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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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星に願いを
こちらは本日UPの新作です。
七夕と言うことで、ちょっぴりロマンチックに(笑)

拍手[3回]


◇◆◇

「…そう言えば…天の川って、見たことあります?」
 テラスの手摺に凭れながら星空を見上げたルークは、思い出したように少し離れたテーブルセットのところで、ルークが持って来た酒を嗜んでいる皇太子へと問いかけた。
「天の川?人間界にいる時に、かい?」
 小さく笑いながら、ルークへと視線を向ける。
 手摺に身を預けて空を見上げるその姿は、そのまま夜の闇に中に溶けて消えてしまいそうなくらい、儚く見えた。
 時折、こうして皇太子宮へとやって来るルーク。いつも酒を携えて来るのは、多分何かしらの名目が欲しいからなのだろう。
 勿論、ダミアンも深くは詮索せず、こうして僅かな時間を二名だけで過ごすことを受け入れているのだから、ルークの目論みは取り敢えずは成功していると言うべきだろう。
「魔界の空には見えませんからね。人間界でも七夕の夜は雨が多くて、俺は見たことなかったな~。ダミ様は?」
 小さく笑いながら問いかける声に、ダミアンは記憶を呼び起こす。
「…あぁ、見たことはあるよ。綺麗だった覚えはあるから」
 記憶に残るのは、夜空に流れる細かい星々の"川"。
「まぁ、人間界では丁度雨の多い時期だったからね。それは仕方ない。だが、別に七夕だけに見えるものではないしね。ただ、良く見える、と言うだけの話で」
「そうなんですよね。でも、七夕以外じゃあんまり覚えてないって言うのが正直なところだったかな。それに、一年に一度、逢えるか逢えないかの瀬戸際だって言うのに、他人の願いを山ほど託されるって言うのも、何だか変な感じですよね」
 くすくすと笑うルーク。その顔はむこうを向いている為、ダミアンからは良く見えない。けれど、心底楽しくて笑っている声ではないように思えた。
「七夕の話が実話だったら、確かに良い迷惑だね。自分たちは一年我慢して、漸く逢えると言うのに…まぁ、引き離された理由は自業自得だけれどね」
 それを言ったら元も子もないのだが…まぁ、そんな理由に一々躓く者は、願いなどかけないだろうから。
「もし…星に祈って、願いが叶うとしたら…ダミ様だったら、何を御願いします?」
 ふと、ルークがそう問いかけた。
「わたしかい?そうだね…考えたこともなかったから、直ぐには思いつかないね。御前なら、何を願う?」
 そう問い返す。
「俺ですか?そうですね……」
 ルークは、暫し口を噤んで思いを巡らせる。
 本心は…好きなヒトと、ずっと一緒に。だが、それをダミアンの前で言えるはずもない。言ってしまえば…それは誰だと、必ず詮索される。
 相手は、報われるはずなどがない皇太子。本心など、口が裂けても言えない。
 けれど…。
「…この時間が…もっと、続くように…かな」
 考えた末に、そう答えた。
 報われなくても…今、こうして共にいる時間が続くだけで良い。
 せめて、それくらいは望んでも罰は当たらないだろう。
 そんな想いを浮かべた表情を隠すように、手摺に置いた腕に顔を埋める。尤も、部屋の中の灯りがぼんやりと照らすだけの屋外で、ルークの表情がはっきりと読み取れる訳でもないのだが…その辺りは、ルークの恥じらい、だったのだろう。
 そんなルークの姿を眺めていたダミアン。その顔に浮かんでいる小さな微笑みも、ルークには見えない。
「相変わらず…欲がないね、御前は」
 そう言って笑う声。その声に、ルークは僅かに顔を上げ、その視線をダミアンへと向けた。
