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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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覚醒 ~side A~前編
こちらは、以前のHPで2007年10月31日にUPしたものです
注)あくまでも創作ですので、辻褄が合わないことがあっても目を瞑ってください…(苦笑)

拍手[1回]


◇◆◇

 夕べ…と言うか、今朝と言うか…とにかく、俺は変な夢を見た。
 艶やかな黒髪に白い顔、赤い紋様を纏った、変な奴。
 そいつが、俺を見て笑っていた。
 目が覚めた時、何だか落ち着かないような…変な気分だった。
 何だか…嫌な雲行きになりそうな予感がする…。

◇◆◇

「清水先輩、どうしたんです?」
 不意にそう声をかけて俺の顔を覗き込んだ、不思議そうな二つの瞳。
 いつの間にか、ギターを弾く手が止まってたんだな。
「いや、何でもない。ちょっとな…」
 思い出してたんだ。あの、妙な夢を。
 でも、そんなことをわざわざこいつに話す必要もないだろうし。
「そうですか?ここんとこ、ずっと根詰めてましたからね。疲れたんじゃないですか?ね、休憩にしません?」
 まるで小さな犬コロのような期待の眼差しを向けられ、思わず笑いが込み上げて来る。
「そうだな。休憩にするか」
「やった!」
 にっこりと笑いを零し、嬉しそうに腕を振り上げる。
 こいつってば、本当に凄く素直だよな。腕っぷしの強いドラマーだとは到底思えない程、可愛いところもあるし。
「ほい、清水先輩。どぞっ」
「サンキュー」
 差し出された缶コーヒーを手に取り、俺は顔を上げた。
 その時丁度良くドアが開き、ギターを担いだ男が入って来る。
「浜田さん…随分遅かったじゃないですか…」
 愚痴を零した俺。
 彼はその声に頭を掻きながら、笑って答えた。
「あ~…悪い悪い。出掛けに電話入ってさ。ほら、今度紹介するって言った奴、いただろ?奴がさ、何だか知らんが都合が悪くなったって言って、また暫く来ないって言うもんだから…」
「はぁ……」
 出掛けに電話、って…今日の講義は出てなかったのか…?まぁ…俺が口を挟むことじゃないか…。
「浜田先輩、その人、誰なんです?そろそろ教えてくれても良いじゃないですか?」
 俺の横でそう問いかける声に、軽く天井を見上げ、その顎の先を神経質そうな指先で辿っている。
「ん~、そうだな…まぁ、強いて言うなれば…将来有望とでも言おうか。頭の回転も速いし、口も達者だしな。親父の信頼も厚いし…」
「あれ?親父さんとも、知り合いなんですか?」
 俺の声に、浜田さんはハッとしたようにその手で口を押さえた。
「……何か、言ったか?俺…」
「やだなぁ、何言ってんですか?さっき、自分で言ったじゃないですか~?」
 その声に、浜田さんは…。
「いや…俺じゃなくて…」
 それは、嫌に真剣な顔で。
「え?…じゃあ…」
 言いかけた俺の声を遮るかのように、突如として笑い声が聞こえて来た。
 耳許で、くすくすと笑う声。
 その声の主は……いない。誰も、笑ってなんかいないじゃないか…。
 それじゃ、この声の主は一体…。
「ばっ…」
「え?…」
 不意に声を上げた浜田さんは、驚く俺たちの前で急いで笑顔を作って見せる。
「ちょっ…と、待ってろな。すぐに戻る」
 そして、ドアから走り去って行ったが…。
「ねぇ、清水先輩…浜田先輩って、何かに取り憑かれてるんじゃないですかねぇ…例えば、悪霊とか…」
 悪霊が笑うか?普通……。
 まぁ、悪霊ってのは、余りにもとんでもない例だけれども。
 でも、あながち有り得ないことではないかも知れないが。
 だって、さっきの笑い声は、耳許で聞こえたぞ…。
 でも…あの声…何処かで聞いたよな…。
 その時。
《全く…やっぱり"ダミアン様"は堪えられないんじゃないか…》
《でも、つい言いたくなったんじゃないの?俺だって、"ゼノ"のことになりゃさ…ねぇ…》
《はいはい…》
 何だ?!誰か、何処かで話してるぞっ?!しかも、すぐ近くで…っ!
「清水先輩?」
 キョロキョロと辺りを見回した俺に、彼奴は不思議そうな視線を向けた。
「どしたんです?」
「どうしたって…聞こえただろ?!」
「何がです?」
「……???」
 こいつには、何も聞こえてないのか?
 それとも、俺の空耳か…?
 全く以って、理解らない……。
 少しして戻って来た浜田さんは、取り繕うような笑顔を俺たちに向けた。
「いやぁ、悪い悪い。"ダミ"が…いや……最近、腹話術、練習してるんだわ…」
「…腹話術ねぇ……」
 今一、説得力に欠ける…。
 それに、浜田さんが言いかけた、"ダミ"ってのは、一体何だ…?
 そういや、さっきの声も言ってたな…"ダミアン様"って。同じ奴か?
 でも、一体何者なんだろうか…。それから、"ゼノ"ってのも…。
「さて、そろそろ始めようか~」
 話題を変えるかのように、浜田さんは俺たちにそう声をかけた。
 そうして…先程の話題は、すっかり追いやられてしまったのだった…。

