聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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BROKEN ANGEL 2
その夜、流石のゼノンも病には勝てず、ルークが帰って直ぐに眠り込んでしまっていた。そんな時に、久し振りの来訪者があった。
「…あれ?ゼノンは?」
まだそんなに夜も遅くないはずなのに、姿のない主。それをレプリカに尋ねたのは、今は雷神界にいるはずのライデンであった。
目前に迫った婚姻の儀の招待状をダミアンに届けがてら、挨拶に訪れていたのだった。
レプリカも、ライデンが来ると言う連絡はゼノンから受けていた。だからこそ、通常通りの対応だった。
「ゼノン様は具合が悪いとのことで、もう御休みになられているのですが…」
「具合が悪い?珍しいね、彼奴が病気だなんて…これぞ正しく"鬼の霍乱"ってヤツ?」
呑気にそう言うライデンに、レプリカも小さな笑いを零す。巷に流行している奇病のことを知らない二名には、それは単なる風邪ぐらいにしか、感じていないのだろう。
「ちょっと、様子見て来ようかな…」
流石に少しは心配になったようで、そう零したライデンの声に、レプリカは控え目に口を挟む。
「それが…うつると危険だから、どなたも通さないようにとの指示が出ているのですが…」
「どなたもって…あんたも?」
「…はい。そう伺っております」
その奇妙な指示に、ライデンは首を傾げる。
「それって、変じゃない?たかが風邪なら、うつったってどうってことないと思うんだけど…」
「えぇ、わたくしもそれは疑問だったのですけれど…一晩眠れば治るからとゼノン様がおっしゃったので…」
僅かに心配そうな表情を浮かべたレプリカに、ライデンの不安は益々募る一方だった。
「やっぱり、ちょっと見て来るよ。風邪なら、マスクしていけば大丈夫でしょう?心配ないから」
「ですが…」
「大丈夫だって」
小さな笑いを零し、ライデンはマスクをするとゼノンの寝室へと向かった。
そっとドアを開けて中を覗いてみると、ゼノンは眠っているようだった。
だが、額に油汗を浮かべたゼノンは、苦しそうに見える。
「…ゼノン」
小さく呼びかけても、起きる気配はない。そっと額に手をおいてみれば、かなり熱い。
「凄い熱じゃない。とにかく、冷やさないと……」
踵を返そうとした途端、低い呻き声が聞こえた。
「…ゼノ?魘されてるの?」
改めて顔を覗き込んでみれば、酷く苦しそうだ。
「…ゼノ、俺だよ。わかる?ゼノ?」
再び呼びかけると、ゼノンはやっとその目を開けた。
「…ライ…?何で…?」
「気が付いた?今日、ダミ様のところに行くって言ったじゃん。忘れてた?」
にっこりと微笑みかけるライデンをよそに、ゼノンは荒い呼吸の間に言葉を零す。
「…あぁ…」
「今日は泊まってくから、看病してあげるよ」
「駄目…だ」
「ゼノ?」
「駄目…だよ、ここにいちゃ…」
「何言ってんだよ。酷い熱なんだよ?風邪ぐらい平気だから。マスクしてるしね。今夜はゆっくり休んで」
「…そうじゃなくて…」
何か言葉を続けようとしたゼノンであったが、酷い頭痛と熱に、再び意識が微睡んでいた。
「大丈夫だから」
傍にあったタオルで額の汗を拭ってやり、その額に軽く口付ける。そして、冷たいタオルを乗せると、ひんやりとしたその感覚に、ふっと意識が緩む。思わず安堵の吐息を吐き出したゼノンは、そのまま眠りの闇に落ちて行った。
遠くで、誰かに呼ばれているような気がする。
微睡みの中でそう感じたゼノンは、直後にその声の主を思い出す。
そうだ、ライデンの声だ。
そう思った途端、急激に意識は戻り、がばっと身体を起こす。頭痛と熱は変わらずだったが、そんなことに構っていられない。
