聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Angel Smile 4
エースと天界人の子供と共に、ダミアンの執務室を訪れたルーク。
「ルークです」
「どうぞ」
声に促され、ドアを開ける。
「どうした?」
ぞろぞろと現れた姿に、一瞬目を丸くしたダミアン。だが、直ぐにその視線は、エースが抱いている彼へと注がれた。
「あぁ、御前は…」
思わず、そう口にする。
事前にエースから報告は受けていた。だから、ルークと共に来たことで、大体の想像は付いたようだ。
ダミアンはにっこりと微笑むと、彼に話しかけた。
「わたしはダミアンと言うんだ。宜しくな」
だが、彼は怯えたように、エースの服の中へと顔を埋める。その姿には、一同溜め息、であった。
「…で?」
切り出したダミアンに、ルークが言葉を発した。
「この子…魔界に、受け入れて貰えますか?」
その言葉に、ダミアンは一瞬何かを考えているかのようにルークを見つめた。そして、小さな溜め息を吐き出しながら言葉を続けた。
「受け入れるのは簡単だよ。だが、彼の親には、どう説明する?一応…報告せねばなるまい?」
何処か曖昧な口調に、ルークはカチンと来たようだ。
「知ってるんですか?彼の親を」
ルークのストレートな問いかけに、ダミアンは何も言わない。そして、エースも小さな溜め息を零した。
「やめておけ、ルーク。子供の前、だ」
そう切り出したのは、エースだった。
「何で?だって、報告するんでしょ?その子だって、知る権利はあるはずだよ。自分の、親のことなんだから」
エースは多分、知っている。
この状況で…自分だけ除け者にされているようで、堪らない。
そんな表情を浮かべるルークに、エースは一瞥を送る。
「知らない方が良いと言うこともあるだろう?少しは学習しろ」
「そうやって隠されて、倖せだと思う?」
その言葉に、エースはルークの心の傷の深さを察した。
堕天使であることを隠されて育てられ、その能力を抑え切れなくなったらあっさりと周りに裏切られた。その奥には、相手にも色んな思いがあったのだろうが…そんなことは、ルークには関係なかった。ただ、裏切られた、と言う事実だけ。その想いは、未だ胸の奥底に根強く残るしこりなのだ。
「隠されることは嫌だ。置いていかれるのは、嫌なんだ。だから…」
まるで自分事のように、切なそうな表情を浮かべるルークに、ダミアンはゆっくりと言葉を紡いだ。
「誰よりも…御前が傷付くとしても…?」
その言葉に、エースの方が声を上げる。
「ダミアン様!」
「御前は黙っていろ、エース。今は、わたしとルークの話、だ」
「…ですが…」
エースに口を噤むように視線を送りながら、ダミアンはその声を続けた。
「世の中…綺麗事だけでは、済まないからね。彼の親のことは、既に調べてあるよ。名前も…ない訳じゃない。ただ、呼ばれなかっただけ、だ。しかし、それを全て知ることが、彼の為になるか?御前のように…強くはなれないかも知れないんだぞ?」
その、諭すように紡がれる言葉に、ルークは彼を振り返った。
不安げな、碧色の瞳が自分を見つめていた。
それは…ルークが初めてダミアンに向かい合った時の眼差しと、良く似ている。勿論、ルーク自身には、そんなことはわかりはしなかったが。
小さな溜め息を吐き出し、気持ちの整理をする。
「俺だって…最初から図太い神経だった訳じゃありません。俺は…貴殿が、俺の存在を受け留めてくれたから、どんなことがあっても耐えることが出来たんです。誰よりも、貴殿を信じていました。貴殿が、俺に居場所を与えてくれたのだと、心強く思いました。だから俺は…彼奴にも、居場所を与えてあげたいんです。今は、エースがその役割を受けてくれると思っています。だから、貴殿に逢わせようと思ったんです。彼なら…強くなれる。そう思ったから…」
心を開くには、それしかないと思っていた。
受け留めてくれる存在があって初めて、強くなれる。
自分が、そうであったように。
ルークのそんな想いを、察してくれたのだろう。それ以上、ダミアンは何も言わなかった。
小さな吐息を吐き出してゆっくりと椅子から立ち上がり、ルークの髪をくしゃっと一混ぜすると、エースが抱いている彼の元へと歩み寄る。
そして、その手で彼をエースの手から抱き上げた。
「御前の名前は…紫苑(しおん)、だよ」
「……」
碧の眼差しが、真っ直ぐにダミアンを見つめていた。
そう告げることが、彼を受け入れる第一歩だった。
----紫苑…?
