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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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闇の翼 後編
こちらは、以前のHPで2005年08月21日にUPしたものです

拍手[2回]


◇◆◇

 数日後。デーモンは、大阪にいた。
 エースにあれだけ言われたのだが、やはりどうしても気になって仕方がなかったのだ。だが、デーモンも色々と所用もあり、様子を見に行けるのはツアー当日の本番直前となってしまったのだ。
 リハーサルの様子だけ見て、そのまま東京へ戻ろう。そう決めてライブハウスへと足を運んだ。
 ツアーに同行している例のスタッフを呼び出し、少しだけリハーサルの様子を見せて貰うことが出来たデーモンは、気配を消し、遠くからリハーサルの様子を見つめた。
 端の方からなら、清水に判別されることもないだろう。余計な心配をかけない為にはそれで良いとの判断だった。
 リハーサルは順調に進んでいる。
 聞き慣れた声、聞き慣れた音。そして、新しい仲間たちとの空間。それは、デーモンの胸にもじんと染み入るものだった。
 そして、何曲目かの演奏が始まった時、"それ"が目に入ったのだ。
 "それ"が見えたのは、ほんの僅かな時間。
 スモークとライトの関係もあったのだろうけれど、それは間違いなく"翼"だった。
 黒の幕をバックに、ライトに照らし出された、一対の大きな黒い翼。それは、息を飲む程美しく、清水にとても良く似合っていた。
「…何だ…そう言うことか…」
 小さくつぶやきを零したデーモン。勿論、それが周囲にも同じように見えているかと言えば、そうではない。恐らく、ただライトに照らされている清水、としか映らないはず。
 それは、人間界には存在しないものだから。
 けれど、"それ"が一瞬でも感じ取れれば、いつもとは違う"何か"を感じたはず。スタッフが感じた違和感の正体は、それなのだろう。
 目には見えなくても。長年彼等"悪魔"の傍にいたのだから、その懐かしい"気配"を無意識に感じ取っていたのだろう。
 だからこそ、デーモンに相談を持ち掛けたのかも知れない。
 そんなことを考えていた時、ふと自分に注がれる視線を感じた。
 目を向けてみれば、じっと自分を見つめる目差し。それは、"彼"の今の相棒、だった。
 物言いたげな目差しは、明らかにデーモンを呼んでいた。
 踵を返したデーモンは、リハーサルに背中を向け、ロビーへと出る。そこで、"相棒"が自分を追って出て来るのを待つつもりだった。
 けれど相手はリハーサル中。本番まであと僅かな時間しかないのだから、出て来るのがいつになるかはわからなかった。
 ただ、ここで待っていなければならないような気がして。
 ロビーの隅にある椅子に腰を降ろし、暫しの時間を過ごす。すると、程なくして待ち人が現れた。
 椅子に座るデーモンの正面に立った"待ち人"は、口を真一文字に結んだまま、じっとデーモンを見つめていた。
「…時間はどのくらいあるんだ?」
 問いかけた声に、相手はゆっくりと口を開く。
「…五分ぐらい…です。それ以上は、ちょっと…」
「そう、か。じゃあ、のんびりはしていられないな」
 そう言うと、デーモンは軽く微笑んで見せた。
「スタジオで会った時も、今日のリハーサルも…ずっと、吾輩を見ていたな。何か、言いたいことがあったんだろう?気兼ねなく、何でも吐き出してくれ」
