聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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架空の森
Q.ヒトにとっての真実とは何か?
そう、問いかけられたことがある。
真実とは、何か。その答えは、如何に…。
「…真実?」
「そう、真実」
真面目な顔で向かい合っているのは、エースとルーク。当然、問いかけたのはルークである。
「急に何を言い出すのかと思えば…」
呆れた溜め息を吐き出すエースに対し、ルークは真剣そのものである。
「ねぇ、ちゃんと答えてよ。ヒトにとっての真実って、何だと思う?」
煙草に火をつけるエースを軽く睨み、ルークは再び問いかける。
「人間か?悪魔か?それとも、天使か?」
「どれに対しても。断定するんじゃなくて、大きな意味に対しての"ヒト"」
「…面倒なことを聞いてくるもんだな、お前は…」
煙草の煙を吐き出しながら、エースは小さく呟く。
「表の現実と、経験して感じる真実が、必ずしも同じモノとは限らない。感じる者によって、誠は違う。これでどうだ?」
ノーマルな答えを返すエースだが、ルークはそれで引き下がらなかった。
「それなら、もしもしの真実が皆無だったら?」
「…ルーク?」
ルークの眼差しは、真剣そのもの。
「真実だと思っていることが…全部、虚無だったら…?」
「何を…言っているんだ?」
「今感じている真実が、全部出鱈目だったとしたら…あんたはどうする?」
いつになく、奇妙な質問を浴びせて来るルーク。
何かが、いつもとは違う。そう思うものの、エースは既に眼差しをルークから背けることが出来ない。
「エース。あんたが感じている"今"は、全部夢だよ。あんたは今、夢を見ているんだ。情報局の長官であることも、デーさんの恋悪魔であることも…俺たちが仲魔であることも、全部夢だよ。ねぇ、思い出して。真実のあんたは…ただの悪魔だ。役職もなければ、デーさんの恋悪魔でもない。あんたは…エースと言う名の、ただの悪魔だ」
「……おい…」
「思い出して、エース」
深い、深い…黒曜石の眼差し。まるで催眠術にでもかかったかのように、その眼差しから逃れることが出来ない。
----…そうだ。催眠術…だ…
ふと、鼻先を掠める、甘い香り。軽い眩暈を感じ、マズイと言う意識がエースの中に過る。けれど、もうなす術もなかった。
「エース…思い出して。あんたの真実を…」
遠くで、ルークの声が聞こえている。けれど、もう意識を留めて置くことも出来ない。
エースの記憶は、そこで途切れた。
朝もやの街の大通りに、エースは一名で立っている。
いつからここにいたのかはわからない。気が付いたら、ここにいたのだ。
何をして良いのかもわからないが…ここに自分の居場所があるような気がして。それだけが、頭の片隅に残っているような気がして。
エースは、一歩を踏み出す。
カツンと言うブーツの足音が、静かな通りに鳴り響いた。
行き先は、自然と導き出されていた。
「エース」
自分を呼ぶ声に、エースは思わず足を止めて振り返る。
気が付けば日は高く上り、街は活気付いていた。
「エースってば」
再び、声がした。
視線を向けた先には、エースよりもずっと小さくて、小柄な女性が一名いる。
「…ユリア」
呟いた声に、彼女は軽く微笑む。
「お待たせ。さぁ、帰りましょう」
良く見れば、彼女は両手に沢山の荷物を抱えている。
「俺が…」
持ってやるよ。
小さく呟き、自ら手を差し出して、彼女の両手を奪う荷物を受け取る。
「有難う。エースと買い物に来ると助かるわ。背が高いから、悪魔込みの中でも目立つもの」
「…そうか?」
「えぇ。今夜は御馳走よ。奮発しちゃった」
くすくすと笑いを零すユリアに、エースも小さな笑いを零す。
「ユリアの料理は美味いからな。楽しみだ」
「有難う」
並んで歩みを進めると、どちらからともなく笑いを零す。
そんな些細なことが、エースの無粋の仮面を何の苦もなく外してしまう。
それが、本来の姿であったかのように。
宵の月が高く上っている。時刻は既に真夜中を指していた。
ユリアと共に帰って来た小さな家のベッドに横たわっているエースは、ぼんやりと薄暗い天井を見上げていた。
自分はいつから、ここで暮らしていたのだろう?
自分の恋悪魔は、本当にユリアなのだろうか…?
