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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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秘薬
こちらは本日UPの新作です
ほんのりエロいです…スミマセン…。
お気をつけて行ってらっしゃい(^^;

拍手[5回]


◇◆◇

 その日の仕事を終えて外へ出ると、無情の雨が降り注いでいた。
「…あ~…傘……」
 思わず、溜め息が零れる。
 そう言えば、午後から雨が降るから傘を持って出ろと、誰かに言われた記憶はある。ただ、面倒だったことと…ちょっとぼんやりしていてうっかり持って出るのを忘れてしまった。
「ゼノン様、傘、御貸ししましょうか…?」
 出入り口で空を見上げてぼんやりと佇んで溜め息を零していれば、それはまぁ、傘がなくて帰れないのだと思われても無理はない。実際、そうなのだから。
「…いや、大丈夫。たまには濡れて帰るよ」
「そうですか…?風邪を引かないように、気をつけて下さいね?」
「大丈夫だよ。有難う」
 声をかけて来た職員にそう返すと、外套のフードを頭に被り、雨の中を歩き出す。
 屋敷まではそんなに遠くはない。一応外套は羽織っているし、頭を覆うフードも付いている。土砂降りではないのだし、もう帰るだけなのだから、濡れたところでさしたる問題はない。そう、判断した結果だった。
 そして、久し振りに雨の中を歩いて帰ったゼノン。
 その判断の甘さを実感するのは…翌日になってから、だった。

「…あれ?ゼノン、いないの…?」
 翌日、文化局のゼノンの執務室を訪れて来たライデンは、珍しく閉ざされたままの執務室のドアの前で首を傾げた。
「これはライデン様。ゼノン様でしたら、本日は御休みですよ?」
 物音を聞きつけてやって来た副官の翠雨(すいう)にそう声をかけられ、更に首を傾げる。
「休み?休暇とは聞いてないけど?」
「えぇ、体調不良だそうです。珍しいこともありますね」
 普段、体調を崩すことが殆どないゼノンだけに、その珍しい理由に翠雨も苦笑している。
「レプリカ様はいらっしゃっておりますから、酷くはないと思いますよ。詳しいことはレプリカ様に御伺いになったら如何ですか?」
「…そう、か。わかった。有難うね」
 翠雨にそう返し、ライデンはレプリカのいる監査室へと足を向ける。そしてそこで出迎えてくれたレプリカに、事の真相を聞くこととなった。
 当然、その後のライデンの行動は、予想の範疇であった。

◇◆◇

 遠くで、話し声が聞こえる。
「………うん………るって。じゃあ………くね」
 断片的な言葉ではあったが、その声には聞き覚えがある。そう思った瞬間、ふっと眠りから覚めた。
 頭が痛い。身体がだるい。自分の体調を認識すると、溜め息が零れた。
 と、その時。
「あ、起きた?ってか、起こしちゃった…?」
「…ライ…」
 まだ、頭はぼんやりとしている。けれど、そこにいるべきではないと、ぼんやりと認識はしていた。
「…うつるから…」
 そう零した声は嗄れている。そして当然、喉も痛い。マスクはしているものの、それでうつらないと言う確証は何処にもない。
「大丈夫、大丈夫。俺のマスク、二枚重ねだから」
 くすくすと笑いながら、そう言ってベッドの傍へと歩み寄って来る姿。確かに、マスクをしている。
「レプリカから聞いたよ。昨日、傘がなくて雨に濡れて帰って来たんだって?そこまでしなくたって、転移して帰ってくれば良かったのに…ここに連絡入れたら、誰かしら迎えにだって行っただろうに」
 ベッドの端…その顔の見える場所に腰を下ろし、そう言いながらその指先で額に触れる。
「熱はそんなにないんだね。頭痛いの?」
「…まぁ…薬は飲んだから。レプリカにも、心配しなくて良いからって話したし…他にも使用魔はいるから」
 そう言った途端、げほげほと咳き込む。
「まぁ、忙しかったからね。ゆっくり休んで。看病したげるから」
 滅多に見られない、病床のゼノン。その姿に、当然ライデンは楽しそうである。
「…駄目だよ。御前にうつしたら…」
「大丈夫だって。あんただってマスクしてるし、俺だってその為にマスク二枚重ねだよ?あんたが辛い時ぐらい、看病させてよ」
「ライ…」
 反論をしようとしても、体調が悪いと何もかもが億劫になる。ゼノンも例外ではなく…今はそんなことよりも、とにかく眠りたかった。
「ゆっくり休んで。早く良くなってね」
 ゼノンの表情でそれを察したのか、小さく笑うとそっとゼノンの頭を撫でた。
「…もぉ…知らないからね…」
 そうつぶやきながらも、その意識は既に落ちかけていて。
 そっと触れられた、人肌の温かさ。それが、病床の身体にじんわりと染み込んで来るようで、とても気持ちが良い。
 そんな感覚の中、ゼノンは眠りに落ちていた。

