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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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LIBIDO 後編
こちらは、以前のHPで2006年01月29日にUPしたものです

拍手[3回]


◇◆◇

 その頃。控え室の鏡の前には、戦闘服を着込んだ彼の姿があった。
 その顔は、悪魔ではない。けれど、向かい合う鏡の向こうに映るのは…紛れもなく、悪魔の姿、だった。
 直前になって戻って来た悪魔は、媒体たる彼に、受け入れを拒否されている。今、その状態だった。
「…ミサの前に、きちんと話しておきたい」
 真剣な表情で鏡に向かう彼。そして、鏡の向こうでも真剣な表情を浮かべる悪魔。
「俺の記憶に鍵をかけようと思った理由を説明しろ。きちんとした理由を教えない限り、俺は悪魔にはならないからな」
 それは、彼なりの抵抗。もしも、彼が悪魔を受け入れなければ、悪魔としての"エース"はミサに出ることが出来ない。勿論、周囲に迷惑をかけることは必須な訳だ。
 小さな溜め息を吐き出したのは、鏡の中の悪魔。
『御前は…これからも、人間として歩いて行くつもりだろう…?』
 小さくつぶやいた声。
「…それが、俺の記憶に鍵をかけることと関係があるのか?俺は、悪魔の記憶を持っていたとしても、人間として歩いて行ける。今まで、そうして来たじゃないか。それを、どうして今更…」
『今更だから、だよ』
「…エース…」
 彼を見つめた、琥珀色の眼差し。
『昔…俺が御前の肉体を借りることになった時は、選ばれた者としての運命だったと思っている。でも…一度、御前を解放した時から、御前は人間として再び歩き始めた。だが、今回また再結集することになったが、御前の状況は昔とは違う。今は、御前の存在を待っている者たちが沢山いる。俺は、御前のツアーを見守って来て…それを実感したんだ。御前が今の仲間に、どれだけ必要とされているか。どれだけ、大切に想われているか。そして御前もまた、同じ気持ちでいることを。そんな中で、俺は御前の自由を奪うことになった。そうして、この活動が終わったら、御前はまた俺が抜けた喪失感に苛まれるだろう?媒体とは、そう言う運命なのだと言ってしまえばそれまでだが…それが、御前の今後の活動に影響を及ぼすことになるかも知れない。それを避ける為に…俺の記憶を、封じてしまおうと思った。そうすれば、御前の今後は安泰だからな』
 それは…相手を想うがこその気持ち。けれど、彼はその言葉に納得出来なかった。
 頭を振って大きな溜め息を吐き出すと、鏡の中の悪魔をきつく睨み付けた。
「それが御前の本音なのだとしたら…俺は、御前を殴ってやりたい気分だよ」
『清水…』
「俺は、御前にそんなことを望んだんじゃない。確かに、媒体として、御前を失うことで大きな喪失感を味わうことはわかっている。だが、だからって…御前を忘れてしまうことを、俺が望んでいるとでも?」
『それはわかってる。だが…』
「だが、じゃない。俺の気持ちを置いて行くな」
 その言葉が、確固たる想いの全てだった。
「そこまで俺を想ってくれるのなら、どうして俺の気持ちを尊重してはくれない?俺は…そんなふざけた、押し付けがましい想いはいらない。俺は…昔のままの、エースが好きなんだ。どんなに苦しくたって、それは媒体として味合わなければならないことだろう?それが…悪魔の媒体として愛されて来た俺たちの、受け入れなければならない想いだろう?それを回避することを望んでなどいない。それは多分、俺だけじゃない。みんな、そう想っているさ。みんな…自分の中の悪魔が大好きなんだ。愛して…いるんだ。だから…そんなこと言うな。俺は、どんな喪失感を味わったって、御前のことを忘れるつもりはない。御前の記憶を抱いて、生きて行きたいんだ。それを全部含めて、初めて俺なんだよ」
 それは、正直な気持ち。もしかしたら…初めて口にしたのかも知れない。
「悪魔には…悪魔なりの、媒体への想いがある。それは知っている。だが、俺たち媒体にも、媒体なりの想いがあるんだ。初めて御前を受け入れた日から、俺たちの運命は決まっている。悪魔の媒体として生きたことは、曲げようのない事実だ。その日々があったからこそ、今の俺たちがある。御前がいたから…今の俺がいるんだ。誰に聞いたって、返って来る答えは同じはずだ。それを、忘れるな。だから…もう馬鹿なことはするな」
 真っ直ぐに鏡の中の悪魔を見つめる眼差しは、強い意思を抱いていた。
 悪魔の媒体として生きて来たからこそ、の強さ。
 鏡の中の悪魔は…彼がそこまで強くなったことに、気づかなかったのかも知れない。
 全て、彼と悪魔が、共に歩いて来た証だった。
『…悪かった』
 小さな溜め息を共に、鏡の中の悪魔はそう言葉を零した。
「…いや…再結成の前に、忙しいからってきちんと話し合わなかった俺もいけなかった。御前にそう言う想いを抱かせたのは、俺だからな」
 彼も、小さな溜め息を零した。けれど、後悔ばかりしてもいられない。何せ、これから大きな仕事が待っているのだから。
「…とにかく、今はミサが優先だからな。また後でゆっくり話すことにしよう。取り敢えず…みんな、待っているから」
『…あぁ。それじゃ…』
 彼と、鏡の中の悪魔は同時に立ち上がる。そして、御互いに手を伸ばし、鏡越しに手を触れ合う。
「…来いよ」
 彼がそう言葉を零すと、鏡の中の悪魔は小さく笑った。そして、一瞬眩い光が鏡から零れる。思わず両目をきつく閉じた彼であったが、その瞬間に暖かい温もりに包まれたような気がした。
『…サンキュー…』
 耳元で囁かれた声。その後、彼の意識は眠りの中に落ちて行った。

