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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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GREEN FIELD
こちらは、以前のHPで2001年7月15日にUPしたものです

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◇◆◇

 全ての者が眠りに着いているはずの時間であるにも関わらず、俺は不意に眠りから解放されてしまった。
「…ったくぅ…まだ、四時前じゃんかよぉ…」
 枕元の目覚ましを手に取り、それを抱えたまま布団の中に潜り込む。でも、一度妨げられた眠りは、そう簡単には戻って来ないモノらしい。全く、うっとおしいったらありゃしないっ!
 結局、なかなか寝付かれずに、俺は布団の中で目を開けた。時計は、確実に秒を刻んでいる。でも、何故か目覚ましは鳴らないんだな、これが。
「壊れたんかなぁ、これ…」
 きちんとセットしてるなずなのに、最近は全く鳴らないんだよなぁ。おかげで、時間に敏感になっちまった。確か昨日は五時。その前は、四時半。
 他の奴等だってそんなに早くは起きないんだから、俺がそんなに早く目覚めなければならない訳でもない。仕事も特別に早い時間じゃないし。目覚ましをかけてるのは、それなりの理由がある訳で…
 その理由は、何かって?それは…
「仕方ない。目が覚めちまったなら、起きるか」
 布団から抜け出して、身体を起こす。
 放り出してあるシャツを羽織り、パジャマのズボンからハーフパンツに履き替える。んでもって、スリッパを引っ掛けて部屋を出て行く。
 目的の場所は、キッチン。別に、つまみ食いする訳じゃないぞ、言っとくけど。
「…おっかしいなぁ…確か、昨日の朝はまだあったのにぃ~…」
 冷蔵庫の中を覗き込んでは見たものの、目的のモノは見当らない。くそっ…誰か飲みやがったな。折角、俺が取って置いたのに…
 ぶつぶつと文句をつぶやいていた、その時。
「…探しモノの牛乳なら、夕べのシチューに使ったが?」
「何だ、そっか…って…あ?」
 思わず、納得してから気が付いたんだけど…俺ってニブイのかなぁ。
 振り返ると、ガウンを羽織ったデーさん。
 全く、悪魔が悪いっ!にやにやしながらドアに寄りかかって、俺を見てやんの。
「言って置くが、捨て猫は飼えんぞ」
「…猫じゃないって、言ったら?」
「犬も、同等だ」
「…ケチっ」
「ケチじゃないっ」
 俺は、思わずデーさんを睨み付ける。
「どうしてっ!」
 喰ってかかる俺を軽くあしらい、デーさんってば、呑気にコーヒーなんてモノを淹れ始めるんだから。
「デーさんっ!」
「しーっ…まだみんな寝てるんだぞ。少し、静かにしろ」
「…だって…」
 暫しの沈黙。ヤカンから湯気が出始める頃、不意にデーさんが口を開いた。
「ここのところ、毎日朝も早よから牛乳持ってどっかに行ってると思えば…で、何処で飼ってるんだ?」
「…何を?」
「だから、その捨て猫か捨て犬の話だ」
 なぁんだ。気になってるんじゃん。でも…
「あのさぁ…犬でも猫でもないんだ。ホントのところ」
「…は?」
 思わず、間抜けな声を上げたデーさん。すっかり御湯が煮え立ってるってのに、忘れてるよ。俺はデーさんの隣に立ってコンロの火を消した。
「…何を、飼ってるんだ?」
 怪訝そうに問いかける声に、俺は大きく息を吐き出す。
「わかんない」
「…は?」
「だから、わかんないんだってば」
 正直、まだ何も飼ってないんだよな、これが。それを伝えると、デーさんも奇妙な顔をしていた。
「じゃあ、何で御前は毎朝牛乳持って出かけてたんだ?」
 そう、問いかけられた…まぁ、当然か。
「泣き声が…聞こえるんだよね。明け方近くになるとさ。仔猫だか仔犬だかみたいな声。その声を聞く度に切なくなるような泣き声。だから、目覚ましセットして、牛乳持って、その正体を確かめようと試みたんだけど…見つからない」
「何もいないのか?」
「そう。仔猫や仔犬がいた形跡すらない。だから、わかんないんだ」
 俺は、大きな溜め息を一つ。
 別に、ペットが飼いたくてうろうろしてた訳じゃない。どうせ捨て猫や捨て犬なら、持って帰って来たところで、エースの愚痴を聞くだけだしね。ペットなんて、人間のエゴだって。まぁ、俺たちは人間じゃないんだけどね。
 とにかく…泣き声の正体がわからないと、俺もゆっくり眠れない訳だし…変に気になるじゃない。
 コーヒーを淹れ終えたデーさんは、俺のカップにもコーヒーを注ぎ、テーブルの上に置いて椅子に腰を降ろした。そして、開いた口から零れた言葉。
「…そう言えば、ほら…この屋敷を出て右に行って、坂の上の十字路を左に行った、突き当たりの小さな森、あっただろ?」
「へ?」
 何なんだ、急に…まぁ、思い当たる森は、確かにあるけど。
「あぁ、団地もどきのマンションをL字に囲ったあれ?でもそれがどうしたっての?」
 問い返す声に、デーさんはゆっくりと俺に視線を合わせた。
「何だ、知らないのか?あの森、もうないんだぞ?」
「…え?」
 知らなかった。つい一週間くらい前にチャリンコで通った時は、確かにあったんだけど…その森が、ないって?
「今度、住宅地になるそうだ。看板が出てた。あれだけ沢山あった木も、全部切り倒された」
「……」
「あれだけの大きさの木を今度育てるとなると、何十年かかるかわからないな」
 そう零したデーさんの声が、何処か遠くで聞こえているみたいで。
 最近、森林伐採の話題なんて、ほとんど聞かなくなったけど…でも、確実に森は消えている。今俺たちの話題に出た森の隣にあった空き地も、何年か前にマンションが建ったばかりだった。
 もしかしたら、俺が聞いた泣き声は……
 俺の表情でそれを察したのか、デーさんはコーヒーを一口飲んで、言葉を続けた。
「御前の次期雷帝としての実力が既に長けているのなら…聞こえるんじゃないかと思ってな。自然を司る雷帝だ。吾輩たちよりも敏感だろう?」
 くすくすと笑う声。でも、その笑いは心から楽しんでいる笑いじゃない。何処か、冷めている。それはわかり切っているけれど。
「御前の目で確かめて来るといい。泣き声の正体をな」
 デーさんはそれだけ言うと、自分の分のカップを片付けて部屋へと戻って行った。
 当然俺は…コーヒーを飲み干すと、靴を引っかけて夜が明けたばかりの空の下へ飛び出していた。

