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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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闇の翼 前編
こちらは、以前のHPで2005年08月14日にUPしたものです

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◇◆◇

「翼の無い僕らは、何処へ行けるだろう?」

 それは、二十周年の再結成をその年の秋に控えたある夏のこと。
 その夏、ライブツアーを行う"彼"の様子は、いつもとは何処か違っていた。
 それが何かとはっきり解る訳ではないのだが、その違和感は、"彼"を良く知る人達には気がかりで仕方のないこととなった。

◇◆◇

 それは、夏の初めの事。
「は?清水の様子がおかしい?」
 その日、昔からの馴染みのスタッフの一名から電話を貰ったのは、かつての総帥たるデーモン。
 電話の内容は、簡単に言えば、再結成でも一緒にツアーで回るはずのスタッフの彼が、同行しているリハーサル中の(人間の)エースの姿に違和感を覚えた、とのことだった。
 勿論、その姿に何か異変があった訳ではない。仕種も口調も態度も、以前からの"エース"と何ら変わりはないのだ。だからこそ、その奇妙な"何か"が気になったのだ。
「…で?何でそれで吾輩に連絡を?」
 デーモンも暇ではない。しかも、悪魔に戻ったエースならいざ知らず、人間たる清水単体とはロクに顔も合わせていない。違和感があると言われても、解るはずもないのだ。
『えぇ、ですから閣下ならエースさんと親しいですから、何かご存知かと思って…』
「そう言われてもなぁ…」
 頼って来てくれたスタッフには悪いが、どうすることも出来ないのが実情なのだ。
「そんなに気になるなら、直接、清水に聞いてみたらどうだ?生活面での変化とかあったのかも知れないだろう?吾輩に聞くよりも確実じゃないか?」
『それはそうですけど…何て聞くんです?最近様子が違いますけど、何か変わったことでもありましたか?とか聞くんですか?』
「あぁ、それで良いんじゃないか?」
 忙しさにかまけて、適当にあしらうデーモンに、電話の向こうから大きな溜め息が聞こえた。
『もしそう聞いて、エースさんに怒られたら、閣下の所為ですからね!責任取って下さいよ~!』
「責任って…何で吾輩がっ」
『閣下の案ですからねっ』
 スタッフからの電話は、その言葉を最後に切れてしまった。
「ったく…吾輩は関係ないだろうに…」
 溜め息を吐き出したところで、最早聞いているものはいない。
 必然的に、デーモンはこの件に巻き込まれたのだった。

 それから数日後。
 自身の忙しさから電話のことはすっかり忘れていたデーモンの元に、再びかかって来た電話。それは、前回と同じスタッフからだった。
『見事に怒られましたよ!』
 それが、相手の第一声だった。
「吾輩の所為か?御前の聞き方が悪かったんじゃないのか?」
 そう問い掛けると、相手は大きな溜め息を吐き出した。
『まぁ…直接閣下が関わった訳ではないですから、これ以上文句は言いませんけれどね。でも、やっぱり違うんですよ。何の変わりもないのに、何処かに違和感があるんですよ。お忙しいことは重々承知ですが、一度様子を見に来ていただけませんか?エースさんに何かあってからでは遅いですから…』
 控え目にそう言葉を紡ぐスタッフ。
「…まぁ、御前が怒られた一端は吾輩にもあるしな。リハの合間になら行けるとは思う。そっちの予定は?」
 多少の責任は感じたのだろう。デーモンも幾度も頼って来る様子から、何かを感じ取っていたのかも知れない。
 喜びの声を上げたスタッフは、ツアーの予定を事細かに伝えた。
「ん~…じゃあ、行けそうなところ見繕って、様子だけ見に行くから。まぁ、あんまり心配するなよ。また清水にどやされるからな」
 そう言ってデーモンは電話を切った。
「吾輩も甘いな~…」
 そう言って溜め息を零すデーモン。まぁ、自業自得であるが。

