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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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Mixture 後編
こちらは、以前のHPで2002年10月19日にUPしたものです

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◇◆◇

 エリオスを追い出し、俺はやっと一息吐いた。
「さ、これで邪魔者はいなくなった」
 そう言葉を吐き出して"ちびすけ"を振り返ると、奴はほうっと感嘆の溜め息を吐き出していた。
「凄いね。あのエリオスを追い返すなんて」
「感心、してる場合じゃないぞ。御前だって、それぐらいのことは出来るんだからな」
「…吾輩にも?」
「当然だろう?」
 本来デーモンの言魂師としての能力は、魔界一なんだからな。
 それより…と、俺は再び紫煙を燻らせながら、"ちびすけ"に視線を向けた。
「何を、言おうとしたんだ?」
 改めてそれを問うと、"ちびすけ"はすっと表情を固くして、その眼差しを伏せた。そしてゆっくりと吐き出された言葉。
「吾輩は…この一族に頼って生きたいとは思わない。でも今のままでは、当然そうなってしまう。ホントは…嫌、なんだ。一族のやり方に流されるのは……」
 どう聞いても、やはり子供の言葉とは思えなかった。だが、意識の水準がそれだけ高かったんだろう。考えてみれば、皇太子であるダミアン様もそうだったな。年相応の答えなど、返したことがなかったからな。
「だったら…御前が、勇気を出すことだろう?」
「…でも…」
 戸惑った表情を浮かべた"ちびすけ"。
「一族から逃れるのではなく、長の考えを改めたいと思うなら、誰に頼るよりも、御前が先頭切って行動するべきだろう?御前なら、大丈夫だ。俺が保障してやる」
「…ホントに?」
「あぁ」
 くしゃっと髪を掻き混ぜると、僅かに綻んだ"ちびすけ"の表情。
「いい笑顔だ」
 そうだ。これでこそ、俺の好きなデーモンの笑顔だ。
 つられてくすっと笑った俺の顔を見て、"ちびすけ"はにっこりと微笑んだまま、俺に問いかける。
「ねぇ…名前、教えて」
「どうして?」
「だって…名前がわからないと、貴方のこと呼べない」
 そう言うことか。でも、こればっかりは…なぁ。
「悪いけど、どうしてもそれは無理だな。だから…名前を呼びたいなら、御前の好きな名前で呼んでくれて構わないぞ」
「吾輩の、好きな名前…?」
 一瞬考え…やがて顔を上げた"ちびすけ"は、満面の笑みを見せた。
「"エース"、って言うのは?」
 ぎくっ…
「な…んで、その名前なんだ…?」
 問いかけずにはいられないよな。名乗った覚えはないし、この頃逢った記憶もない。ホントに、偶然だったんだろうが…物凄い直感…
「一番強いから。一番優れてるヒトを"エース"って言うんでしょ?そう教わったから。父上にも動じないし、エリオスを追いやった技量なんか凄かったもの」
 ピンポイントで俺の名前を当てるだなんて…驚き以外のナニモノでもない…。まぁ…俺の名前も名前だから…妥当なのかも知れないが…。
「いい?」
 不安げに尋ねられれば、断れない。
「…あぁ」
「良かった」
 にっこりと微笑む"ちびすけ"。だが、その直後に大きな欠伸を零す。
 今まで気付かなかったが、窓から覗く世界は闇に閉ざされていて、夜だったんだと思い知った。元々この世界に迷い込むまで、俺は朝の次元にいたんだから…そこら辺、どうも馴染めないんだが。
「そろそろ、寝る時間じゃないのか?」
 そう問いかけてみると、"ちびすけ"は小さく頷いた。
「面白い話をしてやる」
 俺は、"ちびすけ"をベッドに促しながら、昔聞いたことを思い出していた。
 彼がベッドに横になると、ベッド脇のスタンドにのみ明かりを残し、他は消した。俺はベッドの端に腰を降ろし、言葉を続けた。
「どうして、眠くなるか知ってるか?」
「…知らない」
 それは、誠に子供らしい答えで、ほっとした。ここで、色々とへ理屈を捏ねられたら、進む話も進まないからな。
「じゃあ、教えてやる。夜になると、目に見えない妖精が現れるんだ。"ザンドメンシェン"って言う名前でな、別名、"砂撒き小人"って言うんだけど…そいつの撒く魔法の砂が目に入ると、魔法にかかって眠くなるんだ」
 勿論、そんなのは伝説に過ぎない。それも…地球の、しかもドイツの。ドイツでは、夜の七時五分になると、テレビにザンドメンシェンが出て来るって聞いたことがある。全く、ふざけてるけどな。
 だが、"ちびすけ"はそれを信じたらしい。
「じゃあ、"エース"もザンドメンシェンの魔法の砂が目に入ると、眠くなるの?」
「あぁ。だが、大人は子供より、魔法の効きが悪いんだ。だから、子供は早く眠くなるんだ。わかったか?」
「わかった」
「よし、いい子だ」
 その髪をくしゃっと混ぜると、"ちびすけ"は再び大きな欠伸を零した。
「…ねぇ、"エース"…朝になって、吾輩が目を覚ました時に…まだいてくれる?」
 そう、問いかけられる。だが、そんな確証は何処にもない。勿論、元の世界に帰れるかどうかはわからないが、ここに残っていると言う可能性もないかも知れない。
「わからないな、そんなことは。だが、これだけは忘れるな。未来を拓くのは、御前だ。一族の未来も…魔界の未来も、御前が拓いていくんだ。お前には、それだけの能力がある。だから、勇気を持って」
「…うん」
 小さく答えた"ちびすけ"は…いつの間にか、ぐっすりと眠っていた。
「…じゃあ、な」
 多分、もう心配はいらないだろう。元々、デーモンの能力は相当なモノだからな。勇気と自信とプライドさえ身に付けば、あのエリオスに負けない言魂を操ることが出来るのだから。
 俺の役目は、終わったんだろう。
 安堵の溜め息を吐き出した途端、俺にまで睡魔が襲って来た。それも、立っていられない程、急速に。
 訳のわからないまま、俺は床に座り込んで……意識が、途絶えた。

