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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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桜雨 前編
こちらは、以前のHPで2005年04月17日にUPしたものです

拍手[3回]


◇◆◇

 まるで、零れ落ちそうなくらい。
 青い空に映える、淡いピンク。
 艶やかな姿を見せるのは、ほんの一時だけ。
 だからこそ、焦がれるのだ。
 儚い、その姿に。

 また、この季節が巡って来た。

◇◆◇

「良い天気だな~」
 そう言って、う~んと背筋を伸ばして大きく深呼吸をする。
「そろそろ見頃だね」
 相槌を打つように答えた声に、にんまりと微笑む姿。
「エースはどうする?一応、誘っておいた方が無難だよね…?」
 空を見上げる姿に問いかけるもう一つの声。
「そうだね。来る来ないは、わからないけど…」
 空を見上げていた視線は、そのまま目の前の木へと注がれる。
 淡いピンクの花弁は、もう開き始めていた。

「…呑み会?」
 己の執務室で、怪訝そうに眉を顰めたままそう零したのは、赤き悪魔、エース。
「そう。そろそろ枢密院の桜も見頃だし…ライデンも休暇取って戻って来てるし、ダミ様も時間作ってくれるって言うし…花見も兼ねて、計画してるんだけど…あんたも来ない?」
 相手の様子を伺うように、上目遣いに、控えめに問いかけるのは、来客たる青き悪魔、ルーク。
 例年行われる、魔界唯一の"桜"が咲く頃の呑み会。それも今年は花見を兼ねた誘いなのだが…ここ数年、その頃の呑み会にエースは参加してはいないのだ。
 理由は唯一つ。
 "桜"の花を誰よりも愛していた恋悪魔が、未だ戻らないから。
 一名、桜の花を愛でながら、その僅かな繋がりを確認するかのように時間を過ごす。それが、例年のエースだった。
 だからこそ、誘いに来たルークも、断られることは必至であろうと思ってはいた。だが、この時期にいつも気落ちしているようなエースに、少しでも元気になって貰えるのなら…と言う想いを込め、こうして足を運んでいるのだ。
 そんな想いを知ってか知らずか…視線を巡らせ、窓の外に視線を向けるエース。
 この執務室から、枢密院の裏にある桜の木を望むことは出来ない。けれど、それが恰(あたか)も綻び始めた桜の花を確認するかのような仕草に見えたのは…気の所為ではないだろう。
「…考えておく」
「…へ?」
 思いがけない返事が返って来て、ルークの方が面喰らってしまった。
「何だよ、その返事は。誘いに来たんだろう?」
 ルークの口から零れた奇妙な声に、エースは僅かに眉を寄せる。
「…だってさぁ…去年までは、幾ら誘っても来なかったじゃない?だから、今年もそうかと思って…」
 申し訳なさそうに口を開いたルークに、エースは小さな溜め息を吐き出した。
「まぁ…そう思われても仕方ないな。俺だって……」
「…エース?」
 口を噤み、再び窓の外に視線を向けたエース。その、奇妙な程寂しそうな眼差しに、ルークはその真意を捉えきれずにいた。
「夕方までには決めるから。また連絡する」
 そう言い切られては、それ以上問いかけることは出来なかった。
 真意は、エースの胸の内だけにあった。


「…エースが参加する?」
 ルークの報告を聞いて、この執務室の主もまた、奇妙な顔をした。
「そう。実際は来るか来ないかはわからないけど、まさか参加を仄めかすなんて思わなかったからさぁ、俺もびっくりしちゃったよ」
 ソファーに座り、出されたコーヒーのカップを口にするルークに、向かいに座った執務室の主…ゼノンは不思議そうに首を傾げたままだった。
「どう言う風の吹き回しだろう…?」
「さぁね。でも、何か考えてるみたい。窓の外から桜の木を見るみたいに外見てさぁ。まるで、デーさんが執務室からそうしてたみたいに見えてさぁ…」
 先程まで見ていたエースの表情を思い出すかのように、ルークはそう言葉を零す。
 そして。
「…デーさん…いつ帰って来るのかな…?」
 思わず零れた言葉に、ゼノンは小さく溜め息を零した。
 愛する惑星の任務を終えても尚、留まっている副大魔王。皆が認めたとは言え、いつまでも浮かない表情のエースの姿を見ているのは、やはり良い気分はしない。けれど、留まりたいと言う気持ちが良くわかるからこそ、誰にも"帰って来い"とは言えない状況が続いていた。
 恋悪魔を思い出す"桜"の咲く季節に、エースが毎年呑み会に参加しないこともまた、心配の種でもあったのだが…こうして急にその態度を変えたこともまた、心配の種でもあるのだ。
「デーモンのことは、俺たちにはわからないけれど…エースが何も言わない以上、俺たちが口を挟んで良い問題でもないからね。デーモンのことに関しては、もう少し様子を見ようよ」
「…うん…」
 ルークもまた、ゼノンの提案に頷くしかないのが実情。
「…みんなが揃えば良いのにね」
 それは、誰もの胸の中にあった言葉だった。


