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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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深き紅の薔薇を君に
こちらは本日UPの新作です。

拍手[2回]


◇◆◇

 ぼんやりと浮かんだのは…媒体の意識のヴィジョン。
 一抱え以上もある大きな大きな花束。少し照れたような表情で渡された深紅の薔薇のその花束は…さながら、告白の場面であるかのようで。
 そんなヴィジョンが流れて来るくらいなのだから、余程嬉しかったのだろう。
 それをほほえましく思う反面…ほんの少し、胸を過ぎった想い。
 それは……媒体に対しては、初めての感情だった。

◇◆◇

 目蓋の裏に感じる眩しさに、眠りの淵からその意識が戻る。
 頬に触れる柔らかな枕の感触と、こちらも掌に触れる柔らかい感触のシーツ。だが…そこには、いつも感じているものとは違う"匂い"があった。
 うっすらと目を開ける。そして、その視線の先に映る部屋の様子は……
「…何処だ…?ここ…」
 少しだけ、掠れた声が零れる。
 身体を起こし、まわりを見回すと…そこにはやはり、見慣れない家具や壁紙。窓から見える景色も、全く見覚えのない場所。
「………?」
 衣服は…一応、身につけている。尤も…見たこともない夜着だが。
 首を傾げ、夕べの状況を思い出そうとしていると、ドアがノックされてそっと開いた。
「あぁ、エース、起きたか?」
「……デーモン?」
 本来なら、まだ傍にいるはずのない恋悪魔。何故彼がここにいるのかもわからない訳で。
「…えっと…まず、ここは何処だ?で、何で御前といるんだ…??」
 状況が全くわからない。そんな表情を浮かべる彼エースに、恋悪魔たるデーモンはくすっと笑いを零すと、エースの傍のベッドの端へと腰を下ろした。
「なんだ、覚えてないのか?珍しく泥酔して呼び出したと思ったら…」
 笑いながらそう言うと、手を伸ばしてエースの頬にそっと触れた。
「発生日、おめでとう。昨日も言ったが、その様子だと覚えていないだろうしな。改めて伝えておく」
「…発生日……か。そうだ、思い出した…」
 珍しく泥酔をした理由。それは、自身の発生日にあった。
 仲魔内で祝って貰ったあと、人間界にいる媒体から流れて来たヴィジョン。
 最初からバースディライブと銘を打っていたが、大きな節目の誕生日ならではのサプライズに、相棒から大きな大きな薔薇の花束を貰っていた。
 照れ笑いを浮かべる相棒と媒体に…ふと過ぎった想い。
「…清水が…誕生日の御祝いに、ライブ中に本田から一抱え以上もありそうな大きな深紅の薔薇の花束を貰ったらしい。彼奴も、嬉しかったんだろうな…半ば無意識だったんだろうが、俺のところにまでそんなヴィジョンを送って来た。それを見たら、何だかな……」
「それで深酒をして泥酔した挙句、吾輩を呼び出したと?」
 くすくすと笑いながら、触れたままの指先で頬をなでる。
「嫉妬したのか?本田氏に。清水から、全幅の信頼を得ていることに。そんな、大きな薔薇の花束抱えて、ライブ中でもそんな公開プロポーズ紛いのパフォーマンスさえ許される状況に、自分がいないことが…寂しかったのか?」
「…デーモン…」
 寂しいだなんて…考えてもみなかった。
 媒体のことは、誰よりも良くわかっていた。けれど…それはもう、昔の話。今、媒体のことを一番良くわかっているのは…一番必要とされているのは、相棒なのだと。それが寂しいと言うのだろうか。
 無意識に感じ取った感情。それが、深酒に繋がったのだろう。そして、寂しかったからこそ…人間界にいる恋悪魔を呼び出したのだろう。そこまでは考察することが出来た。
「吾輩だって、ちゃんと昨日祝ってやったのに、忘れるなよ?」
 そう言うと、枕元の一輪挿しから深紅の薔薇を一輪取り、エースの目の前に翳す。
「悪かったな、大きな花束じゃなくて」
 苦笑するデーモンに、エースは大きな溜め息を一つ。
 よりによって…この大切な恋悪魔からのプレゼントを覚えていないとは。枕元の一輪挿しは、後ろを振り返らなければ見えない。だからこそ、先ほどは視界に入らなかったのだ。
「…大きさの問題じゃないから…」
 溜め息と共にそう吐き出すと、手を伸ばしてデーモンの身体を引き寄せた。
「…御免な、ありがとう」
「ま、そんなこともあるさ」
 笑いながら、エースの頭を抱き返し、ポンポンと軽く叩く。
 そして小さく息を吐き出し、言葉を続けた。
