聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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異次元回廊 後編
その夜。
みんなが寝静まった頃、ドアがノックされた。
まさか…エースの夜這いじゃないだろうねぇ…
「…誰?」
恐る恐る、問いかけてみると。
「あぁ、俺。ゼノン」
あぁ、良かった。
ベッドから起き上がって、そのドアを開ける。
「起こしちゃった?」
「いや。起きてたから」
怖くて眠れる訳、ないじゃん。
俺はゼノンを部屋の中に促し、ベッドに腰かけた。
「何?」
「あぁ、あのね」
ゼノンは椅子を引きずり寄せ、僅かに声を潜めた。
「ルークさ、今日随分変なこと言ってたでしょ?だから、ちょっと気になって」
そう言ったゼノンの表情は、俺の知ってるいつものゼノンと同じだった。
やっぱりこいつは、変わらないね。
ちょっと安心。
「俺は、変なことなんて言ってない。俺の知ってる構成員は、俺が話した通りの奴等だ」
俺がそう言うと、ゼノンは小さな溜め息を一つ。
「…もしかしたらって、思ったんだけど…ルークもあの噂、知ってるよね?」
「あの噂って?」
「ほら。近くの、四本の植木のこと。あの四本の植木の前のT字路を通ると、お化けが出るってヤツ」
「あぁ。知ってるけど…」
「通らなかった?そのT字路」
「…何で?」
怪訝な表情を浮かべた俺に、ゼノンは説明を始めた。
「俺も、ちょっと気になってたんだけどね…あの噂、満更嘘でもないんだ。まぁ、お化けは出ないけどね」
「じゃあ、何?」
「違次元回廊が、あるらしいんだ」
「…違次元回廊?」
「そう。だから、ルークがあそこを通ったんだとすれば…ひょっとして、ここはルークにとって、次元が違う世界なんじゃないかと思って」
「……」
そう…か。
それで、謎が解けた。
「確かに、俺はあのT字路を通った。通った時、確かに違和感って言うか…何か、変だなってのは、感じたんだ。でもまさか…違次元回廊があったなんて…」
「まぁ…いつもある訳じゃないんだよ。時々、ふっと現れて、いつの間にか消えてる。常にあったら、みんな巻き込まれて大変な騒ぎだよね」
そうだよな。常にあったら大変だ。それに、もしそうだったら、もっと早く気が付いているだろうし。
幾ら生活自体は一緒でも、状況が違うもんな。ここは。
俺は無意識に、違次元回廊を通過してしまった訳だ。
で、ここは本来俺がいた世界とは違う世界。
だから、俺の知っている構成員の姿とは違った訳だ。
「違次元回廊を通って、こっちの世界に来たってことはさ、ここにもう一悪魔の俺がいる、ってことだよね?」
ふと、脳裏を過った疑問。
一体、何人の俺がいるんだろう?
「まぁね。でも、元は一つだよ。魔界にいる御前は一悪魔しかいない訳でしょ?その中から、可能性としてこんな世界もある、と言うことだから。どれが実体なのかは、多分はっきりとした境界線はないんだよ。だから、もしかしたら、この世界にいるルークが本物かも知れないし、御前が本物かも知れない。それは、誰にもわからないんだから。何人のルークがいるのか、誰も知らないんだよ」
そう聞くと、何だかミサ会場を思い出すのは、俺だけ…?
