聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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覚醒 ~side A~後編
これは、夢だろうか。
ふと気が付くと、そこはまるで知らない空間だった。
《清水。こっちだ》
名前を呼ばれ、振り返った俺が見たのは。
夢に出て来た、彼奴。白い顔に、赤い紋様。それを縁取る、綺麗な黒髪。
《ようこそ》
小さく笑った奴は、その甘い声で囁いた。
あ、この声は…こいつの、声だったんだ。
《俺の名は、"エース"。地獄中央情報局の長官だ》
「地獄…何とかって、何だよ」
俺ってば、いやに冷静…。自分でも、驚くぐらい。
しかしその俺の声に、"エース"と名乗った男は、呆れたような溜め息を吐いた。
《地獄中央情報局だっ!一回聞いて覚えろっ》
…大きな御世話だよっ。俺には関係ないことじゃないかっ。
「…で、その地獄…なんだっけ?」
《地獄中央情報局っ》
「あぁ、理解った。地獄中央情報局の長官が、俺に何の用だ?」
やっと、覚えたぞ。
まぁ、そんなことたいした問題でもないけれどな。
尋ねた俺の声に、"エース"は今度は頭を抱え、小さな溜め息を吐いた。
《お前ってばっ…少しは、察してくれよ。用もないのに、"ダミアン様"が、こんなうざったいこと、する訳ないだろぉ…》
あぁ、うざったいと思ってるんだ、こいつは。そうだな。そんな顔してるよ。
思わず、笑いが込み上げて来るな。
「うざったいと思ってるなら、止めりゃいいのに」
《そう出来りゃ、苦労しないって…》
何だ。面白い奴じゃないか。
笑いを零した俺に、"エース"はちょっと、眉を顰めた。
《こら…俺の話、聞いてんのかっ》
「あぁ、悪い。聞いてるよ」
"エース"は一つ咳払いをして、今度はすっと真顔になった。
その顔は、驚く程綺麗で。何か、今までのキャラクターが、全くの嘘みたいだと思ってしまう程。
こうなったら俺だって、いつまでも笑ってなんていられない。
「俺も…多分お前と同じだと思うけど…うざったいのは嫌いだ。言いたいことがあるなら、はっきりと、単刀直入に言えよな」
《あぁ、そうする》
"エース"はそうつぶやき、その琥珀色の眼差しで俺を見据えた。
そして、一言。
《お前は、悪魔だ》
「…は?」
何?悪魔だって?この、俺が?
「…何だって?…悪魔、って……」
意味が良くわからない。
俺は…れっきとした人間、だ。
《今のお前は、確かに人間だ。だが、今後、俺がお前の身体を媒体とする》
「…媒体?」
《そうだ。だから、お前の肉体は俺が支配することになる。つまり、お前は悪魔として覚醒し、活動することになる》
「…意味がわからないんだが…」
"エース"が言わんとしていることは、多分理解はしている。ただ…どうしてそれが俺なのか、と言うことがわからない。
どうして俺が、悪魔にならなければならないんだ…?
「…お前が、俺の身体を必要とするのは…何の為?俺の身体を使って、何をしようとしているんだ…?」
眉を顰めて問いかけた声に、"エース"は一つ間を置いて、そしてゆっくりと口を開いた。
《まず…一つ言って置く。これから話すことは、嘘でも冗談でもない。お前は…選ばれし媒体だと言うことを忘れないで欲しい。そして俺たちは…媒体の存在を、生命をかけて護るつもりでいることも》
「…選ばれし…?」
これから、何が起ころうとしているのだろうか…。
最初に感じた、嫌な予感が過ぎる。
思わず息を飲んだ俺の姿を、"エース"は真っ直ぐ見つめていた。
そして…"エース"の口から、これからやろうとしていることが語られた。
この地球を神の手から救う為に、俺たちの身体を使って、人間界で活動しようとしていること。
そして…この地球を蝕む、悪しき"知的生物たち"を、滅亡させること。
つまり、この惑星の生命体を全て除外し、滅びかけた惑星を護ろうと言うのだ。
そう語る"エース"の姿を見つめながら…俺は、自分自身も、滅ぶべき存在の一名であったことを改めて実感した。
悪魔なんて…空想の産物だと思っていた。その存在が、俺の目の前で人類滅亡の話をしている。そんな、非現実的なことがあるだろうか…?
