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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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Angel Smile 3
こちらは、以前のHPで2000年10月22日にUPしたものです
 5話完結 act.3

拍手[1回]


◇◆◇

 魔界から戻ったゼノンは、真っ直ぐにルークの部屋を訪れていた。
「エースとエナ、元気だった?」
 床一面に広がった譜面を手繰り寄せながら、ルークはゼノンに問いかけた。
「うん、変わりなく。それよりも、ちょっと良い?」
「何?」
 抱えていたギターを立てかけ、集めた譜面を揃えながら、問い返す。
「魔界に、行ってくれない?」
「…は?」
 余りに唐突な頼みに、ルークは奇妙な声を上げた。
「魔界にって…何しに。この忙しい時に…」
 ゼノンがエースに呼ばれて魔界へ行った理由すらわからないと言うのに、この上自分まで狩り出される必要性を、ルークは理解出来なかった。
「忙しいのはわかってるよ。でも、御前でないと駄目なんだ」
 そう言葉を紡ぐゼノンに、ルークは大きな溜め息を吐き出した。
「何か、口説き文句みたいだけど…?」
「精一杯、口説いてるつもりだけど?」
 真面目な顔をして、そう答えるゼノン。
「…あんたに口説かれて落ちるのは、ライデンぐらいだと思うけど…」
「別に、誰彼構わず口説いてる訳じゃないしね。本命は一名いれば十分でしょ?」
「…はいはい。惚気はデーさんとエースでお腹一杯~」
 ルークは小さく笑ったものの、ゼノンの表情から察するに…本気で頼んでいるようだ。
「エースに何かあったの?」
 そう、問いかける。
「直接…ではないけどね」
「じゃあ、エナ?」
「いや」
「じゃあ…」
「子供がね、増えちゃって」
「…は?」
 またもや、理解不能である。
「だから、自分の目で確かめておいで。どんな説明より、それが一番理解出来るから」
「……」
 何を言いたいのかはわからないが、エースはエナの他に、また問題を抱えたらしいと言うことだけはわかったような気がした。
「わかったよ。じゃ、これ揃えたら、直ぐ行くから」
「頼むね」
 そう言葉を残し、ゼノンは去って行く。
「…気楽なんだから、彼奴は…」
 いつになく、歯切れの悪いゼノンの姿を不審に思いつつ、ルークは譜面を揃えると魔界へと向かった。

◇◆◇

 久方振りの魔界は、実に気持ち良かった。
 大きく伸びをして、深呼吸を数回繰り返すと、ようやく足を動かした。
 この先に何があるのか、ルークはまだ知らない。
 あの頃の想いを、またここで思い出すなど。

