聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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愛しさ故の… 1
数日前、一人の天使が、堕天使として覚醒したと聞いた。
その堕天使は『ルカ』と呼ばれていたらしいが、それ以上の詳細はどの天使に聞いても的確な答えは返って来なかった。
それが示す通り、『ルカ』は天界でも隠された実力者であることは間違いなかった。
皇太子の執務室に現れたのは、白い顔に蒼い紋様を戴いた悪魔だった。
鋭い黒曜石の瞳を僅かに伏せ、ウエーブのかかった腰までの長い漆黒の髪は、無造作に後ろで束ねられている。
皇太子の面前であるながら、その表情に臆した様子はない。
「わたしに…魔界へ降りる許可を下さい」
彼の第一声は、それだった。
黒を纏ってはいるものの、その背中には真白な翼が隠れていた。
「御前が、噂に聞く堕天使か。名前は確か…」
「…"ルカ"。そう、呼ばれていました」
彼は、皇太子の言葉にそう答える。
「親父から聞いているよ。白い翼があるようだが、天界人のオーラは感じない。中身は悪魔のようだね。親父は、わたしの一存で決めても良いと言っていたよ。まぁ、その気持ちも今ならわかるか」
そこで一旦言葉を切り、彼を観察するように頭の先から爪先まで、じっくりと視線を巡らせた。
そして、再び黒曜石へと視線を移した。
「何故…そんな瞳をする?」
ふと問いかけた、皇太子の声。
「え…?」
思いがけない問いかけに、一瞬、彼の眼差しが変わった。
それを興味深く眺めながら、皇太子は小さく笑いを零す。
「問いかけたくもなるだろう?魔界へ降りる許可をくれと言う割りに、何処か投げやりだ。おまけに、ヒトを信じないと言った感じも伺える。魔界に拘留されている天界人の誰に聞いても、御前のことは知らないと言っていた。かなりの潜在能力は感じるのに…ね。その辺のわたしの疑問を解消してくれたら、考えてやってもいいよ」
「……」
何処となく、飄々としているこの皇太子と言う悪魔に、彼は興味を覚えていた。
この皇太子になら、話してもいいかも知れない。そんな気がして。
ゆっくりと、彼は言葉を紡いだ。
「魔界に拘留されている天界人が、わたしのことを知らなくてもそれは当然です。わたしは、天界軍には所属していなかったのですから」
「ほぉ。だが、こうしているだけで、実力を感じることは出来るのに…天界軍もどうかしてるね」
「訳あり、ですから」
興味深い言葉に、皇太子は身を乗り出した。
「その訳とは?」
「…わたしの養い親が、ミカエル総帥だったから、です」
「…ミカエル…ね」
徒ならぬ状況を察した彼は、口を噤んで彼の言葉を待った。
「わたしを産んだ母は、紛れもなく天界人でした。父のことは知りません。わたしも堕天使として覚醒するまでは、金髪で、顔の紋様もなかったもので、まさかこうなるとは思ってもいませんでした。だが…母は知っていたんです。わたしが何れ、堕天使になるであろうことを」
「と言うことは…父君は悪魔だった、と言うことか?」
「恐らく」
「…成程」
「ミカエルも、それを知っていたんです。知っていても尚、わたしの養い親として、育ててくれました。裏を返せば、わたしの母に好意を寄せていたからかも知れませんが。ミカエルがわたしを軍に入れなかったのは、何れ悪魔に目覚めるとわかっていたからだと思います。剣を持つことすら禁じられ、軍には近づいたこともありません。だから、他の天界人はわたしのことを知らないんです」
義務的に言葉を紡ぐ彼を、皇太子はずっと眺めていた。
感じるのは、強い力。それは意志の強さなのか、それとも彼がずっと抱えて来た"孤独"の思いだったのか。
「母君はどうなされた?」
「…殺されました。わたしが、悪魔に目覚めたから」
その重たい言葉が、彼に与えられた試練であったことを物語っていた。
「わたしが悪魔に目覚めたと言うことで、彼女は罪人として殺されたのです。素性の知れないわたしの父は…悪魔だったのではないかと言うことが明確になった訳ですから。でも…ミカエルは、助けてはくれなかった。わたしのことはどうなっても良かった。母だけは、助けて欲しかったのに…それまで彼女と親しくしていた者も…彼女の実の妹でさえも、彼女に剣を向けたのです。それが…許せなかった…それでも母は、事切れる前に、わたしに言いました。『行きなさい、己の姿を信じて』と。だからわたしは、ここに来たのです」
信じていた者に裏切られた結果が、このヒトを信じない眼差しになって現れたのだろう。
皇太子は、彼の姿を見つめながらそう考えていた。
「御前は、愛して…いたんだね、母君を」
ドキッとしたように、彼は顔を上げた。そして、皇太子を見つめた。
目の前の微笑みは優しくて…まるで、亡き母親のように、暖かかった。
「…はい…」
小さくつぶやいた声。ふと、堪えていた何かが外れたような気がして…はらりと一雫、涙が零れ落ちた。
そんな姿を見つめながら、皇太子は優しく言葉を紡いだ。
「その思いを忘れるんじゃないよ。御前が母君を愛していたように、きっと母君も御前を愛し続けているはずだ。御前を、護っていてくれるはずだ。堪えることはないよ。吐き出したい思いがあるのなら、わたしはいつでも話し相手になるよ。だから…」
自信を持て。
いつの間にか、皇太子は彼の目の前に立っていた。