僅かな意識が流れて来たのを感じ、ダミアンはにっこりと微笑んだ。
「君の親から、我々は君を託された。ここなら、君が生きていけるだろうと。君の居場所は…ここにある。これからは、この魔界が…エースの元が、君の居場所だ。そうだね、エース?」
問いかけられ、エースは小さく微笑んだ。
----僕の…居場所…
彼は、初めて、とても心地が良いと思った。
「だから、強くなるんだよ」
微笑むダミアンの顔をじっと見つめていた彼は、やがてエースへと手を伸ばす。
その手を取り、エースはダミアンの手から彼を抱き取った。
その暖かい温もりに…思わず、彼の瞳から、涙が零れた。
「…エース…」
縋り付くように、エースの首に両腕を回した彼は、掠れる声で、エースの名を呼んだ。
「…御前…」
エースは、思いがけない声に、息を飲んだ。
それは、ダミアンも、ルークも同じこと。
掠れてはいたが、聞き間違えるはずはなかった。
その声は…かつて聞いた声、だった。
その夜、ルークはエースの屋敷にいた。
彼…紫苑は、ベッドでぐっすりと眠っている。
紫苑を寝かしつけたエースは、そのベッドの端に腰を降ろし、ベッドのヘッドライトの明かりだけの薄暗い室内で、彼を見つめていた。
そしてルークは、壁に凭れたまま、エースを見つめていた。
結局、紫苑が発した声は、エースを呼んだ一言だけだった。
子供にしては、不自然な程低い声。けれど…その声自体には、聞き覚えがあった。
それは、多分、偶然ではない。それだけで全てが明確だった。
「…まさか、ね。"あの悪魔(ひと)"の声を持っているとは、思わなかったよ」
小さくつぶやいた、ルークの声。
「予想は、していたんだろう?」
紫苑を見つめたまま、エースはそう問いかける。
「そう…ね。多分、そうじゃないかな、とは思ったよ。でも、紫苑の父親は、"あの悪魔"じゃない。この子の年齢を考えたら、有り得ないもんね。だから、あんたもダミ様も、驚いたんでしょ?」
冷静にそう返すルークに、エースは小さく吐息を吐き出した。
「まぁ、な」
やっと、ベッドから立ち上がったエース。
「俺の部屋へ行こう」
そう言って、ルークを促す。
エースの部屋へと向かう間、どちらも口を開かなかった。
そして、その部屋に辿り着き、エースは煙草に火を付け、二名分のグラスを持って来ると、そこに酒を注いで、一つをルークに渡した。
「父親は、ミカエルだ」
エースは、口を開くと、そう言葉を零した。
「あんたとダミ様が口を濁した時点で、そうだとは思ってた。でも、俺の知る限り…ミカエルは堕天使じゃなかった。勿論、奥方もね。寧ろ、奥方は悪魔が大っ嫌いだし」
ルークは、くすっと小さな笑いを零した。
「じゃあ、種は何処から来たんだろうね…?言っておくけど、俺はミカエルに身体を許した覚えはないからね。俺の種じゃないよ」
「ルーク…」
まるで、冗談を語っているかのような口調に、エースは眉を寄せた。
冗談で済まされる話題ではないことは、ルークにも勿論わかっていた。
だが、他にどうしたらいいのか、わからなかったのだ。
「答えは一つ。あれは確かに、ルシフェルだよ」
ルークの声が、酷く低く聞こえた。
「それはわかってる。だが…ルシフェルが魔界へ降りたのは、御前が生まれる前、だ。その後、ミカエルとの接触はないはずだ。だとしたら…まだ天界にいた頃と言うことだろう?そんなことが…有り得ると思うか…?ミカエルに限って、そんなこと…」
誰よりも、清く、正しい天使だったミカエル。その姿を、ルークは知っていた。
けれど、その現実は…予想もつかないところにあるのかも知れない。
見た目ではわからないが、ミカエルは彼らの父親と大差ない年齢であるのだから。過去に何があったかなんて、自分たちには未知の世界なのだ。
そんなことをぼんやりと考えながらも、ルークはその顔から微笑みを失わなかった。
「接触は…あったよ。だって、母様は…元々、ミカエルが怪我を負ったルシフェルの看病の為に、自分の軍から連れて来たらしいから…ね。どうやら俺は、その後に生まれたらしいし。だから、少なくとも一度は接触してるはずだよ。まぁ、何があったのかは知らないけど」
「でも、だからって…」
