聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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泡沫 3
どれくらい時間が経ったのか…時計のない部屋では、さっぱりわからなかった。
入り口のドアに寄りかかり、膝を抱えて座っているライデンは、ただぼんやりとベッドに横になる"鬼"を見つめていた。
"鬼"が纏う気には、まだ慣れない。
そんな、落ち着かない空気の中…ライデンは、テオの言葉を思い出していた。
ゼノンをバラバラにしたのは、他ならぬ自分自身。一番大切な相手から、本質を剥ぎ取ってしまった。それが…酷く、胸に響いた。
「…全部…俺が…悪いのか…」
抱えた膝に額を寄せ、小さくつぶやいた声。
突きつけられた現実。それは、とても残酷だった。
「…御免な…ゼノ…」
胸が苦しい。
溢れた涙は…気付かなかった自分が、情けなくて。
留めることの出来ない気持ちは…どうにもならなくて。
けれどその時、ふと周りの空気が変わった気がした。
『泣いて…いるのか…?』
不意に問いかけられたその声に、ビクッとして顔を上げる。するとそこに…自分を見つめる眼差しがあった。
「…ゼノン…」
"鬼"の顔。纏うのは"鬼"の気。けれど…その視線は、良く見知った碧の眼差し。
彼はベッドから上体を起こし、真っ直ぐにライデンを見つめいた。
『どうして…泣いているんだ…?俺が…怖いのか…?』
それは、とても優しい声だった。
だから…胸が一杯になった。そして…涙は、止まらなかった。
「…御免…俺……」
真っ直ぐに"鬼"を見つめたまま、ぽろぽろと涙を零すライデンを、彼はただ黙って見つめていた。
"鬼"とライデンの間には、鉄柵がある。手を伸ばしたところで、その鉄柵に阻まれ、ドアの前にいるライデンには到底届かない。だから…動くことが出来なかった。
『…何もしない。だから…もう、泣くな…』
小さく、聞こえた声。それは…ライデンが良く知っている"ゼノン"と同じだった。
「…そうだよな…あんた、ゼノンだもんな…」
思わずそう零した自分の声に、ライデンは笑いを零した。
そして、手の甲で涙を拭くと、這うように鉄柵へと近付いた。
「…御免ね…俺、あんたの気には慣れないんだけど…でも…あんたは、"ゼノン"だから…怖くはないよ」
ライデンはそう言うと、両手で鉄柵を握り締めた。
「ねぇ…聞かせて?あんたは…俺を、恨んでる…?"ゼノン"から、あんたを引き離した俺を…」
その言葉に、"鬼"は笑った。
『どうして御前を恨む?俺を封印したのは"ゼノン"であって、御前じゃない。御前は、何の責任もないだろう…?』
「でも…俺の所為、でしょ?ゼノンが、俺と出逢わなかったら…あんただって、こうして封印なんかされなかったかも知れないのに…」
『俺は、元々ゼノンの気質とは逆向きの性質だからな。合わないのは当然だ。別に、御前が原因じゃない』
「でも…」
"鬼"はベッドの上から移動し、ライデンの前までやって来る。そして、ライデンの前に胡坐をかいて座った。
『ゼノンは…俺が嫌いなんだ。俺が能力を使うと、自分自身を失うような気がすると言ってな。それは、御前と出逢うずっと前から言っていたことだ。"鬼"の種族でありながら、"鬼"を捨てようと思ったのは、別に御前だけの所為ではない。俺だって、彼奴の気持ちはわかっているつもりだ。そうでなければ…大人しく、封じられるものか』
「…ゼノン…」
"鬼"は、目を細めて笑った。
『ホリィに、担がれたか?』
「……担がれた、って…彼奴は、俺が嫌いなんだよ。だから、俺をここに閉じ込めた。俺が…あんたに喰われるのを、望んでいるんだ…ゼノンをバラバラにしたのが、俺だから…」
そう言ってライデンは、唇を噛み締める。
目の前の"鬼"からは、不思議と敵意も恐怖も、何も感じない。ただ、苦手だった"気"が、纏わり付いているだけで。
