聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Belief
願わくば。
神よ。わたしを護り給え。彼を、護り給え。
願わくば……彼を…救い給え。
神よ…願わくば。
祭壇に向かう彼の耳に、聞き慣れた声が届く。
「相変わらず熱心ですね」
その声に堅く握り締めていた指先の力を緩め、ゆっくりと視線を向ける。
礼拝堂のドアに凭れ、わたしの姿を眺めて笑っている姿が一つ。
「礼拝中は声をかけないように、と言って置いたはずだろう?」
「そうですね。忘れていました」
くすくすと零す笑い声に、彼は不快そうに眉を潜める。
「何の用だ?」
床に付いていた膝を上げ、軽く払う仕種を見せる彼に、小さく笑いを零す。
「別に、用と言う程では。ただ、会議があるので、ちょっと寄ってみただけです」
「会議のことなら朝話しただろう?そんなに忘れっぽくない」
溜め息を吐き出しつつ、視線を送る。
「そう言えば…御前最近、ここに来ているのか?」
尋ね返した声に、僅かに首を傾げる。
「いいえ。貴方が忠実に崇めていれば、充分かと思いましてね」
そう言葉を発する姿に、彼は呆れ顔で見返す。
「可笑しなことを言うな。純粋に崇められて困るはずはないだろう?全く、御前は不思議だよ」
「わたしに崇められては、かえって迷惑かも知れませんよ。それに、信仰心はヒトそれぞれですから」
笑いを零しながらそう言うが、その眼差しまでは笑っていない。何処か冷めた眼差しに、彼は時々戸惑うことがある。そしてそれが不快に感じることも。
「…御前を見ていると、彼を思い出すよ。"あのヒト"も、結局ここへは足を踏み入れなかった。そして、御前と同じ目でわたしを見ていた。その冷めた眼差しでね」
目の前のヴァイオレッドの瞳から目を逸らし、そっと伏せる。
思い出すのは、冷めた眼差し。深い、紺碧の瞳。腰まで流れた鮮やかな金色の髪。誰もが息を飲む程、麗しい天使の容貌でありながら、天界を捨てた。自分は、堕天使だと豪語して。
「何を…考えていたんだろうな、"あのヒト"は。わたしには…一生、理解出来ない…」
どうしても、理解出来なかった。自分がまだ若過ぎた所為だろうか。"あのヒト"が熾天使を努めた期間と同じ時間を費やしても、"あのヒト"が天界を離れた年を越えても尚、未だ"あのヒト"の行動だけは理解の域を超えているのだ。
「…"あのヒト"…?」
ふと聞こえた声に、我に返る。
そうだ、記憶は封じられているのだった。
"あのヒト"は、記憶を封じると言うことで、彼の親友をここに留めたのだ。
天使の姿であって貰いたいが為に。
彼の脳裏を過った意識は、怪訝そうに眉を顰る目の前の姿から自然に目を背けさせた。
それは、同じ罪を繰り返さない為に…"あのヒト"が下した、最後の罪だったのかも知れない。
「…昔の話だ。御前の記憶になくて当たり前だ」
そう繕うことが、唯一彼に出来ることだった。
「さぁ、行こう、ラファエル。直に会議が始まる」
「そうですね」
彼は踵を返す。その後から着いて来る足音を確認しながら、彼は小さな溜め息を吐き出した。
冷めた眼差しが、脳裏を過る。魔界へ降りると告げた声が、脳裏を過る。
二度と、同じことが繰り返されなければ良い。
そう案じる相手が自分の親友であるが故に、彼の不安は絶えない。だから、神に請うのだ。
願わくば…彼を、救い給え。
どれくらい前のことだっただろう。一名の優れた熾天使が、突然その身分を捨てると言い出した。
その理由は一つ。自分は、堕天使なのだと。だから、天界を去るのだと。
天界を捨てた熾天使は、魔界へ降りて黒を纏った。そして、魔界の参謀となった。
彼の名はルシフェルと言う。
そして、彼に将来の熾天使の御位を約束された唯一の存在があった。
当時はまだ能天使の御位であったが、その予言通り順調に出世を続け、現在は上位三隊の中位。熾天使の次に身位のある、智天使(ケルビム)の名称を受けているミカエルである。
薄闇が辺りを包み始めた頃、今では全く使われていない旧神殿に踏み込む影が一つ。薄暗い旧神殿の中を迷うことなく進み、辿り着いたのは古い礼拝堂。埃をかぶった祭壇を見つめ、小さな吐息を吐き出す。