 その言葉に、相手は息を飲む。そして、大きく息を吐き出すと、改めてデーモンをじっと見つめた。
 そして、その唇から零れた言葉。
「……デーモンさんも…感じてらっしゃいますよね?エースにぃさんの変化…だから、様子を見に来たんでしょう…?」
「…変化…ねぇ…例えば?」
 言いたいことは凡そわかるが、敢えてそれを相手の口から聞いてみようと思ったのだ。
 すると相手は、小さく頷いてみせる。
「俺は、いつも後ろからにぃさんのこと見ています。だから、何となく変わって来ているなって言うのを感じていました。今日、デーモンさんが見に来ていたことも、最初はわかりませんでした。でも…にぃさんの気配が変わったような気がして…それで、気がついたんです。にぃさん自身が気がついているかどうかはわかりませんけど…」
 相手の話を、デーモンは興味深く聞いていた。
 清水の違和感を感じていたのは、例のスタッフだけではなかったと言うこと。ここにもう一名、それを訴える者がいたと言うこと。
「…それで、本田氏が感じた変化とは?その、気配の違いのことか?」
 問いかけてみると、相手は再び大きく息を吐き出した。
 自分の気持ちを、整理しているかのように。
「…さっきのリハで…にぃさんの気配が変わった瞬間、一瞬ですけど……背中に、"翼"が見えたような気がしたんです…多分…デーモンさんにも見えていると…」
「…そう、か。本田氏にも見えたのか」
 くすくすと笑い出すデーモンを、相手は困惑した表情で見つめていた。
「…あぁ、悪い悪い」
 相手の表情に、デーモンは懸命に笑いを押し殺す。そして、未だ笑いを含んだ眼差しで相手を見つめた。
「吾輩にも、清水の背中に翼は見えた。だが、あれは"清水の翼"じゃないんだ。あれは…悪魔の、吾輩の言う"エース"の翼、だ」
「…どう言う…ことですか?」
 怪訝そうな表情を見せた相手に、デーモンは目を細める。
 それはまるで、懐かしいものを思い出すかのようで。
「多分、あれは清水の中にあった"エース"の幻影だ。再結成も近いからな。幾ら、このツアー中は接触しないとは言え、我々の再結成の準備で接触した"エース"の存在が、媒体だった頃の清水の意識を呼び戻し始めたんだ。"あれ"は、人間界に存在するものじゃない。異世界の産物だ。人間である清水には、元々存在していないものだからな。別に、清水が変わった訳じゃない。あれは…"エース"なんだ」
「…本家本元の…」
 相手の表情が変わった。何かを思い詰めているような…苦しげな表情。
「…再結成になったら…にぃさんは、悪魔になるんですよね…?」
 問いかける声も、心なし低くなる。
「別に、清水が悪魔になる訳じゃないけれどな。あくまでも媒体だが…」
 そう答えを返すデーモンに、相手は口を挟む。
「でも、媒体でも悪魔と一体になることには変わらないでしょう?」
「まぁ…そう言われればそうだが…」
 どう答えて良いのかわからず、今度はデーモンが困惑した表情を浮かべる。
 口ではそう言っているものの…"悪魔"と言うことを、何処まで信じているのかはわからない。それに関しては、彼ら以外はみんなそうなのかも知れないが。
 すると、相手は三度、大きく息を吐き出した。
 そして。徐ろにそれを口にする。
「…怖いんです。にぃさんが…"人間"としてのエースにぃさんが、戻って来ないような気がして。だからお願いです。必ず…エースにぃさんを、返して下さい。こんな言い方は、貴方に失礼かも知れないですが…俺たちにも…大事な仲間なんです。だから…再結成が終わったら、必ず…」
