聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Angel Smile 5
エースを自室に残し、ルークは紫苑と共に、彼の寝室となっている客間へ戻って来ていた。
彼をベッドに促し、ルークは椅子に腰掛ける。そして、ゆっくりと口を開いた。
「…御免ね。びっくりしたでしょ?…良い大人が、あんなに泣いて…」
その声に、紫苑は僅かに首を横に振った。
紫苑を抱き締めてみて、ルークは彼の中にルシフェルの意識がないことを感じ取った。
紫苑の中に、ルシフェルはいない。だから、過去の記憶がある訳でもない。ただ、声が良く似ていると言うだけで。
だが、その血筋は間違いなくルシフェルのものと言う確証はある。と言うことは、必然的に…親は違えど、ルークとも血の繋がりがあることになる。
当然、ルークの思いは複雑だった。
「どうして…だろうね。涙脆い訳じゃないのに、昔を思い出すと気弱になるのは」
くすっと笑いを零すルークに、先程までの涙はなかった。
紫苑は、何も言わない。その片方の眼差しで、黙ってルークを見つめていた。
「過去って…特別だよね。今がとても満たされているとしても、過去の自分が満たされていないから、そこに戻ってしまうと、自分が嫌なくらい卑屈になる。今、愛されてるとしても…昔、愛されなかったことばっかり思い出す。過去を全て忘れてしまえれば、楽なのにね」
それが、堕天使としての自分の運命であると気が付いたのは、いつからだっただろう。
ルークは、ぼんやりとそんなことを考えていた。
そして多分…紫苑も、同じ経験をしているのだと。
「…自分が堕天使だってこと、気付いてるでしょ?」
そう問いかけたルークの声にも、小さな頷きを返した。
「嫌い、だった?」
そう問いかけられ、紫苑は僅かに眉を寄せる。
その質問が意図するところが、わからなかったのかも知れない。
「見て」
ふと、ルークがそう口にした。
そして、その背中に、真白き翼を構えた。
「……っ」
紫苑が、息を飲む音が聞こえた。
----…綺麗…
言葉としては聞こえなかったが、口の動きで紫苑がそう言ったことがわかった。
「有り難う」
にっこりと、ルークが微笑んだ。
「俺もね、堕天使なんだ。この翼は、母様の肩身」
そう、言葉を紡ぎ始めた。
紫苑は、黙ってその言葉を聞いていた。
「魔界に降りた時…俺も、この翼が嫌いだった。だって翼を広げれば、自分が堕天使だってことを周りに教えてるようなモンじゃない?でもね、ダミ様は…これを切るなと言ったんだ。染めることも許さないって。その時は、ただこの翼を綺麗だと思ってくれているだけだと思ってた。でも…ホントは、それだけじゃない。これは、俺に与えられた械なんだと思った。堕天使の械を背負っても、強く生きられるように。自分の足で、立てるように。歩いて行けるように」
「……」
「ただ…優しさを与えられるだけだったら、きっと俺はダミ様に対して、ここまで忠実にはなれなかったと思うよ。俺が心配するくらい、今でも超が付くぐらい過保護だけどね。でも、俺の存在を、この魔界が必要としてくれたと言うことは、物凄く嬉しかった。その居場所を、ダミ様が作ってくれたことが」
くすっと、小さな笑いを零したルークは、自分を見つめる眼差しを受け留めた。
そして。
「その包帯、取っても良い?」
ふと、ルークは紫苑の片目を覆っている包帯に手を伸ばす。
傷は、疾うに治っているはずだった。だが、紫苑が包帯を外すことを拒んだのだ。だから、エースはずっとそのままにしていた。
だが、ルークはそれを取ろうとした。
一瞬、戸惑いの表情を浮かべた紫苑。だが、真っ直ぐに見つめるルークの眼差しに、その色を見せてもいいかも知れないと思い始めた。
少なくとも、この目の前にいるルークは、自分と同じ心の傷を背負っている。だから、この気持ちをわかってくれるだろう。
小さく吐息を吐き出すと、紫苑は自ら手を伸ばしてそれを外した。
傷の癒えた瞳は…深いけれども透明な、紫色をしていた。
その瞳が光を失っているとは思えない程…その輝きはとても綺麗で。深い魅惑的な黒曜石の瞳を持つルークでさえも、その紫の眼差しには心魅かれるものがあった。
「名前の由来、だね。綺麗だよ」
にっこりと微笑むルーク。
「その瞳が…切り落とした翼が、天使として生きようとした君の、械だったんだね。だから…それを外そうとしてたんだ。認めたくないから。傷付きたくないから。そうでしょ?」
問いかけた声に…小さな、頷きが帰って来た。
そして、その後、控え目に…とても弱い意識がルークの意識に流れ込んで来た。
----僕は…捨てられたの…?
