聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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PRESENTS ~Xenon's Day~
じめじめとした空気は、梅雨時ならば仕方のないこと。
重い空を眺めながら、ぼんやりとした記憶が甦って来る。
「そう言えば、魔界には梅雨はないって言ってたな…」
ふとつぶやいた声。
それが、自分の中の未練にも似た想いであることに、彼自身、まだ気がついていなかった。
「ねぇ、ゼノ。発生日のプレゼント、何が欲しい?」
そう尋ねて来たのは、魔界に遊びに来ている雷神界の皇太子。要は、彼の恋悪魔であるライデンである。
「プレゼントねぇ…」
急にそう言われても、咄嗟に答えられるものでもない。
「別に、何でも良いよ」
「そう答えられるのが、一番困るんだよね~」
「…そう言われてもねぇ…」
小さな溜め息を吐き出すゼノン。
あと数日で、自分の発生日。だがつい先日、魔界の皇太子殿下…ダミアンの発生日の御祝いをしたばかりである。今一実感が沸かないのは当然かも知れないが。
「今度のあんたの発生日パーティー、幹事は俺なんだもん。なるべく、あんたの嗜好に合わせてやろうと思ったんだけどさぁ…」
「…それって、本魔を目の前にして言うことじゃないと思うんだけど…?」
「まぁ、良いじゃん」
常ならば、ゼノンの好みぐらい心得ているライデンなのだが、どう言う訳か、今回ばかりはしつこい程にプレゼントを聞いて来るのはどうしてなのだろう。
そんな疑問を抱きつつも、咄嗟に思いつかないのは仕方がない。
「もう少し考えさせてよ。急には思いつかないから」
渋々、そう答える。
「じゃ、なるべく早くね。準備もあるからさ」
そう言い残すと、ライデンは忙しそうに踵を返し、その執務室を後にした。
「…何だかねぇ…」
その、いつもにはない空気が、どうも胸に引っかかるところであるゼノンであった。
「…で?」
「いや、だからさぁ…」
声を潜め、こそこそと会話をしているのは、先程ゼノンの執務室を後にしたライデン。今度は情報局長官の執務室にいたりする。
因みに、今現在の会話は…と言うと、まだゼノンの発生日パーティーに関する触りの部分である。
「ね、協力してよ」
「…そう言われてもなぁ…」
「ダミ様とルークの許可は取ってあるんだ。後はあんたと、デーさんね」
「デーモンは人間界、だろう?」
「だから、行くのさ。人間界まで。許可貰いに」
「…御苦労なこって…」
小さな溜め息を吐き出すエース。
----どうしてこうも立て続けに、発生日に慌しいんだろうか…
エースの表情から、その言葉を読み取ったライデンは、同じように小さな溜め息を吐き出した。
「…御免ね、御騒がせしちゃって。でもさぁ、折角の発生日じゃない?去年祝ってあげられなかった分、今年は願いを叶えてあげたい訳よ。あんたの時も、ルークの時も、みんな同じ気持ちだった訳だし…まぁ、ゼノンのが一番、状況が難しいかも知れないんだけどさぁ…」
「御前の気持ちは、わからないでもないけどなぁ…一筋縄で行く相手ではないことは、御前が一番良くわかってるだろう?」
「わかってるよ。だから、こうしてみんなの協力を求めて歩いてるんじゃない」
「はいはい」
ポンポンとライデンの頭を軽く叩き、エースは諦めのような溜め息を一つ吐き出した。
「…ったく…このクソ忙しい時に…まぁ、しょうがないか」
それを了解と取ったライデンは、途端に満面の笑み。
「サンキュー!だからエースって好きだぁね」
「はいはい」
呆れた溜め息を吐き出しつつ、エースは煙草に火を付ける。
「…で、俺は何をすれば良いんだ?」
「あぁ、それはね……」
再び、声を潜めるライデン。他に誰も聞いている者はいないのだから、普通に話しても何の問題もないのだが…まぁ、これはライデンの心境の問題であるのだから、何も言えないのだが。
細かい事決めを終えたライデンがエースの執務室から出て行く後ろ姿を、溜め息で見送る姿があったことは、言うまでもない…。
ずっと昔に感じたこと。それは、確か…ほんの、些細な出来事だったはず。
----俺を、信じて。
その言葉は、今でもずっと呪文のようにその心に染み付いていた。
その言葉を信じようと思ったのは…どうしてだったか。そして、今尚その言葉が消えないのはどうしてなのか。
ふと、過ぎったそんな想い。
溜め息を一つ、吐き出す。そして、ぼんやりと向けた空は、彼の心と同じようにどんよりと曇っている。
「…今更、だよね…」
つぶやきを零してみて、やっとその胸の重さに気が付いた。
けれど、今更その想いに気づいたところで、どうなるものでもない。
それは、彼の諦め、だった。
その事態が変わるだなんて、その時の彼は思いもしなかった。
それは、発生日の当日。
「……大丈夫?」
そう問いかけられ、ふと我に返った。
「…あぁ、大丈夫」
心配される程ぼんやりしていたのかと、自責の溜め息を吐き出す。
「じゃあ、行こう」
すっと、差し伸べられた手。
「…手を繋ぐ理由って…知ってる?」
ふと脳裏に浮かんだ疑問を口にすると、相手はくすっと笑いを零した。
「手を握るのは、一番簡単なスキンシップでしょ?それを教えてくれたのはあんたじゃん」
「…そうか…」
すっかり忘れていたのは完全なる失態。
確かに、そこには理屈ではない確証がある。だからこそ…一番有効なスキンシップなのだ。
誰よりも傍に居る。一緒にいる。護っている。護られている。そんな、色々な感情を実感したいが為の。
だが、胸の中に僅かに渦巻く不安は、解消出来るだろうか?
