聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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AMNESIA 1
運命とは、何者にも予知出来ないことが多過ぎる。
例え、それが神の能力をも阻むことの出来る悪魔であったとしても、その運命には逆らえないこともあった訳で…
高い崖の上の一件の別荘の窓から、海が見渡せた。
「絶景かな、絶景かな」
最初にそう言葉を発したのは、デーさん。
「しっかしなぁ…幾らまとまったオフだからって、海はないんじゃないかぁ?今は夏じゃないんぞ。冬だよ、冬っ!わかってんのかっ!?」
不機嫌をあからさまにそう言ったのは、当然と言えば当然の、エースである。
「…別にいいじゃんよぉ。今年の夏は、ロクに海にも行けなかったんだからさぁ。嫌なら一悪魔でトーキョーへお帰りっ!」
エースの言葉にムッとした俺は、思わずそう言い返した。
今回のオフの予定を立てたのは、勿論、この俺。
まぁ、盛り場の好きなエースにはちょっと酷かなぁ…。しかしまぁ、冬の海も満更捨てたモノじゃないよな?
「まぁまぁ、いいじゃん。酒はい~っぱい持って来たしぃ。あぁそうか。エースは相手が欲しいのか~」
「そんなこと言うと、またデーモンがヤキモチを焼くよ」
すっかり機嫌の悪くなったエースをからかっているのか、ライデンは笑いながらそう言う。それに突っ込みを入れるのがゼノン。
「ばぁ~か。そんなことで揺らぐものか」
デーさんは、笑ってそれを見ている。そして。
「とにかく、一段落着いたことだし、ちょっと外に行ってみないか?なぁ、エース。機嫌直して」
「ちょっ…デーモン、慌てるなっ」
すっかり乗り気になっているデーさんは、嫌がるエースを半ば無理矢理外に連れて出た。
「俺たちも行ってみよっ」
俺たちも、デーさんとエースの後を追うように、外へ出た。冬の冷たい風が、身体の熱を奪っていくみたいな感覚に、ちょっと身を縮める。
----ちょ~っと無理があったかなぁ…でもまぁ、雪が降ってないだけマシかぁ。
エースが、嫌がる訳だ。
思わず、小さな笑いが零れた。
と、その時。
「ねぇ、ルーク!ちょっと見てよ~」
ライデンに呼ばれ、俺は声のする方へと歩いて行く。
崖の下を覗き込むようにしているゼノンとライデンの後ろから、その視線の先を覗き込んだ。
「どした?」
「ほら。デーモンが無理してる」
「ゼノン、その言い方って…」
思わず噴き出したライデン。でも、ゼノンが指さす先には、確かにデーさんが無理してる…まぁ、デーさんは無理してはいないと思うんだけど…一緒にいるエースがエースだしね…。
「…確かに。あれじゃ、そのうちエースは酸欠になるね…」
「だぁね」
波打ち際までエースを連れて行ったデーさんは、エースの背中を押して、海の中に足を踏み入れさせようとしてる。どう見ても、エースには自殺行為だわ。流石のエースも、逃げ腰なのはわかる気がする。
「相手が、あのデーさんじゃねぇ。エースには無謀なことだってわかってやってるんだから」
くすくすと笑った瞬間。
「…ぁっ!」
突風が吹き、俺の髪を巻き上げた。それと同時に…何かに押されるように、俺は崖の下へと投げ出される。
「ルークっ!!」
「…っ!!」
声が出ない。
咄嗟に翼を出そうとしたものの、何かに封じられているようで、まるで言うことを聞かない。
頭上でゼノンとライデンの悲鳴が聞こえる。
----畜生!!
全てが、スローモーションのように、ゆっくりと感じたのも束の間。
「うあっ!!」
「ルーク…っ!!」
身体中に物凄い痛みが走り…俺は、気を失った……
頭が痛い。身体も、動かない。
「……ク…聞こえるか、ルーク…」
ズキン…
頭が痛む。誰かが俺に呼びかける度に、俺の身体が…頭が…激しく疼く。
「…ルーク」
ゆっくりと目蓋を持ち上げた俺の視界に入ったのは…見たこともない…常人ではない、四名の姿。
その四名は、俺が目を開けたことに、安堵の表情を浮かべていたが…一体、こいつらは…
----誰…だ?