そんな意識が、エースの脳裏にこびりついて離れない。
あるが侭の状況を受け入れてしまうエースがいる。しかし、それを敢えて否定しようとするエースもまた、存在しているのだ。
「俺は…何をしているんだ…?」
こんな平凡な生活が、本当に自身の生活なのだろうか。
もっと激しくて…一日として同じ日ではない生活。修羅場の中で敵に刃を向け、仲魔と共に戦って…そんな生活は、今のエースにとっては夢なのだろうか。
皮肉なことに、ここにいるエースには敵もいなければ、敵に向ける刃もない。
恋悪魔(ユリア)と共に、平凡で同じ毎日を送る。何の変哲もない穏やかな日常に飲み込まれていて良いのだろうか?
いつしか夢うつつになったエースは、そんなことをぼんやりと考えているうちに、夢の中に落ちていた。
『エース…』
己を呼ぶ声に、エースは振り返る。
「…誰…だ?」
辺りは、闇。そこにぽつんと一名で立っているエース。
『エース…』
再び、声がした。けれど、その姿は見えない。
とても、心地良い美声。それは以前からずっと知っているような…甘さを含んだ口調。だが、どうしてもそれが誰なのかわからない。
「…誰だ?俺を呼ぶのは…」
不安げに、闇に問いかける。
『…わからないのか…?』
「……」
『目を覚ませ。お前は、吾輩の………』
ふと、声が途切れた。
途端に、光が溢れる。眩しくて閉ざした目蓋の裏に、一瞬影が映った。
懐かしい姿。けれど…それが誰なのかは、わからなかった。
「…エース?」
声に導かれるように目を開けてみれば、目の前にユリアがいる。
「…夢…か…」
呟いた声に、ユリアは首を傾げる。
「大丈夫?顔色が悪いわ」
「…ユリア…」
小さな囁きと共に、エースはユリアの身体を抱き寄せると、その細い肩を両腕の中に抱き締めた。
けれど不思議なことに、ユリアの小柄な身体も、細い肩も、エースの腕にしっくりと馴染まないのだ。
鼻先を擽る髪の匂いも…何処か違う気がする。
自分がいつも抱き締めていたのは、彼女ではない。
そんな意識が、エースの脳裏に過ったその時。
『…忘れたのか?』
夢の中の声が、脳裏を駆け抜けた。
「…っ!」
ピクンと揺れたエースの肩に、ユリアは顔を上げる。
「…どうしたの?」
その途端、エースの意識が何かを感じ取った。
----違う。
これは、自分にとっての現実ではない。
自分を呼ぶ、あの夢の声が…耳の奥に残って離れない。
「…エース?」
怪訝そうに、エースの顔を覗き込むユリア。
「…違う…」
ポツリと零れた声に、ユリアは息を飲む。
エースの眼差しが、再びユリアへと注がれる。けれどその琥珀色の眼差しは…既に、ユリアへの愛着など、微塵も感じさせてはいなかった。
「俺の恋悪魔は…彼奴だけ、だ」
「…エース…」
ユリアの身体を引き離し、エースは溜め息を一つ。
「…ルーク、か…」
----思い出した。全て、ルークが仕組んだことだ。
己がどんな状況にあったのかを思い出したエースは、"ここ"に起こっている現実が虚像であることを、最早認識していた。
しかし、これはこれで、確かに現実だったのだ。ユリアと共にいたことも…自身が何の役職も持たない、ただの悪魔だったことも…この世界では、全て現実だったのだ。
未だ困惑の表情を向けるユリアを、エースは目を細めて見つめる。
「これも…真実なんだな。だから俺は、この現実を否定する訳じゃない。だが…俺の恋悪魔は、たった一悪魔だけなんだ。ここが現実だろうが、虚像だろうが…俺は…"デーモン"以外、愛せない」
----御免な。
エースの呟きが零れた瞬間、目の前の現実が崩れ始めた。
「なっ…」
思わず目を見開いたエースに、遠くから声が聞こえる。
『エース!こっちだっ!早く…っ!!』
懐かしいその声に導かれるかのように、エースは崩れる現実に踵を返した。
その中で…ユリアはただ真っ直ぐに、エースの背中を見つめていた。
まるで…恋悪魔を見つめるかのように。
ふと気が付くと…そこは己の屋敷。自室のベッドの上、だった。
その枕元には、ルークと…そして、デーモン。
「…今のは一体…」
訳がわからずに、そう問いかけたエース。するとそこに、ルークの溜め息が返って来る。
「…デーさんがルール違反するからぁ…エースの帰還が早まっちゃったじゃないのっ」
「うるさいっ。こんなゲームにエースを誘い込んだお前がイケナイんだろうがっ」
「ゲームじゃないよ。実験、と言って欲しいね」
彼らが交わしている会話の意味が良くわからず、エースは首を傾げている。
「エース、大丈夫か?」
ルークから視線を外したデーモンが、心配そうに問いかける。
「あぁ…俺は大丈夫だが…一体、何がどうなっているんだ?今までのは…夢、だったのか…?」
