聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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AMNESIA 4
エースもラヴェイユも、その美しさに息を飲んだ。
白い翼を広げた、蒼き悪魔。ゆっくりと顔を上げたその顔は…久し振りに見た、悪魔の顔。
「…やっと…帰って来たな…」
痛みを堪えてそうつぶやき、小さく笑ったエースに微笑みを返し、俺はラヴェイユを見た。
ラヴェイユのその目には、最早俺を仲間とは思わないと言う証に、攻撃的な光が宿っていた。
「…愛していたよ、ラヴェイユ。彼女を殺しさえしなければ…多分一生、貴女を愛していられたのにね。残念だよ。貴女が彼女に向けた剣が、貴女への想いを憎しみに変えたんだ。でも、俺は後悔はしてないよ。それが、俺の道だったんだからね」
俺の言葉に、ラヴェイユは小さく微笑む。
「そうね。貴方が悪魔に目覚めなければ、貴方は私のモノだったわ。姉様以上に、私は貴方を愛していたもの。でも…だからこそ許せないの。貴方が悪魔に成り下がったことが」
ラヴェイユは、その手に細身の剣を握っていた。
俺は、エースが落とした剣を拾い上げ、その剣先をラヴェイユへと向けた。
「残念だね。俺は悪魔だから。二度と天界には戻らないし、二度と貴女を愛したりしない。貴女は、俺たちの敵だ。だから…殺すよ、貴女を」
「…殺せる?貴方に」
「殺せるさ。貴女は、エースを傷付けた。それだけの理由があれば十分だ」
そう。これは、遊びではない。
俺が"篁"の中を"留守"にしていた間、どれだけ彼奴等に心配をかけたことか…どれだけ彼奴等を不安にさせたことか…俺には良くわかっていたから。
辺りは既に暗くなっていた。俺たちがこの場で戦っても、他の誰にも危害は与えないだろうと思いつつも、念の為周囲に結界を張り巡らせた。
俺は剣を握り締め、大きく一振りする。
夜風を切る音が耳に届く。
「まさか…貴女とこんなカタチで戦うとは思わなかったけどね」
「そうね。私も思いも寄らなかったわ。貴方は、私の元に帰って来るとばかり、思っていたもの」
ラヴェイユの眼差しは、真っ直に俺を捕えていた。
それは…俺が、愛した瞳。
だが、今は…もう違う。
「俺は…"ルカ"じゃない。だから…俺が、殺してやる」
そう、ラヴェイユを殺せるのは…多分、俺しかいない。
「本望だろ?昔の恋人に殺されるんだから」
俺はそうつぶやくと、背中で大人しくしていた翼を羽ばたかせた。
身体が、軽くなる。
ラヴェイユが構えた剣と、俺の持っている剣がぶつかる。幾度となく、乾いた音が辺りに響渡る中…俺は、幻覚を見た。
あの頃の…"ルカ"が愛した恋人、ラヴェイユの姿を。
「"ルカ"は…あんたの記憶の中だけにいる。だから…"ルカ"と一緒に眠りな」
「…っ」
瞬間、俺の剣は彼女の身体を貫いていた。
彼女の表情が変わる。
優しい…天使の微笑み。
それを最後に、彼女は塵となって風に流された。
ラヴェイユを片付け、俺は地面に座り込んでいるエースの所へ戻った。
「大丈夫?」
「あぁ、何とかな」
エースの傷は、もうほとんど塞がっている。でも、着ていた服は破け、血に塗れていたから、まだ見た目は重傷だったけれど。
「記憶は、もう完全に…?」
問いかけるエースに、俺はにっこりと微笑んだ。
「御免ね。心配かけて…でも、もう大丈夫」
「なら、良いけどな」
くすっと笑いを零したエースは、その手を伸ばして俺の髪をくしゃっと掻き混ぜた。
そして。
「…どうせ、屋敷に戻ったら、彼奴等が騒ぎ立てると思うが…ラヴェイユとの過去のことは、別に言う必要はないからな」
「…エース…」
エースは目を伏せ、吐息を一つ。
「御前には…御前の過去がある。御前が天界にいた頃のことを、全て俺たちに話す必要はないし、俺たちだって…御前が魔界に来てからのことは、凡そわかってるんだ。それで十分、だろう?俺たちは…"ルーク"を、知っていれば良いんだから」
「……」
エースは…俺とラヴェイユのやり取りを見ていたから、そう思ったんだろう。
確かに…俺だって、詮索されて嬉しいことではないし…話さずにいられるのなら、それに越したことはないけど…
「…でもさ、デーさんがそれで納得すると思う…?」
