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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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月光
こちらは、以前のHPで2003年12月07日にUPしたものです

拍手[2回]


◇◆◇

 その夜は空の雲は晴れていて、三日月がとても綺麗だった。
 寝室に繋がっているテラスへ出て、俺はぼんやりと月を見ていた。
 こんな月の夜は…色々と、思いは巡る。
 無駄なことをあれこれ考え始めると、余計なことを考え過ぎる。
 思わず吐き出した大きな溜め息。
 その光から逃れるかのように目を閉じた時、そのドアが叩かれた。
「…エース、いるんだろう?開けるからな」
 そう、声がした。
 開かれたドアから現れた姿を、俺は真っ直には見れなかった。
「どうした?そんな所で」
 そう言われ、溜め息を一つ。
「…何でもない、今入る」
 テラスから寝室に戻り、俺は伏せ目がちに彼奴に声をかけた。
「どうしたんだ?こんな時間に」
「あぁ…ちょっとな。話があるんだ。この時間ならいるだろうと思ってな」
 そうか。俺もこいつも、最近忙しくて真面に正面向かって話し合う時間なんて、ここのところずっとなかったからな。
「場所、変えるか?」
 多分、そんな面倒なことはしないだろうと思いつつ、一応そう尋ねてみた。
 案の定。
「いや…ここで構わんよ」
 彼奴はそう言い、椅子に腰かけると、俺を見上げた。
「…で、用件は?」
 彼奴の視線から逃れるように、少し離れたベッドに腰を下ろす。
「…別に、たいした用件じゃないんだ。ただ…御前が、呼んでいるような気がしてな」
「…別に呼んでないが…」
 寧ろ…来られた方が困る…。
 一瞬、そんな思いが頭を過ぎった。するとそれを察したのか、彼奴はくすっと笑った。
「じゃあ、訂正。吾輩が会いたかったんだ」
「…用件がまるで逆じゃないか」
 思わず溜め息…。
「月夜だろう?一緒に晩酌でもどうだ?」
「…何も持たずに来て何を言う…」
「御前のところの酒が美味いのが悪いんじゃないのか?」
 くすくすと笑う姿に、溜め息しか出て来ない…。
「だからって集るなっ」
「まぁまぁ」
 笑いながらそう言うと、彼奴は椅子から立ち上がって俺の前までやって来る。そして。
「月を見ると…どうしてこんなに欲情するんだろうな」
 耳元で囁かれた声。それは…酷く、心を揺さ振る。
「…悪いな。御前が考えてる程、俺は欲情(うえ)てない」
「どうだか」
 笑いながら、俺の胸にそっと手を触れる。
「試してみるか?」
 囁く声は、明らかに誘っている。しかも俺は…ベッドの上、だ。このまま力を入れられたら、当然後ろに倒れることになる。
「…明日は、朝から上層部の会議でな」
 そう口にすると…彼奴は笑った。
「考慮しよう。吾輩も朝から会議だ。一緒だろう?」
「…だよな」
 くすくすと笑いが零れた。
「まぁ…一杯やるか。しょうがないから美味いのを出してやるよ」
 そう言いながら俺は未だ胸に添えられたままの手を取り、ベッドから立ち上がった。
 完全に戻れなくなる前に引き返したのは…月が、見ているから。
 多分、彼奴も…それはわかっているだろう。
 だから、文句も言わずに俺に従った。
 呑み過ぎない程度に酒を入れると、機嫌良く自分の屋敷へと戻って行った。
 ホントに…何をしに来たのやら。

