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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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SMILE 1
こちらは、本日UPの新作です
 3話完結 act.1

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◇◆◇

 至極の微笑み。
 その笑顔を手に入れられるのなら…満面の笑顔を向けて貰えるようになるのなら。
 その為に、何が出来るだろうか…?
 それはある意味、究極の選択。

◇◆◇

 ノックの音に、コンピューターの画面に向けられていた意識がふと引き戻される。
「…はい?」
 返事を返してから、改めて部屋の中を見回したが、自分以外誰もいない。となると、対応するのは自分自身。
 普段なら、返事を返せば相手がドアを開けて入って来ることが多い。中には、返事を返す前にドアを開けられることもある。まぁ、それは同じ研究室の同胞であることが多いのだが…今回の相手は、そうではないようだ。
 席を立ち、中からドアを開ける。すると、ドアの向こうに立つ悪魔が一名。枢密院の灰色の制服を着て、鮮やかな黄金色の伸びかけの後ろ髪を結んだ彼。真っ直ぐに前を向いたその顔は、青い紋様。
 士官学校を卒業してそのまま皇太子の御付役に就任し、異例の大出世と言われた彼は、デーモンという名だった。
「…あぁ、デーモン。久し振りだね…どうしたの?」
「…悪い。忙しかったか…?」
「大丈夫。良かったらどうぞ」
 促され、漸く足を踏み入れる。
「入って来ても良かったのに」
 思わずそう声をかけると、デーモンの足がピタリと止まる。
「いや…研究室だろう?何があるかわからないのだから、勝手に開ける訳にはいかないだろう?」
----そう、か。元々の育ちが良いんだ…
 相手の許可があるまで、勝手にドアを開けない。それだけで、相手の育って来た環境と、今置かれている状況を納得した。
「…そうだね。御免ね、俺一名しかいなかったから、開けるのが遅くなって」
 納得したようににっこりと笑うと、相手も漸く緊張していた表情が少しだけ緩む。
 促した椅子に腰を下ろし、周りを見回しながら様子を観察している相手を、彼も御茶を淹れながら観察していた。
 久し振りに姿を見た。それが、正直なところ。
 デーモンが枢密院に入局する前に、自分用の剣を仕立てに来た。それを担当したのが、彼だった。
 顔を合わせたことはなかったが、同期として同じ士官学校にいた。そして、卒業間際に漸く御互いの存在を認識した。メンテナンスも合わせ、その時の数回しか顔を合わせたことはないが、どうやら同期として多少気を許してくれているらしい。それは彼にも感じた。
 だがしかし。今回自分を訪ねて来た理由もわからなければ、現状も良くわかっていない。まぁ、相手は枢密院の超エリートコース。否応なしに噂ぐらいは耳に入る。
 どうやら…上手く馴染めていないようだ、と言う噂。それが本当か否か…当魔の顔を見れば、理解することは容易だった。
「…研究室は、初めて?」
 御茶を出しながら、彼は話のきっかけとしてそう問いかける。
「いや。研修生の頃…他に行先がなくて、一度だけ…文化局に研修に来たんだ。入ったのはクローンモンスターの研究室だったが…」
 苦虫を噛み潰したような顔。そんな表現がぴったり合う。そんな素の表情に、彼はくすっと笑いを零した。
「あぁ、あそこはね…賛否両論だし。研修生でクローンモンスターなんて、運が悪かったね。俺でさえ、入局してからだったのに」
 そう。クローンモンスターの研究室は、研修生からは頗る評判が悪い。意識を持たないクローンモンスターは、様々な研究に役立っているはずなのだが…培養中の姿や、最終的に処分される様子は見るに堪えない。彼でさえ、最初は戸惑って、自分の不甲斐なさを嘆いたくらいなのだから、研究室に慣れていない研修生に評判が悪いのは致し方ない。だからこそ、通常ならばその研究室に配属されることはない。だが、研修で行ったということは…何か余程の理由があったのだろう。