◇◆◇

「どう?まだ眠ってる?」
 階段から落ちたエースを取り敢えず近場のゼノンの部屋のベッドに寝かせ、様子を見るようにと言い残して暫く留守にしていたゼノンは、帰って来るなり付きっ切りでいたデーモンに問いかけた。
「全く、機嫌良く眠ってる。寝歌こそでないまでも…な。まるで、ザンドメンシェンの魔法の砂が目に入ったみたいにな」
 溜め息を吐き出しつつそうつぶやいたデーモンの声に、ゼノンは当然首を傾げる。
「ザンド……?何、それ…」
「知らないのか?ザンドメンシェンと言う砂撒き小人の撒く魔法の砂が目に入ると、眠くなるって…」
「聞いたことない。誰から聞いたの?」
「…さぁ…吾輩も、良く覚えてないんだが…子供の頃…誰かに聞いたんだ」
 正直に言えば得る覚えだったのだ。
 まだ小さな子供の頃に教えて貰ったと言う記憶はあったが…それが誰なのかは良くわからない。唯一の記憶は、父親の眼力にも臆さず、デーモン一族の中で誰よりも口が達者だったエリオスと言う女戦士を簡単に追いやった兵だと言うことくらいなのだが…
「名前は…教えてくれなかったんだ。だから、吾輩が勝手に付けて……」
 一つずつ、記憶が蘇って来る。
 あれは、男だった。外見で、年齢の判断は出来なかった。だが、黒い髪だったことは覚えている。
 そして、その顔に戴いた紋様は、焔のように赤い………
「……帰って、来い。"エース"」
 ぽつりとつぶやいた言葉。
 くすっと小さな笑いを残したゼノンは、黙って部屋を出て行った。まるで、デーモンとエースを二悪魔きりにしてあげようと、気を回したかのように。

◇◆◇

 誰かに、呼ばれた気がした。遠くの方で、俺を呼んでいる。あれは…誰の声、だっただろう…?
 ふと、そんなことが脳裏に過る。だが直ぐに、我に返る。
 何を馬鹿なことを考えてるんだ、俺は。あれは、彼奴の声に決まってるじゃないか。
 俺の大切な……デーモンの声に。