 すっかり日が落ちて仕事から戻って来たレプリカは、直ぐにゼノンの寝室に様子を見に来た。
 他の使用魔の話では、ライデンが感染対策にマスクを二枚重ね、そのまま寝室で看病しているのだとか。そのライデンの様子も気になり、控えめにドアをノックする。
 けれど、返事はない。
 もう一度ノックをして暫くすると、大きな欠伸を零しながらライデンがドアを開けた。
「あぁ、御免。ゼノンの寝顔見てたら、俺もつい寝ちゃって。もう夜じゃん…」
 そう言うライデンは…既に、マスクをしていない。
「ライデン様、マスクは…」
「ん~?あぁ、やっぱり二枚は息苦しくてさぁ、寝た時に外しちゃったみたい」
 悪びれた様子もなく、頭をぽりぽりと掻きながらそう答える。
「ゼノン様に怒られますよ…?」
 レプリカは小さな溜め息を一つ。普段から、ライデンの体調管理を気にかけているゼノンにしてみれば、自分が風邪をうつしたなどと言う事態だけは避けたいのだろう。レプリカもまた、ゼノンの許可を得ずにライデンに話してしまった手前、ここで体調を崩されると責任を感じるのだろう。
「…ゼノンが起きる前にするから…」
 レプリカの表情でその真意を察したのだろう。流石に気まずそうな表情を浮かべ、ベッドの上に放り出していたマスクを取りに行く。そして、大人しく二枚重ねのマスクを装着した。
「これで良いでしょ?」
「…ゼノン様もマスクをしてらっしゃるとは言え、咳をしておられますから…本当なら、同じ部屋にいることも良いことではありませんが…」
 小さな溜め息を吐き出したレプリカ。今のライデンには、言っても聞かないことはわかり切っている。だからこそ、絶対約束を守る、と言うことで許可をしたのだから、これ以上レプリカも何も言えない。
「御食事と眠る時は、この御部屋ではいけませんよ?」
「わかってるから…」
 ライデンとて、レプリカの気持ちもわからなくはない。だから、約束は守らなければ。
「閣下に御連絡は?」
「うん、さっき隣のコンピューター借りて、ちゃんと連絡入れたから。勿論、雷神界にも、ね。だからそれに関しては大丈夫。ちゃんとマスクもするし、あんたとの約束は守るから」
「…わかりました」
 事前にレプリカと交わした約束は、きちんと守っている。それだけに、これ以上反論も出来ない。
「では、御食事の用意が出来ておりますので、御先に御召し上がり下さい、とのことですので」
「はいよ」
 まだ眠気が残っているのか、大きな伸びを一つすると、一旦ゼノンの様子を見に戻る。そして、まだぐっすり眠っているのを確認すると、レプリカに促されるまま、ゼノンの寝室を後にした。