「…そんなことないです。俺だって…欲はあります。やりたいことは沢山あるし、叶えたい想いもあります。でもそれは誰かに御願いして叶えて貰うものじゃないと思っているから…自分の手で叶えなければ、意味がないし…欲がなければ、そんなことは考えないでしょう?」
「願いを叶える為にヒトを頼らないところが、実に御前らしいけれどね。だが、少しは頼ってみたらどうだい?」
「勿論、必要な時は頼りますよ。俺だって頼られることはあるし。それが、仲魔だと思ってます。でも…全部が全部、それに当て填めては駄目でしょう?好きなヒトの気持ちぐらい、自分で掴まないと……」
 そう言ってから、しまった、と口を噤んだルーク。
 ついうっかり口を滑らせてしまった…。
 一瞬慌てたルークだったが、ダミアンはいつもと変わらない。静かに、笑っていた。
「そうか。御前も良い歳だからね。恋悪魔の一名や二名、いても可笑しくはないしね」
「…ニ名もいりませんよ…それじゃ、二股じゃないですか…それに、恋悪魔もいませんから」
 思わず赤くなるルーク。
 ダミアンが何処まで察しているのかはわからない。そしてまた、ダミアンの恋愛遍歴も聞いたことがない訳で…そんなことには、興味がないのかも知れないと、ふと頭を過ぎっていたりもした。
「…ダミ様は…好きなヒトはいないんですか…?」
 つい、問いかけてしまった言葉。その返答如何では、ルーク自身もショックを受けるかも知れないと言うのに…聞かずには、いられなかった。
「…好きなヒト、ねぇ…」
 一頻り、想いを巡らせるが…ダミアン自身にも、それは明確な言葉で表すことが出来なかった。
「…ヒトを好きになる、と言うことは難しいね。ヒトの心の裏側が見えてしまうと、一気に萎えるだろう?」
 そう言葉を零し、小さく笑うダミアン。
 それは、皇太子であるが故の想い、だったのかも知れない。
「わたしは、子供の頃から…皇太子であることが嬉しいと思ったことはなかったね。親父は忙しかったから頻繁に顔を合わせていた訳でもない。母上はいないし、見る顔はみんな、わたしのご機嫌を取ろうとする使用魔ばかりでね、心の裏側ばかりが見えて、好きになると言う感覚はなかったんだろう。どう感情を出して良いのかもわからなかった。だから、取り敢えず笑っていたんだね。そうすれば、周りに心配をかけることもなかったから。今でもその癖が抜けなくてね。わたしはいつでも笑っていると思われているだろう?」
 いつでも微笑んでいるダミアン。確かに、感情を露にしたところは、ルークも見たことがなかった。
「ダミ様は、本気で怒ったり、喧嘩したことはないんですか…?」
「喧嘩ねぇ……上層部とやりあったことはあるが…あぁ、一度だけあるね」
 記憶を辿りながら、ダミアンは苦笑する。
「デーモンがわたしの補佐に就任したその日にね。自分が選ばれたことが納得行かないと、いつまでも不貞腐れるデーモン相手に、つい売り言葉に買い言葉で辞めたければ辞めれば良いと言って、本当にデーモンが帰ってしまったことがあるね。声を荒げた訳じゃないが…わたしもカチンと来たんだろうね。まぁ、その日の内に仲直りはしたが…喧嘩らしい喧嘩は、後にも先にもあれっきりだね。まぁおかげで、彼奴の心に裏がないことはわかったけれどね」
 その言葉は、ルークには意外だった。
 一番ダミアンに忠実なデーモンが、まさか初喧嘩の相手だったとは。しかも、デーモンの方が納得していなかったとは。
「意外です」
「だろう?わたしもそう思うよ」
 笑うダミアンに、ルークは不思議な感覚を抱いていた。
 今まで、ダミアンはどんな目で、自分たちを見て来たのだろう。いつから…仲魔だと、認めて貰えたのだろうと。
 そんな想いを察したのか、ダミアンはそのまま言葉を続けた。
「勿論、御前たちの心にも裏の野望がないことはわかっているよ。初めてエースを見た時、頭の切れる男だと思った。わたしに対してどうの、と言う野望はないが、自分自身に対してもっとやれるはずだ、と言う上昇志向はずっとあったね。ゼノンは、彼奴は敵に回したくはないと思った。無欲で呑気者に見えるが、いつだって本気は出さないまま、大抵のことは無難に熟すだろう?まぁその分、根は不器用この上ないけれどね。ライデンは、素直に同胞だと思った。わたしが感情を出せずに笑っていたのと同じように、彼奴も出逢った頃は頭は良いが感情のコントロールが下手でね。泣き虫かと思えば、平気で自分のカラダを痛めつける。デーモンとゼノンに色々叩き込まれて、漸く安定して来たけれどね。いつまでも弟みたいなものだ」