全く…訳がわからない。
俺は、思わず溜め息を吐き出した。
「…つまり…お前たちは、俺も含め、全ての人類…否、全ての生命体を排除する為に来た、ってことだよな?俺を媒体として選んで…俺にも、その罪の片棒を担がせようってことか…?」
問いかけた声に、"エース"は小さく吐息を吐き出す。
《確かに…そう思われても不思議はないな。だが…最初に言った通り、俺たちは、媒体の存在は生命をかけても護る。無駄死にさせるつもりはない》
「でも…死ぬんだろう…?」
《…誰でもいつかは死ぬんだ。俺たち悪魔だって。生命の長さに違いはあるが…俺たちだって、生きていることには変わりない。ただ…どんなことがあっても…最後に、哀しい思いだけはさせないさ》
「…嫌に言い切るな…」
《勿論。それが…俺たちが、お前たち媒体にしてやれる、最大のことだからな》
「………」
どう…答えたら良いのだろう…。
もしかしたら、嘘を言っているのかも知れない。だって、悪魔なんだから。
でも……。
「…一つ…聞かせてくれない…?」
《何だ?》
「浜田さんも…悪魔、なのか…?」
そう。それも引っかかっていた。あの"ダミアン"とか言う奴。身体は浜田さんのモノだと言っていた。だとしたら…同じ、なのだろうか…?
すると"エース"は小さく笑って見せた。
《あぁ…そう。お前と同じ。いや…お前よりも立場は上、だな》
「…どう言う…?」
《"ダミアン様"は、魔界の皇太子殿下だ。そして浜田は、生まれた時から"ダミアン様"と同一の存在だ。つまり、生まれた時から悪魔としての意識を持っていた、ってことだ》
「……浜田さんが……」
とても、想像出来なかった。
あの、浜田さんが…悪魔だ、なんて。
そして俺も…悪魔に選ばれた人間だ、なんて。
「拒否は…出来ない訳…?」
ふと、そう問いかけてみる。
《無理》
「あ、そう…」
選択肢もないのかよ…。
俺は、溜め息を吐き出した。
なるようにしかならないのなら…諦めるしかない訳だが…。
《…そんな顔、するなよ》
ふと、そう声をかけられた。
「…どんな顔していようと、お前には関係ないだろう?どうせ、俺の意思なんか何にもならないんだろう?お前に操られて、俺の運命は終わり。この先、悪魔の媒体としてしか生きられないんだろう?」
それは…俺の僻み。もうこの先の自由がないと思ったら…自暴自棄にもなりたくなる。
けれど…そんな俺の思いを遮ったのは、他の誰でもない、"エース"だった。
《別に…お前の人生、これで終わり、って訳じゃない。お前の意思は尊重する。媒体だからって、お前の一生の自由を奪う訳じゃない。俺たちが活動する時に、身体を借りるだけだ》
「…媒体になることの拒否は出来ないのに?」
《それとこれとは別問題、だ。俺が宿るべき肉体は、お前しかいない。選ばれた以上、拒否は出来ない。ただ…俺たちに媒体を大切に思う気持ちがあることだけは忘れないで欲しい》
「……」
何となく…想像していたものと違うのかも知れない…。
「…どれだけ、俺のことを大切に思ってくれてる…?」
そう、問いかけてみる。
《どれだけ、って…そうだな……一番妥当な言葉で言えば…"好き"って言う感情と、同じだろうな。ホントはもっと、複雑な意味も踏まえているけど》
「…へぇ…」
それが本当なら…悪いようには、しないかも知れない。
だから…浜田さんも…。
と、その時。あることを、思い出した。
「…そう言えば…さっき…俺がここに来る前に、お前、何か言ったよな?…何が真実で…何が偽りなのか。お前にそれが見抜けるか…って」
その途端、"エース"の表情が僅かに変わった。
そして…溜め息を一つ。
《お前…"彼奴"の歌声を聞いて、どう思った…?》
「…は?"彼奴"って……小暮?」
《そう》
「どう、って……」
それは、一言ではとても言い表せない。
でも…"エース"はどうして…そんなことが聞きたいのだろうか?