「…ライ…」
あたりを見回しても、姿はない。ただ、ベッドの傍に椅子が一脚あるだけで。
「…まさか…」
思わぬ失態に、息を飲む。だが、今は自分を責めている時間もなかった。言うことを聞かぬ身体を無理矢理起こし、ドアを開けると声を張り上げる。
「レプリカ!」
その声に、レプリカは直ぐに現れた。
「ゼノン様、どうなさいました?」
「ライデンは!?」
「え…?」
思いがけなく問いかけられた声に、レプリカは一瞬息を飲む。
「…昨夜は、御部屋の方にいらっしゃったのでは…今朝はわたくし共は御見かけしておりませんけれど…」
そう答えるレプリカの声に、ゼノンの表情は見る見る青ざめていく。
「…しまった…」
背筋を這う寒気に、その腕で自身を抱き締める。どう仕様もない喪失感に捕われつつも、判断力だけは損なわれなかった。
「…とにかく、ルークに連絡を。急いで!」
「は、はいっ」
廊下を走る足音を聞きながら、ゼノンは力の抜けていく身体を支えることが出来ず、部屋の入り口に崩れて倒れ込んでいた。
その頃既に局に顔を出していたルークは、その足でヴィニーを捜しに総務部の主任を訪れていた。
「あぁ、ルーク総参謀長。どうなされました?」
きびきびとした口調の主任を前に、ルークの表情にはいつもの華やかさは見当たらない。
「えっと…あんたのとこに、ヴィニーっているよね?」
そう、切り出す。
「ヴィニー…ですか?彼に、何か…」
「ちょっと、聞きたいことがあってね」
ルークの声に、主任は表情を曇らせる。
「…いないの?」
その表情に嫌な予感を感じ、ルークはそう問い返す。
「…実は…」
言葉を紡ぎ始めた彼は、まるで不祥事を語るかのような表情をしていた。
「…行方不明?」
話を聞き終わるや否や、そう声を上げたルーク。
彼の話によれば、数日前に突如姿を見せなくなったと言う。休暇届けは出ていないし、ヴィニーには今までそんな前例がなかっただけに、理由を聞く為に何度その家を訪ねても、ずっと留守だと言うのだ。そして、その行方はわからない。
「勤務態度も真面目だっただけに、心配はしているんですが…何せ、何処に行ってしまったのか、まるで見当が付かず、連絡も取れないので…」
困ったものです。
そう言葉を続けた彼に、ルークは思わず溜め息を吐き出す。
「…デジャヴ、だな…」
以前、ソウェルを訪ねて来た時とまるで同じ。ただ一つ違うのは…ソウェルは、辞職願を出して自ら幕を引いて姿を消したが、ヴィニーはまだ見つかる可能性がある、と言うこと。
もしも連絡が来たら知らせて貰うよう話をつけ、重い足を引き摺るように参謀部の自分の執務室に帰って来ると、通信が届いている。
発信元はゼノンの屋敷。何か新しいことがわかったか、更に具合が悪くなったかのどちらかだろうと思いながら、その回線を繋ぐ。
「御待たせ」
通信を切り替えると、壁の液晶に映ったのはゼノンの屋敷の使用魔、レプリカだった。
「あぁ、どうした?何かあった?」
そう声を続ける前に、堰を切ったようにレプリカが口を開く。
『今すぐいらしていただけますか?ゼノン様が急用だと…』
その奇妙な呼び出しに、ルークが眉を潜めたのは言うまでもないことである。
「わかった。直ぐに行くから」
そう言葉を返し、通信を切る。そして、慌ただしく踵を返していた。
レプリカがルークへの連絡を終えゼノンの寝室に戻って来ると、壁に凭れるように座り込んでいるゼノンの姿を見つけた。
「ゼノン様っ!」
慌てて駆けより、身体を支えてベッドへと移動する。どうやら意識はしっかりとしているようだったが、その碧の眼差しはとても不安そうな光を浮かべていた。
「…どうして、ライデンを通したの?あれだけ、誰も近寄るなって言ったのに…」
「…申し訳ありません。御留めはしたのですが……いえ、結局通してしまったのはわたくしですから、あの方の責任では…ですが、一体何が…」
