聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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闇に咲く 雪の花 前編
雪が舞う。まるで、黒い幕に白い模様をつけていくように。
汚れを知らない真白な雪は、何者にも染まることはない。
雪は、汚れを知らない奇跡の結晶なのかも知れない。
微睡む意識の中に、姿が見える。
「…誰?」
声の主…ライデンは、ぼんやりとした意識の中で、そうつぶやいた。
「俺。わかる?」
その声は、愛しい悪魔の声に違いない。
「…ゼノン?」
「ん。どう?具合は」
ライデンの額に乗せられた掌は、冷たくてとても心地よい。
「…だいぶ熱があるね。今、エースが氷買いに行ってくれてるから、もう少し待ってね」
「ん…」
優しい声が、彼を酷く不安にさせた。
「御免ね…心配かけて…」
「病魔はそんなこと気にしないの。今はゆっくり休んで、早く元気になってね」
ゼノンは、にっこりと微笑んでいた。
いつか見た…そんな微笑み。
再び微睡む意識の片隅で、ライデンはその記憶の糸を、無意識に辿っていた。
それは、彼らがまだ魔界に在籍していた頃。そして、まだお互いの存在すら、知らなかった頃。
まだ現役の文化局長であったゼノンは、周囲の目を逃れて束の間の休息を得る為に、とある森の奥深くへと、足を伸ばしていた。
その行為が常の習慣であるのを知っているかのように、彼の存在に引き寄せられる数種類の鳥たちがゼノンを囲んで、長閑にさえずっていた。
そんな平和な時間を切り裂くかのように、上空から不可思議な音が聞こえたかと思った瞬間、生い茂った頭上の木々の枝をへし折って、ゼノンの目の前に"それ"が落ちて来た。
「…なっ……」
突然の登場に驚いた鳥たちは、当然の如く空にはばたき、取り残され、呆然とした表情のゼノンの頭の上には、色とりどりの羽根がふわりと舞い落ちる。
目の前には、見たこともない"彼"…
「…って~っ!!俺様としたことが、何たる不覚…っ!」
「………」
落ちて来た際にしこたま腰を打ったのか、ゼノンの前にいる"彼"は、腰をさすりながらその痛みに耐えているようだった。
しかし、自分を見つめる視線に気がつき、自然とその顔は、視線の主…ゼノンへと向けられた。
「あ……」
「………」
片や、鳥の羽根を頭に乗せた"鬼"。片や、腕や頬を傷だらけにした"雷"…両名の間に、奇妙な沈黙が流れたのは言うまでもない。
だが、その沈黙を最初に破ったのは、落ちて来た"彼"、だった。
「あの…っさ、悪かったね。あんたが折角、鳥たちと戯れてるのを邪魔しちゃって…」
そう言って、相手の頭の上に乗っている羽根を取ってあげる。
「いや…それは構わないけど……」
つぶやきながら、ゼノンは"彼"を観察していた。
そして。
「御前…誰?」
頬にある紋様からして雷神族だと言うことは判明しているものの、魔界では、まだ一度も見たことのない顔。ゼノンが問いかけるのも無理はない。
問いかけられた当の"彼"は、登場の仕方が異様だっただけにちょっと気まずかったのか、照れ笑いを浮かべていた。
「あ、俺ね、ライデンって言うんだ」
その照れ笑いと答え方が、余りにも幼く見えて…ゼノンは思わず小さな笑いを零した。
「な…んだよぉ…」
笑いの意味がわからず、ちょっとむっとした表情を浮かべたライデンに、ゼノンは笑いを押さえた。
「御免ね。悪気はなかったんだ。ただ、あんまり可愛かったモンだから、つい……」
「可愛かったって…俺ゃあもう大人だっつーのっ」
「御免、御免」
そう言いつつも、ゼノンは再びライデンを観察していた。
そして、再び問いかけた声。
「御前、悪魔じゃないよね?紋様からして、雷神族。違う?」
「そう…だけど…」
「何の為に、魔界に…?」
その声に、ライデンは咄嗟に顔色を変えた。
伏せられた眼差しが、それを問いかけられたくなかったと言わんばかりに思えた。
「俺は別に、御前をどうこうしようって言う訳じゃないよ。ただ、見慣れない顔だったから、ちょっと心配でね。ほら、魔界の全般が安全とは言い切れないから」
労りの色を乗せた声に、ライデンはちょっとその視線を上げる。
「…何?」
