聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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ENCOUNTER
俺があの惑星と知り合ったのは、もうずっと前のこと。確か…初めて惑星探査の任務を受けた時のことだ。
"Big Mam"と、その惑星は呼ばれていた。
士官学校を卒業して直ぐ、情報局に入局した俺は、特攻隊第二部小隊へと配属された。
研修を経て、勲章も何もない最下位の俺が初めて受けた任務が、惑星の探査だった。
その小惑星は、Sunken rockと言う地区の一角にあった。
中型、大型の生物の生殖を許さず、小型生物、微生物の類の、その僅かな生殖により助けられる植物だけが、その惑星には生きるモノだった。そしてそれは、とても儚く、とても美しく思えた。
「それじゃエース、後は任せたぞ」
俺と一緒に来ていたはずの上司は、別の任務との掛け持ちの所為もあり、着いた早々であるにも関わらず、さっさと惑星を後にした。
取り立てて問題のない惑星で、一体何を調べろと言うのだろうか…。信頼を受けていると言うだけなら、問題はないはずだが…物足りないのは確かだ。
特攻隊第二部小隊…通称特攻二部の隊長って悪魔は、どうやらかなりいい加減に物事を考える質らしい。
「…やれやれ」
出身地の血統では、俺の方が勝っているのに。あんないい加減な上司の下にいるのでは、出世の目処も付きそうにないじゃないか。
小さな溜め息を吐き出し、仕方なく無意味な惑星の探査に乗り出した時。
《…貴方ハ、誰?》
不意に、他者の意識が流れ込んで来た。
「…?」
辺りを見回しても、誰もいない。
と、言うことは…考えられるのは、一つしかなかった。
「…俺は、エース。地獄中央情報局の、特攻隊第二部小隊に所属している。ここへは、惑星探査の名目で踏み込んだが…特に何の問題もないようだから、荒らすつもりもない。直ぐに立ち退くから心配しなくていい。ところで…あなたは?」
答えた声に、返事が返って来た。
《ワタシハ、"Big Mam"…コノ惑星ノ自我デス》
やっぱり。予想通りだった。
「名前は?」
問いかけた声に、僅かな沈黙があった。
《…名前?》
「そう、あなたの名前。聞かせてくれないか?」
すると、その声のトーンが、急に変わった。
《…今マデ、誰モココヘ来タコトガナカッタカラ…誰モ、ワタシノ名前ヲ尋ネタコトハナカッタノ。ダカラ…》
「…名前が、ないのか?」
《…ソウ》
「それじゃ…呼べないもんな。じゃあ……」
俺は腕を組み、ひとしきり思案に暮れた。
そして。
「エレナ、ってのはどうだろう?」
《エレナ…?》
「そう。あなたの名前。気に入らない?」
心配げに聞き返した俺の声に、小さな笑い声が聞こえた。
《イイエ。トテモ気ニ入ッタワ。有リ難ウ、エース》
「良かった」
思わず、俺も笑みを零した。
それから俺は、その惑星をエレナと呼び、色々な話を聞いたり、話したりする関係になっていった。
エレナがまだ若い彼女だと知ったのは、何度目かに訪れた時だった。
でも、とても穏やかで暖かくて、確かに"Big Mam"の名が相応しかった。その大きさに、まだ大人になり切れていない俺が魅かれたのは、ある意味当然だったのかも知れない。
俺は、休暇を利用して、度々エレナを訪れた。そこで零す仕事上の愚痴も、エレナはいつも受け止めてくれていた。
そして、この日もそうなるはずだった。少なくとも、俺はそのつもりだった。
「…エレナ?」
その日は、いつものようなエレナの波動が返って来ない。即ち、声も聞こえない。
「どうした?具合でも悪いのか…?」
地に手を当て、尋ねてみる。だが、答えは相変わらず返って来ない。
「エレナ」
幾度目かの呼びかけで、エレナはやっと波動を合わせてくれた。
《エースハ…魔界ニ恋悪魔ハイナイノ?》
「…何で?」
エレナの波動は、いつになく弱い。それが、酷く俺を混乱させていた。
《貴方ハ、休暇ノ度ニココヘ来テクレルケレド…ソレハ、何故?》
「何故って…いつも言ってるじゃないか。ここが一番、落ち着くからだよ。それでは不服?」
今日に限ってそんなことを問いかけるエレナの波動を、どう受け止めていいのかわからない。ただ、正直に気持ちを伝えているつもりだった。
小さく溜め息を吐き出し、言葉を続けた。
「…魔界に、恋悪魔も、好きな悪魔もいない。それが聞きたかったのか?」
《……》
「エレナを一番、愛している。そう聞きたかったの?言わなくても、わかってくれていると思っていたけど」
エレナから、答えは返って来ない。それが尚更、不安だった。
正直、エレナを除いて、誰も好きになったことはない。勿論、口説いたこともない。
その理由はただ一つ。
俺は、まだ自分自身を護る術を知らない。心の中まで誰かに踏み込まれたら、目茶苦茶に踏み荒らされてしまいそうで。それが俺の弱さだと、わかっていたから。
だが…エレナに関しては、まだ別だった。
俺にとってエレナは、初恋と、言えるのかも知れなかった。
「エレナ、姿を見せて」
それは、俺が初めてした要求だった。
僅かな躊躇いの波動の後、ゆっくりと俺の前へと映し出されたヴィジョン。
褐色の肌。薄い飴色の、緩いウエーブのかかった長い髪と、その隙間から除く、妖魔と同じ長い耳。
それはとても美しくて…俺は、息を飲んだ。
知らなかった。エレナがこんなに、綺麗だったなんて。
「…エレナ…」
呼びかけた声に、エレナは伏せていた眼差しを上げた。
俺と同じ、琥珀色の眼差し。透き通るくらい美しくて…彼女が、この惑星そのものなのだとう言うことを、改めて思い知らされた。
「…愛してるよ、エレナ」
《エース…》
戸惑い気味のエレナに、俺は微笑んでみせる。
多分、エレナにも初めての体験だったのだろう。僅かに赤みのさした頬、潤んだ瞳が、とても初々しかった。
「これから先も、俺は裏切らない。エレナへの想いは、変わらないよ。それが初恋ってモンだろ?」
《…ソウネ。ワタシモズット…愛シテイルワ、エース》
その言葉に、俺は微笑んだ。
初めて、口付けを交わす。ヴィジョンとは思えない程、それは暖かく、柔らかく…そして、現実的だった。
俺とエレナに交わされたその約束は、これから先も、ずっと守られるべきモノでありたいと、俺は切に願った。
エレナの他に、誰にも心を奪われないと…そう、思っていたのだった。
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HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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