◇◆◇

 仕事の合間に時間を取り、"彼"がリハーサルをやっていると言うスタジオを覗きに来たデーモン。勿論、そのことを知っているのは、デーモンに電話を入れて来たスタッフだけである。
「…お忙しい中、どうも済みません」
 出迎えたスタッフに小さく声をかけられ、デーモンは小さく頷く。勿論、声でばれないようにとの配慮をしてのこと。ついでに言えば、出来る限り気配を殺し、目深に帽子を被り、サングラスをかけて変装もしていたりする。流石にマスクまですると怪しさ全開なので、そこまではしていないが。
「…で?清水は?」
 小声で問いかけると、促されたスタジオには、久し振りに見た"先輩"の姿。
「流石に、向こうにこちらの声は聞こえないと思いますよ」
 壁一枚隔てたスタジオでは、それはそれは楽しそうにリハーサルをしている姿。そんな姿を見たのは、どれくらい振りだろうか。
「…少し、痩せたか?」
 元々、スマートではあったが、以前よりもまた少し細くなっているような気がする。まぁ、今の相棒が更に細いのも影響しているのだろうが。
「えぇ、恐らく。でも、体調は良いみたいですよ。昔のように、無茶もしてないみたいですし」
 そう言ってくすくすと笑いを零すスタッフ。その言葉には、デーモンも苦笑する。
 昔はそれこそ、年中朝まで呑んでいた。それでも平気で仕事を熟していたのだが、今はもうそこまで無茶出来る年でもない。何より、デーモン自身もそれを一番痛感していたりもするのだから。
「あの頃は若かったからな」
 くすくすと笑うデーモン。だが、その気の緩みが"先輩"の気を引く結果となった。
「…拙い…」
 ふと気が付くと、壁向こうのスタジオにいた"先輩"の眼差しが、真っ直ぐに自分に向いているではないか。
「…ばれましたかね…」
 スタッフも慌てて首を竦める。その姿に、確証を得たのだろう。"先輩"は持っていたギターを置くと、スタジオを出てこちらへと向かって来る。そして彼らの前に立つと、徐ろに手を伸ばし、デーモンが被っていた帽子を取り去る。
「…何やってんだ?御前…」
「…あ…っと…」
 帽子の下からは、鮮やかな金色の髪の毛。それを"彼"が見間違えるはずなどない。
「…久し振りだな。もう直ツアーが始まるんだろう?こいつがそう言ってたのを思い出して、近くに来たからちょっと様子を見に…な?」
 サングラスを外しながら慌ててそう繕い、未だに首を竦めているスタッフに話を振るデーモン。まさか、彼が感じた違和感を確かめに来た、などと言えるはずもない。
「え?あぁ、そうです、そうです!この間、そんな話になって…まだ、エースさんのステージを見られたことがないと言うので、お誘いしたんです…ね?閣下?」
 こちらも何とか話を合わせ、再びデーモンへと話を振る。
「…まぁ、良いけどな。こそこそ来ることはないだろう?一言言ってくれれば良いのに」
 溜め息を吐き出す"先輩"。
「御前の邪魔をしちゃ悪いと思ってな。ちょっと様子を見て、直ぐ帰るつもりだったんだ。別に、こそこそしてる訳では…」
 控えめにそう言って見たものの、"先輩"は何処まで信じただろう。まぁ、それはデーモンには推察は出来なかったのだが。
「…じゃあ、僕は仕事に戻りますので…閣下、ごゆっくり!」
 スタッフは慌てて仕事に戻って行く。その姿を見送り、デーモンは小さな小さな溜め息を吐き出す。
----乗りかかった船とは言え、結局、押し付けられてしまったじゃないか…。
 ここまで来たら、諦めるしかない。けれど、違和感を探りに来たことだけは、口に出さないことにした。
「…で、どうだ?順調に行ってるのか?」
 改めて問いかけたデーモンの声に、"先輩"…人間たる清水は、小さな溜め息を吐き出す。
「あぁ、まぁまぁな。組み立てもだいぶ慣れたし、今の所問題はない。そっちは?」
 問い返され、デーモンは小さく笑う。
「吾輩は相変わらずだ。忙しいは忙しいな」
「そう。それは良かったな。まぁ、あんまり無理するなよ。再結成も近いんだし」
「…また、迷惑かけるな。御前とは、まだ面と向かってちゃんと言っていなかったが…また暫く、その身体を借りることになるからな。その間、御前の方の活動は出来なくなる訳だし…」
「皆まで言うな。ちゃんとスケジュールの都合はつけているし、その話があった時から覚悟はしている。こっちのことは気にしなくても良い。エースとも、ちゃんと話はつけてあるんだし」
 そう口にした清水の視線が、ふっとデーモンから逸れる。
 清水は椅子に腰を降ろすと、徐ろに取り出した煙草を口に銜える。だが、思い直したように再びそれをしまった。
「…吸わないのか?」
「リハ中。ツアー前。喉に負担かけちゃ拙いだろう?これでも少しは節制してるんだぜ。ヴォーカリストに仲間入りした端くれとして、な」
「…そう、か…」
 以前とは、少し変わった姿。流石に、ヴォーカリストとしての立場も弁えなければならないのだろう。
「"エース"は…御前のツアー中には、人間界には来ないのか?」
 ふと問いかけた言葉。再結成の準備段階で、何度か顔を合わせてはいるが、今ここに、エースの気はない。完全に、清水一名、だった。
 問いかけたデーモンに、清水は小さな吐息を吐き出した。
「俺が混乱しないように、離れているってさ。まぁ、ツアーが終われば直ぐに戻って来る。時間もないし…な」
「…そうだな。ツアー前だしな…」
 多分、清水は余り乗り気でない。それは、デーモンが直感的に感じたことだった。
「…じゃあ、吾輩そろそろ行くな。頑張れよ」
「あぁ。じゃあ、な」
 デーモンが踵を返すと、清水も椅子から立ち上がり、再びスタジオへと消えて行く。
 僅かに振り返ったデーモンがその背中を見送っていると、もう一つの視線とかち合った。
 それは、清水の今の"相棒"。小さく下げた頭は、恐らく会釈だったのだろう。デーモンも小さく頭を下げ、挨拶をすると、そのまま踵を返した。