◇◆◇

「エース」
「…何で御前は、わざわざ夜にやって来るんだ?」
 数日後の夜も更けた頃、使用魔の案内もなしに再び俺の寝室にやって来た彼奴に、俺は呆れた溜め息を与えた。
「何でって…夜しかいないだろうが、御前は。局の方に連絡を入れても、一向に通らなかったぞ」
「……それは悪かった…」
 そうか。任務が忙しくて、連絡を受けてる暇がなかったんだ。
 それでは仕方がないか。しかし、今日とは間が悪い。
 よりによってこんな日に、寝室で。など、場所も悪い。
 今日は満月。生憎と…この間よりも、月の光に酔ってるんだ。
「…リビングに、場所を変えよう」
 俺はそうつぶやくと、彼奴の返事を聞かずに部屋を出た。
「どうしたんだ?」
 意地悪く…か、無意識なのか…首を傾げた彼奴に、俺は溜め息で答えるしかなかった。
 言える訳がないだろうが。月の光に酔って、欲情しそうだから。なんて…。
 少なくとも、それぐらいは察して欲しいよな。恋悪魔だからって、いつでもオールオッケーじゃないって訳だ。
 自分の時は一歩たりとも寝室に踏み入れさせないクセに、俺がそう言う時に限って見透かしたようにずかずかと乗り込んで来るんだから。
 いや、寧ろ…その推察眼を褒めるべきか…。
 それは扠置き。
 いや、冗談抜きに、こんな日は…自分でもどうなるかわかったモンじゃない。だから、寝室には入れなかったんだが…。
 彼奴が何と言おうと、今日はリビングで通すっ。
 そんなことを考えている間にも、リビングに到着していた。
 そのドアを開け、彼奴を中に促した時。
「あら、閣下…いつの間にいらっしゃったのですか?」
 ティムの、驚いた声が背後から聞こえた。
「…御前…また、勝手に上がり込んでたのか!?」
「…まぁな」
 にやりと、彼奴が笑った。
 絶句。ウチの使用魔たちだって、無頓着じゃない。それを、黙って…しかも堂々と入って来るのだから、かえって手に負えない。
 もしかしたら…この前も…?
 それを問い質そうと口を開きかけたその瞬間。ティムが、小さく笑った。
「御茶を御持ち致しますか?」
「…あぁ、そうしてくれ」
 俺は呆れた溜め息と共に言葉を零す。
 ティムの背中を見送り、俺はリビングに足を踏み入れた。
「ったく…入る時は、一言ぐらい声をかけろと言っただろ?」
 背中でドアを閉め、そう言った俺の声に、彼奴は小さく笑った。
「今日は、満月だろう?」
「…それがどうしたっ」
「御前が、欲情てるんじゃないかと思ってな。時と場合によっては、ティムとは言え、使用魔に見られると拙いだろ?」
 見透かされた俺は、当然の如く赤面…
 やっぱり、そのつもりで来たんじゃないかっ。
「……寧ろ、黙って入って見咎められた方が気拙いだろうよ。そのくらい考えろよ…」
「それもそうだな。じゃあ、次回からはちゃんと断ってから入って来るから」
「あのなぁ…」
 赤面したまま声を上げたかけた時。
 逆にとどめの一発を、喰らってしまった。
「愛してる」
「……っ」
 全くの不意打ち。
 そんなこと言われたら、どうにも出来ないじゃないか。
 彼奴はくすくすと笑いながら、部屋の電気を消し、窓にかかっていたカーテンを開けた。そして月の光を背後にして立つと、腕を組んで窓辺に寄りかかった。
 月の光が眩しくて…彼奴の表情はわからない。
 ただ、くすくすと笑う声だけが、俺の耳に届いていた。
「…直に…ティムが来るぞ」
 俺は、小さくつぶやいた。
 でも、動けない。
 電気をつけ、カーテンを閉めればいいだけの話だが…たったそれだけの行動を、俺は取れなかった。
「来たら、見せつけてやるか?」
 くすくすと笑いながら、そう返って来る声。
「…馬鹿言え…」
 冗談じゃない。そんなことしたら…主としての立場がないじゃないか。幾ら、屋敷の中では公認だとは言え…情事の最中を見られるのはまた話が別だからなっ。
 でも…月の光が眩しくて…とても、眩しくて…俺を…誘惑する。
