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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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PURE
こちらは、以前のHPで2003年04月26日にUPしたものです

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◇◆◇

 遥かなる、緑の大地。
 それは、永遠の憧れでもあった。

 彼がその場所を訪れたのは、とある存在に誘われたから。

◇◆◇

『ライデン、久し振りであるな』
 大空を漂う、大きな姿。それは、"龍神"の姿に間違いない。
「御無沙汰しております」
『わしも居るぞ』
 にっこりと微笑む彼…ライデン。そしてその上着の胸元から、小さな白龍も顔を覗かせる。それは、精霊界にいる彼の馴染みの老龍、"リィ"だった。
『これは、老主殿。御久しゅうございます』
 龍神の低い笑い声が聞こえ、その眼差しも柔らかさが伺えた。
「…で、ここはどの辺なの…?」
 辺りを見まわすライデンは、背中にその翼を構え、空高く舞っている。その眼下に見えるのは、一面の青い海。そして、遠くに見えるのは、こんもりとした緑が眩しい小さな島。
 かなり暖かいことから、彼が今まで住んだことのある場所よりも、遥かに南であることはわかるのだが…何故、自分がこの場所に誘われたのかもわからない。
『赤道にかなり近い場所じゃな。ここには、昔ながらの大自然が残っておるからのぉ』
 リィが、大きな赤い瞳を細めてそう言葉を紡ぐ。
『老主殿のおっしゃる通りである。そなたに、この"歌"を聞かせてやろうと思うてな』
「…"歌"?」
 龍神の言葉に、ライデンは小さく首を傾げた。
 今、彼の耳に聞こえるのは、海を渡る風の音だけ。長年、仲魔の"言魂"としての"歌"に親しんで来た彼にとっては、風の音を"歌"だと言われても、今一つピンと来ないのだが…。
 けれど、本当に龍神が指していたのは、その風の音、ではなかった。
『これは、一雨来るぞよ』
 空を見上げていたリィの声。その声にライデンも顔を上げてみれば、自分の遥か頭上に舞う龍神の姿。そして、集まって来る、鈍色の雲。
『濡れるのも、また一興、じゃ』
 笑いを含んだリィの声の直後、ライデンの頬に当たった、一粒の雨。
「ちょっ……てぇっ!?」
 途端に、小さな雨粒は大量の雨となった。勿論、空を漂っていたライデンもまた、それを避ける術もなく、頭からずぶ濡れ、である。リィは…と言うと、素早くライデンの上着の中に潜り込み、直接の被害を避けていると来た。
「もぉ、リィったら、自分ばっかり…っ!」
『バカモノ!少しは老龍を労わらんかい!』
 叩きつけるかのような強い雨に、ライデンは両手で頭を覆い、少しでも雨の衝撃を避けようとしている。当然、ライデンの懐に逃げ込んだリィは、雨の衝撃を殆ど受けてはいない。
 なす術もなく、しこたま雨に濡れるライデン。けれど、その雨も時が経つにつれて次第に弱まり、やがては鈍色の空の隙間から、青空も見え始めた。
『スコールで良かったのぉ』
「…スコールだって、濡れるモンは濡れるのっ!」
 ずぶ濡れになった頭をぶるぶるっと振り、濡れた髪の毛の雫を振り払う。まるでそれを待っていたかのように、リィはライデンの懐から這い出て来た。そして、大きく翼を広げ、自ら空を舞い始めると、大きな赤い瞳をライデンへと向けた。
『ほれ、そろそろ始まるぞよ。行こうかのぉ』
「行くって、何処へ?」
『良いから、わしに着いて来んか』
 そう言い残し、リィは先に立って眼下の小島を目掛けて飛んで行く。
「ちょっ…リィったら、待ってよぉ!」
 慌てて追いかけるライデン。その後姿を、空高く舞う龍神は、目を細めて見つめていた。