レプリカには、ゼノンの不安げな表情の意味がまるでわからない。奇病のことも知らなかったのだから、無理もないのだが。
溜め息を一つ吐き出したゼノンは、眼差しを伏せ、ゆっくりと口を開いた。
「…最初に、きちんと言っておかなかった俺がいけなかった。御前たちだけなら、きっと俺の指示を守っていたんだろうけど、ライが来るのを忘れてた。とにかく、一通りのことは説明しておくよ」
ゼノンは言葉を選びながら、巷で流行している奇病のことを説明した。デーモンも自分と同じように熱を出して、その看病をしていたエースが行方不明になったこと。そして、ライデンもまた…同じ状況に陥ったのではないかと言うことを。
「これは、単なる風邪じゃないんだ。だから、誰も近寄らせないようにしたのに…」
しかし、それ以上言ったところで、ライデンが戻って来る訳でもない。勿論、レプリカを責めても仕方のないことはゼノンにもわかっていた。だから、言葉をそこで押し留めた。
一番の原因は、自分がライデンの来訪を忘れてしまっていたから。だから…こんなことになってしまったのだ、と。
その悲痛そうな表情に、レプリカは罪悪感を感じ得ずにはいられなかった。自分を一番信用して傍に置いてくれていると言うのに、よりによって主の一番大切な恋悪魔を、巻き込んでしまったのだから。
「…申し訳ありませんでした…わたくしが、至らなかったばかりに、ライデン様を…」
「…御免。御前を責めてるんじゃないよ。とにかく、今はルークが来てくれるのを待つしかないんだ…」
冷静に、自分自身の気持ちを宥めようとするゼノンの姿に、レプリカは返す言葉が見つからなかった。
暫くしてやって来たルークがゼノンの寝室に通されるなり、ルークは慌ただしく口を開いた。
「一体、どうしたって言う訳?急に呼び出すなんて…何かあったの?」
マスクを着け、そう問いかける声に、ゼノンは重い口を開く。
「…ライデンを…連れて行かれた」
「ちょっ…ライデンに看病させたってのっ!?」
思いがけない言葉に、ルークは目を剥いてゼノンに問いかける。
ゼノンは目を伏せ、小さく頭を振る。
「ライが…ダミアン様のところに来るって言うことを忘れていたんだ。魔界に来たら、当然ここにも来るってわかっていたのに…レプリカに、足止めを頼むのも忘れてた。俺が眠った後に来て、看病するって傍にいた、って。レプリカには、誰も近寄るなって指示はしておいたんだけど……俺が気付いたのは、夜中に酷く魘された時。起こしてくれたのがライデンだった。その時点で部屋から出すべきだったんだ。でも意識が朦朧としてて…伝える前に眠っちゃったみたいで…」
「…ライデンのやりそうなことだよ。そりゃ、あんたのことが心配だったんだろうけど…どうしてこう間の悪い…」
そうつぶやいてみて、ゼノンの表情が酷く苦しげなことに気が付く。
「熱下がってないんでしょ?顔色が良くない。休んでた方が良いよ。後は、俺がやるから」
そう声をかけても、ゼノンは首を横に振るだけだった。
「今眠ったら…きっとまた魘される。エースもライデンも見つかってないのに…」
「見つかってないからこそ、あんたが早く良くならなきゃ。休まないと頭は動かないよ。俺は今んとこ何ともないし、俺が動くのが一番早いんだから。レプリカには、誰も近寄らないように言っておくから。な?」
宥めるようなルークの声に、ゼノンは諦めたように小さく頷く。それを見届けると、その表情に小さな微笑みが返って来た。
「大丈夫だから。病魔は、余計な心配はしないで。俺に任せとけって」
「…わかった。有り難う。そうだ、もう一つ御願いしても良い?」
「何?」
問い返す声に、ベッドに潜り込んだゼノンが答える。
「レプリカも…慰めてやってくれる?ライがいなくなったこと、自分の責任だと思ってるから。俺も、最初にちょっと言い過ぎた。だから…」
