聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Pink Sky
「御前は、良い季節に生まれたね」
そう、声をかけて貰ったのはいつのことだったか…。
多分、遠い昔の記憶。
誰に言われたのか…正直、覚えてはいなかった。けれど、頭を撫でてくれた、大きな手の温もりは覚えている。
あの、暖かな日差しも。
その日彼は、公園のベンチでぼんやりとその木を眺めていた。
「…ルーク、どうしたの?こんなところで…」
そう、声をかけられて視線を向ければ、自転車に乗った仲魔が彼を見つめていた。
「あぁ、ライデン…」
零した瞬間、大きな欠伸が零れた。
「寝不足?」
ここ数日、ルークは仕事の都合で自分のマンションに行っていた為、顔を合わせたのは久し振りだった。
くすくすと笑いながらベンチの傍に自転車を止め、ルークを笑うライデン。
「そうでもなかったんだけどね~」
そうは言うものの、ルークの顔は眠そうである。
「飲み物買って来るよ。チャリ見てて」
「OK」
近くの自販機で缶コーヒーを二本買って戻って来たライデン。その一つをルークに手渡しながら、その隣に腰を下ろす。
「はい、俺の奢り」
「サンキュー」
ルークはライデンから貰った缶コーヒーを開け、一口飲む。
「春は眠くなるよね。春眠暁を覚えず、って言うくらいだもんね」
くすくすと笑いながら、こちらも缶コーヒーを飲むライデン。そして、ルークと同じように目の前にある木を眺めている。
「…ところで、これ何の木?」
目の前の木は、咲き残りの花が微かに残っている程度で、それを押しやるように緑の葉が息吹き始めている。どうやらライデンには、その状態ではこの木が何の木なのか、判別が着かないらしい。
「これね…桜」
そう言ったルークの声に、ライデンは声を上げる。
「桜?葉っぱばっかでもう花咲いてないじゃん」
その声に、ルークは表情一つ変えずに答える。
「花なんか、もう散ったよ。今年は咲くのも早かったからね。そろそろ、4月も半ばだし」
「…そっか…あぁ、今年は花見、しなかったね…」
そんな他愛のない会話をしながら、二名して日向ぼっこをしながらぼんやりと空を眺めている。
平日の真昼間に、良い歳した男二名ベンチに座って日向ぼっこ。それは、ある種異様な光景だが…まぁ、いつもの光景なので、本魔たちは気にしてはいないが。
「そういや、そろそろあんたの発生日じゃない?えっと、今日は…何日だっけ?」
「…12」
「ちょっ…今日じゃんかよぉ!何でもっと早く言ってくれない訳~!?」
もう昼を回っている。彼等以外はみんな仕事で出ている。今から召集をかけたところで、夜までに何名集まれるか…それに、パーティーの準備は…。
そう、ライデンの頭の中に一気に色々なことが駆け回る。
今まで、マメに発生日のお祝いをして来たはずなのに、どうして今年は忘れていたのだろうか…。
慌てるライデンを横目に、ルークは小さく笑う。
「別に良いって。祝って貰うのを楽しみにする歳じゃないじゃん」
「え~。だってさぁ…」
「折角の春生まれなのに、桜も散っちゃうしさ。何かもう…良いかな~って」
「…ルーク…」
何処か…いつものルークと違う。そんな雰囲気を感じたライデンは、小さな溜め息を一つ。
別に、桜の花に執着していた訳ではないし、今までそんな風に感じたこともなかったはずなのに。
ルークは、大きな溜め息を一つ吐き出す。
その姿が、とても寂しそうに見えて。
「…やっぱり駄目。みんなに、声かけて来るから…っ」
ライデンはそう言うと、ベンチから立ち上がる。
「良いって。みんな忙しいんだからさ。忘れてるんだから、そのままにしといて」
「…嫌だ…」
「ライデン…」
「あとで、連絡するから…っ!」
ライデンはそう言い残すと、ルークを振り返らず自転車に乗って何処かへ行ってしまった。
「もぉ…良いって、言ってるのに…」
こうなってしまうと、ライデンも頑固だから譲らない。それがわかっているだけに…ルークは溜め息を吐き出すしかなかった。
「…桜?」
ライデンからかかって来た電話に出ると、唐突にそう問いかけられた。
『そう。どっかで満開に咲いてるところ知らない?』
「そう言われても…この辺はみんな散ってるしなぁ…」
そう言いながら、近くの窓から一応外を眺めているのは、デーモンだった。
「桜がどうかしたのか?」
問い返した声に、小さな溜め息が聞こえた。
「…ライデン?」
『…ルークの発生日…』
小さくつぶやいた、ライデンの声。
「あぁ…今日だったか?忙しくて、何の準備もしていないんだが…誰か、準備してるんだろう…?」
『…わかんない。でも、誰も何も言って来ないし…みんな覚えてないかも…俺も忘れてて…さっき、ルークと話してて思い出したんだけど…お祝い、しなくて良い、って言われて…』
