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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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泡沫 4  
こちらは、本日UPの新作です
 4話完結 act.4

拍手[3回]


◇◆◇

 ライデンは、ゼノンに手を引かれたまま、自室へと連れて行かれた。
 テーブルを挟んで向かい合って椅子に座り、御互いに顔を伏せている。そして、暫しの沈黙…。
「…御免…」
 最初に口を開いたのは、ゼノンだった。
「…何で、あんたが謝るの…?」
 顔をあげ、問いかけたライデンの声に、ゼノンは大きな溜め息を吐き出す。
「だって…心配、かけたでしょ?ライデンだけじゃない…みんなにも…レプリカにも…」
「…そうだね。俺たちもそうだけど…レプリカも、凄く心配してたよ。俺が来た時にはテオも丁度いて…レプリカに何を言ったのかは知らないけど、物凄く不安そうだった」
「…わかってる。悪かったと思ってるよ…ホリィはあんなだから…多分、迷惑かけたんだろうなとは思う」
 顔を伏せたままのゼノンを見つめながら、ライデンも大きく息を吐き出す。
「"天邪鬼"…だってね、彼奴」
「…聞いたの?」
「うん。本魔にね。だから、俺はある程度は察した。でも…何を考えてるのかはわかんないけど」
「そう…」
 再び、溜め息が零れる。
「…何があったの…?」
 小さく問いかけたライデンの声。
 その声に…ゼノンは、再び溜め息を吐き出す。
「…夢をね…見たんだ…」
「…夢…?」
「そう。あの夜、ね」
 それは、ゼノンがいなくなる直前のこと。
「昔の夢。それが…俺自身、物凄く嫌だった。それで…逃げて来た、って言うのが一番近いのかも知れない」
 溜め息混じりにそう言葉を零したゼノンは、テーブルの上で両手を硬く握り締めていた。
「俺の中の"鬼"が、騒いでいる気がしたんだ。だから…ホリィに頼んで、隔離して貰ったんだ」
「…心のバランスを整えてる、って聞いたけど…そう言う事なの?」
 ライデンのその言葉に、ゼノンはハッとしたように顔を上げた。
「…誰から聞いたの…?」
「…あんたが封じてる"鬼"から。俺が閉じ込められた部屋に眠ってたじゃん」
「…あぁ、そうか…」
 その表情は、何処か落ち着かない様子で。
 その姿に、ライデンはゆっくりと口を開いた。
「…俺ね…テオに言われたよ。俺が…あんたと、あんたの中の"鬼"をバラバラにしたんだ、って。本質を封じたあんたは、抜殻だって。全部、俺の所為。だから…テオは、俺が大嫌いだって…あんたから"鬼"を奪った俺が、大嫌いだって」
「…御前にそんなこと言ったの?」
「そう。何か…胸が痛かったな」
 けれど、その言葉とは裏腹に、ライデンは小さな笑いを零した。その姿を、ゼノンは当然、不思議そうに見つめている。
「でもね…あの部屋に閉じ込められて…あんたの本質である"鬼"とね、話が出来た。あんたは、ずっと眠ってるって言ったけど…俺には、ちゃんと彼奴の声が聞こえたよ。テオは天邪鬼だから…俺に言った言葉は、本心の裏返し。本当は、あんたと俺のことが心配なんだ、って。まぁ、それがホントかどうかは俺にはわかんないけどね」
 そう言って笑うライデンは、本当に強いと思った。
「…でも…ホリィのことは、気になってるでしょう?」
 ゼノンはそう、問いかける。するとライデンの表情は、苦笑いへと変わる。
「まぁ…ね。でも、士官学校時代の仲魔でしょ?それに、彼奴は天邪鬼で…"鬼"であるあんたに、近いところにいるって。だから、あんたの"鬼"を見守る役割を担っているって」
「…それだけじゃないんだ」
 ポツリと零した言葉に、ライデンは首を傾げる。
「部下ってこと?監査室の室長だしね。それにレプリカの同僚ってのも聞いたけど?」
「…うん…まぁ…」