◇◆◇

 目的の森は、屋敷を出て右の坂を上れば、突き当たりだから見えるはずだった。だが確かに…森は、目の前から消えていたのだ。
 跡形もなく消えてしまった木々。そこに取り残されたマンションは、酷く滑稽に見えて仕方がない。
「…何で、こんな…」
 都心への通勤圏が徐々に広がって来ていることはわかっていた。だから郊外に程近いこの地域にだって、マンションや一戸建てが立つのも、考えてみれば不思議なことじゃない。
 でもだからって、余りに突然過ぎる。
 夜が明けたばかりで、人影もない。
 俺は、切り開かれたその土地へ、足を踏み入れようと近づいた。その途端聞こえたのは、あの泣き声。俺が一週間近くも探していた、あの声。
「…泣いてたのは…あんたたちだったの…」
 小さな吐息を零し、俺は切り倒され、そのまま置き去りにされていた木々に歩み寄った。
 幹の太さはなかなかのモノで、デーさんの言う通り、これだけの木をもう一度育てるとなれば、何十年かかるかわかったモンじゃない。
「…俺たちがここに来たばっかりの時に…あんたたちは、あんなに元気だったのにな」
 聖飢魔Ⅱの仕事が忙しくなって、俺たち構成員が殆どを同じ屋敷で暮らすようになったばかりの頃、この森はまだ木々が生い茂っていた。道なんて当然なく、街頭もないような状態だったから、小さな森とは言えそれは圧倒されたモノだった。
 なのに…今になって、こんな姿を見せられるなんて。
「あんたたちが悪い訳じゃないよ。人間たちよりも先にここにいたのは、あんたたちなんだから。後から来た奴等が勝手にここを侵して…あんたたちを傷付けて…壊して行くんだな。それが、ヒトが生きて行く為に必要なことだなんて、豪語しながら…ヒトは、自分たちの生命を縮めて行くんだ。無意識のうちにね。あんたたちが必要だったと気付く時には…もう、この惑星では、生きられないかも知れないのに…」
 剥き出しになった土の上にしゃがみ込み、木の幹に手を触れながら、俺はそう零していた。
 それが自然の摂理だなんて、誰が決めたんだろう。
 植物がなければ生きていけない種族のクセに。
「時間を…戻すことが出来れば、あんたたちを救えたのかな…それが…正しいことなのかな…」
 例え、今彼等を救えたとしても。人間の根本を変えない限り、同じことが繰り返されるのは目に見えてわかっている。
 それが、この世にのさばる、知的生物の摂理ならば。
「…御免な。俺、あんたたちの為に、何もしてやれない。ただ、声を聞きつけて、こうして一時だけでも嘆きを癒してやることしか出来ない。それが、せめてものことだなんて…」
 悔しいと言えば、きっとその一言で終わってしまう。後悔しても、何も始まらないことはわかり切っているんだから。だからデーさんも…余計な手出しはしないんだろう。
 この惑星を、誰よりも愛しているのに。
「せめて…俺たちは、ここにいるから。あんたたちの最期を、見守ってやるから…だから…もう、泣くなよ」
 せめて、餓え、渇き切った大地に、潤いを。
 せめて、涙も涸れた木々たちに、潤いを。
 俺は、空に向けて両手を掲げる。俺に出来る術がそれくらいならば。
 晴れ渡っていた空に鈍色の雲が広がり、その鉛色の空から生命の雫がぽつりぽつりと落ち始めて来た。小さな雫は一丸となって降り注ぎ、途端の大雨となった。
「…最期の渇きを、癒してあげるからね」
 俺は雨に濡れながら、暫く彼等を見つめていた。
 嘆く声は、次第に小さくなり…聞こえなくなった頃、俺はやっと屋敷へと足を向けた。