「時が経つのは早いモノですね。この旧神殿も、直に取り壊されるそうですよ」
穏やかに紡がれる声。その視線を巡らせ、薄闇の中で止まった視線の先には、かつての熾天使の執務室。その中へ入ると、歴代の熾天使の肖像画が掲げられている。
その中の一つ…一番大きな肖像画の前に歩み寄り、そっと指先を伸ばす。
深い紺碧の瞳。流れる金色の髪。その肖像は正しく先代の…そして、最後の熾天使、ルシフェルである。
この旧神殿が閉ざされたのは、ルシフェルが熾天使の御位を引き継いでから、幾度か季節が巡った頃。枢密院から少し離れた場所であることが、閉ざされた理由と考えられていた。だから、現在の礼拝堂は枢密院の神殿の中にあるのだ。勿論それは、あくまでも一般論であるが。
現在、この旧神殿が閉ざされた理由を知っているのはただ一名。今、ここにいる彼だけなのだ。
セミロング…と言うよりは、伸びてしまったショートと言うべきだろうか。それでも艶のある柔らかな色薄の金色の髪、何処か冷めた…そして微かに寂しげな色を見せる眼差しはヴァイオレッド。彼は、依然として能天使のままのラファエルである。尤も、同僚は皆昇格してしまったので、必然的にほんの少しだけ身位は上がり、能天使長ではあるが。
「貴方が望んだ通り、ミカエルは今でも人一倍純粋で一途ですよ。貴方が理想とした汚れなき熾天使の御位は、もう彼にしか護れないんですね」
肖像画を見つめたまま、小さくつぶやいた声。その脳裏には、この場所で、ルシフェルから打ち明けられた真実の言葉が過っていた。
ルシフェルが天界を去った後、熾天使の座はずっと空いたままである。彼の存在が大き過ぎて、誰もそれに触れることは出来なかったのだ。
それはまるで、ミカエルがその座に着くのを、誰もが認め、待っているかのようで。
「ミカエルは…まだわたしの記憶が封じられたままだと信じています。だから、敢えて貴方の名前を口にはしない…わたしの記憶が戻るのを、怖れているのでしょうね。わたしが貴方と同じ罪を犯さないようにと、熱心に祭壇に向かう姿を見る度、切なくなります。あんなにも、純粋に神を崇めていると言うのに」
ミカエルの前では、決して見せない本心。伝えてはいけない真実。それを知らなければ、彼はルシフェルが望んだ通り、純粋で汚れなき熾天使になれるだろう。
実のところ、ラファエルの封じられた記憶は、疾うに解けていたのだ。
もうずいぶん前…戦地で敵軍の参謀として闘っているルシフェルに逢ってしまったが為に…その封印は脆くも崩れ去ったのだ。
だが、ミカエルにそれを伝えることは出来ない。
彼を、傷つけない為に。その為には、口を噤まなければならない。
「貴方がわたしに負わせた械は…わたしをここへ、留めておく為、ですか?本当はわたしも…追放されなければならない立場なのに…」
幾度となく、ここで繰り返した言葉。幾度となく、ここで悩んだ事実。それを再び、繰り返してしまう。そうしなければ…自分自身を、失ってしまいそうで。
それ程迄に苦しみながらも、それに耐えて来たのは…自分が仕えて来たただ一名の、無二の親友の為に。大切な…ミカエルの為に。
「わたしは…貴方程、強くはないんですよ、ルシフェル」
それでも、護らなければならない。そう、約束したのだから。
ルシフェルがまだ熾天使として、天界に君臨していた頃。そして既に、わたしが堕天使として己の罪の重さに、天界を離れようと考えていた頃のこと。
突然、今まで使っていた神殿を閉ざし、新たな礼拝堂を王都中枢の神殿に作るとの告知があった。
そしてわたしは、新神殿への引っ越しの日に、旧礼拝堂で…彼からその罪を、打ち明けられた。
彼は…ルシフェルは、わたしが堕天使となった原因とも言える恋悪魔を、殺したと言うことを。そして、その恋悪魔は…自分の半身であったと言うことを。
全てが、信じられない事実だった。だが…わたしも意識の何処かで、それは感じていたのかも知れない。
気がついていたからこそ…わたしは、ルシフェルを…最後まで忘れられなかったのかも知れない。