ぽつりと、何かをつぶやいたような気がして、ゼノンは問いかける。
「…名前」
「は?」
改めて言われても、直ぐに質問の意味が把握出来ない。
「あんたの名前、まだ聞いてない」
「あぁ…そう言うこと」
やっと質問の意図を把握して、ゼノンはにっこりと微笑む。
「ゼノン、って言うんだ」
「ゼノン…ね」
しっかりと記憶に留めた、と言う感じでその名前を噛み締めるライデン。だが、直ぐにその腰を上げた。
「御免。今は、ここにいる理由も言えないけど…そのうち、はっきり出来ると思う。だから……また、逢えるかな…?」
妙に、思いつめた眼差し。それを和らげるかのように、ゼノンはにっこりと微笑んでみせた。
「運が良ければ、また逢えるよ」
「そう…だね」
じゃあ、ね。
そう言葉を残すと、ライデンは木々の間を駆け抜けていった。
「ライデン…ね」
駆けていく背中を見送りつつ、ゼノンはそう言葉を零した。
と、その時。
「……様ぁ~…ゼノン様ぁ~…」
遠くで自分を呼ぶ声に、ゼノンは溜め息を一つ。
「…やれやれ。職務に戻る時間か」
ゼノンは諦めたように腰を上げ、足を引き摺るように、声のする方へと歩き始めた。
副大魔王の執務室に帰って来ていたライデンは、無意識に持って帰って来てしまった羽根を握ったまま、窓にへばりついてぼんやりと遠くの森を見つめていた。
「…ねぇ、デーさん…」
「ん?」
名前を呼ばれたのは、この執務室の主であるデーモン。
「あの森の向こうにさぁ、何か建物があったよね…?」
そう尋ねられデーモンもライデンが目を向けている森へと視線を移す。
「あぁ、文化局、だろう?それにしても御前、良く見えるなぁ。目、悪いクセに」
思わず問いかけたデーモン。確かにこの執務室から遠くに森は見えるが、その向こうの建物となれば話は違う。ぼんやりと霞んだ影が僅かに見えるだけなのだから。
デーモンも目がいい方ではないが、それよりも更に悪いであろうライデンに、見えているはずはないのだ。
「いやぁ…何かあったな~と思ってさぁ…」
質問に対する答えは返って来るものの、視線は返って来ない。指先で羽根を弄びながら、溜め息まで零しているではないか。
「文化局がどうかしたのか?」
「ん……ゼノンって奴、知ってる?」
「ゼノン?逢ったのか?」
「うん。鳥と戯れてるところに落っこちて、邪魔しちゃった。あの辺にいたから、文化局の局員かな~と思って」
「なぁる……」
一悪魔で納得しているデーモンに、やっと視線を向けたライデン。
「知ってるの?知らないの?」
改めて問いかけられる。
「あぁ、知ってるぞ。確かに、文化局に在籍してる。だが、そんなに気になるのか?」
「……文化局に行ったら、逢えるかなぁ…?」
今度は、デーモンの質問にも適切な答えが返って来ない。だが、デーモンはそれを答えとして取ったようだ。にんまりとした笑いを浮かべ、再びライデンが視線を向けた先…文化局があるであろう森に、目を向けた。
「ゼノンは滅多に局にはいないぞ。脱走癖があるからなぁ。局員でも見つけるのは至難の技らしいぞ」
「…ふぅん…」
表情で考えていることがわかるなんて、便利な奴だ。
そうほくそ笑んでいるデーモンなど気にもせず、ライデンは相も変わらず、指先に羽根を挟んだまま、遠くを見つめていた。
その数日後のこと。
意を決して、文化局の庁舎前に立つライデンの姿があった。
だが、足はそれ以上前へは進めない。何せ、自分の身分を他に明かしてはならないと言うのが、魔界へ来た時の約束だったのだ。それを守れるならと言うことで、他悪魔知れずの空中散歩ならと、デーモンにも許されていたのだから。
「はぁ…」
大きな溜め息を吐き出し、ライデンはその場を後にする。
そして向かった先は、あの時の森の中、だった。
黙々と森の中を歩き進み、やがて先日の場所に出る。
そこにはまだ、あの時の鳥の羽根が何枚も落ちている。勿論、今ライデンが握り締めている掌にも一枚、残っているのだが。
再び、大きな溜め息。
「…何でかなぁ…」
どうしてここに来てしまったのか。どうして、たった一度逢っただけの、得体の知れない悪魔がこんなに気になるのか。ライデンの思考の多くを占めている問題は、目下それだけのようである。