「わかってるって。レプリカの責任でもないんだから。心配いらないよ」
じゃあ、な。
そう言葉を残し、ルークは踵を返した。その後ろ姿を見送ったゼノンは、考えた末にルークの指示通り、休息を取る為に目を閉じた。
ルークが寝室から出て来ると、待ち兼ねたようにレプリカが姿を見せた。
「あの…ゼノン様は…」
「あぁ、大丈夫。休むように言っておいたから。どちみち後は俺の仕事だし」
「…申し訳ありません。ルーク様の御仕事を増やしてしまったみたいで…」
ゼノンの言う通り、レプリカはかなり責任を感じているようだった。そんなレプリカに、ルークは小さく微笑むと、彼の髪を軽く掻き混ぜた。
「あんたの所為じゃないから、大丈夫。それに、やることは変わらないんだから、別に仕事が増えた訳でもない。だから、そんな顔すんなよ。いつまでもそんな顔してたら、ゼノンも心配して治る病気も治らないから」
宥めるようなルークの言葉に、レプリカは溜め息を一つ。
「でもわたくしは…知らぬこととは言いながら、ライデン様を巻き込んでしまって…」
「巻き込んだなんて思うから、責任を感じるんだよ。そうだな、まず考え方を変えて…ゼノンとライデンの恋路を邪魔しなかった、って考えるのはどう?」
「ルーク様…」
「モノは考えよう。な?」
その前向きさに、レプリカの表情も多少明るさを取り戻していた。
「じゃ、ゼノンのこと頼むな。付きっ切りは危ないから、時々様子見る程度で良いから」
「はい、わかりました」
「それじゃ、またな」
軽く手を振り、出て行くルークの背中に、レプリカは感謝の気持ちを込めて頭を下げていた。
軍事局へ戻る前にデーモンの屋敷に寄ったルークは、登庁の支度をしているデーモンを目の当りにした。
「ちょっと!何やってんのさっ!病魔の分際でっ!」
そう声を荒立てるルークを横目に、デーモンは手を休めなかった。
「熱は下がった。頭痛も収まった。食欲は…まだ完全には回復してはいないが、取り敢えず食事もした。文句はないだろう?」
「馬鹿言ってんじゃないよっ!文句は山程あるのっ!顔色が良くない。足下がふらついてる。何より病み上がり!無茶したらまたぶり返すんだからねっ!わかってんの!?」
「何を、ゼノンみたいなことを…それより、ゼノンはどうだ?少しは良くなったのか?寄って来たんだろう?」
その鋭い問いかけに、僅かにルークの顔色が変わった。それを見逃さなかったのは、流石に副大魔王である。
「…何かあったのか?」
慎重に問いかける声に、偽りは皆無だった。ルークは溜め息を零し、その言葉を発した。
「あんたたちの二の舞。ゼノン、昨夜寝込んだらしいよ。そんで、何も知らずに来たライデンが看病しちゃって…」
「行方がわからなくなった…?」
「御名答」
「…ったく…」
呆れたように溜め息を吐いたデーモンであったが、他悪魔事ではないのだ。そうやってエースもいなくなったのだから。
「ゼノンからは、レプリカたちには一応近付かないようにって指示は出てたみたい。でも、ライデンが戻って来るのを忘れてて、それに関して足止めをしなかったから、ってゼノンは言ってた。でも、通してしまったのは自分だから、ってレプリカが責任感じちゃって。ゼノンもそれを気にしてた。彼奴も言い過ぎた、ってさ」
「そうだったな。ライデンが戻って来るって言っていたんだよな。吾輩もうっかりしていたな。きっとゼノンもパニックになったんだろうな。吾輩だって最初はどうして良いのかわからなかった。だが、病床にいてあれこれ悩んだところで、どうすることも出来ないんだ。それより、早く治れば自分で動けるしな」
「…そう考えるとこ、流石デーさんだよね。ゼノンにも説教して来たところさ」
「煽ててるのか?馬鹿にしてるのか?」
「何言ってんの。尊敬してるに決まってるじゃない」