『ホリィは…"天邪鬼"だと、知っているか?』
ふと、"鬼"が問いかけた。
「…うん、聞いた。だから…俺が苦しむのが楽しいんだ。俺が、憎いから」
答えたライデンの声に、"鬼"は再び笑った。
『だから、担がれたと言ったんだ。"天邪鬼"は、ヒトの言うことやすることにわざと逆らうひねくれ者だ。そんな"天邪鬼"が、初対面の御前に本心を明かすとでも?』
「…でも…」
困惑した表情を浮かべたライデン。
『ホリィとは、長い付き合いだ。彼奴の言葉の何が真実かは、俺にはわかるが…他のヤツにはまだ掴めないだろうな』
「…じゃあ、どう言う事なの?何で俺を…ここに、閉じ込めたの…?」
問いかける声に、"鬼"はその視線を、真っ直ぐライデンへと向けた。
『ゼノンは今、心のバランスを調整している。俺との関係をな。俺が、御前を傷つけるのではないかと…ずっとその心配をしている。そして、御前と出逢う、もっと前のことを思い出して…同じことが、御前に起こらなければ良いと、いつも思っている。不安が強くなればなる程、俺とのバランスが崩れて来るんだ。今、そのバランスの調整をしている。不安なのは…俺と、御前の関係だ。ならば…直接、俺と御前を逢わせて、話をさせるのが一番良い。それが、ホリィが出した結論だ』
「…それって…俺が、あんたに喰われるように仕向けた訳じゃない、ってこと…?」
『心配、しているんだ。ゼノンと…御前のことを。ただ、それだけだ』
「………」
全く、想像していなかった。テオは…ただ単に、ライデンを弄んでいるのだと思っていたから。
「…ゼノンは…どうしてそんなに、不安になるの?俺は…あんたから、敵意も脅威も感じない。なのに…どうして…?」
思わず問いかけた声に、"鬼"は僅かに口を噤んだ。
『…それを聞いてどうする?ゼノンの過去を穿り返して…自分に不利な状況を作るのか…?』
「…それは…」
ライデンも、言葉に詰まり、口を噤む。けれど…考えを巡らせ、ゆっくりと言葉を放つ。
「…昔…ゼノンが言ってた。あんたは…血を好み、肉を喰らう種族の"鬼"だ、って。そして…"鬼"のままでは…恋愛を成就させることは…相手を、喰らうことだ、って…。悩んでいることが、それなら…誰かを、喰らったって言うこと…?今まで好きになった相手を喰らってしまったから…俺を喰らわないように、あんたを封じた、って事なんじゃないかと…だったら……いつか、あんたが解き放たれたら…それを繰り返すんじゃないかって…それが不安なのかと…」
『わかっているじゃないか。だったら、それ以上触れてくれるな。"今"を生きているのなら、昔の記憶を呼び起こす必要はない。確かに俺は、ゼノンの恋路には不向きな性質だ。だから、共存するのであれば、諦めも必要だった。だがゼノンは、御前に限っては、どうしても諦められなかった。だから、俺を封じた。ゼノンが、俺を恨まないように。俺が…ゼノンに、絶望を与えないように。ただ、それだけの話だ』
「あんたは…それで良かったの…?」
『…ライデン…?』
問いかけたライデンの真意が、"鬼"にはわからなかった。
『俺がいない方が、御前も安心だろう?良いも悪いもない』
「…でも…あんたは、寂しくないの…?」
その言葉に…"鬼"は、笑った。
『元々俺は、"絶望の塊"だからな。寂しくはない。ゼノンが、前向きに生きられるのならば』
「…ゼノン…」
『俺には良くわからないが…絶望で生きて行く生命よりは、愛することも愛されることも出来る生命の方が、前向きになれるのだろう?ならば、その方が良い。もしも、いつか…俺の能力を必要とする時に、その反動が大きい方が、より大きな能力となる。まぁ、頼ることがない方が、ゼノンには幸せなのかも知れないがな。ゼノンと共にある生命だ。有意義に過ごした方が良いだろう?』
彼は…今目の前にいる"鬼"は、自身を"絶望の塊"だと言いながらも、ゼノンの絶望を望んでいる訳ではない。寧ろ…ゼノンの幸せを、願っているだなんて。