もう一つ、溜め息を吐き出して、デーモンのところへ返ろうと踵を返した時。自分が向かう方向から聞こえた声に、ライデンは思わず真上の木の上へと身を隠した。
それを確認したかのように、自分のいた場所に現れたのは、捜していたあの悪魔と、もう一悪魔。
「ゼノン、いい加減に局に戻ってくれないか?あんたがいないと、みんなに示しがつかないじゃないか」
「…だから、ルザックが俺の代わりに…」
「それで済むなら、とっくに代わりを努めてる。捜し回ったりなんかするか…っ」
「でも、俺は局に籠もってるより、こっちの方が、性に合うんだけど…」
「ゼノンっ!少しは局長としての自覚を持ってくれ!こんなに呑気者の局長じゃ、他の局の長官に、何を言われるか…」
「他の局なんて、気にすることないのに。敵う訳ないじゃない?エースやルークと張り合う気なんか、毛頭ないんだから」
そんな会話を、どうして自分は耳をそばだてて聞いているのだろう…?
ふと、ライデンの脳裏に過った疑問。
自分は、何も悪いことはしていないのだから、隠れる必要なんて、端っからなかったはずなのに。
小さな溜め息を吐き出しかけた時、説得を諦めたと思われるもう一名の悪魔…ルザックが、徐ろにその口を開いた。
「…さっき、局の前に怪しい奴がいたらしい。今まで見たことがない顔だったらしいけど…」
その声に、ライデンはドキッとして、僅かに身を縮めた。
当然それは、自分のことだろう。誰にも見られていないと思っていたのは、迂闊だったようだ。
だが、ゼノンはその言葉にも、僅かに反応を返しただけだった。
「見たことない奴なんて、この魔界には幾らでもいるでしょう。みんながみんな、王都に住んで、身柄を明らかにしている訳じゃない」
「でもなぁ…不審魔物だぞ?少しは警戒しろよ」
「性に合わない」
「…全く…」
ルザックの、大きな溜め息が聞こえる。そして、しばしの沈黙。だが、再びその沈黙を破ったのは、当のルザックだった。
「そう言えば…他悪魔づてに聞いた話しだけど…」
「ころころと良く話が変わるねぇ」
思わず口を挟んだゼノンに、ルザックの一瞥が届く。
「茶々を入れないでよ。本来なら、執務室でしてる報告だよ!?あんたがちゃんと執務室にいないからでしょうがっ」
「…はいはい。続けて」
小さな溜め息を一つ吐き出すゼノンに、ルザックは改めて言葉を続けた。
「他悪魔づてに聞いた話しだけど、魔界に雷神族の…雷帝の子息が一悪魔で来てるんだってな。局内じゃ、その話しで持ち切りだぜ」
ドキッとするライデンなど、おそらく気がつかないのだろう。ふと、ゼノンの纏う気が鋭くなったような気がした。
「…雷帝の子息?たった一悪魔で?」
「あぁ。ほら、昔からあるだろう?堕とせば能力が手に入るって噂」
「…信じてる訳?そんな噂」
ゼノンの表情は、真剣そのものだった。だが、ルザックもその表情に怯む様子もない。
「信じる、信じないの問題じゃない。有力者のあんたにはわからないかも知れないが、下級悪魔はそれに縋らざるを得ないだろう?少しでも能力を手に入れて、上に上りたい。誰だって考えることだ。ま、尤も…それが有力な方法だとは思えないけどね」
「当たり前だよ。そんな噂…」
そうは言うものの、ゼノンも何かを考えているかのように、口を噤んだ。
「まぁ、あんたには関係ないか。それよりも、早く帰って来てくれよ」
いつまでも局員を押さえるのは、大変なんだから。
そうぼやきながら、ルザックは一足先に文化局へと足を向けていた。
そのぼやきを背中に聞きながら、ゼノンはしばらく口を噤んだままだった。それに伴い、当然木の上にいるライデンも動くことが出来ない。
だが、次の瞬間、ライデンの肩に何かが触れたような気がした。
思わず視線を向けてみれば、一羽の鳥が、自分の肩口に止まっている。そして、真っ直に自分を見つめているではないか。
声を出さないようにとの願いも空しく、その鳥は甲高く一声上げる。
「わ…っ!馬鹿…っ!」
「……?」
思わず口を突いて出た声に、ゼノンの視線が空を見上げる。
「あ…御前…」
つぶやいたゼノンの声。ライデンは咄嗟に、空に舞い上がっていた。
「ちょっ……待って!」
追いかけるように、ゼノンもあわてて背中に翼を構えると、空に舞い上がる。
空高く舞い上がったところで、ライデンは不意に翼の動きを止めた。
何故、逃げなければならないのだろう…?