◇◆◇

 ぼんやりとした意識の中…ずっと、傍にある温もり。
 触れられている…と言うか、撫でられている、と言う方が正しいのだろう。
 だるくて、目を開けられない。けれど、心地良いと感じる感覚も残っていた。
 こんな風に…全てを誰かに委ねてしまったのは、一体いつ振りだっただろうか…。
 そんなことを考えながら、その意識は再び闇に落ちた。

 小さなノックの音に、ハッとしたように顔をあげる。
「…はい」
 そっとドアを開ければ、そこには心配そうなレプリカの顔があった。
「大丈夫ですか?」
 控えめに問いかけられた声に、彼はくすっと笑った。
「大丈夫。まだ良く眠ってるし。熱も上がってないし、咳もそんなに出てないよ」
「そうですか」
 ホッとしたような吐息。そして、再び問いかけられる。
「ライデン様は大丈夫ですか?少し、御休みになられた方が…」
「俺は大丈夫。夕方ちょっと寝たし。眠くなったら、ちゃんと隣の部屋に行くから心配しないで」
「…御無理をなさらないでくださいね」
「わかってるよ」
 にっこりと笑ったライデンに頭を下げ、レプリカは自分の仕事に戻って行った。
 再び、ゼノンの傍に戻って来たライデン。ゼノンはまだ、ぐっすり眠っている。
 ベッドのゼノンに寄り添うかのように、その床へと腰を落としたライデンは、ベッドの上に頬杖を付き、空いている手でゼノンの頭にそっと触れた。そして、その顔をじっと見つめながら髪をそっと撫でる。
「……もっと触りてぇな…」
 その寝顔に、小さくつぶやいた声。勿論、眠っているゼノンに届くはずもない。
 元気な時であれば、こんなに遠慮することもない。もっと、べたべたくっついていて当たり前。ほんの数日離れていただけなのだが…触れられないもどかしさと、ゼノンの体温が懐かしい。
「…ゼノン…寂しいよぉ…」
 そうつぶやきながらも、ゼノンの回復を願うのなら、静かに寝かせてあげるのが一番なのは良くわかっている。
「…俺が具合悪い時…いっつも、あんたはどうやって時間潰してたの…?」
 思わず、寝顔に問いかける。
 ライデンが体調を崩して寝込んでいる時も、目を覚ませば大抵ゼノンは傍にいた。自分の寝顔を、どんな風に思って眺めていたのか…まだ、そこまではわからない。
 溜め息を一つ、吐き出す。
 長い夜は、まだ始まったばかりだった。