「…何か…お前に、関係あるのか…?彼奴の"声"に…何があるんだ…?」
疑問符を投げかける俺に、"エース"は溜め息を一つ。
その表情は…複雑極まりない。とても、俺には読み取れない。
《…彼奴は…"言魂師"だ。あの"歌"は…聴く者を操る能力がある》
「…"言魂師"…って……彼奴、人間じゃないの?!じゃあ、彼奴も…?」
《そう。彼奴も"悪魔"、だ》
「………」
最初に感じた、嫌な予感はこれか…。
「…で。お前がそんな奇妙な顔をしているのはどうしてだ…?同じ悪魔なんだろう…?」
そう問いかけてみると、"エース"は更に溜め息を吐き出した。
《…色々あんだよ…察しろよ…》
「…成程ね…」
"エース"と、小暮が背負ってる悪魔との間に、何かあるようだ…。
妙に、人間沁みたその姿が、妙な安心感を与えてくれる。
何だろう。この感覚は。
《まぁ…お前に隠しても仕方がないから、別に隠しはしない。どうせ、いつかわかることだからな。ただ…俺と彼奴のことに、お前は口を挟むなよ。それだけは前以って言って置く》
「………」
そんな前置きが付くんだ。多分…簡単なことじゃないんだろう。
でも…俺が"エース"の媒体になるのであれば、必然的に関わらざるを得ないだろう。まぁ…口出しさえしなければ良いんだろうが。
「…大変なんだな、悪魔ってのも」
ポツリとつぶやいた俺の声に、"エース"は小さく笑った。
《…中身は、人間も悪魔も変わらないもんさ。ただ、俺たち悪魔には、お前たちにはない能力がある。それだけのことさ》
「…へぇ…」
何だか…興味が湧いて来た。
多分…悪魔も人間も、感情の本質は余り変わらない。それは、俺が"エース"から感じ取った感覚。
どうせ、媒体になることを拒否出来ないのなら…"エース"の存在を拒むことが出来ないのなら…いっそうのこと、もっと詳しく知ってやろう。そう、思った。
それが、"悪魔"を理解するには一番近い。
もし、俺が出会ったのが"エース"ではなかったら…こんな答えは、出なかったかも知れない。それは、確証ではないけれど…でも、そんな気がする。
出会ったのが、"エース"だったから。
だから…こいつなら、信じてみても良いかと思った。
俺の運命を、分け与えても良いかと思った。
この先の未来は、全くわからないけれど…それでも、そんな不安よりも、俺が媒体として選ばれた意味を知りたかった。
「…仕方ねぇな……お前を、受け入れてやるよ」
小さな溜め息と共に、そう吐き出した言葉。
《…良いのか?》
「良いのか、って…拒否出来ないんだろう?だったら、仕方ないじゃないか」
そうは言いつつも…ついつい、小さな笑いが零れた。
「お前に、協力してやるよ。その代わり…この肉体、大事に、してくれよ」
《…あぁ。わかってる》
----サンキュー。
小さな微笑と共に、"エース"は斜めに顔を傾け、徐ろに俺の唇にそっと口付けた。
甘い、香り。
突然のことに、俺が…動揺したのは言うまでもない…。
それが、俺が"エース"の魂を受け入れ、悪魔として覚醒する為に必要なことだと言うことは、後になって"エース"から聞いた。だったら、前以って言って欲しかったんだが…。
それは扨置き。
"エース"のキスは、とても甘くて…俺を酷く不安にさせた。
こんなに優しくされて…俺は…消えてしまうんだろうか?
ふと過ぎった、そんな不安。
けれど…俺は、ここにいる。
そして、"エース"も。
俺は…"エース"と共に生きて行くことを選んだ。選択肢はなかったとしても…最後は、俺の意思、だった。
だから、悔いはない。
どんな運命になろうとも…俺は、"エース"を信じて行くことを決めた。
俺がふと目を覚ますと、そこは自分の部屋だった。
しかし…浜田さん…と言うよりも、あれは"ダミアン"って言ってたけど…とにかく、彼から"エース"に引き合わされたのが大学の構内だったにも関わらず、今俺が自分の部屋にいるってことは…だ。無意識に、ここまで戻って来たってことか?