「ちゃんと…祝ってやれよ。彼奴は我々とは違う。限りある生命は…我々よりも、ずっと短い。だからこそ、一年一年が大切なんだ。ずっと隣で支えて来た相棒とは、我々が知らない大変な思いをずっと共有して来たんだ。そりゃ、どんな感情が芽生えたって不思議じゃない」
 デーモンの言葉に引っかかったのか、身体を引き離す。そして眉根を寄せてデーモンを見つめた。
「…どんな感情が、って…御前、何を想像しているんだよ…」
「別に変な意味だけじゃないだろう?信頼関係だとかあるじゃないか。まぁ…見ているファンの方は、なかなか想像力が豊かだろうが?それは昔からだがな」
 くすくすと笑うデーモンに、エースは苦笑いしか出て来ない。
 確かに、自身が人間界で活動していた時から、そんな風潮はあった。だからこそ、半分煽って楽しんでいたところもある。勿論、媒体も相棒も、そんな気分で楽しんでいるのだろうが…。
「それにしても彼奴ら…楽しみ過ぎだろう…」
 溜め息を吐き出すエースに、デーモンは笑いを零す。
「まぁまぁ。我々は所詮部外者だ。無条件にずかずかと乗り込むことは出来ないだろう?あの花束のことだけじゃない。彼奴らのやることに…余り介入しない方が良い、ってことだ」
「…わかってるよ、そんなことは。別に俺は、彼奴がやることに介入している訳じゃない。だから何をしようが別に良いんだが…」
 引っかかっているのは、単なる嫉妬。いつだって、一番大事なのは自分だと言われていたから…頭ではわかっていても、素直に受け止められなかっただけで。
「…吾輩がいるだろう?」
 エースの心の中をすっかり見抜くかのような眼差しを向け、その耳元でそっと囁く。
「……ばぁか」
 うっすら赤くなった顔。
「…って言うか、ここ何処だよ。知らない場所なんだが…?」
 話題を変えるかのようにワザとらしく…。そんな姿に、デーモンは笑いながらエースから離れると、持っていた薔薇の花を一輪挿しへと戻して窓を開けた。
「まぁ、御前は初めて見る場所だしな。無理もない」
 窓際に立ち、エースを手招きするデーモン。エースがベッドから降りてそこへ行くと、窓から見える景色へと視線を向けた。
「…あれは枢密院、だよな?え?ここ何処だよ…??」
 確かに、視線の先に…遠くにだが、枢密院が見える。そして自身が勤める情報局も微かに見える。位置関係から考えれば…彼らの仲魔内の屋敷がある方向とはまるで逆方向。心当たりのある場所ではない。
 困惑の表情のエースに、デーモンは小さく息を吐き出した。
「ここは…吾輩の別宅、だ」
「……は?聞いてないぞ…?」
「まぁ、言ったことはないしな。今まで、誰も連れて来たこともない。ここは、吾輩が…生まれた屋敷だ」
「………」
「夕べ…泥酔した御前を、そのまま屋敷に連れて行っても良かったんだがな。吾輩も、急に懐かしくなってな…ついでに御前にとっても、大事な発生日だろう?折角だから…こっちに来てみたんだ」
 思いがけない言葉に、エースは口を噤む。
 遠くを見つめたままのデーモン。その眼差しに映っているのは…昔見た、記憶。
「我々の一族は、同じ血筋だ。言ってしまえば、誰でも跡取りとしての役割は出来たはずだ。吾輩が選ばれたのは、ただ…運良く、誰よりも優れた力を持っていただけ。まぁ…こうして吾輩だけ生き延びたことも、御前と出会えたことも…全部、運が良かっただけ、だ。だから尚更…ここにいるのが嫌だった。でも…今なら、乗り越えられるんじゃないかと思ってな。御前が…吾輩を、呼んでくれたから、な」
「…デーモン…」
 にっこりと笑った眼差し。
 ただ、寂しさを癒す為に選んだ相手だったとしても…一番傍にいて欲しい相手だと、選んで貰えたこと。それが、何よりも支えになる。
「多分…彼奴らも、何かを乗り越えようと思った時に…一番傍にいて、支え合って来たんだろう。それが、強い絆を結んだんだ。簡単に切れるものではないことも、御前はわかっているんだろう?だったら、黙って見守ってやれ。今までそうして来たように、これからだって、きっと彼奴らはまだまだやるぞ?何だかんだ言って、相思相愛だからな」
「…そんな意味深な言い方をするな…」
 苦虫を噛み潰したような表情のエースに、デーモンは笑いを零す。
「目の前の現実だぞ?それから……こっちも、な」
 そう言って、隣のエースへと腕を伸ばし、その首に両腕を絡める。
「発生日、おめでとう」
 改めてそう口にして…そして、頬を寄せる。
「…有難う」
 自然と腰へと手を回し、そっと引き寄せる。そしてそのまま、深く口付ける。
 誰よりも、大切な貴方へ。
 その想いは…同じ想いを抱く者へ。
----悪いな、清水…今回は、エースには内密にさせてくれ。
 深い口付けを堪能しながら、こっそりと心の中でそう謝罪をする。
 嫉妬したのは…ある意味、御互い様、だったのかも知れなかった。