そしてもう一つ、重大な事実。
この天界に…神はもういないと言う事実。
それは、代々の熾天使が抱えて来た罪。多くの天使たちを欺き続けて来た大罪だった。
ミカエルは、それを知らない。
わたしにそれを打ち明けることで、彼はわたしにもその罪を分け与えたのだ。
だが、その罪は、彼が最後まで背負って行くと告げ、わたしの記憶を封じた。そうすることで、わたしがその罪の重さに耐えられなくなることを回避する為に…
そして何より、わたしの心の傷を、凍らせ、わたしを護る為に。
彼が、天界から離れた日の…わたしの記憶はなかった。
記憶の封印が解けた今でも、ルシフェルがいなくなった日の記憶だけは、酷く曖昧で…良く覚えてはいなかった。
幾度目かの季節が巡り、幾度目かの新規の配属先が決定する時期がやって来た。
その日、到底自分には無関係だと思って能天使長の執務室でのんびり紅茶を淹れていたラファエルの元を訪れた、一名の姿。
「…何やってるんだ?御前…」
実に長閑に紅茶を淹れているラファエルを前に、呆れ顔でそう口走る。
「何って…見ればわかるでしょう?紅茶を淹れてるんですよ。貴方も飲みます?」
古い付き合いの親友を前に、ラファエルは機嫌良くもう一組のカップを用意する。だが、訪れた彼はその様子が些か気に入らなかったようだ。
「あのなぁ…そんなことやってる場合じゃないだろう?配属名簿、見てないのか?」
「配属名簿?万年能天使のわたしには無関係でしょう?」
昇進に興味はないと、ずっと言い続けているのに…とでも言いたげな表情を浮かべたラファエルに、ソファーに腰を降ろした彼は溜め息を吐き出す。
「誰が万年能天使だと決めた?折角、実力があるのに…どうしてそれを伸ばそうとしない?」
「それは、ヒトそれぞれでしょう?わたしの代わりに、貴方が出世しているんだから、それで充分じゃないですか」
「馬鹿を言うな。わたしが出世したって、御前が着いて来てくれないんじゃ、意味がない」
思わずそう零した声に、くすっと笑いを零す。
「智天使様が、随分弱気じゃないですか。実績は積み重ねてきていますから、もう直、智天使長になるのではないかと、専らの噂ですよ。そこで頑張れば、熾天使も遠い話ではありませんよ」
「冗談じゃない。わたし一人出世したって仕方がないだろう?御前と一緒に、智天使になるつもりだったのに…」
その姿に似合わず、零す言葉は何処か子供染みている。勿論それは、ラファエルの前だからこそ見せる姿であるのだが。
「とにかく、御茶の時間は中止だ。ほら、配属名簿見に行くぞ」
半ば無理矢理引き摺られて配属名簿が貼り出されている広間へ行く道すがら。
「きっと、驚くぞ」
子供染みた笑みを浮かべる彼の横顔を見つめながら、ラファエルは人知れず溜め息を吐き出す。
彼のこと、ただで済むはずがない。何を企んでいるのかはわからないが、彼にとっては実に機嫌の良いことなのだろう。そしてまた、自分の悩みの種が一つ増えるのだ。とまぁ、ラファエルの表情から伺えるのは、そんな思いだった。
そんな心内を何処まで察しているのか…彼はラファエルを広間に連れて来ると、上機嫌のまま視線を向ける。
「ほら、ラファエル。ここだ、ここ」
もうほとんど他の姿がない広間の壁に、大きく掲示された無数の名前の中から彼が指さした先には、確かにラファエルの名前が記されていた。しかもその御位は…
「…主天使長…!?」
驚いて目を見開いたのは、ある意味当然だろう。
今まで、中位三隊の下位にいたラファエルが、突然ニ階級も上がり、中位三隊の上位、主天使長に任命されているのだ。
「どう言うことですか、ミカエルっ!どうしてわたしが主天使長になんか…っ」
配属の権限は、ミカエルにあることは知っていた。だからこそ、昇格を望まなかったラファエルがニ階級も上がることは、本来なら有り得ない。つまりは、ミカエルの仕業なのだと。
「仕方ないだろう?御前の実力は、能天使にしておくままじゃ勿体無い。反対は誰もいなかったんだ。良いじゃないか」