◇◆◇

 数日後。
「清水」
「はい?」
 大学の構内で、不意に背後から声をかけられた。振り返ったそこに立っていたのは。
「あぁ、浜田さん。どうしたんですか?」
「ちょっとな。時間、あるか?」
「えっと…講義、あるんですけど…あ、でもいいっすよ。行きますよ」
「じゃ、ちょっと来てくれよ」
 浜田さんはそう言って、俺の前を歩いて行く。
 俺はその後ろ姿を追って行きながら、いつもと何か違うその背中を見つめていた。
 俺たちが辿り着いたのは、サークルでいつも使っている部屋だった。
 そして俺を振り返ると、徐ろに口を開いた。
「最近…妙な声、聞こえるんだって?」
「え?…あぁ、湯沢から聞いたんですか?」
 あのおしゃべりがっ……と思いつつ、そればっかりは口に出さないけどな。
「どんな、声だった?」
「どんな、って……何か、話していましたよ。"ダミアン様"とか、"ゼノ"とか言っていましたけど…心当たり、あるんですか…?」
「…いや…それ程でもないけれどな…」
 ま、それはともかく。
 浜田さんはそこまで言って、一端言葉を切った。
 そして、徐ろに話を変えた。
「お前に、一番に紹介しようか。前に話しただろ?今度紹介してやるって言ってた奴」
「あぁ、話してましたよね。何か」
----そう。浜田さんが奇妙なことを口走る前にね…。
 こっそりと、小さな溜め息を吐き出す俺…。そんなことを知ってか知らずか。
 浜田さんは時計を見ると、ドアを開けて廊下に顔を出した。
「お~。時間通り」
「どうもっ」
 もう一つの声が聞こえ、そいつは姿を現した。
 あれ…?何だ、いつも浜田さんにくっついてる金魚のxx、じゃないか。
 確か、名前は……。
「小暮。知ってるだろう?」
「…まぁ…」
 あぁ、そう言えば、そんな名字だったっけ。
 けど…何かが、引っかかる。
 小暮の…何処となく漂っている、徒ならぬ雰囲気が、俺の中の黄色信号を点滅させているのだが…その危険信号の、深いところまでは良くわからない。
 ただ、漠然とした何か。
 まぁ…浜田さんの手前、極力表情には出さないように気をつけたのだが…。
「小暮はヴォーカルだ。意外に伸びのある良い声だぞ。音域も並外れて広いしな」
「…ヴォーカル、ねぇ…」
 確かに…随分前から、ヴォーカリストを探していたのは知っていたけれど…まさか、一番近いところにいた奴を引っ張って来るとは…。
 それに、俺は…正直、あんまり好きじゃないタイプだ。
 まぁ…浜田さんが決めたのなら、仕方がないが…。
「今日から参加だからな。お前も来るだろう?」
 浜田さんからそう声をかけられ、俺は眉を顰める。
「…今日はバイトですよ」
「あぁ、そうだっけか?」
「……」
 毎週のことなのに…毎回、忘れられてるってのは、どう言うことだ?
 神経質なクセに、そんなことばっかり忘れるんだから…。
「んじゃ、明日な」
 浜田さんはそう言って、俺に軽く手を振る。
 俺が…溜め息と共に踵を返したことは、言うまでもない…。