「…そう、か…」
だから、沈んだ声だったのか。
デーモンも、小さく息を吐き出す。
「まぁ…祝って貰うのを楽しみに待つ歳でもないがな…みんなに忘れられてしまうと言うのは、切ないよな…」
『それにさ、桜の花も散っちゃったし、とか言い出すから…』
「それで、桜、か…」
ルークにしては、珍しい。桜の花が好きだなんて、聞いたことはなかった。
「もっと北の方に行けば、まだ咲いてるだろうが…今から全員集まれるかどうかはわからんな…吾輩もまだ仕事があるしな…取り合えず、エースとゼノンに連絡入れてみろ。何か準備してるかも知れんからな」
『うん…』
じゃあ、また、連絡する。
ライデンの電話はそれで切れる。
「…桜、なぁ…」
無理をすれば、何とかなるだろうが…それで、今のルークが喜ぶかどうか。
それは、デーモンにもわからなかった。
後は…残りの誰かが、準備をしていてくれるのを期待するしかなかった。
暖かい陽射しが、夕方の色に変わって来た頃、ルークの元にライデンから連絡が入った。
『あ、ルーク?今から、屋敷に戻って来られる?』
様子を伺うような声に、ルークはくすっと笑いを零す。
「良いけど?」
『じゃあ、待ってるから』
それだけ言って、電話は切れた。
それから程なくして、彼は屋敷に帰り着いていた。
ルークが屋敷に戻って来ると、それを出迎えたライデン。
その顔は、とても真剣そのもので。
「こっち」
「…あぁ…」
きょとんとした顔のルークを連れ、ライデンはそのままリビングへと向かう。そして、ルークを先に促した。
「入って」
「うん…」
ルークは何もわからないまま、リビングのドアを開けた。
薄暗い部屋の中…彼はそこに、本来なら有り得ないものを見た。
「何これ…すげぇ…」
思わず零れた感嘆の言葉。
それは、天井一杯に映し出された、満開の桜。そしてその隙間から見える、青い空。
それはまるで、本物さながらの情景。
「…どうしたの、これ…」
思わず問いかけた言葉に、後から入って来たライデンは、ちょっぴり照れ臭そうに口を開く。
「本物の満開の桜は、もうこの辺じゃ見られないみたいだから…知り合いに頼んで、大急ぎで映像作って貰ったんだ。それを天井に映し出してね。せめて、気分だけはと思って…」
「へぇ…凄いよ、これ…」
嬉しそうに天井を見上げているルークをソファーへと促したライデンは、一旦キッチンへと向かうと、トレーに何かを乗せて戻って来た。
「…でね、俺一名じゃ、準備の時間足りなくて…ケーキとか、食事の準備出来なかったんだけど…代わりに、これ…」
そう言って差し出されたのは…。
「…いちご大福と…緑茶?」
「…うん…いちご乗ってるから、ケーキの代わりに良いかと思って…」
そう言われ、まじまじといちご大福を見つめる。
確かに、ライデンの用意したいちご大福は、大福からちょこんといちごが顔を出している…
「…良いんじゃない?良いセンスしてるよ、あんた」
笑いながらそう返すと、ライデンもやっと、小さな笑いを零した。
「良かった~」
安堵の吐息と共に、ライデンもルークの隣に座った。そして、同じように天井の桜を見つめた。
「…御免ね。発生日、忘れてた訳じゃなかったんだけど…みんな忙しくて…」
そうつぶやいたライデン。
「別に良いって言ったじゃん。気にしてないよ」
ルークはくすっと笑う。けれど、天井を見上げるライデンは、笑ってはいなかった。
真っ直ぐに見上げるその眼差しは…ちょっぴり、寂しそうで。
「…ほら、俺…限りなく冬に近いけど、一応秋生まれじゃん?」
不意に、そう切り出したライデン。
「中途半端な時期だから、昔は、結構忘れられることも多くてさ…でも、聖飢魔IIの活動始めてから、ツアーで当たることが多くて、ミサでは高確率で祝って貰うことが多かったから…すげぇ嬉しかったのさ。でも、ルークやエースは、ツアーのない時期だから、当たらないでしょ?だから、せめて俺たちが…盛大に、とはいかないけど、忘れずに祝ってあげたかったんだ」
「…そっか…気ぃ使わせてたんだね。悪かったね…」
そう言いつつもその気持ちが嬉しくて。ルークは、満面の笑みを浮かべていた。
別に、誰も何も言わなかったことに拗ねた訳じゃない。ホントに、それはそれで良かったのだ。自分の発生日を静かに過ごすのも悪くないと、そう思っていたから。
けれど、ささやかでも、自分の為にこうして何かをして貰ったことが、堪らなく嬉しかった。
「…有難うな…」
もう一度、そうつぶやく。
満開の桜の下…こんな発生日も、悪くない。
そんな気持ちで、天井の桜を眺める。ルークの表情はとても柔らかく微笑を浮かべていた。