◇◆◇

 誕生日当日の、ライブ終了後の控え室。
「…あれ?何で一輪だけ別になってるの?」
 一輪挿しに、深紅の薔薇。それは、先ほど相棒が渡した花束から抜き取った一輪のようだ。
「あぁ…今日、発生日だから。まぁ…御前から貰ったものだけど、多分…似合うと思って」
「…あぁ、悪魔のエースさんね…確かに、似合いそうね」
 くすくすと笑う相棒。一輪抜き取ったところで、特別怒りもしない。
「…一輪で良いの?一杯あるんだから、もっとあげても良いんじゃない…?」
 たった一輪。少し寂しくも見えるが…それでも、満足そうな笑顔。
「大丈夫。ちゃんと…想いは、届くから」
 一輪の深紅の薔薇に向けられたその眼差しは、とても柔らかい。
 祝う気持ちは、同じ。
 誰よりも…大切な、あのヒトに。
「有難うな」
 にっこりと笑うその笑顔に、小さく笑いを零す。
「これで終わりじゃないし。まだまだ先は長いよ?」
「…あぁ」
 満足そうな笑顔は、二名とも同じだった。

 翌日。この日もまだまだ御祝いムードが満載だった。
「…あれ?昨日の一輪挿しの薔薇は?」
 既に片付けられた一輪の薔薇。持ち帰った様子はなかったが…その場にはもうなかった。
「あぁ、あれな。俺が今日来た時にはなかったんだ。多分……俺の代わりに届けた奴がいるんじゃないか?」
 平然とそう言って退ける相手に、相棒は小さく首を傾げる。
「…何それ?」
「まぁ…良いんじゃない?まだまだ一杯あるし」
 苦笑しながら、そのまま深くは触れない。
 御互いに、介入し過ぎないように。
 ただ、倖せであって欲しい。その想いだけは、共有出来るように。
 それを感じ取ってくれた相手に感謝しつつ…本当は見てみたかった反応を想像しながら、小さな笑いを零した。
 そんな楽しそうな姿を横目に、こちらもまた、こっそりと対抗心を燃やさずに入られなかった。
 誰よりも、大切な貴方に。ただ、その笑顔を見ていられれば。
 その為なら…茶目っ気も盛大に。

「…みんなも腐る?」
 ニヤニヤ笑いながらそう言い放ったその顔に、苦笑せざるを得ない。
 けれど、想いはちゃんと伝わっている。だからこそ、笑っていられるのだ。
 この一年が…ただ、倖せに過ごせるように。そして、また来年も…同じように、一緒に笑っていられるように。
 そんな願いの詰まった二日間だった。
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