聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Mixture 前編
その日は、どうも体調が悪かった。朝起きた時から、何か頭が痛くて。別に、昨夜深酒した訳ではなかったはずなんだが…
「迎え酒、する訳にもいかないしな…」
今日は、午後から音合わせがあったはず。それに、朝から呑む訳にもいかず…まぁ、当然か。
「仕方ねぇ。ゼノンに、何か薬でも調合して貰って…」
そうつぶやきを零してベッドから立ち上がったものの…眩暈がして、再びベッドに座り込んでしまった。これは相当酷いな…音合わせ、中止にして貰うか。
何とか立ち上がり、壁伝いに階段を降り始めた瞬間。
『…助けて…!!』
「…っ!?」
信じられない程、強い念に包み込まれ…俺は、足を踏み外していた。階段と床に叩き付けられた感触はわかった。だが、その先の意識は、既に途切れてしまっていた。
大きな物音で、誰かが階段から落ちたのだと言うことはわかっていた。慌てて廊下に出て来たデーモンは、その床に転がっている姿を見つけ、大慌てで駆け寄って来た。
「エース…っ!?」
声をかけても、ぴくりとも動かない。
「エース、しっかりしろ!エース…っ!!」
階段から落ちたにしては、どうも様子が可笑しい。声を聞きつけたゼノンもやって来たのだが、今一様子がわからない。
「脳震盪を起こしたかも知れない。揺らさないようにそっとベッドへ運んで、様子を見よう。階段から落ちたぐらいじゃ、死なないから大丈夫だろうけど…」
努めて冷静な声。まさか、この時エースに起こっている出来事など、まるで想像もしていなかった故の言葉であった。
誰かが、傍にいる気配がある。あぁ、仲魔の誰かが心配して、傍に着いてるのか…
俺はぼんやりした意識の片隅で、そんなことを考えていた。階段から落ちたのは覚えている。身体の至るところが痛くて、どうやらかなり打つけてるようだった。と、言うことは…酷く、無様な格好だっただろうな…この俺としたことが、全く情けない。
ところで…今、俺の傍にいるのは誰なんだろうか。いつも感じ慣れてる気とは、何処か違う気がするんだが…
ゼノンでもないし、ルークでもない。かと言って、ライデンでもない。一番近いのはデーモンなんだが…まぁ、あれこれ悩んでも仕方がない。ここは、目を開けて確認するしかないのか。
そう考え、俺はやっとでその目蓋を持ち上げた。刹那。
「…大丈夫?」
「…?」
聞こえたのは、子供の声、だった。
デーモンじゃないのか?
思わず我が耳を疑い…そして、その声の主を確認する為に、俺は仰向けから首を回して自身の横に視線を向けた。
見覚えのある眼差し。
「…え?」
身体中が痛むのなんてすっかり忘れてしまった俺は、がばっとベッドから起き上がった。
良く見てみれば、見慣れた屋敷の部屋ではない。だが、俺の視線に映っているのは確かに…いや、待て。
「御前、誰だ…?」
思わず、問いかけてしまったが…だって、俺の目の前にいるのは…人間で言うならば、五歳前後であろう子供だった。しかも、その顔には、見慣れた青い紋様に灰色の影。誰がどう見たって、それはデーモンの顔だったからだ。
金色の眼差しも、後ろに束ねた長い黄金の髪も、俺の見知っているデーモンに他ならない。ただ、その姿だけが子供なだけで。
混乱した俺の表情の前、奴はその口を開いた。
「吾輩は、デーモンと言うんだけど…」
「…な…」
確かに、姿と言い名前と言い、デーモンそのものであるのに…何故、目の前にいる奴は子供なのだろう。
いや待て。これはもしかして…
「今は…何年だ?」
「え…?今年は………」
問いかける俺の声に戸惑いの表情を見せたものの、奴はその口を開いた。その答えは、俺の直感の通り。
大きな溜め息を一つ。
つまり…俺の目の前にいる奴は、確かにデーモンだ。しかも、十万年近くも昔の。要するに、俺は過去へと戻って来てしまったと言う訳だ。
通りで俺の知ってるデーモンの気とそっくりな訳だ。曲がりなりにも本魔だもんな。ただ、数多くの修羅場を通って来た、奴の強靱なプライドが育っていないだけで。
物思いに耽っていた最中に、ふと奴の視線を感じた。視線を向けてみれば、奴はじっと俺を見つめているじゃないか。
「…何だ?」
その視線の意味がわからず、問いかけた俺の声に、奴は僅かに躊躇いがちにその口を開いた。
「…助けに…来てくれたの…?」
「は…?」
そう言えば…階段から落ちる前、強い念に襲われたのは覚えてる。まさか、それはこいつが…?