 イマイチはっきりしないゼノンに、ライデンは更に首を傾げる。
「…他に、何かあるの?」
 問いかけた声に、ゼノンは溜め息を一つ。
「過去には触れてくれるな。多分、彼奴はそう言っただろうけれど…これだけは言っておく。また、同じことが起こらないとも限らないから」
 そう言うと、ゼノンは顔を上げた。そして、ライデンの眼差しを真っ直ぐに見つめる。
「俺は、彼奴を殺しかけた」
「…え?」
「彼奴は……俺の、儀式の相手で…その時に」
「………」
 一瞬…何を言われているのか、わからなかった。けれど、言葉の意味を理解すれば、言っている意味がわかる。
 ゼノンは…血を好み、肉を喰らう種族の"鬼"。そして…関係を持った相手を喰らってしまう。
 それを回避する為に、ピアスをして、"鬼"を封じたのではないか。
 口を噤んだライデンを前に、ゼノンは大きく息を吐き出す。
「夢に見たのは…その時のこと。俺は、ホリィを殺しかけた。死ななかったのは…彼奴も"鬼"の種族だから。でも…彼奴、角ないでしょ?」
「…それは、俺も気になってたんだけど…曖昧に濁されたし、それ以上はどうも聞ける状況でもなかったし、彼奴も言おうとはしなかったし…」
 確かに、曖昧に逃げられた感は否めない。けれど、ライデンも何となくその心境は察していた。
 恐らく…彼は、それを問われたくはなかったのだろう、と。
「俺が…圧し折った」
「…ゼノ…」
 まさかの告白に、ライデンは返す言葉がなかった。
「辛うじて生命は助かった。でも、あの時…御互いに覚悟を決めていたとは言え、あの惨たらしい情景は俺の記憶から消えない。それを思い出したあの夜…急に怖くなったんだ。"鬼"は、俺自身だ。いつまた俺が…彼奴を取り戻すか。ずっと…怖いよ…いつ…御前を傷つけてしまうかわからないから…」
 とても辛そうなゼノンを前に、ライデンは暫く口を噤んでいた。
 ゼノンにとって、大きなトラウマ。その情景を忘れることが出来ない上に、今でもその想いは自分自身を苦しめていた。
 暫く、ゼノンのそんな表情を見つめていたライデン。けれどやがて小さく息を吐き出すと、にっこりと笑って見せた。
「全部忘れなよ、って言えれば良いんだけどね。そう簡単に忘れることは出来ないのはわかってるよ。でも俺は、テオとは違う。俺は、"鬼"に負けるほど弱くないし。それに…何があったって、ちゃんと受け止めてやるから」
「…ライ…」
「俺…あんたの"鬼"も好きだよ。少なくとも…彼奴からは、俺に対する殺気はなかったし…寧ろ優しかったよ。あんたのことも、凄く心配してた。昔のことはどうであれ…今の彼奴は、俺のことも、あんたのことも…きっと、大事に思ってくれてると思うよ」
 すると、ゼノンは大きな溜め息を吐き出した。
「…そんな簡単なことじゃ…」
「難しく考え過ぎじゃない?俺は、あの"鬼"を信じても良いと思うよ。だって、彼奴だって…ちゃんと、あんただもん。過去を克服するのは、あんたにしか出来ない。でも…俺が、傍にいるからね。俺は…あんたも、あんたの中の"鬼"も…両方、大事だから。だから…護ってあげるよ」
「………」
 今、ここに、ゼノンがちゃんといるから。だから、不安はない。
 自分が一番愛されていると言う、自信もあるから。
「大丈夫。あんたが、俺をちゃんと見ていてくれる限り…俺はぶれないよ?」
 にっこりと微笑み、ゼノンの頭を抱き締める。
「大丈夫」
 繰り返された言葉に、ゼノンは小さく笑った。
「やっぱり、御前は強いね。俺は…御前には敵わない」
「敵うとか敵わないとかじゃないでしょ?俺だって…あんたには沢山助けられた。俺が強いって言うのなら、そうさせてくれたのはあんただよ?俺だって、あんたに出逢っていなかったら…多分、今とは違ってたと思う。だから、御互い様。ね?」
「…うん。有難う」
 もしも、出逢っていなければ。そんなことは、もう考えられない程…一番、近くにいるのだから。
 一番、必要としているのだから。
 変わらずに、共に歩いて行ければ良い。
 その想いは、御互いに通じ合っていた。