"鬼"の脅威だけを聞いていたから…それだけを、信じていたから。それに、気付かなかった。
誰よりも…自分が、信じてあげなければいけなかったのに。
"鬼"であっても…何も、変わりはないのだと。ずっと…愛しているのだと。
「…御免ね。俺…そこまで、わかってなかった。ゼノンと、あんたの関係…わかっているようで、全然わかってなかったんだね…」
小さく、笑いを零したライデン。
目の前にいる"鬼"に、恐怖を感じなかったのは当然のこと。
彼は"ゼノン"そのものであり…その心も、共有しているのだから。
「…教えてくれて有難う、ゼノン」
ライデンは、にっこりと微笑んだ。
その姿に、"鬼"も、微笑む。
それは…多分、誰も見たことのない、優しい微笑みだった。
多分、ゼノンでさえも。
『…迎えが来たぞ』
すっと表情を戻した"鬼"がそう言った瞬間。カチリ、とドアの鍵が開いた音がした。
そして。
「…ライデン、いるの…?」
ドアが開くと共に、呼びかけられた声。それは…愛しい、悪魔の声。
「…いるよ」
ドアへと視線を向ければ、そこにはゼノンと…そして、テオの姿。
「なぁんだ。"鬼"が負けちゃったか。つまんないの」
「…ホリィ。いい加減にしてよ。こんな危険なこと…」
テオの声に、ゼノンは溜め息を吐き出す。そして、部屋の中へと足を踏み入れた。
「…御免ね、遅くなって。心配したでしょう…?」
申し訳なさそうにそうつぶやいたゼノンの声に、ライデンはにっこりと微笑んだ。
「大丈夫。だって、一杯話ししたもん。ね?」
そう言って"鬼"を振り返ると…"鬼"は、最初と同じように、ベッドで眠っていた。
表情もなく…ただ、"鬼"の姿で。
「…あ…れ…?つい、今さっきまで起きてたのに…」
そうつぶやいたライデンに、ゼノンは腕を伸ばしてライデンを立ち上がらせる。
「…彼は…もうずっと前から、眠っているよ。俺が、必要とするまで…ね」
「…ゼノン…」
ゼノンの声は、とても低かった。だから…それ以上、何も言えなかった。
「…帰ろう。みんなに心配かけちゃったから…謝らないと…」
それは、人間界に残して来た仲魔たちと…屋敷で心配しているであろう、レプリカに向けた言葉。
「…うん…」
ゼノンに腕を取られ、廊下へと歩き出したライデンだったが…ふと、その視線を"鬼"へと向ける。
変わらずに眠り続ける"鬼"は…ほんの少しだけ、笑った気がした。
それを見たのは、ライデンだけ。
彼だけが…"鬼"の本心を、知り得たのだ。
----…またね。
小さなつぶやきは、果たして届いただろうか。
例え、言葉は届かなくても…きっと、ライデンの気持ちは、届いているはずだった。
時間は、もう夜半を回っていた。
その暗い道のりを、ゼノンはライデンと一緒に、自分の屋敷へと戻って来ていた。
その背後には、少し離れて、黙って着いて来るテオの姿もある。
「…何で、彼奴もいるの…?」
ゼノンに小さく問いかけた声に、ゼノンは前を向いたまま小さく零す。
「一応…関係者だからね。変に誤解されたままって言うのも、ホリィに悪いから…」
「……そう…」
表情を変えないゼノンの心の中が読めない。
ライデンには、その姿が"鬼"といる時よりも不安だった。
そうこうしているうちに、ゼノンの屋敷へと辿り着く。
そのドアを開けると、出迎えた姿。
「…ゼノン様…」
「…ただいま。御免ね、レプリカ。心配かけたみたいで…」
「…いえ…皆様、いらしております…」
レプリカも、ゼノンの姿にホッとした様子ではあったが…ライデンと同じく、何処かすっきりしない何かがあるようだ。曇ったままの表情が、それを物語っている。
「…そう」
一言だけ零すと、リビングへ向かって歩き出す。その後ろを、テオ=ホリィは着いて行く。けれど…ライデンの足は、進まない。
「…何か…変だよね、ゼノン…」
玄関に残ったレプリカに、そう言葉を零す。