問い返した声に、エースは小さく笑う。
「要点さえ押さえておけば大丈夫だ。それに…凡そのことは、ライデンに聞いてる」
「……は?」
思わず、奇妙な声が出た…。
「聞いてる、って…何処まで…?」
「ラヴェイユはガブリエルの軍の有力戦士だった、ってことと、御前の叔母だってこと。あと…」
御前の、仇だって言うこと。
最後は、言っているエースもちょっと渋い顔をしていた。
「…そっか…その辺は、ライデン知ってたんだ」
「まぁ、どんなルートかは知らないが、雷神界に入った情報だからな。魔界にはそこまでは入って来なかったが…それ以上のことも、ライデンは知ってたかもな。俺等には、覚えてない、を貫いたが…何かを隠してるみたいだったしな」
「…ライデンには悪いことしたな…」
「ライデンだって、あんまり詮索したくはなかったんだろう。彼奴の良心だよな」
「…だね」
ホント…優しいんだから。
「さぁ、そろそろ帰るか。彼奴等も待ち草臥れているかもな」
「うん」
よっこらせ、と立ち上がるエースに手を貸しながら、俺はふと、さっきのエースの台詞を思い出した。
「そう言えばさ、まさかエースがあんなこと言ってくれるなんて思わなかったな~」
くすくすと笑い出した俺に、エースは怪訝そうに眉を潜める。
「…あんなこと?俺が何か言ったか?」
「言ったじゃない。物凄い気障な台詞」
「…記憶にないな」
「言ったよ」
「どんな?」
エースは、ホントに覚えていないのか…それとも、しらばっくれてるだけなのか。
「例え"ルカ"は口説けても、御前に"ルーク"は口説けない」
「……さぁ、帰ろう」
「ちょっ…エースったらっ!」
ゆっくりと屋敷へ向かって歩き出したエース。
その顔は見えなかったけど…多分、覚えてるはず。
「嬉しかったんだよ?あんたに口説かれたら、こんな気分なんだろうな~って」
俺は、くすくすと笑いながら、エースの後を追いかけた。
エースは…俺が追いつくと、小さく笑って俺の頭をくしゃっと掻き混ぜた。
「…彼奴等には、内緒だぞ。流石に……恥ずかしいからな」
「…良いよ~。助けに来てくれたしね」
ホントに…滅多に聞けない台詞を聞けて、俺的には…色々あったけど、まぁ良いんじゃないかな。
屋敷に帰って来た俺たち…と言うよりも、エースの姿を見るなり、他の連中は当然驚いたように、何があったのかを問い質した。
エースは、何も語らなかった。ただ…俺の記憶が戻ったと言うことを、伝えただけで。
と言うことは当然…事情を話すのは、俺と言うことか…。
念の為、エースはもう暫く安静にするようにと、手当てを終えると自室のベッドへと押し込まれた。
そして、リビングに残った俺たちは、ソファーへと腰を降ろしている。
残された三名の眼差しが…当然、俺に向いてる訳だ。
「…事情を、説明してくれるだろう?」
デーさんが、そう口を切る。
「事情…ねぇ……」
ま、しょうがない。でも、エースが折角内緒にしてくれたのだから…と、俺も当たり障りのないところだけを伝えることにした。
ラヴェイユが、何をしようとしていたのか。
そして…篁が記憶喪失の間の、俺の事情を。
話が終わっても、誰も口を開かなかった。
その辺が何を思ってのことか…まぁ、深く考えないことにしようか…。
「…じゃ、先に休むね」
俺は席を立ち、自室へと戻る。
ドアを締めた後、溜め息を一つ。
多分、過去のことに関しては、みんな気を使ってくれてるんだと思う。それはとても有り難い。でも…俺は、悲観に暮れている訳じゃないから。
「…過去は過去、だよな。篁」
《…まぁ、ね》
篁が小さく笑った声が頭の中に聞こえ、俺も思わず小さな笑いを零していた。
今の俺は、十分倖せだから…これで良いんだ。
ルークが自室へと戻った後、リビングに残された三名は、未だ奇妙な沈黙の中にいた。
当事者ルークは、それ程悲観しているようではないのだが…
「…つまりさ、今回の記憶喪失も、全部そのラヴェイユってのが絡んでた訳…?」
その辺の状況が今一良く掴み取れていないライデンは、目の前のデーモンに向かってそう問いかける。
「…多分な。ルークの話からすると、そう言うことになるらしい」
「…で、ルークは記憶喪失の間、何処に行ってたって…?」
「だから…捜してたんだろう?"篁"を」
「…それってさぁ…迷子になってた、ってことで…良いのかな?」