くすくすと笑うルーク。その表情は、いつものデーモンに戻ったと言う安堵感を明らかにしていた。
「…ホントに動いても大丈夫なの?」
もう一度、それを確認してみなくては。
「大丈夫だ。それより、目星は付いてるんだろうな?」
気丈な声は、デーモンにしてみれば当然の答えだった。
諦めたように一つ溜め息を吐き出したルークは、綺麗に整えられたベッドの上に腰を下ろす。
「まぁね。今朝、そいつを捜してたらレプリカから呼び出されたんだけど…どうも、ウチの局員らしい」
「軍事局の?」
「そう、総務の主任補佐、ヴィニー。天界から降りた、夢織人」
「…御前の部下じゃないか」
「部署が違うから、直属じゃないし…俺は逢ったこともない。でも正直言わせて貰えるなら…まぁ、信じたくはないけどね」
ルークの拘わりは、デーモンにも良くわかっていた。
堕天使だと言われていたのはルークも同じこと。けれど、、ルークにはルークなりのプライドがあった。天界から降りた自分を受け入れてくれた魔界に対しての恩がある以上、裏切り者とは言われたくないのだ。
「行く先の手がかりは?」
「さぁ…ヴィニーの上司から、行方がわからないって聞いたばっかり。でも、行方不明になった奴等が全員同じ場所に捕われているんだったら、匿う場所も必要な訳でしょ?だとすると、簡単にわかる所じゃないと思う」
足を組み、神経質そうに指先で唇をなぞるルーク。心当たりの場所を考えているのか…それとも、全く別の容疑者を挙げようとしているのかは、デーモンにもわからないところである。
「ゼノンが言うには、巻き込まれた一般悪魔だけでもざっと二~三十名はいるんだ。それに、エースとライデン…正常に考えたら、近場なら彼奴等の気でわかるだろう?それを感じないとすると、相当遠くか…若しくは…」
「結界の中、ね」
「異空間とも考えられるな。とにかく、直ぐに見つけられるところにはいないと言うことだろうな」
溜め息を一つ吐き出し、デーモンはマントを羽織る。登庁の準備が完了したところで、ルークは腰掛けていたベッドから立ち上がる。
「取り敢えず、ダミアン様への報告が先だな。情報局の方にも、何か新しい情報が入っているかも知れないしな」
「御共しましょ」
デーモンの隣に立ったルークは、大きく息を吐き出す。
そして両名揃って、枢密院への遅い登庁をしたのだった。
自分を呼ぶ声が、聞こえた。
「……デン…ほら、起きろよ」
「ん~…後五分…」
「駄目だ、ほら起きろ」
「ん~…後十分…」
「何で長くなるんだよ。馬鹿言ってないで起きろっ」
「あ~……ふああぁぁっ…良ぉく寝たぁ」
大きな欠伸を零してやっと目を開けたライデンは、自分の目の前で呆れたように溜め息を吐くエースを視界に入れた。
「…あれぇ?何で旦那がいる訳?ゼノンは?」
辺りを見回しながらそう零すライデンに、エースは再び溜め息を吐き出す。
「そんな呑気なこと言ってる場合じゃないみたいだぞ」
「…どう言うこと?それに、ここって……」
やっと、自分のおかれている状況に気が付き始めたようである。自分とエースの回りには、ざっと見ても数十名の魔族の姿。それも、枢密院や各局では見たこともない顔ばかりである。
「どうやら、何処かに閉じ込められたみたいだな。こいつ等は、一般悪魔らしい。みんな、気が付いたらここにいたって言ってる。何がどうなっているのやら…」
そう零したエース。腕を組み、顎を触る指先が、何やら落ち着かないようだ。それを見て悟ったライデンが、がさがさとポケットを漁り始める。
「……あった。ま、一服どう?」
すっと差し出したモノこそ、エースの指先を持て余す原因ともなっていた煙草。
「持ってたのか?気が利くじゃないか。一本貰うぞ」
「どうぞどうぞ。でもさぁ、あんたが煙草も持ってないってことは、一体どう言う状況だったのさ」