 真っ直ぐにデーモンを見つめる眼差しは、とても真剣だった。それだけで、相手の思いは十分伝わって来る。
 その思いは、とても純粋で。ただひたすらに、仲間を案じている。その眼差しに、デーモンは小さく微笑んで見せた。
 "彼"は、ここで必要とされているのだと。それを、倖せだと思わなければ。
「…昔な…思っていたことがあったんだ」
「…え…?」
 思いがけない言葉に、相手は眉を寄せる。けれどデーモンはそんな表情に構わず、目を閉じて自分の記憶に浸っていた。
「…吾輩は、エースの笑顔が好きだったんだ」
 そう切り出した言葉に、相手は黙って口を噤んでいた。
 それは…デーモンが、とても倖せそうに微笑んでいるから。
「…昔は、なかなかエースと打ち解けられなくてな…いつでも、無粋の表情しか見せて貰えなかった。でも、時々彼奴がくすっと笑った顔を見られると…それだけで嬉しくなった。それが、吾輩に向けられたモノではなくとも…ほんの一瞬でも、とても倖せな気分になれたものだった。今だって、その想いは変わらないんだ。ほんの些細なことかも知れないが…吾輩も、同じ瞬間を共有出来ているんだと思えることが、倖せなんだ」
 話の道筋が見えず、相変わらず相手は怪訝な表情を浮かべている。けれど、デーモンはそっと目を開けると、微笑んだまま、相手を見つめていた。
 細められた金色の眼差しは…とても、柔らかくて。そして、とても倖せそうで。
「この間、スタジオリハを見せて貰っただろう?その時に、"彼奴"が笑うのを見た。久し振りに、"彼奴"のあんなに楽しそうな笑顔を見て…吾輩は胸が一杯になったんだ。正直、吾輩は"彼奴"には歓迎されていない。それは、わかっているんだ。人間として歩き出した"彼奴"が、自分の力で進もうとしていること。悪魔であると言うことが、その妨げになるのではないかと言う不安。それは自分だけではなく、"仲間たち"もそう思っているのではないかと言う不安も…な。それが今でも、"彼奴"の中にあるんだろう。だから、極力悪魔とは関わらないように勤めて来たのかも知れない。そして…今のこの"倖せ"を、護る為に…な」
 微笑むデーモン。それは、相手が求めた思いへの答えでもあった。
「今でも、吾輩の想いは変わらない。悪魔だとか、人間だとかは関係ない。"彼奴"が心の底から微笑む顔を、吾輩も見ていたいんだ。だから、その微笑みをちゃんと護ってやるさ。任務が終わったら、必ず御前たちのところに返してやる。それが…総帥としての、吾輩の役目、だ」
「…デーモンさん…」
「今の"彼奴"は、とても倖せだな。良いファンと、良い仲間と…何より、良い相棒に囲まれて。"彼奴"はそれを護りたいんだろう。なら、護って行けば良い。その為に、吾輩たちは、"彼奴"を解放したのだから」
 デーモンはそう言って、その人差し指を相手の胸元へと向けた。
「何の心配もいらないさ。"彼奴"の帰る場所は、"ここ"だけだから」
 にっこりと微笑むデーモン。それが、"彼等悪魔"の、媒体たちへの想い。それを感じ取った相手は、今にも泣き出しそうな顔をしていた。
「さ、時間だろう?そろそろ行かないと、"エース"が心配するぞ?」
 くすっと笑いを零し、デーモンは立ち上がる。そして、相手の横をすり抜け、歩き始める。
「…有難う…ございます…」
 きつく唇を噛み締めて涙を抑えると、デーモンの背中に向けて、深く深く、頭を下げる相手。デーモンは振り返らずに、片手を挙げて挨拶をした。
 これで、良いのだ。もう、案ずることはないのだから。