そんな意識が過ったが、それは当然のこと。下手をすれば、捕えられて無理矢理にでも堕とされる。
彼が、噂を信じているのなら。
だが、敢えてライデンはゼノンを待ってみようと思った。その理由は…まだ、自分でも良くわからなかったが。
やっとで追いついたゼノンは、大きく息を吐きながら、呼吸を整えている。
「何で…逃げるの?」
「…追いかけて来るから…」
「じゃあ、追いかけなければ、逃げないね?」
「………」
今更逃げたところで、もう逃げ仰せるものではない。諦めたのは当然と言えば当然。
それを察したのか、ゼノンも無理矢理押さえつけようとはしなかった。
一定の間隔を保ったまま、ゆるりとライデンの視線を捕えた。
「…雷帝様のご子息って…御前のこと?」
「………」
「たった一名で来たってことだものね。間違い、ないよね?」
「………」
「黙秘権もいいけど、少しは答えてよ。まぁ俺も、御前の名前を聞いた時点で気がつくべきだったよ。そうとわかっていれば、対処も出来たのに」
「俺を、堕とす為の…?」
「ライデン…」
その声の固さに、相手が警戒していることを知る。
「言っとくけど、俺を堕としたって、能力なんか手に入らないからね…っ!」
先日とはまるで違う表情。そこに穏やかな空気など存在しないと悟ったゼノンは、敢えて微笑んでみせた。
「わかってるよ、そんなこと。だから、そんな馬鹿な噂が広まらないように、対処を…」
「馬鹿にするな…っ!!あんたに護って貰おうなんて、思ってない!!」
ゼノンを睨み付ける様は、雷神界の皇太子としての気位を確かに持っていた。だが、それに伴う精神力は、まだまだ未熟なようだった。だからこそ、ゼノンは敢えてその言葉を口にした。
「デーモンから、話は聞いてた。雷帝の子息が来るってことはね。ただ、それがいつなのかは知らなかった。俺の局で広まっている噂なら、責任は俺にある。護るのは義務じゃない。でも、俺に出来ることはそれくらいだろう?」
「文化局局長ならではの言葉だね。でも、信用しないよ、そんなの。俺は、あんたが思ってる程、弱くない!」
そう言い放つと、ライデンはゼノンに背中を向けた。そしてそのまま、枢密院へ向かって飛び去った。
「…信用されてない…か。仕方ない」
大きな溜め息を吐き出したのは、ゼノン。
偶発的な巡り合わせが、こんなにも胸に痛みを覚えさせるなど、誰が想像していたであろうか。
その日の夜も遅くなった頃、やっと屋敷に戻って来たライデンを、デーモンは心配そうな表情で迎えていた。
「随分遅かったじゃないか。迷ったのか?」
「………」
「文化局に、行って来たんじゃないのか…?」
「………」
「ゼノンには、逢えたのか…?」
何を問いかけても、答えは返って来ない。だが、その伏せた眼差しで、デーモンはある程度、意味を察したらしい。
「喧嘩、したのか。挙げ句…今まで泣いてたんだろう…?」
「………」
赤い目を見れば、それは容易に察することが出来る。だが、意固地になっているライデンから、そうだと素直に答えが返って来ることはないことも、わかっているつもりだった。
だからこそ、デーモンは強行手段を取った。
「泣くなと、約束しただろう?」
「…だって…」
やっと声が聞けて、思わず安堵の溜め息を吐き出す。
「だってじゃない。親父殿に、強くなると約束して来たんだろう?いきなりそれを崩してどうする」
「………」
デーモンが、本心から案じていてくれていることはわかっていた。
だからこそ、余計な心配をかけさせたくないと思うライデンの想いもまた、当然なのかも知れない。
