聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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LIBIDO 前編
その長い指先は、襟足で結わえられているゴムを外し、強制的に束ねられた腰まで届く長い髪をゆっくりと自由へと解き放った。
思わせぶりなその姿は、酷く官能的で。向けられている背中に流れる長い髪はこれから始まる情事を物語っているようで。
まるで、夢でも見ているかと思う程、その光景は現実的ではなかった。
彼は、自分に対してそんなことをするヒトだっただろうか?
もしかしたら、本当に "夢"を見ているのだろうか?
もしも、これが夢ならば。
答えは一つ。夢でも、構わない。そして、いつまでも醒めないでいて欲しい。彼と共にいられる時間を、奪わないで欲しい。
そんな想いが巡る中、彼はゆっくりと身体をこちらへと向けた。
官能的な、赤い唇。
薄く開かれたその唇は、ぼんやりと彼を見つめる眼差しを前に、一瞬だけ嘲笑うかのように歪んだ。赤い唇から僅かに覗いた白い八重歯が、彼の色気を際立たせている。
「どうした?」
ふと問いかけられ、思わずハッと我に返る。
「…何でも…」
今更、見惚れていただなんて…ちょっと気恥ずかしい気もする。
何年来の付き合いだろうか。けれど…数年振りに見た彼は、今まで感じたことがないくらい、艶気が溢れていた。
そして…まさか自分が、その艶気に魅入られているだなんて。
どうして、こうなったのだろう。その理由さえ、わからなかった。
くすっと笑った彼は、手を伸ばしてその頬に触れた。
そして。
「…さぁ、始めようか」
耳元で囁かれた声は、最早何もしなくても身体の奥底から快感を呼び起こす。
「…待っ……」
制止をかける声は、重ねられた彼の唇に遮られた。
甘い、感覚。絡める舌も、吐息も、全てが甘い。
最早、制止を望む心はない。全て、訪れる快感の波に飲み込まれていた。
今やその身は、抜殻同然だった。
ふと目を覚ますと、辺りはとても眩しい。既に朝の光を通り越しているのは明確だった。
「…ぁったま痛て~…」
途端に彼を襲ったのは、激しい頭痛。思わず片手で額を押さえる。
痛みの感覚は二日酔いに似ていた。けれど彼にそんな心当たりはない。
「おかしいな…」
怪訝に思いながらも、現にそう言う状態なのだから仕方ない。
首を傾げながらもベッドから起き出し、壁に手を付きながらゆっくりと歩みを進めて部屋を出て、階下へと進む。
起きる直前まで、夢を見ていた感覚はある。でも、何の夢なのかがわからない。
ただ…奇妙な感覚はその身体に微かに残っていた。
何とも言えない…気怠い感覚が。
ゆっくりと階下に降りて来ると、リビングに一名の仲魔の姿を見つけた。
「あぁ、おはよう。ここで"その姿"は珍しいな」
くすくすと笑う姿は、冴えない表情の彼を暫く眺めていたが、やがて笑いを納めてソファーから立ち上がった。
「二日酔いか?今日はオフで良かったな。今、コーヒー淹れてやるな」
「あぁ…ありがとう…」
どっかりとソファーに座り込み、顰めっ面で頭を抱えていれば、大抵は二日酔いだと思うのだろう。
尤も…彼の記憶に、酒を呑んだ記憶は全くないのだが。
「…夕べは何処にいたんだ?」
不意にそう問いかけられ、彼は直ぐに自分にかけられている言葉だとは気がつかなかった。
けれど、そこにいるのは、彼と仲魔の二名のみ。必然的に、彼に問いかけられた言葉だった。
数秒の沈黙の後それに気が付いた彼は、ハッとして顔を上げる。
「……俺?」
「あぁ。他に誰がいる?」
コーヒーのカップを持った仲魔は、きょとんとする彼に苦笑すると、そのカップを彼の前のテーブルに置いた。
「夕べ……?」
「あぁ。ミサの後、打ち上げにも参加しないで何処かへ行っただろう?だが、我々が戻って来た時にはもうベッドの中にいたからな。何処へ行って来たのかと思ってな」
「…それなのに、この二日酔いみたいな頭痛…か?」
彼自身、夕べのことは全く記憶にない。だから、問いかけられても困るのだが……。
首を傾げながら、頭を掻いたついでに何気なく髪に手をやる。手櫛で髪を整えていて、ふと物足りなさを感じた。
頭頂から後頭部を通り、襟足へ。そこでぷっつりと途切れる感覚に、違和感を感じた。
「…俺…いつ、髪切った…?」
その言葉が、彼が昔伸ばしていた後ろ髪のことだと言うことに気がつくまで、一瞬の間があった。
「…は?いつ、って…もう随分前、だろう?解散した後だったから、五年以上前のはずだが…?」
「……五年…?」
「…大丈夫か?御前…」
思わずそう問いかけられた声も、ロクにその耳には届いていない。
髪を切った記憶もない。彼の記憶の中にあるのは、腰までも届くかと思われるくらい長かった後ろ髪。それを、襟足で結わえていたはず。
けれど、今はその後ろ髪はない。五年も前のことなら、後ろ髪がない生活にも慣れているはずなのだが…その感覚もない。
自分は、一体いつから記憶がないのだろう…?