「え?もう、聞こえてるんですか?」
 清水がいなくなった後、小暮は浜田にそう尋ねた。
「あぁ、そうらしい。湯沢と一緒にいた時らしいが…どうやら、"エース"だけじゃなくて、"ライデン"の声も、拾ったみたいだ。それに、"ダミ"の声もな。それに、あの態度を見ると…お前が背負ってる奴のことも、察してるんじゃないのか?なぁ、"デーモン"?」
「浜田さん…」
----全く、ヒトが悪いんだから…
 苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた小暮に、浜田は笑いを零した。
「しかし、やっぱり清水の覚醒が一番早いようだな。他の奴もそろそろ覚醒に漕ぎ着けそうな感じになって来たみたいだしな。"ダミ"が上機嫌だよ」
「"ダミ様"は、他の奴も見つけたんですか?」
「あぁ。"ライデン"の媒体は、もうかなり近いところにいるみたいだ。俺も見当をつけたが、多分間違いない。ただ、"ゼノン"と"ルーク"の気配だけはまだ拾えないんだ。"ゼノン"は"ライデン"の覚醒を待たなければ見つからないのはそうなんだが…"ルーク"は…置いてけぼりを喰らった、って言って、何処かで拗ねているのかも知れないね。機嫌を直してくれると良いんだけれどね」
 まぁ、そのうち見つかるさ。
 そう気楽に言う浜田とは反対に、小暮は心配そうな表情を浮かべていた。
 しかし。今のところ、見つけられるのは浜田だけなのだから、これは任せるしかないのだから、仕方がない…。
 不安そうな表情は、先の見えない任務に対する、気の重さだった。

「いらっしゃいませ~」
 某所の某店屋のバイトくん。彼のコンプレックスらしい、緩いウエーブのかかった、肩につくぐらいの少し長目の髪。
 これが、綺麗な色してるんだ。
 漆黒って、こう言う色を言うんだろう。そしてそれが、彼に良く似合っていた。
 まぁ…そのウエーブは、本人が一生懸命ドライヤーで伸ばしたであろう痕跡があるが…。
「あ、清水さん。こんばんは」
「おすっ。元気だな、お前は」
 以前、何度かサークルに遊びに来ていたよな。最近はご無沙汰だが。
「そういや、お前さ…最近全然顔出さないでバイトやってるみたいだけど…どうした?」
「いやぁ、ちょっと…新しいの買ったら、金なくなっちゃって…親のスネかじっていられる訳でもないんで…」
 そいつはそう言って、笑っていた。
「清水さんだって、ヒトのこと言えないでしょう?自分だって、これからバイトじゃないですか」
 くすくすと笑う姿は、実に無邪気だ。
「まぁ…な。俺も、地道に稼ぐさ」
 苦笑しながら、俺もそう答える。
「また、サークルに顔出せよな。お前の新しい恋人(ギター)も見てみたいし。それに…」
「それに?」
「いや……」
 個人的には、あんまり言いたくないんだが…。
「…ほら、いつも浜田さんにくっついてた、小暮、って奴いただろう?浜田さんが、そいつをヴォーカルとして連れて来たんだ。だから、今度来た時にも、きっといるんじゃないかな…」
 すると、そいつは急に満面の笑み。
「え?小暮さんヴォーカルなんですか?やった~!近いうちに、必ず行きますっ!!」
「…なんだ、そんなに嬉しいのか…?」
 予想外の反応の良さ…思わず唖然。
 だが、目の前の嬉しそうな表情は崩れない。いや…嬉しくてたまらないのか、表情は崩れっぱなしだ…。
「俺、小暮さんの歌、好きですよ。前に一度、聴いたことがあるんですけどね。なんて言うか…とにかく凄いですよ。清水さん、聴いたことないんですか?聴けばきっと人生変わりますよっ」
「…大げさな…」
 そうは言ったものの…まさか、俺が聞いたことのない小暮の"歌"を、こいつが聴いたことがあったとは。
 到底、人生が変わるとは思えないが…。
「とにかく、俺、行きますからね」
「…あぁ。まぁ、楽しみに来れば良いさ」
 ま、こいつの喜びは俺には良くわからないけれどな。
「さて、俺もバイトに行くか。じゃあな」
「は~い。じゃあ、また今度~」
 にこやかに手を振る姿に、俺は小さな溜め息を一つ。
 ヒトの喜びもそれぞれ…だな。