「御前、一体…」
歴史に残されていたデーモン一族の話は、魔界でも知らない奴がいないくらい有名だ。
だが、デーモンがこんなに小さいうちに、助けを請うようなことがあったか?少なくとも、俺の記憶にはなかったけどな…だが、目の前にいる奴の表情は暗く、何処か悲しそうだが…
「助けに…来てくれたんじゃないの…?」
再び、そう問いかけられる。今にも泣き出しそうな表情と声。多分、俺じゃなくても…この顔には勝てないよな。
「ちょっ…まぁ、理由は良くわからないが…とにかく泣くんじゃないっ。話は、聞いてやるから」
大きな溜め息をまた一つ。
奴…紛らわしいから、とりあえず"ちびすけ"とでも呼んでおくが。
まぁとにかく"ちびすけ"は、潤み始めたその眼差しを真っ直に俺に向け、その口を開きかけた瞬間、部屋のドアが突然ノックされた。
「デーモン、誰かいるのか?」
「…っ!!」
途端に、"ちびすけ"の表情が固くなる。やがて開けられたそのドアから姿を見せたのは、一名の男だった。
「…誰だ?その男は」
低い、声。俺でさえも、その声に答えることが出来ないとは。当然、"ちびすけ"も口を閉ざしている。
男は俺を一瞥して、やがてその視線を"ちびすけ"へと向けた。
「一族以外の立ち入りは、禁じていたはずだ」
「でも…っ!彼は、怪我をして…っ」
「何処で何をしていたのかは知らんが、ここにいると言う以上、規律を破ったのは事実だ。他の一族を覗き見るような行為をしていた輩の怪我の手当など、必要ない。即刻、立ち去られよ」
僅かに俺を見据えた眼差しと声に、ムッとして思わず眉を潜めた。俺だって、好きでこんな所に迷い込んだ訳じゃねぇんだよっ!
有無を言わせぬ眼差しを残し、男は部屋から出て行った訳だが…何だか無償に腹が立つな。一体、奴は……
「…御免なさい」
不意に、"ちびすけ"が口を開いた。その声に我に返って奴に視線を向けてみれば、今にも泣き出しそうな顔で、唇を噛み締めていた。
「今のは…御前の親父、か?」
俺は記憶の糸を辿りながら、そう問いかける。
「…そう」
小さく答えた、"ちびすけ"の声。
「そう…か」
思い出した。デーモンの親父だと言うことは、彼のデーモン一族の長だ。歴史上、独裁者として名高い彼は、己の血と魂を分けて一族を築き上げた兵だ。
残念ながら…それは俺がまだ士官学校にいた頃の話だから、俺は長には会ったことがなかった。だから、顔を見ても一瞬わからなかったんだ。
「何故、俺を庇った?御前が連れて来た訳じゃないんだ。知らん顔していれば良かったじゃないか」
俺一名ぐらい、最悪の状況になったとしても、何とか脱出ぐらい出来るはずだ。まぁ、それこそどう言う経緯で、この"ちびすけ"が俺を助けたのかはわからないけどな。
「ホントは…まだ、じっとしてた方がいいんだけど…」
"ちびすけ"が零した言葉の意味はわかった。
父親には、逆らえない。
「あぁ、大丈夫だ。これぐらい、どぉってことない」
そう答え、俺はベッドから降りる。まだ多少眩暈はするが、そのうち良くなるだろう。
「ところで…俺に、何を助けて欲しいんだ?」
衣服を整え、そう尋ねた俺の声に、"ちびすけ"はそっと眼差しを伏せた。
「あの親父から、逃れたいのか?」
試しに、そう尋ねてみる。俺の記憶では、デーモンは自分の父親を余り良く思っていなかったはずだったからな。
だが。俺の声が届いた瞬間、ぱっと顔を上げる。
「違うっ!」
予想外の反応だった。てっきりそうして欲しいのだと考えた俺が、浅はかだったのか…それとも、もっと深い事情があるのか…まぁ、そんなこと、俺が考えたところで、わかるはずもないんだがな。