「どう言うって…デーモンの部屋にいただけだ。ただ単に、上着に入れっぱなしだったんだ」
その言葉の通り。エースは軍服の上着を脱いだ状態。どう考えても、執務中ではない。
「なぁるほどね。で、何してた訳?」
「何って…御前なぁ、何考えてんだよ。俺は別に…デーモンの看病してただけだぞ?」
「看病?」
問い返す声に、エースは紫煙を燻らせる。
「あぁ、風邪ひいたらしくてな。熱があったから…どうした?」
怪訝そうに眉を潜めたライデンの表情に、エースはその視線を向ける。
「いや…俺も、ゼノンの看病してた…熱が酷くて、魘されてたから…ゼノンは帰れって言ったんだけど、看病するって居座って…うとうとして、気が付いたらここに…」
「…御前も、か」
「御前もって…まさか、彼等全員…?」
「御名答」
その答えに、ライデンは呆然として回りを見渡す。確かに、正常に服を着ているのはのは自分とエースぐらいで、殆どの者は夜着のようだ。身近な者の看病なら、それで差し支えはない。
「ちょっと、どう言うこと?病魔の看病してた奴ばっかり、ここに捕われてるってこと?」
「どうやらな。おまけにここが何処なのかもわからなければ、何の目的があって一般悪魔まで巻き込んだのかもわからない。"魔界防衛軍"のこともあるからな。俺たちだけなら狙われても不思議はない。だが、殆どが一般悪魔だろう?こう言ったら何だが…奴等を捕えたところで、魔界には何の影響もない」
「全くの暗闇ってことか…」
見回す空間は、そこそこ広い。特別に照明がある訳でもないが、辺りはぼんやりと明るい。僅かに空気の流れもあるようだ。
「どう思う?」
問いかけるエースの声に、ライデンは小さく唸る。
「うーん…確定は出来ないけど…誰かが故意的に造った空間じゃないかと思う。空気の流れがあるってことは、何処かと繋がってってことだよね?全くの異空間じゃない。でもこれって…凄く似てると思わない?」
「…意識空間に、だろう?」
「何だ、気付いてたの?」
「当然だろう?何度も見てるからな」
最後の紫煙を吐き出し、エースは煙草の火を消す。そして、溜め息を一つ。
「但し、この意識を持つ奴は、相当な思い入れがある。だから、まるで結界の中にいるみたいだ。俺はまだそんなに影響が出てる訳じゃないが…魔力もそんなに強くない一般悪魔じゃ、長時間いれば辛いはずだ。みんなそろそろ限界に近いはず…」
確かにエースの言う通り、この二名を除いてはみんな顔色も悪い。一ヶ所に座り込んだまま、動こうともしない。否、動く気力もなくなって来ていると言う方が正しいだろう。
「残された奴等が、気付いてくれれば良いんだが…」
「…難しいところだね。閉じ込められたってことがわかっていても、この場所を見つけるのは…多分、造った張本魔を捜さない限り、無理だと思うよ」
「無理は承知さ。ま、俺たちはここで待つしかないんだろうけどな」
溜め息を吐き出し、エースは腰を据える覚悟を決めたようだ。それに習い、ライデンもその向かいに腰を降ろす。
「…彼等は、後どれくらい持ちそうかな…」
そう尋ねる声は、一般悪魔の安否を気遣っている。姿や性格は変わらなくても、やはりそんな姿は、一国の王だった。
「持って…あと一日、ってところだろうな。現時点で既に数日間閉じ込められてる奴もいるはずだからな」
この空間の中では、最早手の施しようがないのが現実である。見捨てる訳ではないが、何か手を打たない限り、否応なしに限界は来るのだ。
「…早く、見付けてくれると良いんだけどね…」
切にそう願うような声を零したライデン。エースも、その声には頷いていた。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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