暫くの間、ライデンも隣で、黙ったまま同じように天井を見上げていた。けれど、ふとソファーから立ち上がる。
「…ちょっと待ってて」
ライデンはそう言い残すと、リビングから出て行く。
ルークは、ライデンから貰ったいちご大福と緑茶を楽しみながら、暫し一名でのんびりとした時間を過ごす。
暫くして、足音が戻って来た。
そして。
「…御前は、良い季節に生まれたね」
その言葉と共に、ルークの頭にそっと置かれた暖かい手の温もり。
「……っ」
思いもかけなかった言葉に、ルークは思わずその声の主に視線を向けた。
そこには、完全に気配を消していた悪魔。
「…ダミ様…」
にっこりと微笑を浮かべていたのは、皇太子たるダミアン。その向こうには、満開の桜。
それはまるで、絵画のように綺麗だった。
「…何で…?」
それは…遠い記憶だと思っていた。
でも、思い出した。その手の温もりは…この悪魔だったと。
初めて、この悪魔に発生日を祝って貰った時の記憶。
ダミアンも…それを、覚えていてくれたのだろうか。
「ライデンが、泣きそうな声で連絡して来たんだから、来ない訳にはいかないだろう?それに…折角の御前の発生日だ。呼ばれなくても、祝うつもりではいたけれどね。あの時と同じように、ね」
「ダミ様…覚えていてくれたんですか…?」
「忘れる訳がないだろう?この季節になれば、毎年思い出すよ」
そう言ってダミアンは、ルークの頭を撫でる。
「それに、そう思っているのはわたしだけじゃないよ。みんな…同じ気持ちだよ」
「…みんな…?」
その言葉に、僅かに首を傾げたものの…動かした視線の先に、気配を消して隠れるようにしゃがみ込んでいた、仲魔たちの姿。
「見つかっちゃったな」
くすくすと笑ってそう言ったのは、デーモン。その後ろには、エースとゼノンの姿もある。そして一番奥に、笑っているライデンの姿。
「…ちょっと、何やってんのさ」
その異様な格好に、ルークも思わず笑い出す。
「しょうがなかろう?ダミ様が、隠れろって言うんだから…」
笑われてちょっと恥ずかしかったのか、苦笑いをするデーモン。
「だからってなぁ…こんな隠れ方はないよな」
「ホント。丸見えなのに」
デーモンの後ろのエースは必死に笑いをかみ殺しているし、ゼノンもくすくすと笑っている。
「ね?みんな、御前を心配しているんだから。下手に愚痴を零そうものなら、大騒ぎだよ?」
くすくすと笑うダミアンの言葉に、ルークはライデンへと視線を向ける。
「…別に、愚痴は零してないですよ?発生日は一名でも良い、って言っただけで…」
「そんな風に言わなかったじゃんよ~。忘れてるんだからそのままにしといて、とかさぁ、桜も散ったし、もう良いかな~とかさぁ…心配になるじゃん…」
「あ~……」
必死にそう弁解するライデン。確かに、ライデンの方が正しかった。
「…御免ね。あんたの気持ちも、良くわかってるから。でも、無理しなくても良かったんだよ。離れていたってさ…何かあれば、こうして集まれるんだから。だから、寂しくはなかったんだよ?」
「…ルーク…」
にっこりと微笑むルーク。
「でも、嬉しいよ。有難う」
その微笑に、偽りはない。
「…別に、無理はしていないから心配するな」
くすっと笑って、エースがそう口にする。
「そうそう。長い付き合いなんだから、遠慮しないでよ」
ゼノンもそう言って、にっこりと笑う。
全く…彼らには、敵わない。
「…じゃあ、みんなでお祝いしようかね。料理は、みんなで持ち寄って来たから心配要らないよ」
ダミアンはそう言って、再びルークの頭をポンポンと撫でた。
いつになっても、ダミアンには子ども扱いされているようで。でも…それもまた、嬉しい。
「じゃあ、ちょっと待ってね」
ライデンはそう言うと、リビングの真ん中に不自然に置かれていた箱をちょっといじる。すると、今まで青空だった天井の映像が、夜へと変わる。
ライトアップされた夜桜。それは、明るい時の映像とはまた違って、とても幻想的だった。
「おぉ~、夜桜だ…」
「凄いな、これ」
「良いでしょ?俺の、秘密道具」
他の構成員の感嘆の声に、ライデンはにっこり笑う。
そうして、リビングのテーブルを退かして、フローリングの上に直接持ち寄った食べ物や飲み物を置く。窓も開けて風を入れ、まるで気分はお花見、だった。
「じゃあ、夜桜の下で乾杯しようか」
ダミアンの声に、誰もが笑いを零す。
そして。
「ルーク、発生日おめでとう!」
「有難う!」
「乾杯~」
それはルークにとって、目一杯、幸せな時間だった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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