「良いじゃないか、じゃないでしょう?貴方の仕業であることがあからさまじゃないですか。もし、その事実が悪用されたら…」
わたしのその言葉に、ミカエルはすっと表情を変える。
それは、智天使として相応しい、真っ直ぐで揺るがない眼差し。
「このわたしが、そんなこと、させるはずがないだろう?大体、可笑しいだろう?わたしの片腕と言われたお前が、いつまでも中位三隊の下位にいるだなんて。元々わたしと、能力的には大差はなかったはずだ」
「それは学生時代の話でしょう?今となっては、実力は貴方の方がわたしの何倍も上を行ってるんです。わかっているでしょう?」
「わかっているよ。御前が隠している、本当の能力もね」
「…ミカエル…」
「ダテに長く付き合って来た訳じゃない。御前の実力は、もう一つ上位の座天使でも相応しいぐらいだ。だが、経験値が足りないからな。しょうがなく、主天使長に推薦したんだ。認められるには正当な理由がちゃんとある。心配するな」
柔らかく微笑むミカエル。だが、その碧の眼差しが僅かに不安そうに揺らめいていた。
「ミカエル…?」
思わず呼びかけた声に、彼はその眼差しをラファエルの前からすっと伏せた。
「無茶をしなければ…御前まで…何処かへ行ってしまいそうでな…」
小さく零した声が、ラファエルの胸に鋭く突き刺さる。
「御前の記憶が…戻っているであろうことは、わたしにもわかっていたんだ…そうでなければ、御前があんなに頑なに礼拝堂に来ない理由も、昇進を拒む理由も他にはないだろう?」
ミカエルの眼差しが、ラファエルに向けられた。
「記憶が戻っているのに、それを隠そうとしていたことに、わたしは何を言うつもりはない。ただ…ルシフェルと同じことだけは、して欲しくない。たまには…わたしが我儘を言っても良いだろう…?」
「……ミカエル…」
「わたしの傍にいてくれないと…わたしの目が行き届かないところにいられると…酷く不安になる。御前まで、突然消えてしまうんじゃないかって。そんな思いは…裏切られるのは、ルシフェルだけでもう沢山だ」
昔は、いつも一緒にいたはずの親友。何処にいても、必ず傍にいてくれると思っていたはずなのに…いつの間にか開いてしまった身分が、彼を不安にさせていたのだ。
冷めた色を浮かべる、ヴァイオレッドの眼差しも。
「…わたしは、何処にも行きませんよ。わたしの居場所は天界(ここ)にしかないんですから。他に、何処に逃げる訳にもいかないんです。ですから…」
しっかりして下さい。
小さなつぶやきと共に、彼の身体をしっかりと抱き締める。既に誰もいなくなった広間の、静まり返った空気の中に聞こえたのは、彼の鼓動。息遣い。その確かな存在を改めて確認し、思いを巡らせる。
そう。他に行くところはないのだ。何処に逃げることも許されない。天界に残ることが、あの熾天使との約束だったのだから。
それは、ラファエルが背負う、最大の械として。
そして、最後の希望として。
「貴方が…熾天使になるまでは…貴方を支えていくのが、わたしの役目ですから」
「ラファ…」
「心配しないで」
つぶやいた声に、彼は顔を上げた。そこには、満面の笑み。
彼なら…この天界を変えて行けるかも知れない。
最初、それはほんの小さな希望でしかなかっただろう。だが、今はそれが最早目前のモノとなりつつあるのだ。
彼が熾天使の御位に着く頃には…神も戻って来るかも知れない。天界に残された、最後の希望の種に。
「一緒に、上を目指すんだ。良いな?」
改めて問いかける声に、ラファエルは僅かな微笑みで頷き返した。
神に見放された世界。だがそこにも、いつか奇跡が訪れるかも知れない。
誰よりも純粋で、汚れなきミカエルが。罪を背負いながらも、大切な親友を支えるラファエルがいるのだから。
共に、歩んで行く。それが、子供の頃に彼等が結んだ約束だった。
そしてそれは…その想いは、今でも変わりないことだった。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
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