混濁する意識。頭を押さえ、俺は目を閉じた。
----俺は……?
再び目を開けると、俺を見つめる四名の顔がある。
夢では、ない。でも…理解が出来ない。
「…俺は…誰、だ?」
「…ルーク…?」
俺を見つめる四名の顔が曇った。
ズキン…
「冗談…だよな…?」
金髪の男が、そうつぶやいた。
----ルークって…誰だ?俺は……何者だ…?
ズキン…
身体が熱い。意識が…遠退く…
「ルーク!」
遠くなる意識の中…再び、あの四名の声を聞いた…
眠っているルークを案じながらも、状況がわからない四名は、額を寄せていた。
「ゼノン、これはどう言うことだ…?」
そう、問いかけるデーモン。
「…多分、記憶喪失か…悪魔そのものを封じられたか。まぁ…頭痛を訴えてるから、記憶喪失の方だと思うんだけど…」
「記憶喪失…」
ゼノンの声に、一同眉を寄せた。
「まぁ、悪魔の状態だったから、崖から落ちたぐらいじゃ死なないけど…頭を打ったようだから、暫く安静にして様子を見ないと何とも言えない」
いつになく、不安げなゼノンの言葉に、更に不安が募る。
「崖から落ちた時の状況として…俺とライデンが直ぐ傍で見てたよ。どう言う訳か、ルークは翼を出さなかった。咄嗟の状況だったとは言え…ルークなら、対応出来たはず。それをしなかったのは…何者かに、能力を封じられていたのかも知れない…」
「…そう、か…」
誰からともなく、溜め息が零れる。
「記憶が戻ると言う確証は?」
「そう言われてもね…身体の傷は、自然治癒で直るけど、頭を打ったことばかりは、俺たちに手の下し様はないから…ましてや記憶まではね」
他に、どう言って良いのかわからない。ゼノンの精一杯の説明だったはずだが、それでは気持ちは癒されないのだ。
「…あんまり聞きたくない報告だよね…」
ライデンの声に、流石のゼノンも眉を潜めた。
「しょうがないよ。俺だって出来ることなら、こんなことは言いたくないけど…それでも、事実は事実として伝えなきゃいけない。期待されてから絶望を味わうよりは良いと思うけど…」
「俺もそう思うな」
「エースまでそんなぁ…」
横から口を挟んだエースに、ライデンは声を上げる。
「事実は事実だろうが。ルークが遊びでこんな洒落にならないことをやってるとは思ってないだろう?俺たちの前で…"篁"のままでいるだなんて…」
「そりゃ…」
しゅんとなったライデンの頭をポンポンと軽く叩いたのは、デーモンだった。
「心配してる気持ちは、みんな同じなんだ。とにかく今は、様子を見るしかないんだから…な?」
「…うん…」
しょんぼりとしたライデンの姿に、他の三名も神妙な顔つきになっていた。
事態は…全くのお手上げ状態なのだから。
俺が眠りから覚醒した時、既に日は沈んでいた。
薄暗い部屋の中…ぼんやりとした姿が、窓辺にあった。
「…誰?」
横たわったまま問いかけた声に気がついたのか、その姿は俺の傍まで近寄って来た。
それは、金髪の男。
「…大丈夫か?」
そっと、頬に触れられた指先。
「らしくないな…僅かに天使の施した残留の気を感じたぞ。だが…封印は…御前の意志、か?」
「…な…んのこと…?」
言われている意味が、まるでわからない。
僅かに眉を潜めると、その男は小さく笑った。
「早く…記憶が戻るといいな」
「……」
その男は、俺の髪を一混ぜして、部屋から出ていった。その一瞬の眼差しが…とても悲しそうで……俺は、一晩中、忘れることが出来なかった。
そのまま、二日程が過ぎ去った。
その間、俺は奇妙な姿の奴らと一緒に過ごした訳だけれど…まぁ何とか、顔と名前は一致した。
金髪男がデーモンで、背が高いのがエース。角があるのがゼノンで、頬に稲妻があるのがライデン。
そして、奴らが言うには…俺も、その仲魔であると言う。
奴らは悪魔で…俺もその一名。名前はルークと言うらしい。
しかし、鏡で見る俺の顔は、奴らのように白くはない。だから、今一親身になれないのだ。