 突然そんなディープな話を切り出したところで、相手は多分口を噤む。だからこそ、彼もそれ以上深入りせず、話はそこで打ち切った。
 そうして、御茶を飲むデーモンの姿を改めて観察する。
 そして。
「…大丈夫?随分、疲れているみたいだけど…?」
 問いかけた声に、ふっと視線が合う。そして、小さな溜息が零れた。
「…疲れていない、と言ったら嘘になるだろうな。色々と…考えることが多いんだが…ふと御前のことを思い出してな…御前になら…吐き出せるかと……迷惑なら帰るが…」
「迷惑じゃないよ。頼って来てくれたんだもの。話し相手くらいにはなれるよ」
 折角、仲魔だと思ってくれたのなら。彼にとっても、各方面に交友関係を広げていくことに問題はない。
 にっこりと笑った彼の顔に、再び大きな溜息が一つ。そして、目線を伏せ…暫し。恐らく、何かを考えているのだろうと、彼も急かすことなくゆっくりと御茶を飲む。
 そうしている間に考えが纏まったのだろう。デーモンは再び小さく息を吐き出すと、ゆっくりとその言葉を紡いだ。
「…吾輩は…何処を目指せば良いのかが、わからない。吾輩の意思で入局した訳ではないから…目指すものが、見つからないんだ。そんな状況でも、ダミアン殿下の周りは経験のない吾輩にも、多くのモノを求める。勿論、ダミアン様の目の届く範囲であれば、酷過ぎる時には口添えをしてくれるのだが、いつもそういう状況ではない。士官学校を卒業したての若造に求めるには、高過ぎる要求だ。それを熟せと言われても難しいことも多い。何だか…うんざりすることも多くてな…だが、そうそう反論する訳にもいかないだろう…?」
「…そう…」
 その話は、わからなくはない。
 通常なら皇太子の傍に就く者であれば、それなりに経験を積んだ者が選ばれるはず。だが、デーモンは主席だったとは言え士官学校を卒業したばかり。経験も何もない上に、周りもみんな自分よりもずっと年上で経験も豊富。突然現れた新米に、優しく教えてくれる者もいなくはないが非常に少ない。諸々を含め、早々に壁にぶち当たった、というところだろうか。
「まぁ…適度に吐き出すしかないだろうね…」
 そう。ここは、自力で乗り越えるしかない訳で。今、自分自身も壁を目の前にしている、と言えなくもない。
 研究室の一つに配属されたものの、そこは馴れ合いの世界ではない。寧ろ、非常にドライでシュール。自分の仕事が終わればさっさと帰る。そこまで割り切れない彼は、未だに研究室に取り残されている。まぁ、そのおかげでデーモンに会えたのだが。
「皇太子殿下には…そのことを話してるの?」
 そう問いかけてみる。だが、デーモンは大きな溜息を吐き出すと、首を横に振った。
「…言える訳ないだろう…?普通なら、吾輩みたいな若造がそんなことを一々報告して、ダミアン様に余計な心配をかけるなど以ての外、だ」
「確かにそうかも知れないけれど…でも、現状を伝えることは大事じゃない?デーモンが自らその道を望んだ訳じゃないんでしょう?だったら尚更。引き込んだ以上、護る責任もあるんじゃない…?」
「…そう言われてもなぁ…」
 困ったように眉根を寄せる。勿論、それが出来ればどれだけ気が楽になるか。だが…それが出来ないから、モヤモヤしているのだ。
 再び、大きな溜息。だが…その後、ふっと何かを思い出したように顔を上げる。
「ここに、吐き出しに来ても良いか…?」
「…はい?」
 思わず首を傾げたものの…それは彼にとっては今も来ているのに何を今更、と言う思いもあったのだが…デーモンはそうは取らなかったらしい。
 すっと、顔色が変わった。そして、そのまま椅子から立ち上がる。
「…悪かった。調子に乗り過ぎた…」
「…え?…ちょっ…」
 それに気付いた時には既にデーモンはドアを開け、身体半分廊下に出ている状態。
 そして。
「…邪魔して悪かったな。御茶…御馳走様」
 慌てて立ち上がったものの、既に姿は消えていた。
「…拙いな…」
 思いがけない現状に、大きな溜息が零れた。
 傷つけたのは、間違いない。拒否したつもりではなかったのだが…確実にデーモンにはそう伝わったのだろう。
----折角、訪ねて来てくれたのに…
 申し訳ない気持ちと、不用意な自分の態度に、溜息しかなかった。