 自分で話しながら、どうしてこんな話をしているのだろうと、ふと我に返ったダミアンは、その感情が可笑しくてたまらなかったのだろう。くすくす笑いがずっと止まらない。
 けれど、その笑いを抑えると、自分は何を言われるのかと緊張しているルークへと、眼差しを向ける。
 それは…とても愛おしいモノを、見つめるような眼差しで。
「御前は…綺麗だと思ったよ。漆黒の髪に黒曜石の瞳を持ちながら、相反する真白き翼を背負って、わたしの前に来た。あんな綺麗な翼は初めて見たよ。自分の意思に嘘をつかない、真っ直ぐで深いその黒曜石も綺麗だった。全部、御前に良く似合っているね。今でもその姿は変わらない。いつだって正直に生きたいと思いながら、先を読み過ぎて迷っていることも多いけれど…わたしは、そんな姿を見ていて楽しいよ」
「…ダミ様…」
 褒められているのか、駄目出しをされているのか微妙なところだが…それでも、真っ直ぐにそう言われると照れてしまう。
「裏のない気持ちで真っ直ぐぶつかって来られたら、真っ直ぐ返さないと失礼だしね。その点では、わたしも子供の頃に比べたら随分素直になった方だよ。大事なものを手放したくはないと、本気で思えるようになって来たからね」
 立場上、本心を明かすことは難しい。けれど、その心の奥では、ヒトを大事に思う気持ちがちゃんとある。だから…その想いのほんの少しずつでも、届けたいと思う。
 ダミアンは椅子から立ち上がると、ルークの直ぐ隣までやって来る。そしてルークと同じように手摺に持たれ、空を見上げた。
 満天の、星空の下で。その言葉を、そっと口にする。
「御前は、さっきわたしに聞いたね。もし、星に祈って、願いが叶うとしたら何を願うか、と。思いついたよ。わたしの願い事」
「…何ですか?ダミ様の、願い事って…」
 問いかけたルークの声に、ダミアンの視線がルークへと向いた。
 微笑みを浮かべたその顔は、とても柔らかい。
 そっと差し伸べられたその指先が、ルークの頬に触れた。
「わたしの大事な仲魔たちが、幸せであるように、かな」
「…ダミ様…」
 にっこりと笑ったダミアンは、頬に触れたその指をルークの頭の後ろへとそっと回すと、顔を寄せ、その黒髪に口付けた。
 どんなに宵闇に包まれようと、目の前にいるのだからルークが真っ赤な顔をしているのは良く見えた。
 それが、とても愛おしい。
「知っているかい、ルーク。七夕の願いは、直ぐに叶うものじゃない。その想いを次の七夕まで忘れないように。一年かけて、自分で願いを叶えるものだよ」
「…一年かけて…」
「そう。だから、慌てないことだよ」
 くすくすと笑いながら、ダミアンはルークの髪をくしゃっと掻き混ぜた。
「御前が一年幸せだったかどうか、また来年、ここで聞くことにしよう。御前も、自分の願いは自分で叶えるんだよ」
 にっこりと微笑むダミアンを前に、ルークも小さく笑いを零した。
 この時間が、もっと続くように。それは、今日だけではなく…来年まで、叶え続ける願いであるように。
「…精進します」
「うん、頑張れ」
 笑いながら、再び頭を撫でられる。それが、とても心地良い。
 微笑みを浮かべたルークを見つめるダミアンも、幸せそうに微笑んでいた。
 ささやかでも、その幸せな時間を護る為に。この悪魔の元で、幸せでいられるように。
 彼らが託した願いが叶ったかどうかは、来年になってみなければわからない。
 それを楽しみにしていよう。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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