不意にそんな不安に襲われる。そして、心配そうに彼の顔を覗き込む仲魔の顔を、じっと見つめた。
仲魔だ、と言う記憶はある。けれど…よくよく考えてみると、その名前が思い出せない。
白い顔の悪魔。その認識はあった。勿論、相手が存在していたことも覚えている。けれど、名前が思い出せないのだ。
そして…彼自身、何者なのか、も。
彼は慌てて洗面所へと駆け込むと、徐ろに鏡を覗き込む。そこにいるのは、見慣れた自分の姿。生物学的に言えば、"人間"、と言うことになる。そして、角度を変えてみると、確かに後ろ髪はない。すっかり馴染んでいることから、それが最近切られたモノではないことも確認出来た。
「…俺は…誰だ?」
鏡に向かって、もう一度自分自身に問いかける。そして、ゆっくりと目を閉じると、その記憶の糸を辿り出す。
そう。自分も、かつては悪魔と呼ばれていたのだ。そして、五年以上の歳月を経て、再び悪魔として"ミサ"に参加していたはず。
けれど…記憶の糸はそこで途切れてしまう。
自分は…誰だったのだろう?
そして何より、今の自分は誰なのだろう?
どうして、記憶をなくしてしまったのだろう…?
混乱する意識を繋ぎ止める為、彼はきつく目を閉じて、洗面台を掴んだまま床に膝を落とす。
思い出さなければ。ただ、その一念で。
なかなかリビングへ戻って来ない彼を心配し、仲魔が様子を見に、洗面所へと顔を出す。
「…おい、大丈夫か?」
再びそう問いかける。
「俺は…誰なんだ…?」
小さな、つぶやきが聞こえた。そして、彼が置かれている現状を察する。
ここで、仲魔が彼に名を告げることは簡単である。けれど、それを制する気持ちがあることもまた真実。
今、彼に何を告げることも許されない。
それは、彼自身が発している"気"でわかった。
彼の記憶に制御をかけたのは…多分、彼を、媒体とする"悪魔"。それが何を意味するのかは…主たる"悪魔"にしか、わからない。
そっと、"悪魔"の気を探ってみる。けれど、探りを入れた彼に答える声はない。つまりは、拒絶されている、と言うことになる。
"悪魔"の恋悪魔であるにも関わらず。
「…彼奴…一体、何考えてるんだ…」
この大事な時期に、彼を混乱させるようなことをするなんて。仲魔の表情は、まさにそうだった。
あの"悪魔"は、そんなことをする奴だっただろうか?
誰よりも彼を大切にしていたはずなのに…どうして、こんな無謀なことを。
混乱しているのは、"仲魔"も同じだった。
遠くで、誰かが自分を呼んでいるような感覚。けれど…それが現実なのかはわからない。ただ、そんな感覚があると言うだけで。
その身体を包んでいるのは、"快感"と称せるモノ。だからこそ、自分を呼ばれる声が現実なのかもわからないのだ。
「…おい、起きろよ」
不意に、耳元でそう呼ばれた。
ゆっくりと目を開けてみれば目の前には"彼"がいた。
彼は、じっとこちらをを見ていた。その、透き通った琥珀色の眼差しで。
「…何で…」
思わず口を突いて出た言葉。それが何を問いかけているのか、自分自身でも良くわからない。
ただ、彼の行動の意味がわからなくて。
どうして、こうなったのだろう?