「逃れたいんじゃない…確かにあの悪魔(ひと)は、独裁者の名が相応しいかも知れない。逃れたいと思ってる奴も、一族の中には確かにいるよ。でも、吾輩は……」
「じゃあ…何だ?」
「…正しい道へ、導いて欲しい」
「…はぁ?」
皆目、意味がわからない。
「愛して…るんだ。だから…これ以上、道を踏み外さないで欲しいんだ…」
「……」
なるほどな。だが、そんな言葉を、こいつの口から聞くことになるとは思いもしなかった。それも、こんな小さな子供の口から。
愛してる。
その言葉の重みが、果たしてホントに理解すべき許容範囲にあるのか。勿論、例え子供であったとしても…この俺を面前にして、言われて嬉しい台詞じゃないことだけは確かだったが…あくまでも、嫉妬じゃないぞ。
"ちびすけ"が、何かを続けようと口を開きかけた時…
同じ状況が続くが…またもや、そのドアがノックされた。
「ディー、いるの?」
ドア越しに、そう問いかけたのは、女の声だ。
「…隠れて」
警戒したように、俺にそう囁いた"ちびすけ"だが…何処にどう隠れりゃいいのか、それをまず問いかけたいな。
とにかく、出来得る限り気配を消し、クローゼットの中に忍び込んだ。これがまた狭いんだが…まぁ、文句も言えないな。俺が隠れたのを見届けた"ちびすけ"は、一呼吸置いてドアを開く。
「何か用?エリオス」
「老から聞いたよ。この部屋に、男が隠れてたって…何処の誰?」
「…知らない」
「知らないはずはないでしょ?貴方が連れて来たんでしょうが」
「知らないよ」
そう言い張る"ちびすけ"の声とは裏腹に、エリオスと呼ばれた女は、どうやら部屋の中を見回しているようだ。そして、俺の隠れているクローゼットの前に、すっと歩み寄った。
「開けなさい、ディー。隠し事は良くないわ」
「……」
「貴方の為を思って言ってるのよ、ディー。わかってるでしょう?」
「エリオス…」
「老には、黙っててあげる」
そこまで言われ、"ちびすけ"も隠し通せないと悟ったらしい。クローゼットのドアが少しずつ開き、明るい光に瞳を細めた時には、俺の姿はその女の前に晒されていた。
エリオスと呼ばれていた彼女は、肩までのプラチナのストレート、青い紋様を頂いた顔と深い碧色の瞳をしていた。意外と…いい女じゃないか。
「貴方、名前は?」
俺がクローゼットから出て来るのを待っていたように、そう問いかけられる。だが…ここで名乗る訳には行かないよな。
何せ…この状況にしてみれば、俺は未来から来たってことになるんだもんな。未来を変える訳にはいかない。
「…生憎、他悪魔に名乗れる名前じゃないんだ」
「それじゃあ何処から来たの?ここの厳戒体制は並じゃなかったはずよ。誰一悪魔、内密に潜り込めるはずないわ」
「そう言われてもな…」
俺だって、どうやって来たのか、良くわからないんだ。説明の仕様がないんだから、仕方がない。
「エリオス、彼は何も悪くない。吾輩が…」
「貴方に、何が出来たと言うの?老の言いなりになってるだけじゃないの。反論する勇気もない。外の世界を知らない貴方に、どうして彼が関わって来るの?」
このエリオスと言う女、性格がキツイだけじゃなく、流石に言魂師の一族、口も達者だ。それにしても気になるのは…この"ちびすけ"だ。
子供だから…と言い包めるには、俺の知ってるデーモンと違い過ぎる。幼い…と言うよりも、臆病なのかも知れない。
「言い過ぎ、じゃないのか?少なくともこいつは、長の跡取りだろう?」