だって、そんな感じしない?大勢のルーク(メイク信者)がいる中で、本物は俺一名、だもんな。何だか、奇妙な感覚だけど…いつまでも、こうしている訳にも行かない。
「…どうしたら、元の世界に帰れる?」
やっぱり、自分がいた世界に帰りたい訳だ。
俺は、そんな思いを込めて、ゼノンに尋ねた。
「そうだねぇ…どうやったら確実に元の世界に帰れるかと言うことは、俺にもわからないよ。でも、もう一度あの回廊を通れば、ひょっとしたら…まぁ、今もあるって言う確証はないけどね」
済まなそうな表情を浮かべ、ゼノンはつぶやく。
その答えに、俺は溜め息を一つ。
でも、まぁゼノンの所為じゃないし。
「悪かったね、別に、あんたの所為じゃないのに…俺が、噂を信じなかっただけだもんね。自業自得か」
僅かに自嘲気味の笑いを零したものの…
「…ひょっとして、俺がこっちの世界にいるってことは、こっちの世界のルークは、俺がいた世界に行ったってこと…?」
「じゃ、ないのかな?」
「……」
思わず沈黙…
まさか、エースに迫ったりなんか、してないだろうねぇ…
元の世界には帰りたいけど、とんでもないことになってそうで恐いなぁ。
「…ま、とにかく…」
俺は諦めて、深く息を吐いてから言葉を発した。
「もう一度、あの道に行ってみるよ。したら、戻れっかも知んないんでしょ?」
「まぁね。でも、ひょっとしたら、もっと変な世界に飛んじゃう可能性もあるんだよ?多分…向こうのルークも、向こうのゼノンに同じような説明、受けてるんじゃない?だとしたら、無理矢理にでも空間繋けちゃっても、大丈夫だと思うんだけど…」
「それを早く言ってよね…」
脱力…
うぅっ…俺って、何って間抜けなんだろうっ。気付かない俺も俺だよなぁ。
深い深い溜め息を吐いた時、ゼノンはちょっと不思議そうな声を、その口調に乗せた。
「…そう言えば…俺、聞いてみたいと思ってたんだけど…ルークのいた次元ではさ、俺とライデンが、恋悪魔同士だったよね?」
「…え?あぁ、そうだよ。すっごく甘いの。回りの目なんて、気にしてないんだろうね、きっと」
そうだよな、確かに。
平気で抱き合うわ、夜は暴れてるわ…おっと。これは、口が滑った。
ま、とにかく。
完全に御互いを必要としてるってのは、間違いないよな。
「…そうか。想像出来ないけど…それはそれで、楽しいんだろうね、きっと」
ゼノンは僅かに目を細めて、そうつぶやいた。
まるで、自分も楽しみたいって感じの口調だよね、これって。
「…嫌いじゃ、ないんじゃないの?ホントはさ」
ひょっとすると、ひょっとして…
そう尋ねた俺の声に、ゼノンは僅かにその頬を赤らめた。
「そ…っんなこと…」
おっ。この反応は。
良いねぇ、初々しくって。
あっちのゼノンみたいに、変に捻くれてなくって。
「きっと、上手く行くと思うよ。俺の知ってるゼノンとライデンはさ、まぁたまには喧嘩もするんだろうけど、すっごい仲良いからさ。あんただって、例外じゃないと思うよ、俺は」
そう言った俺の声に、ゼノンってば、顔を赤くしてうつむいてしまった。
初めて見たね、ゼノンのこんな反応。
「…ライデンにも、俺から話そうか?」
こうなったら、何とかしてでもまとめてやりたいって感じがするんだけど。
俺の言葉に、ゼノンは顔を赤くしたまま、小さくつぶやいた。
「俺は…別に、そんなんじゃ…」
「照れない、照れない」
面白いわ、こりゃ。
思わずにんまりと笑みを零した俺を、ゼノンは横目で睨む。
「余計なこと、吹き込まないでよねっ」
「誰に?」
「決まってるでしょ!?ライデンにだよっ」
「何で?」
「だって…」
口を噤んだゼノンは、ますます真赤になる。
俺は小さく一息吐くと、ゆっくりと口を開く。
「ねぇ、ゼノン。俺さ、前にゼノンに…あぁ、あっちの次元のゼノンにね、言われたことがあるんだ。好きなら好きだってきちんと言葉にして言わないと、気持ちは伝わらないって。いつかきっと、後悔するって。だから…さぁ」
「……」
「あんただって、ホントはそう思ってるんでしょ?だったら、あんたの方から伝えても良いんじゃない?」
「俺は…」
「デーさんの言葉を借りるなら、勇往邁進」
