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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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INNOCENT
こちらは、以前のHPで2000年6月10日にUPしたものです

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◇◆◇

 暖かい日差しの差し込む一室に、金色の髪を持つ二名の姿があった。
 一名は長い巻毛。もう一名は、短めのオールバック。
「…え?軍事参謀、ですか?」
 短い黄金のオールバックの悪魔が問いかける。
 彼の名はデーモン。先日、魔界においての副大魔王就任の任命を受けたばかりである。
「そう、軍事参謀。いい響きだね」
 くすっと笑いながら応えたのは、ダミアン。魔界の皇太子である。
 ダミアンはまるで日差しの眩しさを遮るかのように目を細め、彼を見た。
「そろそろ必要だろう?魔界の副大魔王たる者が、一名で何をしようと?」
「しかし…」
「しかしも案山子もないよ。これは、わたしの命令だ。副大魔王を一名にして置く程、魔界は甘くないよ」
 微笑みを浮かべたまま、ダミアンは言葉を続けた。
「一応、御前の好みのタイプを選んだつもりだよ。黒髪が好きだったね?それに、なかなかの美悪魔だ」
「…あのぉ…」
 小さな溜め息が零れる。
 確かに、黒髪は好きだし、想う相手も…片思いだが…なかなかの美悪魔ではあるが…多分、ダミアンの意向は自分の好み、だろうと思った。
 デーモンの想い悪魔とは、彼がこの広い魔界と言う地で、随分昔に見かけた悪魔。
 黒髪で、赤い紋様を戴いていたことは覚えている。だが、何処の種族なのかは理解らなかった。
 まだ子供だったあの当時、彼は素性も知れないその悪魔に、一目惚れしたと言っても過言ではないだろう。
 それ以来、彼の心を奪える悪魔は…今だ現れないのだ。
 それは扠置き。
「参謀が必要なのはわかりますが…何も、美悪魔でなくても…」
「美悪魔に越したことはないだろう?」
「…それはそのぉ…」
----そりゃ、楽しいでしょうね、ダミアン様は。
 彼は、敢えてその言葉を噤んだ。
「明後日の会議の後、御前に紹介しよう。それまでのんびりしていればいいさ」
 意味深な笑いを浮かべるダミアン。
 明後日の会議…つまり、彼の就任を上層部に正式に通達及び紹介するものであることは、デーモンにもわかっていた。その会議が終わるまで、彼の元に何の仕事もないことも。
 暇と言ってしまえば、それまでなのだ。
 すっかりダミアンのペースに巻き込まれたデーモン…その後、支障がないことを祈って、合掌……。

◇◆◇

 さて、会議当日の朝である。
 ダミアンに呼ばれ、彼はその官吏と共に枢密院に向かって道を進んでいた。
 その時、遠方に彼と同じように皇太子の官吏と見られる者と共に道を進む姿を見つけた。
 その姿に、彼はドキッとして歩みを止めた。
----あれは…
 見間違えるはずのない、赤い紋様。白い顔を縁取る黒い髪は襟足が長く伸びてはいたものの、一目で脳裏に焼き付いた姿。
 思いがけない出逢いに、思わず溜め息が零れた。
 その溜め息を聞きつけてか…はたまた己の背後の影が動きを止めた所為か、官吏は彼を振り返った。
「閣下、どうなされました?」
 その声にハッとして、視線を戻す。
「いや…」
 その曖昧な答えに首を傾げつつ、その視線が向いていた方へと顔を向けてみて、そこにいた姿に小さな微笑みを零した。
「あぁ、閣下もご覧になったのですね?いつ見ても見目麗しいお姿ですよね」
「あの者を知っているのか?」
 思わず、そう問いかけてしまう。
「えぇ。閣下はご存じありませんでしたか?情報局のエース長官ですよ」
「…そうか、情報局の…」
 噂には、聞いたことがあった。だが、名前だけで、顔までは知らなかったのだ。
 情報局は彼が在籍している枢密院の隣…と言ってしまえば近く聞こえるが、その敷地が広大である為、隣と言ってもかなり距離がある。だが、隣は隣。灯台下暗しとはまさにこのことである。
 今まで面識がなかったのが不思議なくらいの距離にいながら、その存在に全く気がつかなかったのは、彼の失態だったかも知れない。
 立ち居振る舞いの全てが麗しく見える。だが、その思いも、官吏の一言で曇ってしまったが。
「長官殿は、その冷たい美しさが評判ですよね。ですが、特定の者にしか、心を許さないと言う点があるそうですから。崇拝する者にしてみれば、この上もなく残酷な美しさですよね」
「…はぁ…」
 暫し、途方に暮れてしまう。
 折角巡り会えたと言うのに、何と残酷な言葉だっただろうか。
 溜め息を吐き出しつつ、促した官吏の後に付いて、彼は再び歩き始めた。