 真夜中過ぎに一旦ゼノンの傍を離れたものの、日が昇ってもれなくしてライデンはゼノンの寝室へと戻って来ていた。
 ベッドに横になったものの、ぐっすりとは眠れなかった。安定しているとは言え、やはりゼノンの様子が気になって、朝早くから様子を見にやって来たのだ。
 返事は返って来ないと思いつつ、そのドアをそっとノックする。すると、予想外に声が返って来た。
『…はい?』
「…俺。入るよ」
 ドアを開けると、シャワーを浴びたばかりなのだろうか…バスローブを羽織って、髪を拭いているゼノンがいた。その顔にマスクは、非常に不釣合いではあるが。
「…どうしたの?こんな朝早くに…」
 突然のライデンの登場に驚いたゼノンであったが、ライデンの方も、まさかゼノンがそんな格好でいるとは思わなかった為、呆気に取られていた。
「…えっと…具合、もう良いの…?」
 やっとで出て来た言葉は、それだった。その言葉に、ゼノンは小さく笑いを零す。
「大体ね。昨日丸一日眠って、身体は随分楽になったよ。汗もかいたから、取り敢えずシャワーは浴びたけど、今日はもう一日仕事は休み。まだ少し咳は出るから、マスクはしててね」
「あぁ、うん…」
 そう言われ、思い出したように手に持っていたマスクを装着する。勿論、二枚重ね、で。
「…元気になって来たみたいで良かった」
 思ったよりも元気そうなその姿に、ライデンもホッと一息吐き出すと、ベッドの端に腰を下ろした。
 ゼノンもバスローブから部屋着に着替え、ライデンの隣に腰を下ろす。
「昨日は有難うね。俺はもう大丈夫だから、御前もゆっくり眠っておいで。ロクに寝てないでしょう?」
「…うん……」
 確かに、ロクに寝てはいない。けれど…だからこそ、寧ろ変に目が冴えて眠れないだろうと思った。
 何より…シャワーを浴びたばかりのゼノンが、直ぐ隣にいると言うのに。呑気に寝ていられる訳はない。
「…寝る前にさぁ…」
 暫く考えた末、ライデンは自分の手元をじっと見つめたまま、そう口を開いた。
「うん、何?」
 何の疑いも持たず、問い返したゼノン。
「……キスしても良い?」
「…ライ?」
 顔をあげたライデンは、その視線を真っ直ぐにゼノンへと向けた。
「キスしたい」
「ちょっ…本気なの?駄目だよ、うつるから…」
「大丈夫。マスク、外さないから」
 ライデンはそう言ってくすっと笑うと、身体をずらしてゼノンの首へと腕を回した。そして些か強引ではあったが…少し頬を傾けると、マスクをしたままゼノンに口付ける。
 いつもと同じように。だが、そこはライデンの二枚重ねのマスクと、ゼノンのマスク一枚が間にある訳で…間に三枚挟まっていれば当然、いつもとは違う。
 唇に触れるものは、マスクなのだから。何の感慨もない。
「…満足?」
 顔を離すと、ゼノンがそう問いかける。
「…の訳ないじゃん」
「…だよね…」
「だけど、約束だからね。しょうがない」
 目を細め、小さく笑ったライデン。
「早く良くなってね。でないと…今だって足りてないのに、もっと欲求不満になる…」
「ライ…」
 ライデンはゼノンの首筋に顔を埋め、自分の額を摺り寄せる。マスク越しにでもわかる暖かい芳香は、紛れもなくゼノンの匂い。
「マスク越しじゃ、あんたの温もりも、呼吸も、感触も、全部物足りないもん。当然、それで満足は出来ないけどさ…治ったらその分返して貰うから」
「返す、って…」
 顔を上げ、にんまりと笑うライデンに、ゼノンも小さく苦笑した。
「早く治ってね」
 念を押すようにもう一度そう言ったライデン。
「まぁ…善処はするよ」
 ゼノンも、そう、言わざるを得ない。
 そんな話をしていると、ドアがノックされた。
「どうぞ」
 声をかけると、ドアを開けてレプリカが顔を出した。
「おはようございます。起きてらっしゃいましたか?……ライデン様ももう起きられたのですか?」
「うん、おはよう」
 夜中に部屋に戻ったはずのライデンが、既にここにいる。そのことに目を丸くしたレプリカに、ゼノンは小さく笑った。
「さっき、来たばっかりだよ」
「そうでしたか」
 ゼノンを心配して、朝早くから様子を見に来たのはライデンもレプリカも同じこと。その気持ちがわかるが故に、レプリカも小さく笑いを零した。
「御加減は如何ですか?」
 ゼノンにそう問いかけると、ゼノンも再び笑いを零す。
「うん、まぁまぁかな。今日も仕事は休みの連絡を入れてあるけど、だいぶ楽になったからシャワー浴びて来たんだ。洗濯あるから宜しくね。あぁ、一応シーツも」
「畏まりました。まだ少し早いですが…御食事はいかがしますか?何でしたら、御食事の間に空気の入れ替えと御掃除を致しましょうか…?」
「…そうだね。食事も向こうで食べられるから大丈夫。そう伝えて」
「畏まりました。ライデン様もご一緒で大丈夫ですね?」
「うん。有難うね」
 レプリカが部屋から出て行くと、 改めて安堵の吐息を吐き出す。
「思ったより早く良くなって安心した」
 しっかりした姿は、いつものゼノンと同じ。
「まぁ…完全じゃないけどね。まだそんなに頭回ってないけど。レプリカが仕切ってるからだよ」
 くすくすと笑うゼノン。
 確かに、何処か気の抜けたような笑い。それでも、昨日の姿からしてみれば随分回復はしているはず。
「御飯食べたら、もう一眠りしようね」
「そだね」
 流石にライデンも寝不足でちょっとぼんやりしている。
 今日一日ゆっくり休めば、しっかり回復もするだろう。
 それから暫くして、ライデンはゼノンと連れ立って食事へと向かった。

