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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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REGRET 1
こちらは、以前のHPで2003年05月03日にUPしたものです
 6話完結 act.1

拍手[4回]


◇◆◇

 その変化は、何の前触れもなかった。
 不意に感じたのは、違和感。そしてその直後、エースは奇妙な悪寒を感じ、己の身体を両の腕で抱き締めると、吸い込まれるように膝から床に崩れ落ちた。
「エース様っ!?」
 物音を聞きつけてやって来たティムの、悲鳴のような声。それを、エースは意識の何処か遠くで聞いていた。

◇◆◇

 まだ、夜も白々としか明けていない時間に、その連絡はゼノンの元に届いていた。

「エースが倒れたって、どう言うこと?」
 慌ててエースの屋敷を訪れたゼノンは、出迎えたティムに早々にそう問いかける。
「…詳しいことは、わたくしには良くわかりません。ですが…とにかく、ゼノン様を呼ばなければと思いまして…」
 震える声でそう口にしたティムは、エースの寝室までゼノンを促す。
 ドアには、結界が張られている。そして、その隙間から感じる気に、ゼノンは僅かに眉を潜めた。
「…これって…」
 その声に、ティムはピクッと肩を震わせる。それでゼノンは何かを確信したらしい。
「…わたくしには…これが精一杯で…」
 小さくつぶやくと、唇をぎゅっと噛み締める姿を前に、ゼノンは小さな吐息を吐き出す。
「…とにかく、状況を見てみないとね……大丈夫だから。まず、みんなにも、連絡入れてくれる?」
「ゼノン様…」
 うっすらと涙の浮かんでいるその眼差しを上げたティムに、ゼノンは軽く微笑む。その微笑みの前に、ティムは小さく頷いて踵を返した。
 その背中を見送ると、ゼノンは大きな溜め息を一つ。それからドアの結界に触れる。
 抵抗はない。あくまでも空間をキープする為の結界であって、外部からの入室を拒否するものではなかったことに安堵の溜め息を吐き出すと、ゼノンはそのドアを開けて結界の中に足を踏み入れたのだった。

 ドアを通って部屋の中に入ると、そこは懐かしい気が満ちていた。そして、その部屋のベッドに横たわる姿。
「…これって…」
 その気から察しは付いていたものの、ゼノンは自身の目を信じられなかった。そこに横たわるのは悪魔ではなかったのだ。
 かつて見慣れた、人間の彼。
「…"清水"…?」
 傍に歩み寄り、思わずじっくりとその姿に見入ってしまう。
 眠っているのは、結界の影響だろうか。もし結界の影響が出ているのなら、余り長い間結界の中にいるのは危険である。しかし、この中の気を保たなければならないのだから、やはり結界は必要十分条件なのである。
 ゼノンはベッドの端にそっと腰を落とし、彼の額に手を置き、同調(シンクロ)するように目を閉じた。が、何も流れて来なければ、入り込むことも出来ない。
「……?」
 目を開けたゼノンの視線が、ふと行き合った。
「…えっ…とぉ…?」
 ゼノンが戸惑いの表情を浮かべるのを、その視線はじっと見つめていた。それが相手の戸惑いだと言うことは、ゼノンにも察することは出来ていた。
 改めて一呼吸置いたゼノンは、軽く微笑みを浮かべる。
「少し…話をしようか。声、出る?」
 小さな頷きが返って来たのを確認して、ゼノンはゆっくりと時間をかけて向き合うことを決めていたようだった。

◇◆◇

 日が高く昇って来た頃、ゼノンはリビングへと戻って来た。そしてそこで待ち構える、デーモン、ルーク、ライデンの姿を目にした。
「エースが倒れたとは…どう言う事だ?一体、何が起こったんだ…?」
 神妙な表情で言葉をかけて来たデーモンに、ゼノンは大きく呼吸をしてから、ゆっくりと言葉を紡ぎ始めた。
「まず…状況の説明から、ね」
 そう言うと、ゼノンは今わかる限りの状況を説明し始めた。
 何の前触れもなく、突然エースが倒れたこと。そして倒れたその身体を護る為にティムが作った結界は、人間界の気であること。そしてそこにいたのは…エースではなく、"清水"であったこと。そして彼自身、どうして自分がここにいるのか、理解出来ていない、と言うこと。
「エースではなく…"清水"…」
 口を割ったのは、ルーク。
「そう。気が動転していたとは言え、ティムの判断は的確だったと思うよ。使用魔とは言え、結界を扱えるティムで良かったよ。もしあのまま放っておかれたら、取り返しの付かないことになっていたかも知れないからね。既に人間界が存在していない以上、魔工的とは言え、人間界と同等の気でなければ"清水"は…消えていたかも知れない」
 ゼノンの言葉に、誰もが大きく息を吐き出す。
「…だが…どうして、"清水"が…」
 デーモンが、不安そうにゼノンに問いかける。
「何故、突然清水が出て来たのか、俺にもわからないし、本人も理解出来ていない。ずっとエースの中にいたとは言え…既に実体を持たない訳だからね。実体をもつ存在として自分が再び存在するとは、思ってもいなかったと思う。しかも清水は完全な人間であって、その身体にエースの魂はなかった。勿論、本体はエースの身体なんだろうけど…魂がない以上、エースは何処かに飛ばされてしまったと考えるしか…」
 答えたゼノンの表情も冴えない。確信のない答えに、ゼノンだけでなく、誰もの表情が暗く落ち込みかけていた。
 エースの行方は、まるでわからない。ただ、生きていると言うことだけは、清水の存在が確かにしていた。
 清水はエースの中のもう一つの魂。肉体は既に人間界と共に滅んでいるとは言え、エースが自我の中に封じていた、もう一つの自分の姿であることには変わりないのだから。
「彼奴もね、戸惑ってた。何故自分がここにいるのか、まるでわからないって。例えティムが結界を張ってくれたとは言っても、人間である清水には、結界の中で生き存える程の精神力も能力もないのが現状だよ。早く何とかしないと、清水の肉体が耐え切れなくて消えてしまう。そうなったら…エースは二度と、帰って来れなくなる」
「……」
 事態は、思った以上に深刻であった。