「ルーク…」
未だ、頬を赤く染めたゼノンが、俺に何かを言いかけた時。
ふと、部屋の中の空間が歪み始めた。
「…おや、まぁ。御早い決断だこと」
それが何なのかわかった俺とゼノンは、思わず顔を見合わせてくすっと笑う。
ホント、随分早いじゃないの。
歪んだ空間に亀裂が入り、向こう側が見え始めた。
その向こうに見えたのは、勿論もう一名の俺と、もう一名のゼノン。
やっと一名通れるだけの大きさになった亀裂から、こっちの次元のルークがやって来る。
「とんだことになったねぇ」
「全く」
くすくすと笑いを零しながら、俺たちは御互いに元の次元へと戻った。
「御帰り」
にっこりと微笑んで迎えてくれたのは、勿論ゼノン。
亀裂が閉まる直前に、俺は向こうの次元のゼノンを振り返る。
「頑張れ、ゼノン」
「…ありがと」
小さく笑ったゼノンは、何かを吹っ切ったようにも思えた。
「じゃあね」
向こうの世界のゼノンとルークに手を振ると、俺の目の前で静かに亀裂は塞がり、歪んだ空間は元に戻った。
「向こうのゼノンと、何話してたの?」
時計の時間は真夜中をとっくに回っているのに、結局寝そびれた俺とゼノンは、リビングでコーヒーを飲んでいた。
「ちょっとね、魔生相談」
「は?」
思わず、笑いが零れてしまった。
しかし、すぐにハッと我に返った。
そう言えば…向こうのルークって……
「ねぇ、ちょっと聞きたいんだけど…」
「何?」
無垢な顔で問い返すゼノンに、俺は思わず赤面…
「あのさぁ…さっきの…違次元のルーク、エースに何か変なことしなかった?」
「え?あぁ、何か言ってたよ。ルークが抱きついて来ただとか、迫って来ただとか…俺とライデンが仲良くしてるのも変だって。多分、向こうの次元では違ってるんだろうね」
と、ゼノンはさして気にも留めていない様子。
まぁ、ゼノンは良いんだけど…
頭を抱えた俺が、溜め息を吐いたのを見たゼノンが、くすっと小さく笑った。
「大丈夫だよ。事情は、俺がちゃんと聞いたから、朝になったら説明してあげるよ」
「頼んだ」
「任せておいて」
やっぱり、ゼノンはこう言うところで頼りになる。
何はともあれ、やっと元の次元に戻って来れたことで、何となくほっとしてしまった訳である。
ゆっくり眠ることも出来ず、ベッドの中で何となくうとうとしているうちに、あっという間に昼近くになっていた。
俺が大きな欠伸と共にリビングに行くと……
「…な…んだよ」
そこにいたデーさん、エース、ライデンまでも、俺から逃げ腰じゃないか。
「御前、熱でもあるんじゃないのか?」
恐る恐る尋ねるのは、当然と言えば当然か…
「俺は熱もないし、何処もおかしくない。昨日の俺は、俺じゃない。あれは違次元のルークで…ゼノンから聞いてない?」
「ゼノン?まだ起きて来ないが?」
「……」
答えたデーさんの声に、思わず溜め息を一つ。
俺が説明しても良いんだけど…この調子だと、まだ納得してくれなさそうだし…ま、ゼノンが起きてくれば、みんなに説明してくれるだろう。
俺は、疲れた。
んでも…ちょっと遊んでみようかねぇ。
すっとエースに近寄った俺に、エースは僅かに身を引いたけれど、先程のようにあからさまではない。
と、言う訳で。
「エースっ」
「だーっ!!何しやがるっ」
その頬に軽くキスすると、咄嗟にエースは俺から飛び退いた。
「冗談だって」
くすくすと言う笑いを、エースの焦った顔に向ける。
デーさんもライデンも、呆然とした表情。
昨日もきっと、こうだったんだろうね。
しかしまぁ、俺も随分驚かされたことだし…これで少しは欝憤が晴れたって訳だ。
俺も元の次元に戻った訳だし、お化けの噂のあるあの植木には気を付ければいい訳だし、この先の問題はない訳だ。
他の構成員にも、後で話してやろうか。
とにかく、放置してもっかい寝るっ!
その後、起きて来たゼノンが状況を説明して、昨日の謎は全部解けた訳だ。
これで、俺も安泰!
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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