「まぁ…そう言う事だろうね」
くすっと笑ったのは、ゼノン。
「だってさぁ、封じられた、ってならわかるけど、抛り出されたんだよ!?そんな奴が何処にいる!?」
そう。ルークから語られた事実によると…篁が記憶喪失の間、ルークは行方不明になっていたらしい。
長年、ルークとして生きて来た媒体だからこそ、記憶を失って真っ白になっていたとは言え、何とか上手く覚醒に持ち込めたものの…下手をすれば、あのまま殺されていたかも知れないのだ。
そう思うと、溜め息しか出ない訳で…。
「でも…帰って来たんだから、もうそれで良いじゃない。あの事故だって、ラヴェイユの罠だったんだし…その被害者には間違いないんだから」
そう言って宥めるゼノンの声に、ライデンは溜め息を一つ。
「…しょうがないなぁ…ま、無事で何より、か」
「そうそう。ね、デーモン?」
「…まぁ、な」
デーモンも、苦渋顔であるが、悪い気はしていないらしい。やがて、くすっと笑いを零した。
「さ、それじゃ明日から、またいつも通りだね」
「あ~、いきなり仕事かぁ」
大きく伸びをしながら、ライデンはソファーから立ち上がると、部屋へと戻って行った。
「じゃ、俺も休むね」
「あぁ、お休み」
ゼノンも部屋へ戻り…デーモンは一悪魔、溜め息を吐き出していた。
多分、他の奴らは、このままこれで良しとしてしまうだろう。
だが、デーモンの胸に引っかかっているのは…篁のこと。
記憶を無くした時に見せた、悪魔を拒否する姿は…本心だったはず。そんな想いが心の何処かにあったと言うことが、デーモンを酷く不安にさせていたのだ。
デーモン自身に、媒体が持つ、その不安がなかったばかりに。
自分の媒体が、悪魔の意識を持って生まれたばかりに…そんな不安など、知らずに過ごしていたことが、申し訳なく思えて。
媒体の思いは、時として悪魔をも封じ込める。
ルークは、自分が抛り出されたから、と言っていたが…抛り出されていなくても、きっとルークは封印されていたに違いない。
"篁"と言う存在の、意志によって。
再び溜め息を吐き出したデーモン。すると、背後から声が聞こえた。
「思い詰めるなよ」
「…安静じゃ、なかったのか?」
振り返らずとも、声の主ぐらいわかっていた。
「たいした傷じゃない。それに、安静にしていられる程御前の精神波が安定していなかったモンでね」
くすっと、小さな笑いが零れた。
それは、デーモンの口から。
「吾輩は…ホントは、この地球任務の総帥には向かなかったのかもな。神経が図太過ぎて、媒体の不安など、掴み切れていなかった」
すると、背後にいた姿…エースは、デーモンの隣へと腰を降ろした。
「それは、御前が心配することじゃない。自分の居場所は、自分で作るんだ。媒体の不安を受け留めるのは、俺たち居候の仕事だ。御前は御前の仕事がある。だから、媒体だって、意識を持たせて生まれたんだろう?最初こそ拒んだものの、"篁"はルークを信頼してるさ。ただ、記憶を無くして、昔を繰り返してしまっただけだ。それは、ルークにもわかってる。だから彼奴は、あぁやって落ち着いていたんだろう?そのことに関して、御前は心配しなくても良い。そう言う時こそ、御前がドンと構えていてくれないとな。それに御前は…」
十分、神経質だと思うぞ。
エースはそう言って、小さく笑ってみせた。
「誉められているのか、けなされているのかわからんな」
「取り敢えず…両方、だな」
そう言われ、デーモンも思わず笑いを零した。
エースのおかげで、デーモンもやっと安堵することが出来た。
「一服の清涼剤、か」
「…は?」
「何でもない」
思わず零した言葉に、デーモンは自分で笑いを零す。
やっとここにも、平穏が訪れた。
翌日から、また忙しい日々が始まった。
エースの傷も、もう仕事に影響はなく…勿論、俺の記憶も、きちんと戻った訳だから、何の影響もなかった。
「あ~…休んだ気がしない~~」
「御前に休暇はなかったな」
「全くです」
愚痴を零した俺に、エースはくすっと笑ってみせた。
まぁ、これも…また一興、か。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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