 一歩、彼奴が足を踏み出したことはわかった。
「…エース…」
 俺を呼ぶのは、月の誘惑か。それとも、理性を投げ出した獣か。
 ふと首筋に触れた、冷たい唇。
 危うくその気になりかけたその時、そのドアが、ノックされた。
「御茶を御持ちしましたけれど…」
「…あぁ、今開ける」
 俺は、現実に引き戻された。
 改めて彼奴に目を向けると…彼奴は先程と変わらず、窓辺に寄りかかっていた。
 眩惑、されたんだろうか。
 そう思いつつ、ドアを開けた。
 薄暗い部屋の中。開け放たれたカーテンと、差し込む月の光。そこに佇む彼奴の姿。それは…勘繰るには容易なシチュエーションだった。
 当然、ティムは一瞬口を噤んだ。
「…御邪魔、でしたかしら…?」
「いや…大丈夫だ」
 俺は小さな溜め息と共に電気をつけ、窓辺に歩み寄ると、カーテンを閉ざした。
「いい加減にしろ。遊んでるなら帰ってくれ」
「…冗談だって」
 相変わらず、彼奴は笑っていた。
 俺を、試したんだ。
 あれは、月の誘惑。それを促したのは、彼奴。
 ティムはリビングに御茶の用意をすると、くすっと小さく笑って去って行った。
 余計なことを言わないのは、流石だと思う。俺のことをちゃんと良くわかっている。自慢の使用魔だ。
「…で、本当は何しに来たんだ?」
 問いかけた声に、小さな笑いが返って来る。
「…急な任務が入った。ルークと共に、暫く留守にする」
「…あぁ、そうか」
「そう…だ。だから、御前ともまた暫くは逢えなくなると思ってな。勝利の前祝いと言うことで、今日は祝杯でも上げようかと思ってな」
 祝杯?その為の酒も持たずにか?
「また俺んとこの酒に集ろうったって、そうはいかないからな。それに…御前が任務で遠出しようと、勝利の前祝いをしようと、それは勝手だ。ルークがいるんだ、御前は決して負けない。それは俺が保障する。わざわざ祝杯なんて上げなくても十分だろう?」
 そう。都合が悪いんだ。何せ…月の光に、酔っているから。
 すると、彼奴は…小さく笑った。
「吾輩は…知ってるんだ。御前のウイークポイント」
「…何…?」
 ウイークポイント?俺自身がピンと来ないと言うのに…こいつは、何を知っていると…?
 怪訝そうに眉を潜めた俺に、彼奴はその口元に再び笑みを称える。
 それは…まるで、俺を誘惑するような、妖艶を称えた笑み。
「…見せつけてやろうか?"月"に」
「…御前…」
 笑いながら、彼奴は再びカーテンを開けると、電気を消した。そして俺の目の前にやって来ると、その腕を俺の首へと絡めた。
「月の光に酔っているんだろう?吾輩は、御前が月の光に弱いことを知っているんだ。だから、見せつけてやる。吾輩から、御前を奪おうとする"月"にな」
「…デーモン…」
「御前は…誰にも渡さないからな」
 囁きながら顔を寄せ、唇を合わせる。
「祝杯を…上げるのは…御前との夜に、だ」
 多分こいつも…月の光に、酔っている。
 何だよ。折角、寝室から退去したって言うのに…結局、こうなるのか…。
 まぁ、仕方がない。それなら…乗ってやるか。
「なら…覚悟しろ」
 小さくつぶやくと、再び深く口付ける。そしてそのまま、ソファーへとその身体を押し倒した。
 すると。
「…流石に…ここじゃ拙いか…?」
 ふと我に返ったのか、吐息と共に彼奴がそう言葉を零す。
「…ウチの使用魔を甘く見るなよ。こう言う時は…絶対、近寄らないから」
「…怪しいな…」
 くすくすと笑いながら、彼奴は薄く開いた自分の唇を軽く舐める。
「余計な心配はしなくて良い」
 そう言った俺の言葉に、彼奴は笑った。そして、再び俺の首を引き寄せ、自ら舌を絡めて来る。
 月の光が差し込む中、重ね合わせた身体。
 甘い吐息を零す彼奴を…月は、見ているのだろうか。
 月の光は、野性を狂わす。だから、獣になる。
 とても…いとおしい獣に。
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