そして、ふわりと抱き締められた。
「その翼は、切ってはいけないよ。染めてもいけない。堕天使がなんだ。御前には、その真白き翼が良く似合う」
「殿下…」
「御前は今日から"ルーク"だ。我々の仲魔、だ。もう、過去を振り返るな」
耳元で聞こえた声に、涙が止まらなかった。
皇太子の計らいで、ルークは軍事局に入ることとなった。勿論、彼の実力を考慮した上での選択であったことは間違いない。
そして、長かった腰までの髪は、肩までばっさりと切られたのである。
昔の械を外したくて。
ルークの中には、そんな思いもあったのかも知れない。
そして、時は過ぎ行く。
魔界の軍事局、参謀部。ここに、すっかり魔界に馴染んだルークの姿があった。
「え…?マラフィア殿はいらっしゃらないんですか…?」
ルークは、己の前に立つ上司に向け、そう言葉を発した。
「あぁ、わたしは急な任務を押しつけられてしまってね。後は、君に任せるよ」
そう言ってにっこりと微笑む姿に、ルークは暫し呆然としてしまう。
マラフィアは、この参謀部の中でもトップである、副大魔王付の参謀長と言う役職を任されている、彼の最も尊敬する上司だった。
「任せると言われても…」
困惑した表情のルークに微笑みを向けたまま、マラフィアは言葉を紡いだ。
「後任を任されるのは、それだけ信頼されている証拠。これは、わたしの一存じゃない。大魔王陛下も、皇太子殿下も、副大魔王閣下も、皆一致の答えだ。自信を持っていいんだよ」
参謀長と言う役職の割りに面倒見の良いマラフィアに、ルークは色々なことを教わって来た。彼にとっては、大切な肉親のような存在であった。
マラフィアも、今はまだ器ではないが、やがては自分を追い越し、総参謀長にまでもなろうかと期待出来るルークの成長振りを、マラフィアはいつも楽しみにしているのであった。
「今回の任務が成功すれば、副大魔王閣下直属の参謀に命ぜられることも、そう遠い話ではないはずだよ」
本心から、実に嬉しそうに微笑み、ルークのウエーブの頭をくしゃくしゃと掻き混ぜるマラフィアに、彼は返す言葉もなかった。
いや、本当は、問いかけたい言葉があったのだ。
----わたしが参謀と呼ばれるようになったら…貴公は、何処へ行くのですか?
それは、常にルークの中にあった不安。
彼が軍事局に配任されてから今まで、常に彼はマラフィアの傍にいて、その技を自分のものにする為に色々と見て来た。
その中で、ふとした時に覗かせるマラフィアの表情が、酷くルークの気を引いたことがある。
寂しそうな…儚げな表情。
それが、いつか何処かへ行ってしまうのではないかと言う不安と結びついたのだ。
「…本心、ですか?」
思わず問いかけた言葉。
「それ以外に、何がある?」
にっこりと微笑むマラフィア。
「わたしが、君の実力を妬んでいるとでも?」
「いえ、そう言うことではなくて…」
「ならば、気にすることはない。思いっきりやってご覧。きっと、君の実力は報われる。殿下も、楽しみにしているはずだよ」
魔界に来てからの、彼の養い主とも言える皇太子ダミアンのことを話題にされては、ルークもそれ以上何も言えない。
「明日からわたしは遠出の任務で留守にする。いいかい、ルーク。書類の整理は大切だ。気を抜いてかかると、最後には自分が痛い目を見る。忘れるな」
「…御意」
何処か納得の行かない表情を浮かべるルークなど気にも止めず、マラフィアはルークの髪を一混ぜして、執務室から出ていった。
その背中を、溜め息が送ったのは言うまでもない。
翌日から、ルークの修羅場が始まった。
書類整理から人員の配置まで、全てルークにかかっているとなれば、否応なしに集中しなければならない。特に、マラフィアから釘を差された書類整理は気が抜けない。
「ルーク殿、この書類もお願い致しますぞ」
「…御意…」
マラフィアの直ぐ下、副官の声と共にどさっと置かれた書類を横目に、ルークは答えた。だが、明らかにそれは嫉妬の捌け口であることがわかっていた。
しかしながら…書類が増えるのはいただけない。
「…大丈夫?」
その大変さに気を使ってか、ルークが軍事局配任後からずっと机を並べていて、多少の気心も許せるようになった仲魔の一悪魔が声をかける。
「あぁ、なんとかね」
大丈夫であるはずなどないのだが、ここはそう言っておかなければならない状況だろう。
大きく伸びをするルークを前に、仲魔…ラルは溜め息を吐く。
「副官の機嫌が悪いのは、あんたの所為だよね。あっちこっちで八つ当たりしてるんだよ。あんなだから、マラフィア殿に選ばれないんだよな」
「…そんな言い方はまずいよ。聞かれたら…」
「聞かれたって平気さ。副官には権力がないことはわかってるもん」
平然とそう言うラルの声に、ドキドキなのはルークの方だった。
「そう言えば、今回の任務が成功すれば、あんたにとって、最大の出世コースだろう?いいなぁ、お気に入りは」
明らかに最後の言葉は皮肉なのだろうが、気心が知れているが故に、敢えて口を噤んだ。
「ま、頑張ってね」
自分の任務で手一杯のラルは、そのまま小さな笑いを零して踵を返した。
「…呑気なんだから…」
大きな溜め息を吐き出したルーク。今は、目の前の任務のことで精一杯なのは、彼も同じことだった。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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