◇◆◇

 ゼノンとライデンがリビングへ戻って来た。当然…まだ、その空気は固い。
「…御免ね、長々と…」
 そう口を開いたゼノン。その表情は、リビングを出て行った時よりも随分柔らかくなり、本来のゼノンに戻ったようだった。
「…ホント、待ち草臥れた…」
 大きな欠伸を零したのはルーク。まぁ、直に夜が明けようか…と言う時間なのだから、無理もない。
「御免。取り敢えず…状況を説明するよ」
 そう言って口を開いたゼノン。
 勿論、話せる範囲で…だが、魔界に戻ってからどうしていたのかを説明した。そしてライデンも、"鬼"と話したこともざっくりと。
「…でさ、あんたは結局何処にいたのさ…?文化局の局内にいた訳?」
 レプリカにも連絡を入れず、局内で見かけられたのを最後に、足取りが掴めなかったのだから、そう考えるのも無理はない。
「…そうだよ。俺もそれは聞いてない」
 問いかけたルークの声に賛同するように声を上げたライデンに、笑ったのは、今まで黙っていたテオ、だった。
「あんたのいた部屋の隣にいたんだよ?気付かなかった訳?」
「……は?」
 思わず声を上げたライデンに、ゼノンが答える。
「…うん…そう。ライデンが閉じ込められた部屋の隣にいた…そこが一番、彼奴に近い場所だったから…」
「……何だよ…だったら、教えてくれたって良かったじゃん…」
 そう溜め息を零したライデンだったが…まぁ、テオが相手なのだから、そんなに簡単に教えてくれないこともわかったのだが。
「御免…」
 改めてそう零したゼノン。けれど、ゼノンの気持ちもわからなくはない。だから、誰もそれ以上責めることはなかった。
「まぁ…無事でいれば良いさ。ゼノンもライデンも、元気になったみたいだしな」
 笑ってそう言ったデーモンに、テオは再び笑う。
「単純~」
「…ホリィ。もう駄目だよ」
 溜め息と共に吐き出されたゼノンの言葉に、テオは笑ったままだった。
「…で?俺の処分はどうなる訳?」
 興味深げに問いかけたテオに、誰もが顔を見合わせる。
「まぁ…直属の上司はゼノンだから、判断するのはゼノンだろうが…」
 代表して口を開いたデーモンに、ゼノンはちょっとだけ考えてから口を開いた。
「俺は…別に、何の処分もするつもりはないけど…だって、別に、罪を犯した訳でもないし、誰に危害も与えてないと思うんだけど…」
「確かに、実害はないかも知れないけどなぁ…」
 イマイチ納得行かないと言う表情を浮かべたエースだが、視線を向けた先のライデンはくすっと笑った。
「良いんじゃない?別に、処分なしでも。俺も、別に危害は加えられてないし」
「…まぁ…ライデンがそう言うなら…」
 溜め息と共に吐き出された言葉に、ライデンはテオへと視線を向けた。
「…と言うことだから。まぁ、色々あったけどさ。ゼノンがあんたを信じている以上、俺たちもあんたに敵意を向けるつもりはないし」
 するとテオは、相変わらずの笑いをその口元に浮かべた。
「…御人好しだね、あんたたちみんな。俺は、あんたを"鬼"に喰らわせよとしたってのに」
「まぁね。でも、それに関しては結果オーライだし。それに…あの状況で、彼奴は俺を喰うつもりなんかこれっぽっちもなかったと思うよ。だって、そんなことより…ゼノンの回復の方が、大事だもん」
 ライデンはそう言うと、ゼノンへと視線を向け、にっこり笑った。
「愛されてるモンね?」
「……まぁ…それに関しては、ノーコメントで…」
 ゼノンにしてみれば、幾らライデンが聞いた話が"鬼"の本心であったとしても…昔のことを思うと、喜んでもいられない訳で。それをわかっているから、聞いていたテオも、苦笑していた。
「あんたさ、ゼノンにそれを問うのは酷だろうよ」
「…あんたにも…ね」
「……突いて来るね…」
 意味深なライデンの言葉に、テオはにやりと笑った。
 その二名のやり取りの間にある微妙な空気に、ゼノンは溜め息を一つ。
「…とにかく、ホリィの処分はないから。さ、もう帰って良いよ」
「追い返すのかよ」
 くすくすと笑うテオに、ゼノンは困ったように眉を寄せる。
「今日はね。まだ休暇中でしょ?だから、また後日ゆっくりとね」
「…しょうがない。大人しく帰りましょ?」
 ゼノンにそう言われ、テオは大人しくリビングから出て行く。
「…俺、ちょっと見送り…」
 そう言って、その背中を追ったのはライデンだった。
「…良いのか?」
 心配そうに見ていたデーモンが、ゼノンに声をかける。
「…ライデンなら大丈夫だよ。それより、部屋を用意するから眠って行ってよ」
「あぁ…」
 残された三名は、顔を見合わせる。まぁ…時間も時間なので、それが一番簡単で良いのは確かだった。
 ライデンのことは、ゼノンに任せるしかなかった。