◇◆◇

 外へ出たデーモンは、その瞬間に頭上から声をかけられる。
『…おい、そこの御節介焼き!』
「…は?」
 その声は、耳にではなく、直接意識に語りかけて来る。意識波に乗せてあると言うことは、常人の声ではない。
 数歩進んで背後を振り仰ぐと、ライブハウスの屋根の上に黒い影が見える。
「…ったく…無茶しやがって…」
 その正体を察したデーモンは、大きな溜め息を吐き出しつつ、周囲に目を向ける。
 幸い、まだ然程人は集まっていない。
 それを確認すると、更に裏手へと足を進める。そして、人気がないことを確認すると、魔力を持ってふわりと空へと舞い上がった。
 そして、屋根の上に寝転ぶ姿の隣へと降り立つ。
「魔力の無駄遣い」
 溜め息と共にそう吐き出された言葉に、相手はくすっと笑う。
『御前こそ。誰かに見られたらどうするつもりだ?』
「心配するな。吾輩は今でもちゃんと"悪魔"だからな」
 デーモンもくすっと笑い、屋根に腰を降ろす。
「…で?ヒトのことを御節介焼きだなんて言う自分は何様のつもりだ?"エース"」
『殿様、とでもしておこうか?』
 そう言ってくすくすと笑う姿。うっすらと屋根が透けて見えているその姿は、当然実体ではない。それは、媒体のない精神のみのカタチで人間界に現れた"エース"その悪魔、だった。
「清水の背中に見えた"翼"の正体は、御前だろう?接触しないなんて言いながら、こんなところに出て来るから、彼奴に変な影響を及ぼしているじゃないか」
『別に、変な影響なんか及ぼしちゃいない。俺が宿るべき肉体として、遠くからもう一度鍛え直しているだけだからな。それも、彼奴の邪魔にならないように、こんなにそっとやっているじゃないか』
「それでも、敏感な奴にはわかるもんだ。その証拠に、本田氏は"翼"を見たって言っていたぞ?」
 呆れたように言葉を紡ぐデーモンに、エースは再び笑って見せる。
『心配することはないさ。彼奴等の絆は、しっかりしている。悪魔の媒体に戻ったからと言って、その信頼関係が崩れることはないさ』
「お~、たいした自信だな~」
『清水の"親玉"、だからな』
 くすくすと笑うエースは、身体を起こしてデーモンへと視線を向けた。
 半分透き通ってはいるが、その琥珀色の眼差しは、強い光を持っていた。
『御前が、彼奴の倖せを護ってやろうと思うように…俺も、彼奴の居場所は護ってやるつもりだ。俺も…彼奴が笑っているところを、ずっと見ていたいからな』
「…御前…聞いてたな…」
『聞こえたんだよ。御前がでかい声で話すから』
 再び笑い出すエース。その姿に、デーモンもつられて笑いを零す。
 そう。案ずることはないのだ。
 "本体"は、誰よりも"媒体"を大切にする。それは、今も昔も変わらないこと。その想いは、恋悪魔たるデーモンでも適わないくらい、強い絆。
 だから、倖せを願うことは当然のこと。
「…さて、それじゃあ吾輩はそろそろ東京へ戻るぞ。これでも、忙しいからな」
 満足そうなエースの表情に、デーモンは小さく笑いを零すと、ゆっくりと立ち上がった。
『あぁ。俺はもう少し、見守っているから』
 にっこりと微笑み、デーモンを見上げるエース。
「御前も清水と一緒に東京へ帰るのなら、必ず寄って行けよ」
『わかっている』
 くすくすと笑う両名。
 それはそれは、倖せそうで。それが、全ての答えともなる。

◇◆◇

「…翼の無い僕らは、何処へ行けるだろう?……時々、不安になります………でも、大丈夫です。涙を堪えたら、何処へでも飛んで行けます…」
 そう言って、一瞬笑った姿。
 その微笑みに、どれだけの人が倖せを感じただろう。
 どれだけの人が、一緒に微笑んだだろう。
 それは、一つの魔法。特別な能力など、何も必要とはしない。
 ただ一つ、相手を思う気持ちがあれば良いのだから。
 彼らの頭上。ライブハウスの屋根の上で寝転んで空を見上げている悪魔は、小さく微笑んだ。
 彼の背後。その背中をじっと見つめる相棒は、自分の役割を果たしながら、満面の笑みを零した。
 遥か遠く。東京へ向かう悪魔は、通り過ぎる夜空を眺めながら、不意に笑いたくなった。
 ステージを脇から見守る彼は、楽しげに演奏する姿に、安堵の笑いを零した。
 誰もが、微笑みを浮かべることが出来るのは…"彼"の心に翼があるから。
 その"翼"が、その倖せを、沢山の人に運んでくれるから。
 目に見えない翼でも良いのだ。感じ取れる翼でなくても良いのだ。
 心の中に、しっかりと翼を抱いてさえいれば。そうすれば…自分の目指す道を、進むことが出来るから。

 闇の中に見えた大きな黒い翼は、数多くの倖せを運んでくれた。
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