 エースの屋敷を訪れたルークは、ティムがドアを開けた途端に飛び込んで来たエナの、手厚い歓迎を受けた。
「あ~っ、ルーちゃん!」
「おー、エナ、元気そうじゃん。ちょっと見ない間に、大きくなったな~」
 ルークに飛びついたエナを抱き上げ、視線を合わせる。確かに、ここへ着てからもう十日が過ぎている。成長が早いと言うだけあって、背丈も10cm近く伸びているのではないだろうか。
 いつの間にか、ルークの呼び名は親しげにルーちゃんになってしまっていたようだった。まだ逢うのは二回目なのだが…子供の適応能力には脱帽せねばなるまい。
「まぁまぁ、エナ様ったら…申し訳ありません、ルーク様」
 ティムも、困ったように眉を寄せながらも、小さな苦笑を零していた。
「良いって、良いって。なぁ、エナ」
「うんっ」
 片手でぐりぐりとエナの頭を掻き混ぜると、エナはけらけらと笑っている。
「お父ちゃんは?」
「お部屋にいるよ。"てんちゃん"と一緒に」
「…"てんちゃん"?」
 聞き慣れない名前に、ルークは怪訝そうに問いかける。
 すると、それに答えたのはティムだった。
「エース様が、保護なさった天界人の子供のことです。お名前がないとのことで、どうお呼びして宜しいのかと思っておりましたら、エナ様が"てんちゃん"と……ゼノン様から、お聞きになっておりませんか…?」
「…お聞きになっておりませんね…ったく…だから、妙な言い方したのか、ゼノンの奴…」
 溜め息を吐き出しつつ、だから自分が呼ばれたのか…と、ちょっと卑屈になってみたりもする。
 まぁ、それはそれで仕方のないことだと割り切るしかないのだが。
「じゃ、エナはティムと遊んでな。ルーちゃんはお父ちゃんと"てんちゃん"に逢って来るから」
「うん」
「エース様は三階の客間にいらっしゃいます」
「あぁ、そう」
 エナをティムに引き渡し、ルークは客間へと向かった。
「…"てんちゃん"、ねぇ…」
 天界人の子供を保護しただなんて…最早、嫌な予感しかしない。だが、来てしまった以上、ここで引き返す訳にも行かない。
 渋々、と言う感じで、ルークは足を動かしていた。
 そして、そのドアの前に立ち、軽くノックをする。
「エース、いるの?」
「あぁ、開いてる」
 中から声が聞こえ、ルークはドアを開けた。
 差し込む光が眩しく、部屋の中はとても明るかった。
 そのベッドの上に座るエースと…エナと同じ位の子供。多分、彼が"てんちゃん"なのだろう。
「悪いな、忙しいのに」
「…しょうがないでしょ?ゼノンに口説かれちゃ…」
 小さな溜め息を吐き出し、ルークは椅子を引き摺って来ると、ベッドの傍に腰を降ろした。
 丁度、"てんちゃん"と視線が合うように。
「天界人の子供、保護したんだって?さっき、ティムに聞いたけど」
 この子?
 問いかけると、エースは小さく息を吐き出す。
「あぁ」
 短い答えに、ルークは子供へと視線を向けた。
「俺はルーク。宜しくな」
「……」
「"てんちゃん"、って言うんだって?」
「…エナ、か」
「名前がないって、どう言うこと?」
 そう問いかけながら、僅かにエースに視線を向ける。
 目の前の子供は、口を開く気配もない。ただ俯いて、エースの服の裾を握り締めていた。
「ちょっとここで待ってろ。また後で来るから」
 エースはやんわりとその手を解き、子供にそう言い聞かせる。
 小さく頷く姿に、エースはベッドから立ち上がり、ルークを部屋の外へと促した。
 そのままエースの自室へとやって来た二名は、向かい合ってソファーに腰を降ろす。
「どう言うこと?」
 改めて問いかけるルークの声に、エースは溜め息を一つ。
「ゼノンから…何も聞いてないのか?」
「聞いてないよ。ただ、あんたに子供が増えた、としか…」
「どう言う説明をしてるんだ、彼奴は…」
「大丈夫。デーさんには言ってないから」
「そう言う問題じゃないだろうが」
 不毛な会話に、エースは再び溜め息を吐き出す。
「…拾ったんだ」
「何処で?」
 やっと本題に入ったことで、ルークの表情もすっと引き締まる。
「聖地に近い場所だ。彼奴の顔、見ただろう?片方の目が、見えないんだ。ついでに、翼も片方しかない。俺が見つけた時は、まだ血も溢れていた」
「……」
 確かに、あの部屋にいた"てんちゃん"は、片方の目を包帯で覆われていた。
 尋常ではない状況で見つけた子供。
 溜め息が、ルークの唇から零れた。
「名前がないってのも、ホントなの?」
「あぁ。精神的なモノかわからないが、声が出ないんだ。だから、俺とゼノンとで、意識下の会話をした。その時、彼奴がそう言ったんだ。名前を呼ばれたこともない、ってな」
 エースはそこまで話して、取り出した煙草に火を付けた。
「ゼノンは、捨てられたんだろうと言っていた。多分…その通りだと、俺も思う。ただ…普通の状況じゃない。彼奴は、自分の手で翼の片方を切り落とし、片目を潰したんだろう。自分の中の悪魔を、切り捨てる為に。そうしなければ…愛されないと思ったんだろうな。愛して貰いたいが為に…自分を、傷つけたんだ」
 つまりは、彼は堕天使だと言うこと。だから、自分が呼ばれたのだと、ルークも感じた。
「それで、俺に何をしろって言うの?まさか、同情させる為に呼んだ訳じゃないでしょ?」
 ちょっと拗ねたように、そう言ってみる。
「彼奴の心を、開いてやって欲しいんだ。捨てられたことにすら、気がついていない。迎えが来ると、思ってるんじゃないかとゼノンは言っていた。天界に戻れないのに、期待を持たせる訳にはいかないだろう?だから、同族の御前に…」
「説得させようっての?」
「いや…そう言う訳じゃ…」
「じゃあ、どう言う訳さ」
 エースは、困ったように溜め息を吐き出した。
 ルークとて、エースの気持ちもわかっているのだ。だが、エースがルークの心の痛みを、どれだけ知っているかを察することが出来ないのだ。
 小さく溜め息を吐き出し、ルークは口を開いた。
「…わかってるよ。あんたの考えじゃないことぐらい、ね」
「ルーク…」
「ゼノンの考えそうなこと。医者だからって、身勝手にも程があるよね。自分の道は自分で切り開かなきゃいけないのに…子供だからって、手を貸そうだなんて」
「確かに、道を選ぶのは彼奴の意志だ。だが…まだ、自分の置かれている状況が理解出来ていない。だから…導く手伝いをして貰いたいんだ。それは、ゼノンだけじゃない。俺の想いでもある」
 ゆっくりと、言葉を選びながらそう言ったエースに、ルークは小さく笑いを零した。
「へぇ。すっかりお父さんになっちゃって」
「茶化すな」
「茶化してないよ。きっと、それが親心なんだろうね」
 案じているのは、心配しているから。
 そうやって自分も心配されていたのかと思うと、何だか少し照れくさかった。
「ダミ様の所に、連れて行っても良い?」
 何かを思いついたのか、ルークは不意にそう口にした。
「え…?あぁ、それは構わないが…」
 それが何を意味するのか、エースにはわからない。だから、答えた声も戸惑っていた。
「名前も、付けてあげなきゃね。ここで暮らすのなら。いつまでも『てんちゃん』じゃ、困るだろ?」
「まぁ…な」
「じゃ、あんたも一緒に来てね」
「…何でそうなる?御前が連れて行くんじゃないのか?」
 話の道筋が見えず、声を上げたエース。だがルークは、にっこりと微笑んだままだった。
「当然じゃない。お父さんでしょ?」
「…あのなぁ…」
 呆れたように溜め息を吐き出すエース。
 ルークはその顔を、にやにや笑いながら眺めていた。
「でも、冗談じゃなくて。彼奴だって、あんたがいれば少しは安心でしょ?ダミ様や俺は、まだ初対面だもの。俺たちだけじゃ、心を開くどころじゃない」
「それはそうだが…」
「じゃ、決定。さ、支度、支度」
「…ったく…」
 すっかりルークのペースに巻き込まれてしまったエース。
 だが、頼んでしまったのだから、諦めるしかないのだ。
 エースは、彼を連れて行く為、部屋を出て行った。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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