 テオを追って玄関までやって来たライデン。
「気をつけてな」
 ドアノブに手をかけたところで、ライデンがそう声をかける。するとテオは、その声を振り返った。
「ホント、御人好し」
「…俺は良いの。嫌だったら、わざわざ見送りなんかしないから」
 くすっと笑ったライデンに、テオは今まで笑っていた表情を引き締める。
「…あんたに言ったこと…嘘じゃないからな」
 それは…あの"鬼"の前で言われた言葉だろう。
「あんたが、俺を嫌いなのはわかってる。でも俺は…そんなに、嫌いじゃないよ。あんたのこと」
「…ゼノンの最初の相手でも?」
 真っ直ぐにライデンに向けられた眼差しは、酷く挑戦的で。
「…聞いたもん。ゼノンに。あんたが、殺されかけたことも…角を圧し折られたことも…ね」
 答えたライデンも、真っ直ぐにテオを見つめていた。
 揺るがないその眼差しに…テオの方が、目を伏せた。
「…そう。ゼノンはそこまで、あんたに話したんだ」
「まぁ…話の成り行きだけどね」
 ライデンはテオを見つめたまま。
「ゼノンが"鬼"を怖がるのは、俺を護る為だけじゃない。あんたを傷つけたことを後悔しているから」
「………」
 テオの表情がほんの少し、歪んだ気がした。
「あんたは、ゼノンを護ろうとしたんだろ?だから、今でもゼノンの"鬼"を見守る事で、傍にいるんだろ?ゼノンはあんたに感謝してるよ。それは俺にもわかる。でも…」
「でも?」
「…今ゼノンに愛されてるのは、俺だからね。忘れんなよ」
 そう言ったライデンに、テオはその眼差しを上げた。そして、小さく笑う。
「強気だね」
「当然でしょ?唯一、"恋悪魔"を名乗るのを許されてるんだから」
「…そう。俺もあの時……あんたみたいな強さがあれば良かったな。でも俺には…"鬼(あいつ)"を、飼い慣らすことは無理だな」
「…テオ…」
 笑いを零したテオ。
「じゃあな。また、機会があれば」
 テオはライデンが口を開く前に、ドアを開けて外へ出た。
 遠くの空がうっすらと白む中、テオは振り返らず帰路を急いだ。
 ライデンは、ドアが閉まっても暫くそこから動けずにいた。

 暫くしてリビングに戻って来たライデン。けれどそこには、既に他の仲魔の姿はなく、ゼノンとレプリカが残っているだけだった。
「…みんなは?」
 問いかけたライデンの声に、ゼノンが答える。
「客間で休んで貰うことにしたから。後は御前だけね」
「…そうか」
 小さく息を吐き出し、ソファーへと腰を下ろしたライデン。
「何か、召し上がりますか?」
 問いかけたレプリカに、ライデンは小さく笑う。
「別に良いや。色々大変だったけど、もう大丈夫だよ。ゼノンはちゃんと"ここ"にいるからね」
 "ここ"にいるから。ライデンの言葉は、その強い絆を改めて感じさせた。その言葉が、どんな説明よりも安心出来る。そんな気がして、レプリカは小さく笑った。
「…はい。有難うございます」
 ゼノンもまた、小さな吐息を吐き出す。
 この先に、不安がない訳ではない。けれど…ライデンの言葉は、何よりも信じられるものだと思えた。
 ライデンがいる限り。
「…有難うね」
 その言葉は、支えてくれたライデンと、レプリカへ。
 その想いが続く限り、"鬼"とも、共に歩んでいけそうな気がしていた。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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