 目を開けてみると、鏡の向こうに自分の姿が見える。
 溜め息を吐き出しつつ、鏡に映る自分の姿をじっと見つめた。
 この姿を得る為に、昔はたいした苦労もしていなかった。媒体が悪魔を受け入れることが、当たり前だと思っていた。けれど、今回再結集と言う場になり、その有難味を改めて感じていたのは事実。
 しかし…何処から、迷子になってしまったのだろう?
 今更ながらに、その意図を計り知れない自分。
 暫く会わない間に、御互いの間に刻まれた溝。それは、固い絆で結ばれているはずの自分たちには無縁だと思っていたもの。それをあからさまに感じ、戸惑ったのは…他の誰でもない、自分。
「…馬鹿だな、俺は」
 再び吐き出された溜め息と共に零れた言葉。それは、自分がしたことを後悔しているかのようで。
「…とにかく、今は悩んでいる場合じゃないな」
 自分自身に気合を入れるように両手で頬を叩く。そして、踵を返すと控え室を出て行った。

「…あ、エース来た…」
 開始時間の寸前で現れた待ち悪魔に、安堵の溜め息が零れる。
「…エース、だよね?」
 歩いて傍までやって来た姿に、思わずそう問いかけた仲魔。
「当たり前だろう?」
 苦笑する彼に、仲魔たちは思わず顔を見合わせる。勿論、疑ってなどいなかったが、まだ何か、いつもの彼の姿とは違うような気がして。
「…なぁ…ちゃんと、清水と話して来たのか?ちゃんと、彼奴を納得させたんだろうな…?」
 そう問いかけたのは、総帥。
「…取り敢えず、な。全てをきちんと話し合うには、時間が足りなかったからな。今はミサ優先。それは清水の答えだ。取り敢えずは納得しているようだから、問題はない」
「…なら良いんだが…」
 いまいち腑に落ちないのは、誰もが同じこと。けれど、彼の言う通り、今はやるべきことがあるのだから仕方がない。
「…ミサが終わったら、ゆっくり話をするんだぞ。ちゃんと話しておかないと…辛いのは、御前だぞ?」
「わかってる」
 重い溜め息を吐き出したのは、彼。残るミサは、後数回。今日を逃したら、きっとそのまま流されてしまう。それは、彼にも良くわかっていた。
「…じゃあ、行こうか」
 総帥の言葉に、悪魔たちは表情を引き締める。
「了解」
 それから数時間。悪魔たちは、精一杯の姿を信者たちに見せていた。