俺はともかく…周りの奴は、魂がどっか行った状態の奴が、ふらふらと路上を歩いていることに、何ら疑問は持たなかったんだろうか……。
まぁ、俺自身、何の自覚もなかったんだから、今更どうこう言っても仕方がないのだが…。
それはともかく。
"エース"を受け入れたとは言え、俺の身体も意識も、今までと何にも変わらないような気がする。
多分…俺はまだ、未熟なんだろう。"エース"と上手く同調出来るかどうかは、俺次第なんじゃないかと思う。
そんなことを考えながら、取り合えずコーヒーを淹れ、一服しようと煙草に火を点けた瞬間。
ピンポーン。
「はいよ。誰?」
珍しく、客だ。
簡易な玄関ドアを開けると、そこに立っていたのは。
「ん?…湯沢。どうした?」
「あ、いや…ちょっと…いいっすか?」
「あぁ。良いよ。まぁ、入ったら?」
俯き加減で、どうもいつもと違う湯沢を部屋の中へと促す。
「元気、ないみたいだが…どうした?具合でも悪いか?」
試しに額に手を当ててみたけど、別に熱がある訳でもない。
でも、あの湯沢にしては、ホントおかしい。
部屋に入ったものの、じっと俯いたままの湯沢に、俺はコーヒーを入れてやったけれど…カップを掌で包んだまま、暫し沈黙。
そして。
「あの…清水先輩……」
「ん?…」
やっとで湯沢が顔を上げたのが、ウチに来てから30分近くもも経ってからだった。
コーヒーなんて、すっかり冷めてるし…。
「相談…あるんですけど…」
「相談?俺に?」
「はい」
「…何?」
まるで、俺にしか頼れないって感じの表情で、湯沢はじっと俺を見つめた。
「前に、変な声が聞こえるって言ってましたよね?あれ…どうなりました?」
「は?…あぁ、アレね。うん、まぁ……」
"エース"の声、だろ?まぁ…こいつには言えないな…。
と、言うことで、曖昧に濁してはみたものの。
「それが…どうかしたのか?」
「あ…のぉ…俺も、聞こえるんですけど……」
「…は…?」
聞こえるって…?"声"が?
…ってことは、こいつも…悪魔だってことかぁ?!
息を飲み、目を見張った俺の手を両手を握り締め、湯沢は泣きそうな顔で俺を見つめる。
「俺っ…どうにかなっちゃったんですか?!ねぇ、清水先輩っ!」
「いや…そんなことはないと思うけど……」
「知ってるんでしょぉ清水先輩ぃっ!教えて下さいよぉ…俺、悪霊に取り憑かれてるんですか?!ねぇ、先輩っっ…!」
…泣きつかれてしまった……。
しかし…。
まさか、こいつも"悪魔"に選ばれたていたとは…。
浜田さんに、小暮に、俺。そして、湯沢。
どれだけの悪魔が、この惑星にやって来たのかは、俺はまだ知らない。でも…どうしてこうも、近くに固まっているんだろうか。
…否。多分…集められたんだ。
この、地に。
だとしたら…これから始まる"何か"は、直にカタチになるんだろう。
俺は、その為の、1ピース。
そして、この湯沢も。
だったら…泣いている場合じゃない。
悪魔を背負って生きるんだ。徹底的に、図太くならなければ。
「…ほら、泣くなって。大丈夫だから」
今は、そう言って宥めるしかない。
人間、諦めも肝心!
そして、前を向こう。
俺たちは…独りじゃないんだから。
それから数ヶ月後。
俺は、浜田さん…否、 "ダミアン殿下"から、地球任務についての正式な計画を聞いた。
そこには、他に数名の"悪魔"がいた。
悪魔たちは、みんなそれぞれに色んな事情を背負っている。
俺たち人間と、然程変わりない。実に…人間沁みている。それが妙に可笑しかった。
そんな"悪魔たち"を背負った俺たちは、そこから新たな道を歩き始めることとなった。
愛しい、悪魔たちと共に。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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