 食事を終えた二名であったが、ゼノンの部屋はまだ掃除中。到底、ゆっくり休むことなど出来ない。
「まだ終わってないみたいだけど、どうする…?」
 問いかけたライデンの声に、ゼノンは小さな笑いを一つ。
「部屋は他にもあるじゃない?」
「そりゃ、部屋は他にもあるけど……って、え?」
 一瞬、意味がわからない…と言う表情を見せたライデンだったが、にっこりと笑ったゼノンに手を引かれてやって来たのは、ライデンに…と宛がわられている部屋…つまり、ゼノンの寝室の隣の部屋。
 そしてその部屋へと入ると、ゼノンはパタンと閉めたドアに寄りかかる。
 そして。
「どうせだから、一緒にもう一眠りしよう」
「…一緒に?」
「そう。一緒に」
「……レプリカに怒られない…?夕べだって、寝る時は部屋に戻れって言われたんだけど…」
 本当はライデンとて、一緒にいたいのだが…レプリカと約束しているが故に、やや及び腰である…。
「少し咳は出るけど、薬は飲んでるし、シャワーも浴びて全部着替えたから、服に菌も付いてないしね。取り敢えずマスクさえ外さなければ大丈夫かな」
「…大胆~」
 思わず笑いを零したライデン。けれど、その誘惑に勝てるはずもなく。
「さ、一眠り」
 先にベッドに入ったゼノンに呼ばれ、ライデンも隣へと潜り込む。そしてぴったりと寄り添うように身体を寄せた。
「…ホントに良いのかなぁ…」
 すっかり隣に収まった状態でも、まだちょっと気が引ける。そんな思いでつぶやいたライデンに、ゼノンは笑いを零す。
「背徳感で興奮するでしょ?」
「…あんたってヒトは…寝るっつってんのに、興奮したら寝れないじゃん」
「寝てて良いよ。ゆっくり休んでね」
 くすくすと笑いながら、ゼノンはライデンの身体に手を伸ばすと、くるっと向きを替え自分に背中を向けるように向こう向きにすると、背中を抱えるようにそのまま抱き締める。
「…もぉ…」
 ゼノンが何を考えているのかはわからないが…いつもと何かが違うと思うのは、多分病みあがりだから。普段余り体調を崩さないゼノンだからこそ、回復過程は謎でしょうがない。
「…ねぇ…聞いても良い?」
 背中にゼノンの体温を感じながら、ライデンは夕べ頭を過ぎったことをふと思い出した。
「いつもさぁ、俺が具合悪くすると、付きっ切りで看病してくれるじゃん?」
「…うん。それがどうかした?」
「俺が眠ってる間って…あんた、いつも何してんの?」
「…は?」
 思いも寄らないことを問いかけられ、ゼノンも不思議そうな声を上げる。
「いや、だからさ…俺ね、夕べあんたの寝顔見ててさ、もっと触りたいな~とか…寂しいな~って思った訳よ。ゆっくり休ませてやりたいって思いはあるから、頭撫でるくらいしか出来なくて…で、あんたはいつも何を思って、どうやって時間潰してるのかな~って…」
「あぁ…そう言う事…」
 ライデンの言葉を聞きながら、ゼノンも夕べのことをぼんやりと思い出す。
 頭を撫でられている感覚はあった。それが、とても気持ち良かった、と言う記憶も。