 大きなドアの前にダミアンと立つデーモンの耳に、会議室の中のざわめきが聞こえた。
 僅かに緊張の色を見せた彼の表情に、ダミアンはにっこりと微笑む。
「そんなに緊張することはあるまい?御前はいつも通りにしていればいいのだから」
「はぁ…」
 小さく微笑んでみせたが、それは引きつった笑みにしかならなかった。
 別に、デーモンとて、好き好んでこれ程緊張している訳ではない。ただ、それをダミアンの前で口に出してしまえば、一笑で済まされてしまうことだろう。
 このドアの向こうに、やっと素性のわかった想う相手がいる。それが、デーモンの緊張を促しているのだ。
 先程の官吏の話では、あの悪魔…情報局長官は、大抵の相手に対しては、本当の自分を見せないと言う。それが、彼には不安の要素なのだ。
----先が思いやられるなぁ…
 小さな溜め息が一つ。本来なら喜ぶべき状況でも、今のデーモンには重い悩みである。
「さ、行くぞ」
 ダミアンの声に促され、デーモンも心を決める。デーモンの心境を知ってか知らずか…ダミアンは上機嫌であるが。
 ドアが開き、中へと促される。すると、今までざわついていた会議室は、途端に静まり返った。
 全ての者の眼差しが、デーモンへと注がれる。その中に、あの悪魔…エースの眼差しもあったことだろう。だが、デーモンはエースだけを見つめないようにと、懸命に気を張っていたのである。
「諸氏等には、既に連絡は行っていると思うが、改めて紹介しよう。彼が、副大魔王閣下に任命されたデーモンだ」
 ダミアンの厘とした声が響くと、再び彼に向け、視線が集まる。
 いざとなれば、彼の度胸は座っているのだから、臆することはない。ただ…一名だけの視線が気になるのだ。
「…今、殿下からの紹介があった通り、吾輩が副大魔王に就任したデーモンである。以後、御見知り置きを…」
 その言葉の直後、誰かのつぶやくような声が僅かに聞こえた。その言葉自体は聞き取れなかったが、誰が発した言葉であるかと言うことだけは判明した。
 あの、悪魔…エースだった。
 一瞬向けた彼の視線が見つめたエースの表情に、彼は愕然として、不意に脱力感に襲われていた。
----最悪、じゃないか…
 無粋なエースの表情に、全てを察した。
 彼は、諦めにも似た溜め息を、人知れず吐き出していたのだった。

◇◆◇

 滞りなく終わった会議の後、彼はダミアンと共に皇太子のの執務室へと足を運んでいた。
「どうした?元気がないじゃないか」
 先程のショックから、未だ立ち直れないデーモンに、ダミアンはくすっと小さな笑いを零す。
「今からそんな表情を浮かべているようじゃ、先が思いやられるぞ」
「…はぁ…」
 ダミアンは、デーモンの心情など、全く気にも留めていないようだった。何よりダミアンは、これからやって来る参謀のことで、頭が一杯なのだから。
 デーモンは、小さな溜め息を一つ。
 あの会議で見た顔で、記憶に残っているのは二名のみと言うのが、デーモンにしてみれば常ではないのだが。
 一名は言わずと知れたエース長官。
 もう一名は、そのエースの隣に席を置いていた、文化局の局長、ゼノン。彼とは、面識があった。
 ひそひそと言葉を交わすこの二名は、実に親しそうに見えた。それがまた、引っかかることでもある。
 ぼんやりと歩みを進めているうちに、皇太子の執務室へとやって来た。
 綺麗に整理されている、明るい部屋。その入り口付近に、不釣合いな手洗い場が一つ…まぁ、その理由は言わずともわかると思うので、説明は省略するが。
「そろそろ来るぞ」
 お気に入りの椅子に腰を降ろし、にこにこと笑顔を振りまくダミアン。
「名前は…何と言うんです?」
 そう言えば聞いていなかったと、デーモンは気持ちを切り替えて質問した。
「名前?あぁ、参謀な。ルークと言うんだ。見て驚け、美悪魔だぞ」
「はぁ…」
 一名で上機嫌のダミアンに、デーモンは思わず呆れ顔、である。

 暫しの後、執務室のドアがノックされ、官吏の者が姿を現した。
「ダミアン様、ルーク様がいらっしゃいました」
「あぁ、通してくれ」
「御意に」
 ドアを閉め、暫しの後。
「ルークです」
 ドアが、ノックされ、そう声がした。
「どうぞ」
 ダミアンの声に促されるように、そのドアが開いた。足を踏み入れて来たのは、蒼い紋様を戴いた青年。
 短いが、緩いウエーブが綺麗な、漆黒の髪。そして、全てを見通すような、深い黒曜石。
----これが、ダミアン様のお気に入りの…
 そう思いながら、デーモンはルークを観察していた。
 と、その視線が搗ち合った瞬間。ルークは、パッと視線を伏せた。
「…どうした?」
 思わず声をかけたデーモン。その直後、伏せた顔が朱に染まり、彼は訳がわからず、首を傾げた。
「こっ…」
「こ…?」
 ダミアンも、訳がわからなかったらしい。デーモンと共に、その言葉を鸚鵡返しで問いかける。
 刹那。ルークは、デーモンに向けて深々と頭を下げ、一気にその言葉を捲し立てた。
「この度、閣下の参謀に任命されましたルークです!不束者ですが、宜しくお願い致します…っ!」
「……」
 一瞬、呆然とする二名…
「別に、嫁に行く訳じゃないんだぞ、ルーク…」
 きょとんとしたまま、そう口にしたダミアンに、ルークは顔を真赤にした。
「そ…そうですが…」
 その、余りにも初々しい姿に、デーモンは思わず笑いを零した。
「吾輩はデーモン。そう緊張しなくてもいい。まぁ、宜しくな」
「は…っ」
 デーモンが差し出した手を固く握り、頭を下げるルークには、ダミアンも苦笑していた。
 この時ばかりは、デーモンも私事で悩んでいたことなど、忘れてしまっていた。

 そして、それから暫くの後、雷神界から皇太子であるライデンが修業に来ることになったとの連絡が入り、新たに一つの点が増えることとなった。

◇◆◇

 魔界に散らばっていた点が、集まった。
 この点が、線となり、カタチとなる日は、そう遠くなかった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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