「…行こうか」
小さな溜め息を吐き出し、手を伸ばす。
その手を握った、屈託のない笑顔。その表情に、幾度癒されたことか。
そして、今回も。それだけで、ほんの少し心が癒されていた。
けれど、消えない思いもまた、甦って来る。
好きだとか、愛しているだとか、そう言う事ではない。
ただ…本当は、誰よりも傍にいたかった。ただ、同じ時間をもっと共有していたかった。
その思いは…今でも消えることのない呪縛なのだと、今更ながらに実感していた。
辿り着いたのは、かつて彼らが住居としていた、人間界の屋敷。そこに集まったのは、かつての構成員…エースにルーク、ライデンに皇太子ダミアン。そして、主人公たるゼノン。未だ人間界で職務に当たっているデーモンは、遅れて来るとの連絡が入っていた。
本日は6月22日。ゼノンの発生日のパーティーは、そこで始まった。
当たり障りのない会話が続き、それになりにパーティーは盛り上がっていた。勿論、ライデンから渡されたプレゼントも、ゼノンが考えた末に選んだ、当たり障りのないモノ。
いつもの発生日のパーティーと違ったのは…何もかもが、何処か気が抜けたような、そんな雰囲気を漂わせるゼノンその悪魔にあることは、誰もがわかっていた。
だが、その雰囲気を打ち切ったのは…屋敷にかかって来た、一本の電話、だった。
「あぁ、ちょっと待ってて」
待ち兼ねたようにエースが席を立つ。そして、電話のある廊下へと消えて行くと、ルークもまた、席を立った。
「…どしたの?」
思わず問いかけたゼノンの声に、にっこりと微笑んだのはライデン。
「デーさんから、だよ。準備が出来たら、連絡を入れてくれるって言ってたから」
「…準備?」
今更何を準備するのかと、怪訝そうに首を傾げたゼノン。すると、今まで黙って見ていたダミアンが、くすっと小さく笑った。
「さて、それではわたしも参戦するかな」
「ダミアン様まで、何を…?」
「まぁ、少し傍観していろ」
訳がわからないのは、ゼノンただ一名。だが、直ぐにその状況はゼノンに降りかかって来た。
「……っ!?」
瞬間に感じたのは、屋敷の回りの時間が止まった、と言う感覚。勿論、それはダミアンによる仕業だろう。そしてその直後、まるでそれが合図であったかのように、かつての彼らの守備範囲(テリトリー)の中の総ての時間が止まった。
息を飲むゼノンの前、ライデンは何やら呪文を唱え始める。そしてその"術"が完成すると、何もない空間にぽっかりと穴が開いた。
「…どう言うこと…?」
「こう言うこと、だ」
思わず零した声に答えたのは、穴の中から聞こえた、デーモンの声。
「よぉ」
「…よぉ、じゃなくて…何なの、これは…」
思わぬ登場の仕方に呆れた溜め息を吐き出しつつ、ゼノンは再び問いかける。するとデーモンはくすくすと笑いながら、ゆっくりと穴から抜け出て来た。
「強力な"術"を結んでいる間は話もロクに出来ないから、吾輩が説明してやろう。つまり…だ。みんな、御前の発生日のプレゼントを届ける為に、こうして時間を止めて、空間を繋いだんだ。こいつを、連れて来る為に、な」
デーモンがそう言った瞬間、その背後からもう一名の姿が見えた。当然、その姿を視界に入れた瞬間、ゼノンは再び息を飲んだ。
「…久し振り」
「…石川…」
思いがけない姿。別れてから一度も、逢うこともなかった、自身の媒体。
「時間は三十分。その後は、石川は元の時間に戻さなければならないからな。時間は短いが…二名で話でもして来い」
「…デーモン…」
「発生日…おめでとう」
それは、二名に対しての、お祝いの言葉だった。
石川を連れて自室へとやって来たゼノンは、彼をベッドに促すと、自分は椅子を引き寄せてそこに腰を降ろした。
「…それにしても、どうして御前がここに…?」
そう問いかけた声に、彼は小さく溜め息を吐き出した。
「プレゼント、だってさ。俺の誕生日の」
「…は?」
「プレゼントの代わりに、御前に逢わせてくれる、って。ライデンから伝言頼まれた、って湯沢くんにそう言われた。それで、デーモンが連れて来てくれた、って訳」
「…成程ね。お互いがお互いへのプレゼント、ってことか」
小さな溜め息が、もう一つ零れる。