「どうしたの?ずぶ濡れじゃないっ」
 どのくらい雨に濡れてたのかはわからないけど、どうやら随分時間は経っていたらしい。
 玄関のドアを潜った途端、起きたばかりでちょうど部屋から出て来たゼノンに目撃されてしまった訳だ。
「いや、ちょっと…さ、散歩。うん。途中で降られちゃって」
「…こんな朝早くから?この雨の中…?」
「…そう…」
 なるべく、平生に、平生に…とは思ってたんだけど、多分、ゼノンのことだから薄々感付いてはいるんだろうな…溜め息を一つ吐き出すと、バスルームからバスタオルを持って来て、俺の頭にぱさっと被せた。
「また無茶して…直ぐ風邪ひくんだから、少しは加減したら?」
「…御免」
「とにかく、早く暖まらないと。ちゃんと服着替えてね。俺はコーヒー淹れるから」
「ん…わかった」
 相変わらず、子供扱いと言うか、何と言うか…まぁ、長い間そうして来たんだから、仕方ないか。
 言われた通りに服を着替え、言われる前にちゃんと頭も乾かして、俺はリビングのソファーでぼんやりと雨の音を聞いていた。
 泣き声は、聞こえない。聞こえるのは、裏庭に接する木立ちの、歓喜の声。
 小さな溜め息を吐き出した俺の背後から、デーさんの声が届いた。
「御帰り。まぁ、見事な雨になったな」
「…まぁ、ね」
 素知らぬ顔、素知らぬ顔……まぁ、デーさんならきっとわかっているとは思うけどね。
「見つかったか?捜し物」
 俺の向かいに腰を降ろし、テーブルの上の新聞に手を伸ばす。
「大当たり、ってとこかな。まぁ、木ぃ持って帰って来る訳にゃいかないからね」
「で、この大雨か。ま、御前らしいな」
「そりゃどうも…」
 馬鹿にされてるのか、からかわれてるのか…考えモノだけどね。とにかく、俺に出来ることって言ったら、これくらいだったんだもん。
 暫くしてコーヒーを持って来たゼノンが、窓の外に目をやりながら小さくつぶやいた。
「それにしても、凄い雨だね。そう言えば…今日って、降水確率0%だったよね…?いい洗濯日和だって、昨日からルークが気合い入れてたのに」
「…へ?」
「それに、エースも出かけるって言ってたよ?デートらしいから、雨なんか降ってたら、機嫌が悪くなるかも…」
 ちょっとぉっ!何だよ、それはっ!
「…知ってたんでしょ…」
 思わずデーさんを睨み付けると、デーさんってば、くすくすと笑ってるんだからっ!
 思わず頬を膨らますと、俺の前にコーヒーを置いたゼノンはくすっと小さな笑いを零した。
「でも、たまにはこんな雨もいいね。俺は好きだけどね」
 天気予報なんて、アテにならない時もあるよ。異常気象だしね。
 そう言い残し、キッチンに消えていく背中。
 相変わらず、のんびりしてるんだから。でも、その呑気なところが、また安心出来るところでもあるんだけどね。
 途端、鼻がむずむず…
「……っくじゅんっ!」
「風邪ひいたんじゃないのか?」
 無茶するからだ。
 小さくそう零すデーさんの声に、俺は小さく笑ってみせる。
「大丈夫、大丈夫。これぐらいなら直ぐに良くなるって」
「安静第一。今日はゆっくりしてろ」
 さ、吾輩は仕事だ。
 そう言いながら、デーさんは自分の部屋へと向かって行く。
 雨の音は、まだ続いている。
 その音の中、俺は…その場から動けない。
 何だか、無性に哀しくて…切なくて。
「…御免な…」
 ぽつりとつぶやいた声。それが聞こえたのか、リビングにやって来たゼノンが、俺の向かいへと腰を下ろした。
「…御前の所為じゃないよ。むしろ、気が付いてくれたことに対して、喜んでるんじゃない?」
「…だといいんだけどね…」
 少しでも、心が癒される。その言葉が、酷く俺を安心させた。
 その日の雨は…結局、一日中降り続いた。
 エースとルークが、嫌ぁ~な顔をしていたのは言うまでもない……御免よぉ~っ…

◇◆◇

 夢に見たのは、輝く緑の森。緑の草地。
 今となっては、それは夢でしかないけれど…それでも、今は精一杯生きるしかない。
 いつかきっと…報いはあるから。
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筋金入りのオジコンです…(^^;
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