◇◆◇

 夕方になり、それまでいた構成員たちもデーモンを残して皆それぞれの役割を熟すべく、帰路に着いた。
 ゼノンは念の為結界を張り替えた後、前例がなかったかどうかを調べ、状況の整理。ルークとライデンは、エースの行方を捜している。
 そして、デーモンは…と言うと、立場上うろうろすることも出来ず、かと言って通常通りの職務に戻れる訳もなく。流石にデーモンの神経も図太くはないのだ。一度、直接話を聞かなければ…と、ただじっと、エースの屋敷で清水が会ってくれるのを待っていた。
 そして、ティムの説得の上、やっと清水がデーモンと顔を合わせることとなった訳である。

 エースの自室にかけられている結界を潜ると、途端に感じる気が変わる。懐かしい空気は、人間界の空気に他ならない。
 ベッドに横たわる清水を、部屋の端から視界に入れたデーモンは、小さな吐息を一つ吐き出した。
「…気分は…どうだ?」
 そう、問いかけてみる。
「…最悪」
 短く返って来た答えに、溜め息をもう一つ。清水は窓の方をじっと見つめたままで、デーモンの方を向こうとはしない。
「…エースは?」
 不意に、清水が問いかけた。
「行方は、わかったの?」
 続けてもう一つ、言葉が届く。
「いや…だが、ゼノンが状況を調べてくれている。それにルークとライデンも…」
「で?あんたはここで、何してる訳?」
 戸惑い気味に答えたデーモンの言葉は、清水のその棘のある言葉に遮られてしまった。清水は顔を巡らせ、デーモンに視線を向ける。その眼差しはとても冷たくて。
「狡いな、あんたは」
「…何だと?」
「だってそうだろ?エースは他の誰でもない、あんたの恋悪魔だ。なのに、当のあんたはここで何もしないで時間潰してるだけじゃないか。エースのことは…どうでも良いって訳か?」
「そんなことは…ただ、吾輩は…」
「言い訳は、聞きたくない」
 そうつぶやいた声に、デーモンは胸が痛かった。
 何も好き好んで時間を潰している訳じゃない。現実に戻れば、彼には職務が待っている。エースの行方を闇雲に捜す為の時間も自由も、副大魔王である今のデーモンには許されていないのだから。
「…エースは、必ず見つけるから」
 そう言葉を吐き出し、デーモンは清水に背を向け、部屋を後にした。