ホントに欲しかったモノ。それは、自分の媒体ともう一度、じっくり向かい合う時間。それを、誰よりもわかっていたのは…最愛の、恋悪魔。
考えてみれば、こうして媒体と向かい合うのはどれくらい振りだろう。
「御前は…俺に絶望しただろうね。信じて、って言ったのは俺の方なのに、俺は誰よりも早く、御前から離れた。御前を…裏切ったようなものだから…」
そう言葉を紡ぐゼノン。その口調も、当然重い。だが、向かい合った石川は、表情を変えなかった。
「そう、だね。御前は、俺に何も言わずに魔界に戻って、それっきりだったからね。でもそれが…御前の本心だったんだろうと思ったよ。俺が、御前に頼らずに歩いて行く為に。自立する為に、御前が俺に与えた道だとね」
「…石川…」
くすっと、彼が笑った。
「これでも、御前の媒体を何年もやって来たんだよ?覚醒前の一時は別として、それからは信じてない訳はないじゃない。だったら、答えは一つしかない。御前は、ずっと俺を大切に思っていてくれた、ってことしかね」
そう。だから、逢えなくても信じていられた。それを、絶望だとは思わなかった。
それが、自分が独り立ちをして生きて行く為に残された運命ならば。
「俺もね…正直、ずっと後悔してたんだ。御前と離れることをあっさり認めた自分に。ホントの気持ちを、はっきり言わなかった、自分自身に」
そう口を開いた彼を、ゼノンは真っ直ぐに見つめていた。
「俺は…御前から、沢山のモノを貰ったと思ってる。引き継いだ仕事も、恋人も、大事な仲間も…全部ね。だから、心配しないで。俺はこれからだって…ずっと、御前を信じているから」
「…石川…」
「何、その顔は」
そう言ってくすくすと笑う姿は、昔と寸分の代わりもない。勿論、お互いに少しばかり年は取ったが、それはそれで良い年輪なのだから。
大きく息を吐き出したゼノンは、にっこりと微笑む。
そして。
「御前と出逢えて…一緒に過ごせて、良かったよ」
----有り難う。
お互いににっこりと微笑み、自然と手を差し伸べる。そして、その手を硬く握り締めた。
何よりも硬い絆を、確認するかのように。
あっと言う間に約束の三十分が過ぎ、彼の媒体は再び元の時間の流れの中へと帰って行った。
そして、残された悪魔たちは、例によって例の如く、盛り上がった末に自室へと引き上げて行った。勿論、胸の痞えの取れたゼノンによって、気が抜けたパーティーもすっかり良い調子に戻った訳である。
ベッドに横になり、ぼんやりと天井を見上げていた彼は、小さなノックの音に、ふと我に返った。
「どうぞ?」
声をかけると、扉の隙間から顔を覗かせたのは、愛しい恋悪魔。
「ちょっと良い?」
「あぁ、どうぞ」
ベッドから起き上がった彼の隣に腰を降ろした恋悪魔は、その横顔を眺めつつ、小さな笑いを零した。
「やっと元気になった?」
「…まぁ、ね」
「良かった」
にっこりと微笑む姿に、彼も小さく笑いを浮かべる。
「石川への気持ちは…ずっと、胸の中に封じているつもりだったんだけどね。まさか、こんな時に掘り出されるとは思わなかったよ」
1999年12月31日のミサが終了した後、誰よりも先に魔界へと戻ったゼノン。それっきり、もう媒体には触れないと…逢うことはないと思っていたのだ。
何よりも、相手を思うが故に。
何も言わなくても、それを察してくれていた恋悪魔に、感謝の気持ちで一杯だった。
そんな気持ちを感じていたのか、にこにこと微笑む恋悪魔。
「だって俺は、あんたの恋悪魔だよ?あんたの気持ちぐらい、わかってるよ。それに、まだ湯沢との接触もあるしね。勿論、石川の気持ちもわかってるつもりだったから」
自分たちからでは、多分言い出せなかった気持ち。それを、この恋悪魔は代弁してくれたのだ。
逢いたい。ただ、その一言を。
彼はすっと腕を伸ばすと、恋悪魔の頭を引き寄せた。
「有り難うね」
「どう致しまして」
くすっと、お互いに笑い合う。
それは、久し振りに見せた、心からの微笑みだった。
何よりも素敵なプレゼントを、アナタに。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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