何処で、道を間違えたのだろう?
混乱する表情を前に、彼はくすっと小さく笑った。あの、色気を讃えた微笑みで。
「問いかける必要性がわからないな。何でなんて聞くな。素直に…俺の所有物になっていれば良いんだ」
彼はそうつぶやくと、有無を言わさずに口づける。
らしくない強引さ。そんな一面を垣間見て、一瞬恐怖を感じた。けれどそれも直ぐに快楽に変わる。
深く重ねられた唇から零れる吐息は、やがて嬌声に変わる。そしてその声に応えるかのように、彼の熱い掌が身体を撫でる。
背中を這うのは、甘い疼き。それは、既に身体に叩き込まれた感覚だった。
そして…彼と身体を重ね合わせた。
甘い芳香は、幻覚が見せた感覚。
それでも、感じずにはいられない。
彼に、"囚われた者"として。それは正常な意識だった。
熱い何かが、目尻へと零れて行く。
遠くで、誰かが自分を呼んでいた。
それは、紛れもない現実。
その声の主を、彼は知っていた。
「……エー…ス……」
無意識に、零れた言葉。けれど、その声に答えたのは…待ち侘びた声ではなかった。
「…おい、大丈夫か…?」
その声に導かれるかのように、ゆっくりと意識が覚醒する。
声の主を確認するように、瞼を押し上げると、ぼんやりとした姿が視界に入った。
彼を見つめる眼差しは、とても心配そうで。
「大丈夫か?洗面所で倒れたんだ。無理するなと言いたいんだが…明日は朝から忙しいが…」
彼を気遣いながらも、困惑した色がそこにはあった。
「大…丈夫…だ」
ゆっくりと口を開く。多少掠れているものの、声も出る。
彼は、頭を巡らせて未だ心配そうな眼差しを浮かべる仲魔の視線を捕らえると、再び口を開く。
「…エースは…?」
そう問いかけた声に、仲魔は一瞬彼から視線を逸らした。
その姿で、答えは明確だった。
「…そうか。まだ"帰って"来てないのか…」
彼はそう言うと、身体を起こした。どうやら、リビングのソファーに寝かされていたようだ。気怠い感覚は微かに残っているものの、頭もそんなに痛くはなかった。
「思い出したのか…?」
問いかけられた言葉に、小さな溜め息を吐き出す。
「…取り敢えず…俺が誰なのか、御前が誰なのか…今置かれている状況ぐらいはわかる。ただ…彼奴が何をしようとしているのかはわからない…」
「そう、か…」
困惑しているのは、彼も同じこと。
「いつから…エースは可笑しかったんだ…?」
様子を伺いながらそう問いかける姿に、記憶を辿る。
「…良く…覚えていない。でも…多分、昨日今日のことじゃない。気が付いたら、俺は彼奴に……」
その先は…流石に、この相手には言えなかった。
彼自身が関わりを拒否しようと…この相手は、主の恋悪魔なのだから。まさか、その恋悪魔を差し置いて…自分が、主たる悪魔に抱かれている、だなんて。
大きく息を吐き出し、改めて仲魔の顔を見つめる。
「…御前には…わかるか?どうして、エースが俺の記憶を封じてしまおうと思ったのか」
問いかけた声に、仲魔も大きく息を吐き出した。多分…溜め息。そして、首を小さく横に振る。
「吾輩も…エースからは何も聞いていない。御前たちの間で何が起こっているのかは、吾輩は今でもわからない。今日、御前がこんなことになるまでは…前と何も変わらないと思っていたんだ。夏の御前のツアー中に会った時にも、特に変った様子はなかった。ただ、御前を護る為に色々考えていたんだとは思う。吾輩には、それしかわからないんだ…」
そう。再結成の直前までは。けれど…今は、彼と、彼の主たる悪魔の間に何が起こっているのか。彼が口を割らない以上、流石にこれ以上踏む込むことも躊躇われる。
唯一つわかったことは、彼は…ずっと、記憶を押さえつけられていたのだ、と言うこと。
「大事に思ってくれているのなら、どうしてこんなことを?俺の記憶に鍵をかけると言うことは、俺の日常に、"悪魔"の記憶はなくなる。その分、エースの負担が増えると言う事だろう?それを、何故…?」
訳がわからないと言う表情で、仲魔に訴える彼。けれど、それは本来訴えるべき相手ではない。当然、困ったように目を伏せ、首を横に振られる。
「…吾輩はエースじゃない。だから、彼奴の考えは正確には掴めない。吾輩に訴えられても…」
