いや、いいさ。どうせ仕事も残ってたし…」
 そう。任務は早ければ早いだけいい。それだけ早く、気持ちが楽になる。
 憂鬱な任務なら、尚更。
 エースのそんな思いなど察することもなく、ルークはにっこりと微笑んで、エースに頭を下げた。
「お世話様でした!」
「今度来る時は、時間内にしてくれよ。それから、用事がある時は、窓じゃなく、使いの者を通して入り口から入ること。いいな?」
「わかった」
 ルークはエースに歩み寄り、その身体をそっと引き寄せた。
 そして。
「有り難う」
 突然のことに茫然とするエースの背中を、ルークは軽く叩いた。
 これは、ルークにしてみれば最大の感謝の気持ち。
 だがそれは、皇太子の行為にとても良く似ていた。
 まとめた書類を携え、ルークは再び窓から風のように去って行った。
「ダミアン様に、感化され過ぎだ」
 その背中を見送ったエースは、小さな苦笑を一つ、零していた。
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筋金入りのオジコンです…(^^;
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