思わず口を挟んだ俺に、エリオスはその深い碧色の眼差しを向けた。
「余計な口を挟まないで。問題は貴方なのよ?わかってるの?」
「わかってる。だから、こいつを責める必要はないだろうと言ってるんだ。こいつはまだ…子供、だ」
「子供扱いするの?珍しい種族ね。生きて行く為には、大人も子供もないわ。この子を護って、一族が滅んだらどうするのよ。幾ら老の跡取りだとは言え、この子に振り回されたら堪らないわ」
全く、口が達者だ。これじゃ、"ちびすけ"でなくとも無口になりたくもなる。
「…吸わせて貰うぞ」
俺は"ちびすけ"にそう告げ、ポケットから煙草を取り出して火を付けた。大きく煙を吐き出すと、慣れていない所為だろう、"ちびすけ"は煙にむせている。
「あんた、何者なんだ?」
今度は俺が、エリオスに問いかけた。
「少なくとも、貴方にナンパされる種族ではないわ」
「俺だって、節操がない訳じゃない」
「そうかしら。顔に出るのよ」
出て堪るか。子供とは言え、デーモンの前で。
「それだけ気の強いところを見ると、一端の戦士、って訳だな」
"ちびすけ"にかからないように紫煙を燻らせ、俺はエリオスに視線を向けた。
「貴方こそ何者なの?大半を押さえているようだけど、並の魔力じゃないわね。そんな魔力を秘めた…それも、赤の種族なんて、見たことないわ」
「見たことあったら、知ってるだろうしな」
「余計なことは言わないで。質問に答えなさい」
この緊迫した雰囲気の中、"ちびすけ"は不安げな視線を、俺に向けていた。助けを求めたとは言え、"ちびすけ"も俺の正体は知らない訳だから…まぁ、当然と言えばそれまでか。
「多分、あんたの知らない種族だろうな。生き残りは殆どいないからな。俺が、最後かも知れないし」
それは事実だ。嘗ては栄えていた邪眼族も、衰退の道を辿り始めたら押さえられなかった。生き残りは俺だけのはずであるし、稀にしか御目にかかれない種族だからこそ、知らなくても当然だ。
「…とにかく俺は、この一族を打っ潰そうと思って来た訳じゃない。まぁ、あんたに言ったところで、理解して貰えるとは思わないけどな」
あからさまにそう付け加えると、エリオスがムッとした表情を浮かべたのは言うまでもない。
「あらぬ疑いを受けていることはわかってる。だが、俺はこのデーモンに用があるんだ。あんたの言いたいことが済んだら、さっさと帰ってくれないか?」
ここで知り合ったのでなければ、是非声をかけてみたいとも思ったエリオスだが、デーモンの前ではそうもいかないしな。"ちびすけ"の話も、まだ途中のはずだ。無駄な時間を費やす訳にはいかない。
「何様のつもりなのっ!?侵入者の分際でっ!!」
どうやら、エリオスの怒りを買ったようだ。まぁ、当然か。
「侵入者だからこそ、言えるんだろ。きっと、一族の奴はみんなあんたの迫力に押されて、何も言えないんだろうからな」
「冗談じゃないわっ!」
「こっちも、冗談じゃないんだ。悪いが、あんたの相手をしている場合でもないんでな」
体格からすれば、俺は当然男だから彼女を軽く上廻る訳だし、力だって当然。些か強引ではあったが、俺は彼女を部屋の外へと追い出した。
「開けなさい!聞こえてるんでしょ、ディー…っ!!」
未だドアを叩いて叫ぶエリオスの声に、俺は溜め息を吐き出しつつそのドアに結界を張ったのだった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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