 その頃。足早に研究室を飛び出したデーモンは、顔を伏せたまま廊下を進んでいた。
----…顔見知りだからと思って、深入りし過ぎた…
 そんな後悔で一杯。廊下の真ん中を歩く自分の足元ばかり見ていたので、前方から来る姿には全く気付かなかった。
 黒い、情報局の軍服。そして外回り用の同色の軍帽と外套。デーモンが顔を上げて歩いていても、深く被った軍帽で顔の紋様は半分しか見えなかっただろうが。
 そして、すれ違う瞬間。当然、前方の相手はデーモンが避けるものだと思っていたのだが…気づいていないのだから、避けるはずもなく。一応、相手の方が少し避けたものの、その肩が軽くぶつかった。
「…失礼…申し訳ない…」
 そこで初めて、他悪魔とぶつかったことに気づいた彼は、俯いたまま頭を下げる。視界に黒い軍服が目に入ったものの、当然、相手の顔など見てはいない。そしてそのまま、走り去るかのように姿を消した。
 ぶつかった相手は、その挙動不審とも言える姿を見送りつつ、首を傾げる。
「…何だ、あれ…」
 枢密院の制服だということはわかっていた。だが、相手が俯いていたので、顔まではわからない。勿論、顔を見たところで全員の顔を覚えている訳ではないので、名前の判別は微妙だが。
 御互いに、相手の存在など気にも留めない。それは、何処にでもある些細な接触に過ぎなかった。
 そうしてやって来た相手は、今さっきデーモンが出て来た研究室のドアの前で立ち止まると、そのドアを軽くノックした。

◇◆◇

 再び聞こえたノックの音に、ハッとしてドアへと駆け寄る。そしてそのドアを勢い良く開けた。
「デーモ………あれ?違った…」
 先ほど出て行った相手が戻って来たのかと思って名前を呼びかけたが、そこに立っていたのは別の悪魔だった。
「…何だよ、藪から棒に…」
 小さな溜息と共に吐き出された言葉。
「…いや…御免…」
 思いがけない登場に、彼も小さな溜息を吐き出す。
「…さっき、廊下ですれ違った奴がいたが…引き止めたいなら、追いかけて行けば良かっただろうに」
 促されるままに研究室に踏み込んだ相手の言葉に、彼は困ったように眉根を寄せた。
「他に誰もいないから…研究室を留守に出来なかったし…」
 咄嗟に追いかけることが出来なかったことが申し訳ない。そんな表情に、相手は呆れたように小さく首を横に振る。
「だったら、ちゃんとフォローしとけよ。御前がそんな顔するくらい執着しているなら、な」
「…執着、って…そういう訳じゃないんだけど…」
 そう言いながらも、ちょっと考える。
 執着しているかどうかは別として…誤解だけは、解かなければ。
「…で、エースはどうしたの?来るって聞いてなかったけど…」
 改めてその用件を聞くと、相手は再び溜息を吐き出す。
「あぁ…急に出発になったもんでな。頼んでいた資料を引き取りに来たんだが…出来てるか?」
「それで、その恰好なのね。資料は出来てるよ。ちょっと待ってね」
 士官学校時代、研修で顔を合わせた先輩。そこからの付き合いの相手は、今情報局で外回り専門。だが、帽子や外套までは余り見かけない。つまり、本当にこのまま出かけるのだろう。
 頼まれていた資料の束を手渡すと、ざっと目を通して確認すると、そのまま畳み込んで軍服の内ポケットへとしまい込む。
「忙しいところ悪かったな。助かった」
「こちらこそ。良い勉強になったよ。有難うね」
 ただの雑用係ではなく、彼自身も色々な知識を得る為の一つの手段として、時々資料を纏める手伝いをしてるのだが、今のところ需要と供給のバランスは取れている。
「じゃあ、な」
 研究室を出て行く背中。その背中が…先ほど出て行ったデーモンと重なる気がした。
 追わなければ…多分、今後向こうからの接触はない。
「エース…!」
 思わず呼び止めると、少しだけ振り返る。
 そして…小さく、笑った気がした。
「帰って来るまでに、何とかしとけよ」
 軽く手を上げ、その物言いたげな視線を振り払って行く背中を、彼は溜息と共に見送ったのだった。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
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但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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