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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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FINAL
こちらは、以前のHPで2000年11月13日にUPしたものです

拍手[1回]


◇◆◇

 夢を、見た。
 懐かしい夢。それは、あの…ファイナルミサの夢、だった。

◇◆◇

「…どうしたの?」
 ぼんやりと窓の外を眺めていると、背後からそう声をかけられた。
 聞き慣れた声に視線を向けてみれば、かつての仲魔の媒体である彼がいる。
「あぁ…ちょっとな」
 小さく笑いを零し、視線を落とす。
「この前の興奮の余韻があったかな。ファイナルの夢を見たんだ」
「…そう」
 くすっと、小さな笑いが返って来た。
 隣に身を置いた彼は、様子を伺うようにこちらをじっと見ている。
「良い夢だと思えた?」
 その声も口調も、聞き慣れた仲魔と同じであるが、その眼差しの色が違う。けれど、その柔らかい眼差しは同じだ。
「良い夢だったと…思う。まだ一年も経ってないのにな。物凄く懐かしい気がしたんだ」
 そう口を開くと、相手も穏やかな笑いを零しながら、言葉を続けた。
「ここに残っているのは、デーモンだけだもんね。前にライデンが戻って来た時もね、懐かしがってたって、湯沢君が言ってたよ。やっぱり、微妙に時間の流れが違うのかな…?」
「吾輩はこっちに慣れたからな、そんなに違和感はないんだが…やはり、魔界に戻れば向こうには向こうの時間の流れがあるからな。そう思うのも無理はない。ゼノンは何も言って来ないのか?」
 ヒトのことばかり聞いている彼に、ふと、問いかけてみる。
 誰よりも先に、媒体が人間としての一歩を歩み始めた彼を、ゼノンはどう思っているのだろうと思って。それを、何か聞いたのだろうかと思って。
「うん、何も言って来ないね。まぁ、ゼノンだからね。心配はしてないと思うよ。それにきっと、向こうが忙しいんじゃないかな。今までの分、頑張って働いてるんじゃない?連絡がないことが、御互い無事でいる証拠だしね」
 あっけらかんとそう言って退ける彼に、思わず笑いが込み上げて来た。
「まぁ、ゼノンらしいと言うか、不精と言うか…」
「デーモンだって、魔界へ戻れば会えるでしょ?俺に聞くより、早いんじゃない?」
 その言葉に、ドキッとして一瞬息を飲む。笑いも、固まったと…自分でもわかった。
「まだ…当分、戻るつもりはないんだ」
 大きく息を吐き出し、そう言葉を零した。
 視線を、窓の外へと向ける。
 吹き抜ける風も、青い空も、緑の木々も。その全てが…まるで自分を引き留めているようで。それが酷く…心を苛む。
「今、吾輩がここを離れたら…後悔しか残らないだろう。吾輩は、この地に約束したんだ。最後まで見届けてやると。例え、聖飢魔Ⅱというカタチでの活動を全うしたとしても、残れる間はここにいてやると。だから…」
 その想いは、勿論エースにも仲魔たちにも伝えてある。だからこそ、吾輩がぶれる訳にはいかない。
 けれど……
「…エースから、連絡は?」
「…いや」
「…もしかして、拗ねてるの?エースから、連絡がないこと…」
「………」
 一瞬…返事に困った…。
「…何を、馬鹿な。拗ねてる訳、ないだろうが。エースとは、ちゃんと約束したんだ。吾輩が魔界へ帰るまで、待っていてくれと…」
「素直じゃないね」
「…石川…」
 ズバリと、確信を突かれた気がした。
「俺だから、こうして冷静に話せるんだよ?まず、それを理解してね。彼奴等に聞かれたら、それこそ盛大に馬鹿にされるんだからね?」
 そう指を指す先には、湯沢と大橋が談笑している。まぁ…石川の言うことも、わからなくはないが…。
「連絡、デーモンからしても良いんじゃない?」
 くすっと、笑いが零れた。
「ファイナルの夢…見たって言ったよね。それって本当はエースの夢、でしょう?」
「……」
 確かに…それは図星、だった。
 夢の中で…笑っていたエース。ただ、その笑顔は…とても、楽しんで零れるものではなかった。
 だが実際、あの時のエースがどんな顔をしていたのか…実のところ、吾輩は良く覚えていなかった。エースの顔を…見ていられなかった、と言うのが正しいかも知れない。
 笑っていたのだろうか…?
 泣くはずはない。幾ら、あの日を境に、我々が暫し離れ離れになるとしても。
 だとすれば、きっと笑っていたのだろう。大勢の信者を前に、布石を撒き終えた達成感と、任務から解放される安堵感から。
 そして…新たに道を歩き出す、媒体の未来の為に。
 小さな溜め息が、吾輩の口から零れていた。
「素直じゃない…か。そうかも知れないな」
 思わず、そう本音を零したのは、多分…そこにいたのがゼノンではなく、石川だったから、かも知れない。
 悪魔としての同胞ではなく、昔馴染みとは言え…一歩離れた人間としての仲間、だから。
「エースに会ってしまったら…吾輩の決意が崩れるような気がするんだ。この地球の行く末を見届けてやると約束したのに、エースに会ってしまったら…声を聞いてしまったら、それを蔑ろにしてでも、魔界へ戻ってしまうような気がして…な。多分、エースもそれをわかっているから…連絡はして来ないんだと思う」
 そう零した言葉に、小さな溜め息が零れた。
「デーモンに、蔑ろに出来る訳ないでしょう?誰よりもこの地を、愛しているのはわかってるよ。全てを捨てて魔界へ帰れるのなら、一名だけ残ろうだなんて思わないでしょう?エースは魔界に戻るんだもの」
 流石に、長年付き合ってきただけあって、石川は吾輩のことをちゃんとわかっているようだった。だからこそ…こうやって、指摘してくれるのかも知れない。
 吾輩が、見ないように…気付かないようにと、隠している自分自身の本心を。
 思わず、笑いが込み上げて来た。
「御前は現実的だな」
「そりゃ。限りある生命を持った人間ですもの。もたもたしてたら、手遅れになっちゃうからね」
「悪魔だって、生命には限りがあるさ」
「でも、俺たちよりもずっと長生きじゃない?」
「まぁ…な」
 確かに。否定は出来ないな。石川よりも、軽く十万年、長生きしているんだから。
「まぁ、無理にとは言わないよ。デーモンにも、自尊心があるしね。でもたまには、少し型外れなことしても良いんじゃない?」
 くすくすと笑いながら、石川は呼ばれるままに音合わせに向かって行った。
 その場に取り残された吾輩は…大きな溜め息を一つ吐き出すと、椅子に座ったまま、力を抜いた。
 少し、妥協してみよう。
 ゆっくりと目を閉じ、意識波を飛ばしてみる。
 やがて…それに答える"声"が、聞こえた。