◇◆◇

「…おい、起きろ」
 自分を呼ぶ、聞き慣れた声。その声に反応するように、彼は目を開けた。
 目の前には…自分を真っ直ぐに見つめている、琥珀色の瞳があった。
「…終わったのか?」
 半分寝ぼけた意識のまま、そう問いかけた声に、目の前の琥珀色の眼差しが笑ったように細くなる。
「あぁ。無事終了。待たせたな」
「…あぁ…」
 意識はだいぶはっきりして来た。そして、彼が今いる場所は、現世(うつせ)ではないこともわかった。
 このところ、彼はずっと"ここ"を訪れていた。そして…幾晩もの情事を重ねた場所。けれど今日は、そんな雰囲気は微塵も感じない。つまりは、今日はその精神を削らんばかりの快楽からも開放されると言うこと。
 身体を起こし、真っ直ぐに目の前の相手と向かい合う彼。そして零れたのは、小さな溜め息。
「…で?」
 問いかけた彼に、相手も小さな溜め息を零した。
「…デーモンからも釘を刺された。ちゃんと話し合え、とな。だから、この場所を選んだ。ここなら、邪魔は入らないだろう?」
「まぁ、な」
 短く答え、暫し想いを巡らせる。そして。
「…色々、聞きたいことはある。だがまず…どうして、"彼奴"を…召喚した?」
 その言葉に、相手は小さく息を飲んだ。
「今まで…俺と共にここにいたのは、御前じゃない。あれは…御前そっくりの"色魔"…いや、"夢魔"、の方だな」
「…御前、知って…」
 言葉が、続かない。
「当たり前だろう?何年来の付き合いだと思っているんだよ。御前が…彼奴を…デーモンを差し置いて、俺を抱くはずがない。あれは…現実じゃなかった。御前が、俺に見せた…願望、だったのか?」
「…俺の負け、だ」
 大きな溜め息を吐き出した相手は、片手で前髪を掻きあげると、改めて彼を見つめた。
「怒っている…だろう?」
 躊躇いがちに、問い掛けられた言葉。それに彼は小さな吐息を吐き出す。
「まぁ、な。怒っていないと言えば嘘になる。でも、全てに怒っている訳じゃない。そこには、御前の俺への想いがあることはわかっているからな。でも…御前の意図だけは、わからない」
「…清水…」
 僅かに眉根を寄せる相手に向け、彼は少しだけ表情を変える。
 それは…相手の意図を、咎めるかのように。
「…どうして、わざわざ"夢魔"を召喚してまで、俺にあんな夢を見せた…?俺の記憶を消すつもりなら、どうしてわざわざあんな方法を使ったんだ?記憶に鍵をかければ済んだ話だろう?」
 問いかける声に、相手は大きな溜め息を吐き出す。その表情は、苦悩に包まれている。
「ミサの前に…御前に話した想いは、全部本当のことだ。御前が、人として歩いて行く邪魔をするつもりはない。御前だって、悪魔の媒体として良い様に利用されるよりも、今の仲間といる時間を大事にしたかったはずだ。だから、だったらこれから先の未来に、今回の俺の記憶は必要ない。だから、鍵をかけた。だが…俺は御前の記憶を消そうとしておきながら…本当は、忘れられるのが怖かったのかも知れない。何処かで…俺を、忘れないように…御前の心に、刻み付けて置きたかったのかも知れない。御前の言った通り…あれは、何処か俺の願望だったんだろうな」
「…エース…」
 両手で顔を覆う相手。そして、その手の間から零れる溜め息。その姿を見て、彼は相手が心底苦しんでいるのだと言うことを察した。
 誰よりも、胸の奥の痛みに苦しんでいるのは…相手なのだと。
「…馬鹿だよな、御前も。喪失感を回避する為に選んだ方法で、自分自身が苦しむだなんて。だったら最初から…御前が俺を抱けば良かっただろう?」
「…清水…」
 僅かに顔を上げた相手に、彼は小さく苦笑する。
「デーモンに隠れて、ずっとその関係を続けて行こうとしているのなら、俺だって易々と納得はしない。だが、御前を刻み付けて残して置きたいって言うだけなら、はっきりそう言えば良かったんだ。俺は、御前が最初からきちんと話してくれていたら…素直に受け入れただろうよ。尤も、失うとわかっている相手を求めることは、多分本能的なモノで、本当に相手を想っての行為じゃないかも知れない。御前は、そう言うところは変に理性的だからな。だからこそ…こんな時に、そんなことをするモノじゃないと思ったんだろう。それでも俺は…御前が好きだよ。失うとわかっていても、御前に抱いた想いは変わらない。だから…御前になら、抱かれても良いと思った。俺が、"夢魔"を素直に受け入れたのは、そんな気持ちがあったからなのかも知れない。御前も、夢なら直接誰も手を下さないからまだマシだと、思ったんじゃないのか?」
 それは、媒体だからこそ感じ取っていた相手の想い。
 愛されていることは、とても良くわかっていた。誰よりも、大切にして貰っていることも。だからこそ…その証を、返したかった。
 相手は、大きな溜め息を吐き出す。
「…結局…肝心なところで、俺は度胸がないんだな。ここまで御前に見透かされているとは…」
「幾ら、百戦錬磨のツワモノだって、弱点の一つや二つはあるだろうよ。だからこそ…」
----こんなに、愛しいと思うんだ。
 最愛の悪魔の耳元で囁いた言葉。それはとても柔らかくて…官能的で。
「愛してるよ」
 そう言うなり、自ら相手に口付ける。甘く、温かな温もりと共に。
 その唇に触れたのは、契約の儀を含めて二度目だった。けれど、その意味はまるで違う。
 愛しい者への、口付け。それは、確かな実感があった。
「…どう足掻いたって、結果は変わらない。だったら、全部、話してくれよ。御前の想いを、全部俺に伝えてくれよ。俺が御前に抱いた想いは…永遠に、消えないんだから」
 くすっと、彼が笑った。
 永遠に、その記憶の中にいられるのなら。それ程、倖せなことはない。
 それを、断ち切ってしまおうと思ったのは…相手を、護りたいと思ったから。
 例え無謀な策だったとしても…その想いは確実に相手に伝わっていた。
 尚更…深い、絆と共に。
「…御前は…永遠に、俺の中で生きているんだ。どんな手段を使ったって、絶対忘れてなんかやるもんか。だから…俺から、御前を奪わないでくれ。ただ、素直に…『御前をくれ』って言ってくれたら…この身も心も、いつでも差し出してやるから。それが… "悪魔"に愛された俺たちの、運命なのだから」
 真っ直ぐに相手を見つめる彼の眼差しは、笑っていた。
 共にいられることが倖せなら。今は、この上もない至福の時。
「押しの弱いエースも好きだけど、たまには強引に来いよ」
「…あぁ。有難う」
 琥珀色の眼差しも、笑うかのように細められた。
 それ以上の言葉はいらなかった。
 ただ、共にいられるだけで。