「…はい…」
ライデンと共に、その背中を見送ったレプリカは、浮かない表情のまま小さな溜め息を吐き出す。
「…ゼノン様…ですよね?」
改めて、ライデンに問いかけたレプリカの声。その言葉には、ライデンも溜め息を一つ。
「そうなんだけど…」
纏う気も、声も姿も眼差しも、ゼノンに変わりはない。けれど…引っかかるものがある。それが、ライデンにとってもレプリカにとっても、同じものではあるようだ。
「…デーさんに連絡してくれて、有難うね」
気持ちを切り替えるように、ライデンはレプリカに小さく笑った。
「わたくしは、ライデン様に言われた通りにしただけです。皆様、心配なさっておりました。無事な姿を御見せになってください」
ライデンに対しては、柔らかい表情を向けたレプリカ。
「うん。わかってる」
ライデンはそう言い残すと、レプリカの肩を軽く叩き、勝手知ったるリビングへと向かった。
リビングのドアは、開け放たれたまま。
そこを潜ると、ソファーに座ったままの仲魔たちの姿が目に入った。
「ライデン、無事で良かった」
安堵の表情を浮かべているのは、デーモン、エース、ルークの三名。
「御免ね、連絡出来なくて。ちょっと…色々あってね」
そう言いながら、入り口の横の壁に寄りかかったままのテオに、チラッと視線を向ける。
だが、テオは腕を組んで目を伏せたまま、口を噤んでいた。
「…全部、俺の責任だから。御免ね…」
そう口を開いたのは、ゼノン。けれど…その表情は相変わらず、何かを考えているかのようで。
「詳しく…説明して貰おうか。御前が急に姿を消した理由と…テオ=ホリィを、ここへ連れて帰って来た理由も」
そう言ったエースの口調も、いつになく固い。
すると、黙っていたテオが、目を伏せたまま口を開いた。
「あんたたち、仲魔を信じられないって?長年、一緒にいた仲魔だろう?プライベートを根掘り葉掘り聞くことじゃない」
「…ホリィ…」
視線を上げたテオは、真っ直ぐにエースに視線を向けている。その眼差しは…射るように強い光を放っていて。
「全部、俺がやったことだ。ゼノンを閉じ込めたことも、ライデン殿下を、"鬼"の部屋に閉じ込めて喰らわせようとしたことも。全部俺だよ。それで良いんだろう?」
「…ライデンを、"鬼"に喰らわせようとしただと…っ!?」
その事実を知っていたのは、ライデン本魔と、閉じ込めた張本人のテオ。ドアを開けたゼノンの三名だけ。当然、残っていた者たちは、何が起こっているのかを知る由もなかったのだから、驚くのは無理もない。
それも…ゼノンが一番引き離そうとした、"鬼"と一緒に閉じ込めたなど。
「貴様…っ!」
「…ちょっと待ってよ!」
だが、思わず立ち上がったエースとルークを留めたのは、他の誰でもない。ライデンだった。
「俺は何ともないから!"鬼"は、俺に指一本触れちゃいない。だから、ちょっと落ち着いてよ…っ」
「ライデン…」
真剣な表情で二名をソファーへと戻したライデンは、ゼノンを振り返った。
「…まず、あんたと…話をしたい」
真っ直ぐに向けた眼差しに、ゼノンは小さな溜め息を一つ。
「…そうだね。まず、そこからだ。ホリィ、俺が戻って来るまでは何も言わないでよ。御前が余計なことを言うと、みんな混乱するから」
「…ОK。俺は別に構わないよ」
再び目を伏せ、テオはそう答えを返す。
「じゃあ…ちょっと御免。話、して来るから…」
ゼノンはそう言うと、ライデンに歩み寄り、その手を取った。
「行こう」
「…うん…」
繋いだゼノンの手は…とても、冷たかった。それが…酷く、奇妙な感覚で。
明らかに、いつもと違うゼノン。何よりも…それが、とても怖かった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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