◇◆◇

「あれ?閣下、寝てるのかなぁ?」
 ふと、そんな声が耳に入って、ふと視線を向けたのは湯沢と大橋。
「…もう直、リハーサルなんだけどなぁ…」
 困ったように溜め息を吐き出し、遠くへと歩いて行くスタッフを後目に、湯沢と大橋はデーモンへと視線を向けている。
「…寝てる?惚けたこと言ってんじゃん。こんなとこで閣下が寝るはずないのにね」
 くすっと、大橋が笑った。
「まぁね。でもそう見えてもしょうがないよ。長年一緒にいたスタッフならともかく、関わりの薄いスタッフじゃ、無理もないって。俺たちだって、媒体だったからわかるようなものの…」
 フォローしてやるような湯沢の言葉に、大橋はもう一つ笑いを零す。そしてスタッフに呼ばれると、軽く手を上げて湯沢に挨拶して、自分の音合わせへと向かって行く。
 それを見送った湯沢は、起こそうかどうしようかと迷っているスタッフに声をかけた。
「あ、もうちょっとそっとしといてあげてよ」
「ですが…」
「ね、御願い。折角久し振りなんだから」
「…は?」
「まぁ、良いじゃないの。どうせ、まだもう少し時間あるんだしさ。俺が責任持って、ちゃんと間に合うように呼び戻すから」
「はぁ…まぁ、雷電さんがそう言うのなら…」
 溜め息を吐きながら、他の打ち合わせに向かったスタッフの背中に手を合わせて謝りつつ、再びその視線はデーモンへと向かう。
 と、その隣に現れたのは、音合わせを終えた石川。
「デーモン、適応力がついたじゃない?」
「ホント。幸せそうな顔して」
 くすくすと笑いながら、湯沢もそう言葉を零す。
 デーモンが寝ている訳ではないことは、媒体であった三名にはわかっていた。
 あれは、寝ているのではなく…魔界にいるエースと、意識波で話をしているのだと。
「遠いよね。人間界と魔界って」
 思わずつぶやいた湯沢の声に、石川は小さく微笑んだ。
「そうだよね。でも、それを選んだのはデーモンとエースだもの。俺たち媒体には、何を言う権利もないし、見届けてやるのが精一杯」
 悪魔としての仲魔ならば、何か少しぐらい御節介も焼けたかも知れない。だが、既に主たる悪魔から離れてしまった今となっては、自分の主たる悪魔を呼び出すことも手間がかかる。御節介を焼くにもたかが知れているのだ。
 最終的には、見守ることしか出来ない。それがわかっているからこそ…せめて今は、そっとしておいてあげたいのだ。
「さてさて、それじゃ後で結果報告、聞かないとね」
 くすくすと笑いながら、デーモンを見守る二名。
 それはそれで、倖せそうな顔だった。

◇◆◇

 その後、ステージに出たデーモンが、頗る上機嫌だったことは言うまでもない。
 それはそれで、彼らが倖せならそれで良いのだから。
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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