◇◆◇

 それから一週間くらい経って、俺はやっとでサークルに足を向けた。
 正直、あんまり行きたくはなかったんだが…いつまでも顔を出さないのは、流石にどうかと思ってな…。
 その原因はただ一つ。
 "彼奴"…そう、"小暮"がいるから、だ。
 別に、小暮のことをそんなに詳しく知っている訳じゃなし、嫌な奴だ、と言う噂を聞く訳でもない。多分、そんなに敵を作ることもなく、ごく普通に学生生活を送っているんだろう。
 ただ…俺とはあんまり合わないだろう、と言うのは、単なる俺の直感。どうも、嫌な予感がしてならない。だから、あんまり近づかない方が良いかな…とも思ったりして。
 それに、変な夢ばっかり見て、体調も悪い。
 あの、変な奴が出て来る夢。いつも、俺を見て笑ってるだけ。何を言う訳でもない。それが尚更気になって…良く眠れない。
 まぁ…原因がわからない以上、こればっかりはどうしようもないんだけれどな。
 それは扠置き。
 サークルに向かう為に廊下を歩いていた俺の耳に届いた、微かな歌声。
 浪々とバラードを歌い上げる、とても伸びのある…艶っぽい声。
 こんな声の奴…いたっけ?
 部屋に近づく度に、はっきりと聞こえて来るその声は、俺の胸の中の何かを揺さぶっていた。
 甘くて……切ない。胸の奥が焦げるようで…涙が出そうになる。
 何だろうか…この、奇妙な感覚は。
 こんな歌声、聴いたことがない。
 そう思いながら、ドアノブに手をかける。そして、ゆっくりとそのドアを開けた。
 途端に、溢れ出るような声量。
「……っ」
 思わず…圧倒された。
 凄い。その、一言に尽きる。
「…やっと来たな」
 背後から声をかけられ、思わず振り返る。するとそこには、小さく微笑んでいる浜田さんがいた。
「…なかなか良いだろう?これが、"彼奴の声"、だ」
「………」
 歌い続ける"彼奴の声"。
 俺には………刺激が強過ぎた。
「…済みません。ちょっと…空気、吸って来ます…」
 俺は、居たたまれないような気持ちになって、思わず踵を返した。
 
 中庭の片隅に置かれているベンチ。俺は、そこに座っていた。
 一服すると、ようやく気持ちは落ち着いて来た。
 さっきの、あの奇妙な感覚は…一体何だったんだろう…?
 色々な感情が一気に押し寄せて来たような、そんな感じ。俺の感情を一気にかき乱したのが、たった一つの歌声なのだから…その威力たるや、凄いものだった。
----聴けばきっと、人生変わりますよ。
「…人生が、変わる…か……」
 先日言われた言葉をふと思い出す。
 確かに、あの"声"を聴いたら、そうかも知れない。
 でも…それだけじゃないような気がするのは…どうしてだろう…?
「…深入り…しない方が良いのか…?」
 溜め息と共に、思わず、自分自身に問いかける。
 すると。
《…何が真実で…何が偽りなのか。お前にそれが見抜けるか…?》
「…え?」
 思わず、辺りを見回した。けれど…誰もいない。
「…お前……誰、だよ…」
 問いかけた声。だが、それに返って来たものは、沈黙のみ。
「"彼奴の声"に…何があるんだ…?お前…知っているんだろう……?」
 そう問いかけたのは…どうしてだっただろう。自分でも、良くわからない。
 けれど、その問いかけに返って来たのは…求める声ではなかった。
「お前の真実は、お前が見つけるべき、だ。そいつに問いかけることじゃない」
「……浜田…さん…?」
 聞き慣れた声。その声に俺は振り返る。
 けれど…そこにいたのは、浜田さんではなかった。
 金の巻き毛に、黒いサングラスをかけた男。どう考えても、その場に似つかわしくはない。
「…お前…誰だ…?」
 確かに、浜田さんの声がしたと思ったんだが…。
 そう思いつつ、眉を顰めて声をかける。
「わたしかい?私は、"ダミアン"と言う者だ。お前を、誘いに来た」
「…"ダミアン"……?」
 ふと、蘇った名前。
 あぁ、そうだ。その名前は…"奴"が、言っていた名前、だ。
「…お前…何者だ…?」
 警戒しながら、そう問いかける。
 すると、"ダミアン"と名乗った男は、小さく笑った。
「だから言っただろう?"ダミアン"だと。まぁ…この身体は、"浜田"のモノだけれどもな」
「……?」
「詳しいことは、これから会う"奴"に聞くと良い」
 そう言うと、"ダミアン"は徐ろに俺の眉間に人差し指を押し当てた。
 そして。
「お前の魂を誘う」
「……っ」
 抵抗する間もなく…俺はそのまま、意識を失った。
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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