 数日後。彼等の任務は終わりを告げた。
 それは…彼等の、別れの時でもあった。
 それでも…その想いは、決して離れない。
 いつか、その魂が、滅ぶ時まで。

◇◆◇

「……さん……にぃさん…」
「…ん?」
 誰かに身体を揺さぶられる感覚に、意識は引き戻された。
 目を開けてみると、自分を見下ろす眼差しがあった。
「目、覚めた?随分気持ち良さそうに眠ってるところ悪いんだけど…もう、リハの時間だよ?」
 そう言って小さく笑ったのは、今の相棒。
「…あぁ…悪い…」
 そう零し、大きく伸びをしてから身体を持ち上げる。どうやら、スタジオの片隅のソファーに座ったまま眠っていたらしい。
「まだ、御疲れ?去年は年末まで強行だったからね」
 そう言ってくすくすと笑う姿を横目に、彼は現実に引き戻される直前まで見ていた"夢"を思い出していた。
 とても鮮明な…紅い色。それは…もう一名の"自分"。
「エースにぃさん?」
「…ん?」
 呼びかけられ、空を彷徨っていた視線が相棒へと戻る。僅かに心配そうな色を見せた表情は、ここが現実なのだと教えてくれていた。
「大丈夫…?」
「…あぁ、大丈夫。一眠りしたし、一服したらもう戻れる」
「じゃあ、向こうで待ってるから」
 にっこりと微笑み、相棒は踵を返す。
 彼はソファーから立ち上がると、スタジオを出て廊下へと進む。そして、喫煙所へと向かうと、そこで一服。そしてトイレへと向かうと、洗面所の鏡の前に立った。
 そこにいるのは、紛れもない自分。けれど…一名ではない生命。
「…夢、だったのかと…今でも思うよ。でも…御前は、ちゃんとここにいたよな?」
 そうつぶやき、右手を自身の胸に押し当てる。確かな鼓動は…生命の律動。
 自分自身と…愛する悪魔の。
「…待っている、からな。もう一度…御前に、出逢えることを。だから、忘れるなよ。御前の戻って来る場所は、"ここ"だってことを」
 自分の胸をトントンと軽く叩き、鏡に向かってにっこりと微笑む。当然、鏡の向こうでも自分の姿がにっこりと応えた。
 今は、それで十分。
 それだけで、勇気が出るから。
「…よし、行くか」
 気合を入れ、彼は踵を返した。
 彼を待つ、現実に向けて再び歩き出す為に。

◇◆◇

 甘い囁きは、耳の奥底に。
 温かな温もりは、身体の奥底に。
 生命の鼓動は、自分自身の中に。
 一つ一つを確認しながら、そこにいた"生命"の温もりを思い出す。
 忘れることなどない…鮮烈な"紅"を。
 その絆は、最早永遠だった。
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筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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