「何でも…ないから。こんなの、直ぐに立ち直れるから…だから…」
言葉数が少ないのは、涙を堪えているから。それを察したデーモンは、その掌で、ライデンの頭をポンポンと撫でた。
「今夜はゆっくり休め。明日になったら忘れられるくらい…な。思いつめるなよ」
「…うん…」
それは、デーモンなりの受け止め方。一定の距離から近づかないその対応を、今のライデンには嬉しくも感じていた。
自分の足で立ち上がる為に。自分自身で、立ち直る為に。
翌日、副大魔王の執務室には、主たるデーモンともう一名…ゼノンの姿もあった。
「…どうして吾輩が、御前をここに呼んだかは、わかっているんだろうな?」
「…まぁ、ね」
溜め息混じりの答え。その顔も、デーモンの眼差しから逃れるかのように、伏せたままである。
「…ライデンのこと、でしょう?彼奴が、何か言った…?」
「言う訳なかろうが。あのライデンが」
「…そう」
会話が、続かない。
溜め息を吐き出したデーモンは、目の前のゼノンをまっすぐに見つめていた。
「まぁ…吾輩は、御前たちのことに、横から口出しするつもりはないんだ。ライデンのことを頼まれているとはいえ、甘やかせとは言われていない。寧ろ、その逆かも知れないな。だから、これ以上何も言えない。ただ…少しは、察してやってくれな」
「…どういう事?」
僅かに、ゼノンの眼差しが上を向いた。
「寂しいんだ、ライデンは」
「………」
「吾輩やダミ様とは、確かに今までに幾度か顔を合わせたことはある。だが、遊びに来るのと、修行としてここに住まうのとでは訳が違う。心細い気持ちもわかるだろう?御前に逢った最初の日から、多分ライデンは御前のことが気になってるだろうな。顔を見ればわかるからな。それなのに、突然喧嘩して来て、泣いててみろ。吾輩が心配するのも当然だろう?」
その言葉に、ゼノンは目を丸くした。
「泣いたの…?」
「そうは言わなかったけれどな。だが、隠し通せるものでもあるまい?赤い目を見れば、そんな事は直ぐにわかるさ」
「…そう。悪いことしちゃったな…」
溜め息を吐き出したゼノン。
「泣かせるつもりなんか、なかったんだよ」
「だろうな」
ゼノンにしてみれば、些細な悪意すら、あった訳ではない。デーモンにも、それは良くわかっていることであった。
ただ…。
「ちゃんと、説明してやれよ。ライデンはまだ御前のこと、良く知らないんだから。このまま嫌われても良いなら、吾輩はこれ以上何も言わないけどな」
「…言わない、言わないって、随分色んな事、言ってくれるじゃないの。他悪魔の気も知らないで…」
「わかってるから言うんだろうが。自業自得だ」
「…もぉ」
大きな溜め息を吐き出す。
そう。自分で撒いた種は、自分で刈り取らなければいけないのだ。
「お邪魔、するからね」
「どうぞ。アイラが相手をしてくれてるはずだから」
それが、己の屋敷へのお邪魔であることを察し、デーモンはにんまりと笑ってみせた。
「ライデンの機嫌を直せたら、御前の脱走癖を大目に見てやるように、局に通達してやるよ」
「…真に受けないように心得ておくよ」
溜め息を吐き出しつつ、ゼノンは踵を返した。
その背中を、デーモンがにやにや笑いながら見ていたのは言うまでもないだろう。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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