「…紫苑…」
俯いた顔で、表情は読み取れない。だが、その言葉が示す意味は、一つしかなかった。
----僕が…堕天使だから…母様は、僕を愛してくれなかった。母様は…僕が、嫌いなんだ。だから僕は、母様に好きになって貰いたくて…愛して貰いたくて…
「…そう」
紫苑の言葉はとても重たくて…とても、胸が痛い。
裏切られたとは言え、少なくとも愛されて育ったルークには、わからない苦しみだったのだろう。
ルークは、大きく、息を吐き出す。
「君は…ここが嫌い?」
そう問いかけられ、暫く考えた末に、紫苑は首を横に振った。
「なら、それで良いじゃない?」
にっこりと微笑むルーク。その微笑みの意味がわからない紫苑は、眉を寄せる。
「愛されたかったんでしょ?ここには、君を愛してくれるエースがいるよ。勿論、ダミ様も、俺も、エナも、君が好きだよ。少なくとも…君を、独りにはしない」
「………」
「もし仮に、君がまだ天界に残っているとして…結局、苦しいのは自分だと思うよ。君の中の魔族の能力は、多分君が思っているよりもずっと強い。そして、その能力はいつか必ず覚醒する。そうすれば、天界人としては生きられないんだ。俺は、それを身を持って体験した。それなら、堕天使として生きれば良い。君に与えられた居場所は、今はここなんだよ。わかる?」
わからない訳ではない。ただ、納得するまでには至らない。それが、子供の意識と言うものだろう。
愛されたかった母親。顔も見たことのない父親。その二名がいる天界が、ずっと自分の居場所だと思って来たのだから。
例え、自分が堕天使であったとしても。
「自分を偽っても、苦しいのは結局自分なんだ。勿論、選択肢は君にあるよ。誰も、道を示してはくれない。勿論、支えてくれるヒトはいるだろうよ。でも、決断するのは、結局自分なんだ。居場所を護るのは…自分、だよ」
「……」
「ホントの自分を、見てご覧。勇気を、出して」
その言葉は、紫苑の意識を強く揺さぶった。
堕天使と言う械を背負ったと思っている、意識を。
「忘れてはいけないよ。君を拾ってくれたエースは…君を、本当に心配してくれている。愛してくれている。愛情は、押しつけるモノじゃないけど…少なくともここは、君のいる場所で良いと思うよ」
ルークは、にっこりと微笑む。
まるで、ルークが初めて触れたダミアンの微笑みのように、柔らかく、暖かく…そして、包み込んでくれるような、そんな感覚を覚える微笑み。
そう、エースも、微笑んで自分を受け留めてくれたではないか。
自分は、ここに存在しても良いのだと言う、確かな想い。
「…有り難う、ルーク」
小さく零れた、紫苑の声に、ルークはにっこりと微笑みを零してドアの方を見た。
「あそこに…心配性のお父さんと、君の友達もいるんだけどね」
そう言って、徐にドアを開ける。
その先には…気まずそうに、僅かに赤くなった顔を背けるかのように横を向いているエースの姿。その足下には、エナの姿もあった。
思いがけない姿に、きょとんとした紫苑。だが、その想いは伝わっていたらしい。
彼は、初めて…微笑んでみせた。
「父様ぁ…"てんちゃん"は、ここに住むの?」
エースの服の裾を引っ張って尋ねるエナを、エースはそっと抱き上げた。
「もう"てんちゃん"じゃない。紫苑って言うんだ」
「…しおん?」
「そう」
「じゃあ、紫苑は、ここに住むの?」
改めて問い返す声に、エースは紫苑へと視線を向けた。
「そうだよな?紫苑?」
問いかけられ、紫苑は満面の微笑みを浮かべた。
それが、全ての答えだった。
「あぁ、良い笑顔だ」
くすっと笑い、エースはその手で紫苑の髪を掻き混ぜた。
もう、誰も傷付けない。ここに、いても良いのだから。
そんな暖かい安らぎに、紫苑は手を伸ばして、エースの首に腕を回した。