◇◆◇

 数日後、デーモンはゼノンの執務室を訪れた。
「あぁ、デーモン。いらっしゃい」
 執務室にデーモンを迎え入れた途端、ゼノンは大きな伸びを一つ。
「どうだ?何かわかったか?」
 そう尋ねる声も、期待は出来ない。何せ、ゼノンの表情は、朗報とはかけ離れていることをあからさまに、暗い表情だったのだから。
「一応、調べてはみたけどね…当然と言えば当然かも知れないけど、前例は一つもない。魂と肉体がばらばらになることはあったとしても、今回はそれだけじゃない。そこに別の魂が居座り…そして、生きている。ある意味、その身体に元々二つの魂が混在していないと、簡単には出来ない話だよね。普通は有り得ないもの。清水の魂を持っていたエースだから…出来たことなんだと思う。多分…本当に偶然、だよね」
「……まぁ…そうだよな…」
 話が予想外の方向に進み始めたと感じたデーモンは、溜め息を吐き出しつつソファーに腰を降ろす。
 その正面に座したゼノンは、暗い表情のデーモンにゆっくりと言葉を放つ。
「そう言えば、デーモン知ってる?溜め息を一つ吐くと、寿命が三分縮まるんだって」
「…それがどうした」
「ん?思い出しただけ」
 再び、溜め息を一つ。ゼノンの、何の脈絡もない話に、デーモンが呆れた表情と共に頭を抱えかけた時。
「…まぁ…色々調べてみたら、ちょっと気になることはあったんだけど…」
 声のトーンが変わったゼノンにデーモンは顔を上げる。目の前の表情も先程とは変わり、真剣そのものだった。
「これ、見てくれる?」
 机の上に置いてあった資料の中から取り出したのは、一冊の古い本だった。その本のページを開き、デーモンの前に置く。
「直接、今回のことに関係あるかどうかはわからないんだけど…ここね」
 『種族の特性』と綴られたページの、指定された箇所には、次のように述べられている。
《ある種の種族の中には、数億体に一つ、急激に魔力の衰える者がいることがある。数日で回復する場合もあれば、数年かかる者もいるとされているが、実体は定かではない》
 実に奇妙な言い回しに、デーモンは眉を潜める。
「…どう言う事だ?これが、エースに関係していると?」
「うん。多分ね。俺の予想が…大幅に、道を外していなければ」
 デーモンと己の前に紅茶のカップを置き、ゼノンはそれを一口飲んでから言葉を続けた。
「ここには、《ある種の種族》としか示されていないけれど、これを言い換えるなら、《ある種の特別な能力を持った種族》とも考えられる。また、別の箇所に書かれている文面で、《膨大な魔力を制御する何かを、内に秘めている》ともある。つまりそれは、俺の鬼面でもあり…エースの邪眼でもあると予測出来る」
 ゼノンの鬼面然り、エースの邪眼然り…ある意味、その内なる能力を制御する為のモノである事は明確である。だからこそ、邪眼の開いたエースの能力は想像も付かないのだが。
「それで、《急激に魔力の衰える理由》なんだけど…その辺はどうもはっきりしないんだよね。それが、内なる能力の影響なのか、新たな能力を手にする為に制御を促しているのか…そこまではまだ誰も解明してないんだ。勿論、研究材料として経験者を捜してはいたらしいんだけど…結果は無惨敗退。誰も好き好んで研究材料になんかならないってこと。その理由は一つ。種族にとって不利な情報があるとしか、言い様がない」
「では、エースは一体何処へ…」
「それなんだけど…ここには、《己の魔力を回復させるのに、尤も適した場所に、無意識の転移をする》としか、記されていないんだよね。エースにとってそれが何処に当たるのか…俺にはちょっと…」
「"GOD'S DOOR"とは考えられないのか?」
 それは、エースの発生場所。通常は、発生した場所が魔力を調整するには一番良い場所のはず。
「それも考えてみたんだけど…ちょっと難しいんだよね。元々、"GOD'S DOOR"は発生場所ではあるけれど、育った訳でもないし…あの場所は、あちこちと繋がってるからね、環境が常に一定じゃない。だから、成育には適していない地と分類されてるんだ。だから"GOD'S DOOR"で生を受けた者は、他の世界を育成場所として選ぶ傾向にある。勿論、エースも例外じゃない。だから、魔力の回復には適さないと思うんだけど…」
「そう…か」
 魔力の回復は種族によってその速さも異なるし、尤も適した場所もそれぞれなのである。種族に直接作用する何かによって、その場所は特定されるはずなのだが…エースについて、デーモンは聞いたことがなかった。
 エースの種族は発生した場所が場所であるだけに、今ゼノンが言ったように生誕の地は魔力の回復に適さない。そうなると、場所を特定するのは難しい。
 そして、エースが消えたと同時に出現した清水の存在。これもまた、理由がわからないことの一つである。
「そう言えば…清水のその後様子はどう?この前、会って来たんでしょう?」
 思い出したように尋ねたゼノンの言葉に、デーモンは思わず眉を潜める。
「その顔は…また、なの?」
「…まぁな」
 ゼノンの言わんとしていることを察したデーモンは、その通りであると答えを返す。
 未だ、清水に憎まれ口を叩かれるデーモン。出逢った頃ほど、強烈に嫌われている…と言う訳ではないと思う。その想いは、何となくわかっているはずなのだが…どうも上手く気持ちが通じないのも事実なのである。
「とにかく、清水が出現した理由も、さっきの話に通じるところがあるんだろう。だが、のんびりも出来ない…な」
 清水の様子を思い出しながら、デーモンはそう言葉を零す。
「結界にやられ始めてる?」
「多分…な。顔色も良くない。多分、吾輩の前だから…意地張って平然としているんだろうがな。だが、僅かずつ結界が崩れ始め、外部の気が混じり始めている。清水があてられてるのも、それが強いからだろう」
「そうだね。元々、魔界は人間の住む所じゃないもの。幾ら実体を得る為にエースの肉体を借りているとは言え、清水には辛いはずだよ。肉体的にも、精神的にも…ね」
「あぁ…時間はないな」
 もしも、清水が結界に耐え切れなくて消えてしまったとしたら…エースも同時に消えてしまう。今の清水はエースの内なる存在として、その生命の証なのだから。
 危機迫る状況が目の前にありながら、どうすることも出来ないもどかしさに、デーモンはただ、唇を噛み締めていた。
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