その問いかけには、ルークが言葉を放つ。
「いや。正確に言えば、夢じゃない。あれも一種の現実だよ。もしもあんたが、デーさんの恋悪魔でなかったら…もしも、俺たちと出逢っていなければ…もしも、何の役職も持っていなければ…って言う感じで、あんたの生き方を全部遡った上での、架空の現実。強いて言うなら"もしもの世界"かな」
「…そう言えば、お前がしきりに言っていたよな?今感じている真実が、全部出鱈目だったら…とか、俺が感じている"今"が、全部夢だったらとか…」
「そう。必ずしも"今"が真実とは限らないでしょう?だって、あの時こうだったら…って言う架空の真実も存在しているはずじゃない?だから、あんたの架空を確かめようと思ったんだけど…デーさんがルール破って、あんたに声をかけちゃったからさぁ…」
そう言葉を紡ぐルークは、心底つまらなそうである。
勿論、その表情の前には、エースの溜め息が一つ。そしてその眉尻さえ、いつもよりも僅かに上がっている…。
「ヒトを実験台にしやがって…ふざけるのもいい加減にしろよなっ!」
「別に、ふざけてなんかないよ。だってさぁ、気にならない?架空の現実にいる自分が、どんな生活してるのか、とか…」
「気にならねぇよっ!」
ルークに向けて憤慨するエースの気持ちも、勿論ルークがわからなくはないのだが…そこはルークである。
「でもさぁ、あんたにとって、デーさんがどれだけ大事かってことはわかったんじゃない?」
「…あのなぁ…」
思わぬ方向に話を持っていくルークに、エースは当然呆れた溜め息を吐き出す。
「ま、そう言うことだよ。雨降ってジジイが溜まる…もとい。"雨降って地固まる"って言うでしょ?」
「…ったく、都合良く…」
「良いでしょ~?別に」
くすくすと笑いながら部屋を出て行ったルーク。その背中を、デーモンもエースも、溜め息で見送ったのは言うまでもない…。今回は、ルークに一本取られてしまったのは確かなことなのだから。
「…で?お前は何で、ルールを破って俺を呼んだんだ?」
ルークが去って暫くの後、思い出したようにデーモンに問いかけたエース。
「何でと言われても…」
「俺が、彼女を抱き締めたのが気に入らなかったとか…?」
「………」
「図星、だな?」
「うるさいっ」
真っ赤になった顔をエースから背けるデーモンの表情で、その答えは一目瞭然である。
くすっと小さな笑いを零したエースは、そっとデーモンの肩を引き寄せる。
「…心配性」
「…お前は、ちょっと目を離すと直ぐに手が出るからな。彼女を心配してやったんだ」
「へぇ」
それが本心ではないことぐらい、直ぐに察しは付く。
腕を伸ばしたエースは、そのまま軽くデーモンを抱き締めた。デーモンのその身体は、エースの腕にしっくりと良く馴染んでいる。
「やっぱり、お前だけかな。ここに一番馴染むのは」
「…好きで馴染んだ訳でないけれどな…」
溜め息を吐き出したデーモンは、するりとエースの腕をすり抜ける。
「おや?反抗的」
「吾輩はお前の抱き枕ではないぞっ」
「…誰もそんなこと、言ってないだろう…」
何処から抱き枕の発想が出て来たのかはわからないが…小さな溜め息を吐き出したデーモンは、窓を開けてテラスへと出て行く。その後を着いて行ったエースは、デーモンと同じようにテラスへ出て、手摺りに凭れるデーモンの隣に、同じように身を置く。
「…正直、ルークの実験には参ったな」
そう言葉を零すエース。
「もしかしたら…今俺が感じているこの現実こそ、夢なのかも知れないな」
「苦痛や憎しみや哀しみも実感出来る夢か?それならそれも良いかも知れないな」
くすっと笑うデーモン。
「夢でも良いさ。それで、お前と一緒にいられるのなら…な。ただし…醒めない夢、な」
「心配するな。お前が何処にいようが…吾輩が、必ずお前を捜し出してやるから」
「…サンキュー」
小さな笑いと共に、エースはデーモンの肩をそっと抱き寄せる。
こうして、隣に愛おしい相手がいる。それが、当たり前の世界。
本当は、それも奇跡なのかも知れないが。
ふと、ユリアの眼差しが脳裏に甦る。
彼女は…何を感じて、何を思ったのだろう?
それが夢であれ…架空の世界であれ…彼女にとっては、現実だったはず。
「…御免な」
そのつぶやきは、誰に対してのものだったか。
同じ時間を過ごすこと。共に、生きること。
そう、望むこと自体…それは、切なる願いだったのかも知れなかった。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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