「種の保存は、天界では常識だよ。より良い血筋を残す為に…ね。俺が生まれる前だろうと、ミカエルであるなら、自分自身の体の中にそれを残せたはず。ミカエルは俺の母様を愛していたよ。でも、それ以上に…ルシフェルを、愛していたんだ。俺に執着していたのは、その為だよ。俺が、ルシフェルに似ているから」
「御前…大丈夫か?」
いつにない、ルークの態度。
まるで、自分の出生を嘲笑うかのような姿に、エースも問いかけずにはいられなかった。
「大丈夫。俺は、何ともない」
ルークは、平然とそう答える。
「なら…」
「冷静になれと言うの?俺は十分冷静だよ。あんたよりもずっと。だからこうして、筋道を説明してあげてるんじゃない」
「でも、御前の常じゃない。どうかしてる」
そう言い切ったエースの眼差しは、真剣だった。
その真っ直ぐな眼差しに見つめられ、ルークも僅かにその表情を変えた。
「だったら、どうしろって言うの…!?俺を呼んだ時点で、こうなるであろうことはわかってたでしょ?ヒトの過去を穿り返しておいて、放置かよ!そのまま結局、見て見ぬ振りをするの?見捨てるの?そんなの、絶対無理に決まってる。関わった以上、このまま見過ごす訳にはいかないんだよ!?何もかも…俺の過去だって、忘れてしまえる訳じゃない。簡単に切り捨ててしまえる訳じゃない。俺は、ここにいるんだよ!現実は、ここにあるんだよ!」
吐き捨てるように言葉を放ち、笑いの消えた顔はとても苦しそうだった。
「ずるいよね。振り回されるのは、いつも子供だ。誰だって、望んで生まれて来た訳じゃない。子供は親を選んで産まれて来る?冗談じゃない!そんなのは、結局親のエゴだ。望みもしない運命を押しつけるんだ。そうやっていて、異形を持っていれば平気で捨てるんだ。捨てられた…俺たちの気持ちにも、気付かない振りをして、同じことを繰り返すんだ」
「ルーク」
「…傷付かない訳、ないじゃない?自分の翼を切り落として…瞳を潰して、痛くない訳、ないじゃない!?痛いよ!当たり前じゃないっ!!でも、それ以上に痛いのは、心なんだよ!だから…知らない振りをするんだ。彼奴だって、捨てられたことぐらいわかってるよ。わかってても、言えなかったんだよ。認めたくなかったんだよ!誰よりも愛されたい親に捨てられたなんて…誰が信じられるよ…誰が…これ以上傷付きたいと思うよ…!」
「ルーク!」
「どうして…わかってくれないんだよ…俺たちの…ホントの気持ちに……」
はらりと、ルークの黒曜石から溢れた涙。
ルークの身体を受け留めたエース。
その気持ちは、痛い程わかっていたはずだったのに…何も、言葉が出なかった。
今まで…顔にも、態度にも出さなかっただけで…ルークの心には、深い深い傷がある。それは、何年経とうが…消えることはないのだ。それを、今になって思い知らされた気がしていた。
ルークを傷付けた。その事実だけは、もうどうにもならない。
「…悪かった…御免な、ルーク…」
今は、謝ることしか出来ない。その身体を抱き締めて、気持ちを落ち着かせることしか出来ない。
そんな自分が…エースは、とても嫌だった。
大きな溜め息を吐き出した時、ふと、ドアが開いていることに気が付く。視線を向けてみれば、そこには…眠っていたはずの紫苑が、立っていた。
「…紫苑…」
つぶやいたエース声に、ルークも顔を上げた。
紫苑は、真っ直ぐにルークを見つめていた。
そして、ゆっくりと開かれた唇。
「…泣かないで…」
「紫苑…」
ゆっくりと、ルークに歩み寄る姿。
ルークはエースから離れ、床に跪く。その身体を、紫苑は精一杯腕を伸ばして抱き締めた。
「泣かないで、ルーク」
もう一度、そう言葉が零れる。
そう宥める声が、父の言葉に聞こえた。
たった一度逢っただけの、ルークの父親…ルシフェルの言葉に。
ルークも腕を伸ばし、小さな紫苑の身体を抱き締める。そして…小さな子供のように、声を上げて泣いた。
今まで押し殺してきた感情を、全て曝け出すかのように。
紫苑は、そんなルークの背中を、黙って抱き締めていた。
エースは何も言えず…ただじっと、その姿を見つめているだけだった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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