 ゆっくりと目を開けると、辺りは薄暗かった。
 天井は…見慣れた部屋とは微妙に雰囲気が違うが…多分、元の世界だ。
 視線を巡らせて見れば……あぁ、ここはゼノンの部屋、だ。
「…何だ、結局こっちも夜なんじゃないか…」
 丸一日、無駄にした気分だ。
 身体を起こそうとすると、負荷がかかっている…。軽く力を入れて起こしてみれば、そこにはデーモンが眠っていた。
「…おい、風邪ひくぞ」
 ベッドに伏せて、転た寝なんかしてる場合じゃないだろうが。また、大事な喉を傷つけるんだぞ。
「デーモン」
 俺は完全に身体を起こし、そっとデーモンの肩に手をかけて軽く揺すると、奴は小さく声を零したが…まだ眠っている。
 こいつは…一体、俺に何を求めたんだろう。
 今頃になって、そんなことがふと頭を過って行く。
 俺は、何もしていない。ただ、事実を諭しただけだ。
 生き抜く為には、誰に頼るでもなく…自分の勇気を信じるだけだと。自分で、未来を切り拓いていくのだと。それを実行したから、今のデーモンがあるのだろうか。
 そこまで考えて、ふと我に返る。何だ、思考が暗いじゃないか。別に、俺が悩んだって仕方のないことだ。それよりも、俺が無事にここに帰って来れたことを感謝しなければ。
「只今」
 小さくつぶやき、デーモンの髪に口付ける。
 俺を呼んでくれたのは…他でもない、こいつなんだ。そんな思いで小さく吐息を吐き出すと、予想外にも返事が返って来た。
「…御帰り」
「何だ、起きてたのか」
 くそ。騙された…
 そんな俺の思考を読み取ったのか、デーモンはくすくすと笑いながら身体を起こした。
「遅かったじゃないか。一日、心配したんだぞ」
「そりゃ、悪かったな。ちょっと、引き留められたモンだから…」
「誰に?」
「…教えない」
 御前に、だよ。それも、子供の…な。
 溜め息を一つ吐き出した俺の顔を、デーモンはじっと見つめていた。
「…何だよ」
「いや…似てると思って」
 不意に、そんな答えが返って来た。
「誰に?」
「…教えない」
 先程の言葉を繰り返したデーモンであったが、やがて小さく笑いを零した。
「…まだ小さかった頃、教えられたことがある。未来を拓くのは、吾輩だと。一族の未来も、魔界の未来も。勇気を持って…」
「……」
「御前と、良く似ていたんだ。黒髪に赤い紋様で」
「へぇ。世の中には、似てる顔が3人はいる、って話だからな。赤の種族だって、沢山いるからな」
 記憶力が良いと言うか、何と言うか…。でも、俺はそれを認めるのはどうかと思う訳で。
「…御前じゃないのか…?」
 首を傾げて問いかけるデーモンの姿。
「馬鹿言うなよ。御前の昔なら、俺にとっても昔、だ。俺が御前に会ったのは、お前が副大魔王になった時だろう?それまで、御前と話もしたことはないぞ?」
「それはそうなんだが…」
 怪訝そうに眉を潜めるデーモン。でも…それで良いじゃないか。全てを明かしてしまう必要は、ここにはない。時には、知らなくて良いこともあるだろうし。
 それに…俺だって、ただ単に夢を見ていただけなのかも知れないし。現実問題…過去に戻るだなんて、有り得ないからな。
 俺が踏み込んだのは…非現実的な…奇妙な世界。でもそれでも…俺の脳裏には、無邪気に笑う"ちびすけ"の笑顔が蘇っていた。
 きっと俺たちは、どんなに離れていても巡り会う運命にあったのだろう……なんて気障なことは言えないが、どんなに離れていても、きっといつか出逢える運命だったのなら、それはそれで良かったんだろう。
 俺が愛しているのは、たった一名しかいないのだから。
 そんな余韻に浸っている間もなく…宣告された無情の言葉。
「……因みに、音合わせは明日に延期な。スケジュールが乱れまくったぞ。覚悟しろよ」
 そんな色気のない言葉を吐いたのは、デーモンに他ならない……
 …ったく。だがまぁ…こんな時だから、何も文句も言うまい……。
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