エナをルークへ託したエースは、そんな紫苑を抱き上げてやる。
優しさを、与えてやろう。
安らぎを、与えてやろう。
今エースに出来ることは、それぐらいだから。
エナも紫苑も眠りに付いた頃、エースはルークと共に自室にいた。
「…さっきは御免ね。柄にもなく…取り乱した」
先ほどの姿を失態と取ったのか…ルークはちょっと気まずそうに、エースに謝った。
「いや…俺たちが、安易に考え過ぎていたんだ。御前が、いつも平然としているから…もう、吹っ切れたのかとな…今回のことは、俺が悪い。謝るのは俺の方だ」
済まなかった。
頭を下げたエースに、ルークは笑って声をかける。
「ちょっと、やめてよ~。そんなに深刻になられたんじゃ、この先ずっと恥ずかしいじゃないよ~」
「…ルーク…」
顔を上げたエースは、笑うルークの姿に当然戸惑っている。
けれどルークは、それでも笑って見せた。
「大丈夫だよ。俺の居場所はここにちゃんとある。だから、変に気を使わないでよ。今まで通りで大丈夫だから。みんなにも内緒ね?」
「…御前がそう言うなら…」
些か気にはなるが、ルークがそう言うのなら…もう、これ以上触れないで置こう。エースは心の中でそう思っていた。
「…で。ミカエルは…知ってるの?紫苑のこと」
話を切り替えるようにそう問いかけたルークの声に、エースは煙草に火をつけて紫煙を吐き出す。
「ダミアン様が全て計らってくれた。本当は、連れ帰りたかったんだろうが…」
「じゃあ、魔界に来た訳?」
「らしいな」
エースが吐き出す紫煙を見つめながら、ルークは溜め息を一つ。
「好きで捨てた訳じゃ…ないんだよね?」
そうであって欲しい。それは、ルークの些細な願いだった。
「捨てたのは奥方だ。まぁ…立場上、自分が堕天使の子供を生んだことを知られる訳には行かないだろうし…そうだとしたら、育てて行くことも出来ない。今は、奥方にもこうするしかなかったんだろう。ミカエルは、紫苑の存在すら、知らなかったそうだ。少なくともミカエルが知ってさえいれば、愛されていただろうな。堕天使には甘いから」
「…そうだと良いけど」
「とにかく今の保護者は、魔界…いや、俺、だからな。それなら御前も、少しは安心だろう?」
くすっと、小さく笑ったエースに、ルークも苦渋の笑いを零した。
「まぁ…ね。でも、エナが成長するまで、もう少しでしょ?その後も、魔界に残るつもり?」
「いや。エナが成長したら、今度はエナが紫苑の面倒を見るさ。彼奴…紫苑が好きみたいだからな。良い相棒になるんじゃないか?」
「へぇ…」
目を丸くするルークに、エースは再びポーカーフェイスを浮かべる。
「気がかりじゃないの?お父ちゃん?」
くすくすと笑うルークに、エースは溜め息を一つ。
「その、お父ちゃん、ってのはやめろ」
「良いじゃないの。そのうち、紫苑も呼ぶようになるよ。父様、ってね」
「…ったく…この若さで二名の子持ち、かよ」
「でも、倖せでしょ?」
「ここにデーモンがいれば申し分ない」
「あのねぇ…悪かったね、俺で」
ふと惚気てみせるエースに、ルークは笑いを零したままだった。
あの二名の子供は…エースの元にいられて倖せだろうと、ルークは思っていた。
数年後、エナは自分が住むべき惑星へと帰っていった。
その傍らには、もう子供ではない紫苑がいた。
どんなに遠く離れていても、育てて貰った恩は忘れない。
大好きな、父様。
そう言った二名の微笑みは、まさに至上の微笑みだった。
You make me smile again.
Angel Smile.
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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