不安に苛まれる意識の中…それを更に煽るのは、彼らが呼ぶ俺の名前、だった。
奴らの中で、背の高い男…赤い紋様を持つエースと呼ばれている悪魔…が、良く俺の部屋にやって来ていた。
「具合はどうだ?」
その日エースはそう言いながら、部屋に来た。
「傷は、痛まないか?」
「ああ…大丈夫」
「なら良かった」
エースは、小さく笑った。
その微笑みが…酷く優しくて。
「何で…そんなに、俺のこと心配するの…?」
思わず問いかけた声に、エースはすっと表情を変えた。
「何でって…仲魔、だろう?」
当たり前のように、そう答える声。
「記憶を失ったと同時に、御前はその魔力を自分自身で封じたんだ。その理由はわからないが、多分、御前が己を護る為の手段だったんだろう。御前が俺たちのように悪魔の姿をしていない理由はそれだ」
「だからって…」
つぶやきかけて、口を噤む。
何もかもが、俺の意志に反して行なわれているような気がしてならない。
俺は…悪魔ではないのに。
俺が口籠っている間に、エースは小さく吐息を吐き出し、そしてそれを俺に告げた。
「悪いんだが…明日、東京へ帰るから。御前も一緒に来て貰う」
「…帰るって…同じ家に?」
「あぁ。一緒に住んでるんだ。仕事上、その方が都合が良いからな。勿論、それぞれの媒体…人間として生活している俺たちが住んでいる家もあるが、明日帰るところは、一緒に住んでいる屋敷だ」
またもや、予測もしていなかったことを伝えられた。
状況が全くわからないと言うのに…
小さな溜め息を吐き出した俺を、エースが気がついていたのだろうか…
翌日、俺は他の奴らと一緒に、車で奴らの"屋敷"へと連れて来られた。全く記憶がない俺にしてみれば、拉致されたと言っても過言ではないかも知れないけど。
そこは、閑静な住宅街。悪魔が住んでいるとはとても思えない程、静かなところだった。
車から降り、暫し茫然としてその屋敷を眺めていると、背後で小さな笑い声がした。
振り返ってみて、そこに立っている男に気がついた。
「疲れた?」
「…えっと…」
確かに、幾度も聞いた声、だった。だが、その顔は人間で…誰だか区別が付かなかった。
俺の表情でそれに気がついたのか、その男は俺の手を引いて、屋敷の門を潜る。その途端、奴の顔に紋様が浮かび上がる。
右の頬に、赤い稲妻。
「あぁ…」
確か、ライデンと言ったはずだ。
「ほら、この辺は住宅街じゃない?幾ら何でも、悪魔の姿じゃ歩けないからね。でも、この屋敷のある敷地内は、結界があってね、魔界の空気と同じなんだ。だから、悪魔の姿でも平気って訳。まぁ、結界は天界人の進入を防ぐのにも役立つしね」
そう言いながら、くすくすと笑うライデン。
そう。これから俺は…悪魔の本拠地に、留まらなければならないのだ…。
「ここがあんたの部屋。何か思い出せる?」
俺がライデンに連れて来られたのは、玄関から一番近い部屋。そこが、悪魔であるルークの部屋だと言うことらしい。
ただ、ドアを開けて中に入っても、何も思い出せそうにはなかった。
小さく首を横に振ると、ライデンは小さく溜め息を吐き出した。
「そう。でも、無茶しなくても良いよね。少しずつ、ここの生活にも慣れてくれれば、思い出せるかな」
いつものように笑ったものの…その眼差しは何処か寂しそうで。そうさせたのは…この俺だ。
ライデンが色々と説明している声は、ほとんど俺の耳を右から左へと通り抜けていた。
ライデンが出て行った後、俺は部屋の空気を入れ替えたくて、窓を開けた。
真冬の冷たい風が、俺の頭をすっきりさせた。
でも…この部屋は、余り居心地が良くない。
だって、ここは俺の部屋じゃない。ここは…ルークの部屋、だから。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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