 リィの姿を追いかけて来たライデンは、その緑深い森が覆う小島へと降り立っていた。
 先に降り立ち、ライデンが来るのを待っていたリィは、その姿が見えると直ぐにライデンの片口へと飛び移ると、白い翼を畳んだ。
「…すっごいね~…」
 辺りを見まわしても、見えるモノは色の深い、緑の木々だけ。その所々に、見たこともないような花まで咲いている。そしてその全てに、先程のスコールの名残の水滴が付いていた。
『ほれ、静かにせんか!』
 しぃ~っ!と釘を刺され、ライデンは思わず口を噤む。そして、何かを待つかのように耳を澄ませるリィに従い、そっと目を閉じて耳を澄ませた。
 どれくらい経った頃だろう。吐息のような、微かな音が聞こえたのをきっかけに、その"音"は次第にざわめきを増し、それはやがて"歌"のように聞こえ始めた。
「…これって…」
 思わず目を開け、辺りを見まわして息を飲む。けれど、見えるのは先程と何も変わらない木々と花々。とすれば、この"歌"を謳うモノたちの正体は一つしかなかった。
『お主にも、聞こえるじゃろう?』
 片口に留まっているリィは身動ぎもせず、目を細めているだけだった。
「…うん、聞こえるよ…謳ってるね…」
 囁くような声で返したライデンも、身動ぎ一つしない。否、出来ない、と言うのが正しかっただろう。
 それは、息も吐けないくらい繊細で…それでいて、大きな"想い"を乗せた柔らかな"歌"だった。
 生命の雫を受けた森の…そして、その森を渡る、風たちが奏でる"歌"。それはまさに、森たちの"生命の息吹"に違いなかった。
『"歓喜の歌"じゃな』
「…うん…」
 リィもライデンも、再び目を閉じて、その"歌"を全身で受け留める。
 植物たちの、生命の躍動。この世界に息衝く、全てのモノたちの息吹。都会では感じられなくなったその鼓動が、この小さな島には集約されているようだった。

 どれくらい、時間が経ったのだろう。
 いつしか、"歌"は小さくなり、辺りに静寂が訪れていた。
 大きく息を吐き、ゆっくりと目を開けたライデンは、改めて辺りを見回した。
 木々たちを濡らした雨は、既に乾いている。"歌"が聞こえなくなったのは、その為だった。
 飢え、乾き行く植物たち。それを癒す雨は"生命の雫"であり、それを受け入れる時だけ、森たちは"歓喜の歌"を謳うのだ。
「龍神は…俺に、この"歌"を、聞かせたかったの…?」
 紡いだ声は、いつもよりも低い。
『御主にも、経験はあるじゃろう?』
 問い返したリィの声も、いつもよりも幾分低く感じた。
「うん…でも、"歌"を聞いた後は、酷く寂しかったよ。彼らの"生命の雫"を呼ぶことが出来る俺にも、彼らの"歓喜の声"は聞こえた。でも、この先、どのくらいその"声"が聞けるかもわからなかったし…それに、その行為が、一時凌ぎでしかないことがわかっていたから…」
『そうじゃのぉ…』
 ライデンの言葉に、リィも小さな吐息を吐き出していた。
『じゃがのぉ、それでも御主たちがいることが、この惑星にとっては生きる望みでもあるんじゃ。龍神もそれを悟っておる。その上で、こうして雨を降らせるのじゃ』
 リィの赤い大きな瞳が、空を見上げた。
 頭上のかなり高いところまで生い茂る木々。その更に上に見える青空。その透き通った色は、都会では見ることの出来なかった"蒼さ"だったのかも知れなかった。
『龍神がのぉ、御主を見込んだのは、その天性の能力だけではない。御主の純真な心を見込んだ、とでも言えば良いかのぉ』
「…俺の、心?純真って…俺は、もう子供じゃないっつーのに…」
 ぷぅっと、頬を膨らませるライデン。けれど、リィの声は真剣であった。
『純真であるから子供である、とは限らんじゃろう?モノ言わぬ植物たちの"歓喜"も"嘆き"も、純粋な心じゃから聞こえるんじゃ。御主は幾つになっても、その純粋さを持ち合わせておる。それが、御主に与えられた能力かも知れんがのぉ』
「…リィ…」
 ふっと、リィが目を細めて笑ったような気がした。
『純真(ピュア)な者のみが、聞こえる"声"じゃ。この木々たちの穢れを知らぬ"生命"の"歌"じゃ。まぁ、特権であるが故に、その声に胸を痛めることもあろう。じゃが、その胸の痛みを知っておるが故に、御主はその純真(ピュア)な心を忘れずにいられるのではないかのぉ』
 その言葉に、ライデンは大きく息を吐き出していた。
 それは、溢れそうな気持ちを…涙を、堪える為に。
『御主は、次期雷帝じゃ。龍神も期待しておる。しっかりせいよ』
「…うん…」
 きつく唇を噛み締め、懸命に笑顔を作って見せるライデン。その健気な姿にリィは目を細め、まるで動物が愛しさを現すかのように、ライデンの頬へと、その小さな頭を撫でつけた。

 彼らが再び空高く舞いあがった時、既にその空に、龍神の姿はなかった。

◇◆◇

 遥かなる、緑の大地。
 色とりどりの花が咲き乱れ、鳥たちは歌い、風は木々を抜ける。
 大古の昔より続くその景色を、覚えている者はいなくなるかも知れない。
 けれど、それでも…
 輝く緑の大地は、永遠の憧れであり続ける。
 その憧れを護り続ける存在がある限り。
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如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
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がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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