 スタジオから出るところで、デーモンは例のスタッフに声をかけられた。
「エースさん、どうでした?何か違和感を感じました?」
「違和感ねぇ…」
 腕を組み、思い返してみる。
 確かに、以前とは違っている。けれどそれは、彼が"人間"として歩み始めていれば当然のことであって、それが本来の"清水"であろうと思う。
 他に思い当たることと言えば…。
「吾輩は、歓迎されてなかった、ってことぐらいかな」
「…は?」
 スタッフは奇妙な声を上げたが、デーモンは敢えて言葉を続けた。
「別に、今の所そんなに変わった様子はないみたいだぞ。ただ、ツアーと再結成とで忙しいから、ちょっと気が安定していないんだろう。無茶しなければ大丈夫じゃないか?」
「…そうですか…?」
「あぁ。問題ない。だから…」
----清水のこと、頼むな。
 そう付け加え、スタッフの方を軽く叩くと、デーモンは外へと歩き出した。
「有難うございました!」
 背後から聞こえた声に軽く手を上げ、挨拶をする。けれど、振り向くことはしなかった。
「…何だか、昔に戻ったみたいだな…」
 小さくつぶやいた声は、もうスタッフには聞こえない。

◇◆◇

 その日の夜。デーモンは、魔界にいるエースと意識波で会話していた。
『…そうか。清水に違和感があるって言われたのか』
 エースの声に、デーモンは溜め息を一つ。
「そんなこと言われたって、吾輩だって清水単体には暫く会ってないし、会話だってしていないって言うのに…」
『で、どうだったんだ?御前のことだから、清水に会っては来たんだろう?』
 笑いを含んだ声で問いかけられ、デーモンは再び溜め息を零す。
「…まぁ、な。でも…忙しいんだろうが、妙にそっけなかったな。昔の御前を思い出したよ」
『成程な。それで、そんな落ち込んだ声なんだ』
 くすくすと笑うエース。向こうは妙に機嫌が良い。
「御前だってな、そんなに放置で大丈夫なのか?彼奴のツアーが終わったら、準備に入らなきゃいけないんだぞ?」
『ツアーが終わるまでは落ち着かないだろう?だから、今はそっとしておいてやろうと思ったんだよ。大丈夫、彼奴も覚悟はしてるから』
「だからってなぁ…」
 そう零すデーモン。だが、何かが引っかかる。
「…そう言えば…」
『どうした?』
 急に会話の止まったデーモンに、エースは怪訝そうな声で問いかける。
「…あぁ…清水と会って、話をして…正直な感想だ。彼奴、本当は同意してないんじゃないのか…?」
 そう問いかけてから、エースの答えが返って来るまで暫しの時間があった。その間、デーモンはじっと黙っていた。ただ、エースからの答えを聞きたかったから。
『それは…ある意味、当たり前だと思う。説得はした。向こうも、納得はした。だから、今回の再結成に繋がってる。だけど…彼奴の本心は、俺の力を借りたくはないんだ。それは、最初からわかってたことだ。だから、俺は彼奴の音には一切手出ししていない。人間として、歩き出そうとした彼奴を見送ってから、一切関わっていない。彼奴が、最初のアルバムの曲で苦戦していた時を最後に…俺は、彼奴に関わることをやめたんだ。今更、再結成だから身体を貸せ、と言われて、はいどうぞ、って簡単に割り切れないことぐらい、俺だってわかってるさ。だから、彼奴のツアー中は一切接触しないと約束してるんだ』
「…そう、か」
 本体と媒体との関係。一定ではないその関係は、元々意識を持って生まれて来たデーモンには理解し得ない部分もある。だから、口を挟むことは出来ないが…それでも、これからはまた媒体が必要となる期間なのだから、ただ傍観しているだけでは心苦しい所もあるのだ。
「…なぁ、エース…吾輩、もう一度清水に会って来ようかな…」
『は?何の為に?』
 デーモンの思考が全く読めないエースは、未だ怪訝そうな声のまま、である。
「ほら、清水の違和感。もしかしたら、再結成とも関係しているのかも知れないと思ってな。だったら、少し気にかけた方が良いかと…」
『清水のことは、俺がやるから。御前は気にするなよ』
「エース…」
 釘を刺すようなエースの言葉に、デーモンは眉を寄せる。
『清水のことは、御前が関わることじゃないだろう?再結成のことで、清水が不安定になっているのなら、それは俺がどうにかすることだから。御前が心配することではないし、余計な気を廻せば寧ろ彼奴も気が気じゃないだろう?』
「だがなぁ…」
『良いから。御前は、傍観していれば良い。これから御前が一番、準備で忙しくなるんだから。良いな?』
「…わかった…」
 エースの言葉に押され、結局デーモンはそれ以上何も言えなかった。
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