 ぼんやりと、窓の外を眺めていた。
 この場所からは見えるはずのない"桜"の木。けれど、エースの脳裏には、その姿がしっかりと焼き付いていた。
 桜の木の下で笑っている恋悪魔。それは一体、いつの記憶だろうか。
 大きな溜め息が零れる。
 毎年、誰とも接することなく、ひっそりと愛でていた桜の木。そして、避けていた恒例の呑み会。そうして行くことで、記憶を繋ぎ止めようとしていたのだ。
 愛する恋悪魔の記憶を。
 その想いに区切りをつけようと思ったのは…どうしてだろう。
 恋悪魔を忘れようと思った訳ではない。忘れても良いと思った訳でもない。けれど…"桜"を愛でる度に苦しくなる。
 花が付いていない時はまだ良い。けれど、一度その蕾が膨らみ始めると、その胸の痛みは増すばかりで。
 恋悪魔を忘れない為に花を愛で、胸の痛みを堪える。そして新たな胸の痛みと戦うのだ。それを毎年繰り返して来たはずなのに…どうして、やめてしまおうと思ったのだろう。
 それは、エースにもわからないことだった。
 もう、限界なのかも知れない。
 大きな溜め息を吐き出し、エースは席を立った。
 せめて、最後は盛大に…。
 そんな思いを込め、エースはまるで呼ばれているかのように、"その場所"へと向かったのだった。

◇◆◇

 昼間はとても晴れ渡っていた空に、夕方になって黒い雲が押し寄せて来ていた。
「…何だか変な天気だね?雨でも降るかな…?」
 花見の準備をしながら心配そうに空を見上げているのは、雷神界から遊びに来ているライデン。
「あんたが言うか~?だったら、雲どけてよ」
 一緒に準備をしていたルークが苦笑しながら、空を見上げる。
「自然現象をあんまり邪魔したくないんだけどねぇ…親父に怒やされるし…」
 眉を潜めながらそう零したライデンに、ルークは笑いを零す。
「冗談だって。そこまで望んじゃいないしね。まぁ、降ったらそれまでだよ。そしたら、他の所で続きをやるしかないね」
 しかし、冗談抜きに本当に雨が降りそうな天気なのである。それも、急激に押し寄せてきた雲から見て、どうしても故意的としか思えないくらいに。
 だが、雨風を司る雷神族のライデンが折角の宴会を邪魔するはずもなく…やはり、自然現象なのだろう。
「…でもさぁ、良くエースが来てくれる気になったね」
 準備の手を進めながら、ライデンがそう口を開いた。
「まだ、来るって決まった訳じゃないよ。考えさせてくれ、って言ってただけだから、もしかしたら来ないかも知れないし…」
 ルークも手を進めながらそう言葉を返す。
「でもさぁ…そこまで言ったら来るんじゃない?今までみたいに端っから拒否してる訳じゃないし…」
「まぁ、ね。でも…」
「…何?」
 言葉を止めたルークに、ライデンは手を止めて顔を上げる。視線を向けた先には…咲き誇る"桜"を見上げるルークの姿。
「…単なる、気分転換なら良いんだけど……まさか、忘れる為だなんてこと…ないよね?」
「…ルーク…」
 ずっと、胸の奥に引っかかっていたこと。ゼノンにも言えなかったその言葉を、ライデンに向けて零してしまったのは…どうしてだろう。
 その言葉には、当然ライデンの表情も曇った。
「何言ってんのさ。そんな訳ないじゃん。エースが、そんなこと……」
「そりゃ、俺だってそう思うよ。だけど、最悪…」
「最悪なんて、考えんなよ!」
 思わず声を荒げたライデン。
「エースは変わらないよ!そんな簡単に変わってたまるかよっ!俺たちみんな、変わらないはずだろうっ!?みんな…この桜が好きだから…だから……忘れるはずなんかないじゃん…」
----デーさんのこと、忘れるなんて…
 どうしても口にすることが出来ず飲み込んだ言葉。
 忘れたくない想いは、誰もが同じはず。ただ、恋悪魔であるエースは、彼ら以上に辛い思いをしているのは確かなこと。誰よりも重い苦しみを味わったとしても…忘れることを選ぶはずはない。少なくとも、そう思いたい。
 そんな想いで唇を噛み締めるライデンに、ルークは小さな溜め息を一つ。そして、ぽんぽんとその頭を撫でた。
「…御免。俺が悪かった」
「…ルーク…」
 ルークを見上げるライデンの眼差しは潤んでいる。悔しい思いと、やりきれない思いと…寂しさとで。
「俺だって、そう思いたいよ。エースが、忘れることを選ぶはずはないって。でも…不安なんだよ。勿論、気分転換だと思えばそれで良いんだろうけど…そこから何かが変わってしまうんじゃないか、っていう漠然とした不安があるんだ。この"桜"は…デーさんだもの。エースがみんなに邪魔されず、一名で愛でていたいと言う気持ちもわかるよ。だから、今まで強制もしなかったし、それ以上踏み込むこともしなかった。でも…今年は違うじゃん。エースに笑って貰いたくて誘ったけど…賛同されたことが寧ろ心配だった。エースが自分のスタイルを変えることが、どう言うことなのか…俺にもわからない」
「だったら尚更、そんなこと言わないでよ。俺たちが信じなくて、誰が信じるのさ」
 Tシャツの袖でぐしぐしと目元を拭うライデンの姿に、ルークは小さく微笑んで見せた。
「…そうだよな。うん、そうだよ。俺たちが信じなきゃね」
 怒って、泣いて、笑って。言いたいこともはっきり言う。いつだって、素直に感情を表現する。どんなに不利な状況でも、決して後ろ向きにはならないライデン。その性格がとても羨ましくさえ思える。
 不安な胸の内をライデンに打ち明けた理由が、今ルークにもやっとわかった。
 ライデンなら…その不安をきっぱりと否定してくれると思ったから。
 その強い意志を、しっかりと自分に見せ付けてくれると思ったから。
 胸の奥が、ほんのりと熱くなった。
「…雨が降る前に、始めなきゃね」
 にっこりと微笑み、再びライデンの頭をぽんぽんと撫でる。
「うんっ」
 元気を取り戻したルークの表情に、ライデンも笑いを零す。
 今は、信じることしか出来ない。それが、自分たちが仲魔を支える為に必要なことなのだから。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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