「…俺も、同じだよ。早く良くなってね、って言う思いは勿論だけど…寂しかったり、物足りないなって思う気持ちは当然あるし。だからこそ、早く治って貰おうって思うんだよね」
「じゃあ…あんたも、欲求不満ってこと?」
「…御前ほどあからさまじゃないけどね…」
「…あからさまじゃないって言いながら、俺の身体を弄るこの手は何だ」
「ん?気の所為じゃない?」
「そっか~…って、んな訳あるかいっ」
 くすくすと笑いながらそう言うライデンに、ゼノンも背後で笑いを零している。
 ライデンの言う通り、話しながらライデンの身体をさわさわと弄っているゼノン。勿論、くすぐったくはあるが…それ以上に、何とも言えない感覚が背中を這い上がって来る。
「ちょっ…寝るんじゃないの?」
「うん、寝るよ?俺たちが両方とも満足したらね」
「…もぉっ」
 くすくすと笑いながら、首元に顔を寄せて来るゼノン。当然、マスクをしているので、いつものようにそこにキスされる訳ではないのだが…その代わりに、顔を摺り寄せて来る。
「くすぐったい~」
 モゾモゾ動く感覚に笑いながら声をあげる。すると、ゼノンは片手でライデンの口を押さえ、顔をあげて耳元で囁く。
「…レプリカに聞こえちゃうよ?」
「……っ」
 普段なら、今更何を…と思うところだが、流石にまだマスク着用令が出ているのだから、一つのベッドでイチャついている姿を見られようものなら、怒られるのは必至な訳で…余り声をあげる訳にはいかない、と言うところだろう。
 勿論、ゼノンはそれを承知でライデンに手を出しているので、遠慮も手加減もするはずもない…。
「我慢出来なくなったら言ってね」
 笑いを含んだ声でそう囁くと、ゼノンは上掛けを頭から被り、身体をずらして更に下へと潜り込むと、再びライデンの身体を弄り始めた。
 着ていたTシャツは首元まで捲り上げられ、裸の胸や腹は掌で。背中はマスク越しのゼノンの鼻と口で。
 弄られ、撫で上げられ、マスク越しに甘噛みされる。マスクの感触と熱い息が腰から背中、首筋まで這い上がる度、ゾクッとして身悶え、反射的に思わず身体を丸くする。どんなに堪えようとしても甘い声が微かに零れてしまう。
 既にちょっかいを通り過ぎ、完全に愛撫と化したその行為に、ライデンはただ声をあげないようにと必死にマスクの口許を押さえていた。
 そして、その愛撫に堪えること暫し。
 流石に我慢の限界に達したライデンは、身体の上からバサッと上掛けを剥ぎ取る。
「…ライ?」
「…も、だめ…」
 真っ赤に上気した顔で荒い息を零すライデンは、バッと身体を起こして背後にいるゼノンのマスクを剥ぎ取る。そして自分のマスクも二枚まとめてぐいっと顎まで下ろすと、ゼノンの上に覆い被さる。
「頂戴」
 そう一言吐き出すと、まるで噛み付くように深く口付けた。
 温もりも、呼吸も、感触も、余すことなく堪能する。
 歯止めを失った後は、御互いが満足するまで終わらない。
 両名が再び眠りに落ちたのは、日がだいぶ登ってからだった。