「……そう、だよな…悪かった」
小さな溜め息を吐き出し、彼はソファーから立ち上がった。そして、顔を洗う為にリビングを出て行こうとする。その後姿を見つめていた仲魔は、小さく言葉を零した。
「…エースだから…記憶を封じてやろうと思ったのかも…な」
「…は?」
彼は、思わず振り返る。仲魔は、目を細めて彼を見つめていた。
透き通る、金色の眼差しで。
「…御前を大事に思っているからこそ…御前を、本来あるべき姿の"人間"に戻してやりたかったのかも知れない。我々がいなくなった後の…喪失感を、埋める為に」
「………」
口を真一文字に結んだ彼の表情は、困惑している。
「エースは…ずっと、御前の心配をしていた。自分がいなくなった後、また御前が辛い想いをするんじゃないか、って。今の御前が、何を一番大事にしなければならないか。それをわかっているからこそ…自分に振り回されてはいけない。だから…」
確かに…以前、自分の中にいた "悪魔"を失った時、心の中にぽっかりと開いた穴は大きかった。だからこそ、もう直また失うであろう瞬間を迎えることは、確かに不安だった。
彼の中にいた"悪魔"は、それを回避する為に…自分を、忘れさせたのだろうか?
あんな手段を、とってまで。
「…わかって…いるだろう?俺は、エースを恨んじゃいない。これが俺の運命だとわかっている。再結成の話を受けた時だって覚悟は決めていたんだ。それなのに…」
「それだけ、御前のことを案じているんだ」
「喪失感を回避させることが、俺の為だと?冗談じゃない。それじゃ…俺とエースの関係はどうなるんだ?俺は自分の意思で、彼奴を受け入れたんだ。今更、それをなかったことにしようとでも?そんな…非現実的なこと、誰が受け入れるものか。馬鹿にするな」
「…清水…っ」
彼は、踵を返すとリビングを出て行った。
複雑な表情は…御互い共に同じだった。
翌日のミサ前。
朝からの移動とリハーサルを終え、既に準備の出来あがっている"悪魔たち"は、控え室に閉じこもったままの"彼"を、心配していた。
「…ねぇ…エース、本当に間に合うのかな…?一昨日から帰って来てないんでしょ…?」
心配そうにそう眉を潜めるのは、頬に稲妻を戴いた悪魔。
「さっきのリハは清水だった訳だしね…前回はちゃんとエースがいたって言っても、今日のリハやってない訳だし…大丈夫なのかな?」
蒼い顔の悪魔も心配している。
「…まぁ…"エース"だから、大丈夫だとは思うけど…ねぇ?」
もう一名、赤い紋様を戴いた悪魔も、そう言葉を零す。そして、その眼差しは自然と、総帥へと向けられた。
腕を組んで目を閉じ、じっと何かを考えているような姿。
「気持ちはわかるけど…そろそろ、呼んで来た方が良いんじゃない…?」
仲魔の呼びかけた声に、小さく溜め息を吐き出す。
「…もう少し…待ってやろう。エースはちゃんと来ているから」
「じゃあ…?」
「何処で…擦れ違ってしまったのかは、吾輩にはわからない。だが…御互いの気持ちがばらばらでは、きっと何処かで綻びが出る。時間がないのは確かだ。だが…我々に出来ることは、彼奴等を信じることだ。エースはちゃんと来る。だから…待ってやろう」
総帥の言っている意味はわかっていた。
媒体への想いは、自分以外の者には到底理解出来ない。誰もが大切に思っていることは確かだが、深いところに抱いている"想い"は、それぞれ違うのだ。
事に、エースは誰よりも媒体を大切にしていた。それは、誰もがわかっていたこと。だからこそ…迷うエースの気持ちもわからなくはない。ただ、清水の気持ちを蔑ろにした理由はわからないが。
それを今更と思うか…今だからと思うか。
言葉で上手く表せないその想い。複雑な想いだからこそ…軽々しく、口を挟む訳にもいかなかった。
「…待とう…か」
それは、誰からともなく零れた言葉。
今は、待つことしか出来なかった。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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