◇◆◇

 日差しが少し傾き始めた頃。やっとライデンは目を開けた。
「おはよう」
 自分の隣で、横たわったままそう言って笑う顔には…マスクがある。そして当然、ライデンもいつの間にかマスクをつけている。
「…おはよう…」
 時間的に、既におはようの時間ではないのだが…相手にそう言われてしまっては、そう答えるしかない。
 着ていたはずの服は…しっかり二名分、ベッドの下に放り投げられている。それが目に入ると、もそもそと上掛けを引き寄せて包まりながら、ちょっと気まずそうに問いかける。
「…俺…あんたにキスした…よね?」
「うん。マスク剥ぎ取られて襲われちゃったね」
 くすくすと笑うゼノンに、流石のライデンもちょっと赤くなる。
 覚えていない訳ではないのだが…興奮し過ぎて、所々記憶が抜けている。マスクを剥ぎ取ってキスしたのも、現実だったかどうか、定かではなかったのだ。
 だがどうやら…現実だったらしい。
「だってあれは、あんたがあんなにエロいことするからいけないんじゃん!欲求不満だって言ってるのに…我慢出来なくなるの、当たり前じゃん…」
「でも、解消したでしょ?欲求不満」
「…まぁ…」
 ライデンにしては珍しく、照れている。その姿を見てくすくすと笑うゼノンは、明らかに最初からそれを狙っていたとしか言い様がない。
「…レプリカとの約束、破っちゃったね」
 そう言われ、ライデンは小さく溜め息を吐き出す。
「まぁ、しょうがない。これから体調崩すとしたら、俺だけだもん。そしたらまたあんたに看病して貰えば良いだけの話だからね。でも、レプリカには内緒だよ…?」
「あぁ、そのことだけど…一緒に寝てるのは見られてるから」
「………は?」
「もう昼過ぎだからね。食事はどうするか、って聞きに来たよ。服はドアから見えない方に落ちてるし、俺も御前も上掛けに包まったままだったから、多分、裸なのは見られてないとは思うけど」
 レプリカもゼノンも慣れているとは言え…ここまであっけらかんと言われてしまうと、流石にライデンも唖然とする…。
「…俺が怒られるじゃん…」
「大丈夫だよ。マスクだけはしてたから」
「……マスクだけはって…」
 だから、寝付く前につけた記憶のないマスクをつけていたのだ。自分も、ゼノンも。
「…変なの。服着てないのにマスクだけして」
 思わず、笑いが零れた。
「どんだけ有能で凄い防御力あるんだよ、マスク~~」
「とにかく凄いんだと思うよ。多分、最強の防具なんだろうね。まぁ、イチャついてるのは予想の範囲内だったみたいだし。無言で溜め息は吐かれたけどね」
 ゼノンもくすくすと笑いを零す。それで笑っていられるのは、主の権限があるから、だろうか。
「後で謝っとかなきゃ…」
 幾ら恋悪魔とは言え、流石に昼間っからこんな無防備な姿を晒してしまったのは、ライデンには不覚だった訳で。いつまでも笑っていられる訳でもない。
「しょうがないから、後で一緒に謝ろうね」
「…だぁね」
 まぁ、今更何を言っても仕方ない訳で。だったら、潔く謝るしかない。
 くすっと笑いを零したライデンに、ゼノンもにっこり笑いを零す。
「おなか空いたでしょ?御飯食べに行こう」
「うん」
 服を着ると、ゼノンに促されるままに一緒に部屋を出る。
「…ところで、体調はどう?」
 ふと思い出して問いかけた声に、ゼノンはにっこりと微笑む。
「うん、もう大丈夫。多分、完治したんじゃないかな。御前のおかげだよ?」
「…そう言われるとね…」
 それが何を指しているのかは微妙なところであるが…まぁ、元気になったのなら、文句は何もない。
「じゃあ、マスク解禁?結構息苦しいんだけど…」
「キスもちゃんと出来ないしね?」
「…穿り返すなぁ…」
 思わず苦笑するライデン。まぁ、それも元気になったから笑えるのであって。
「今度はちゃんと、傘持って出なよ」
「うん、気をつけるよ」
 くすくすと笑いながら、そっと手を取る。
 繋いだ手の温もりが、何よりも有難いと思えた。

 後ほど、彼等が揃って頭を下げると、レプリカが笑ったのは言うまでもない。
 彼等の行動は、全てレプリカの想定内だった。
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プロフィール
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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