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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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SMILE 2
こちらは、本日UPの新作です
 3話完結 act.2

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◇◆◇

 翌日。彼は意を決したように、枢密院へと足を運んでいた。
 だがしかし。一歩枢密院に足を踏み入れた途端、自分の場違いさ加減に溜息が零れた。
----デーモンは良く、ここで働いていられるよね…
 改めて、溜息を一つ。
 自分ならば、士官学校を卒業して直ぐにここで働くなど、想像もつかないだろう。それだけで、気苦労を背負うのは当然のこと。
----やっぱり、誤解したよね…
 考える度に、申し訳ない気持ちになる。そして、昨日馴染みの仲魔に言われた通り…ちゃんと、自分でフォローしなければ。
 意を決し、受付へと向かう。そして、IDカードを差し出しながら口を開いた。
「あの…文化局のゼノンと申します。皇太子付きの、デーモン様に面会をしたいのですが…」
 差し出されたカードの内容を確認しながら、彼へと視線を向け、同一魔だと確認をする。
「デーモン様は、只今外に出ておりますが…アポイントメントを御取りですか?」
 問いかけられて、一瞬口を噤む。
「いえ…」
 まさか、そこまで厳しいとは思っていなかった。上層部になれば基本的には面会にはアポイントメントが必要なのだが、自局の場合はそこまで厳しくはない。なので、当然頭から抜けていた。
「…アポイントメントは取っていないのですが…」
 改めてそう言ってみると、受付魔は表情一つ変えずに言葉を返す。
「では、御取次ぎ出来かねます。アポイントメントを御取りの上、もう一度御来庁下さい」
「…はぁ…」
 もう、どうにもならない。諦めた彼は、小さな溜息を吐き出して踵を返す。そして気落ちするまま、近くのソファーへと腰を下ろした。
 ここで会えないとなると…出待ちをするか、夜に宿舎へ押しかけるぐらいしかないのだが…上層部ではない自分や昨日の馴染みの仲魔ぐらいであれば、未だ所属する庁の宿舎に住んでいるのだが…経験年数が同じでも皇太子付きのデーモンなのだから、宿舎に住んでいない、と言う可能性もなくもない。
「…さて、どうするかな…」
 顔を伏せ、頭を抱えて悩んでいると、受付の前を通り過ぎる数名。
「御帰りなさいませ」
「ただいま」
 受付魔の声に、透き通る声が返る。その声にふっと顔を上げると…その一行が目に入った。
----あれは…軍事局のルシフェル参謀長…だっけ?その後ろは…ダミアン殿下?……って…
 直接会ったことはないにしろ、有名なルシフェル参謀長。そして肩までの柔らかな金色の巻髪に、紋様のない肌色の肌。噂に聞く皇太子ダミアンだろう。
 そして、その背後に…まるで気配を消すかのように、目立たないようについて歩く姿。
「………デーモン!!」
 思わずソファーから立ち上がり、大きな声を上げる。途端、当然ながらその場にいた全員の視線が彼へと向く。
「…ゼノン…?!」
 名を呼ばれた相手…デーモンも、驚いた表情で歩みを止めた。
「…どうして、ここに…?」
 いるはずのない相手が、そこにいる。当然、デーモンが驚くのも無理はない。
 だが、彼はそこまで気が回らず。唖然とする一行に向かって小走りに近づく。その瞬間、ハッとして先頭を歩いていたルシフェルがダミアンの前へとすっと移動するが、目当てはその後ろのデーモンなのだから、その行動は完全にスルーだった。
「あの…っ!御免、俺…勘違いさせたんじゃないかと思って……それで、謝らなきゃ、って…」
 慌ててそう口にした彼に、デーモンは小さな溜息を一つ。
「いや…別に、謝らなくても良いんだが…取り敢えず、ここではちょっと……」
 そう言われ、ハッとして周囲へと視線を向ける。当然、唖然としている視線に囲まれ…それを認識した途端、真っ赤になって口を押えた。
「……御免…」
 零した声は、デーモンへと届いたが、どう反応して良いものやら…と、些か困惑している。
 するとそんな一部始終をじっと見ていた主…ダミアンが、にっこりと微笑んだ。
「デーモンに用事かい?だったら、場所の提供をしようか?執務室の隣が空いているしね?そこで良いだろう?デーモン」
「え……?」
「殿下…っ!?」
 突然の提案に、ルシフェルが一番驚いている。
 それもそのはず。彼に出会ったのは、ダミアンもルシフェルも多分初めて。ただ、デーモンを呼び止め、何やらただ事ではない様子を前に、中へ引き入れようというのだから無理もない。
「殿下、流石にそれは…」
「デーモンも知らない相手ではないようだしね。珍しいじゃないか。ねぇ?」
 困惑した表情で彼へと視線を向けるルシフェル。当然、それを受ける彼も困惑しているのだが…デーモンは小さな溜息を一つ。恐らく…ダミアンの行動パターンを把握しているから、なのだろう。
「ほら、行くよ。えっと…ゼノン、と言ったかな?君もおいで」
 にっこりと微笑まれ、腕を掴まれたら既に抵抗は出来ない訳で。
 困惑顔の面子を引き連れ、御機嫌なダミアンは自分の執務室へと向かったのであった。


 皇太子の執務室の中に足を踏み入れた彼は、されるがままに、奥にあるドアの前まで連れて行かれる。そしてそこで振り返ったダミアン。
「隣の副大魔王の執務室へと行く間に、小部屋一つある。そこを貸し出そう。だから、しっかり話をしておいで」
 そう言われ、デーモンと彼は小部屋へと押し込まれる。
「…宜しいのですか…?」
 既に事を見守ることしか出来ないルシフェルの声に、ダミアンはにっこりと笑いを零す。
「大丈夫。デーモンの仲魔、だからね。心配はしていないよ」
「…はぁ…」
 いつものことながら…ダミアンの唐突な発想には、頭を抱えるルシフェルであった。

 さて、小部屋に押し込まれた二名は…と言うと、双方、困惑している。
「…あっと…悪かったな、ダミアン様が強引で…」
 先に口を開いたのは、デーモン。
「…いつもこうなの…?」
 普段関わりのない皇太子のことは、未だ良くわからない。そんな表情を浮かべる彼に、デーモンは溜息と共に小さな頷きを返す。
「そうでなければ、若輩者の吾輩がここにいることもない」
「…成程、ね…」
 その唐突さを一番身近で経験しているデーモンの言葉は、確かに重みがある。
「…それで。どうしてここへ?わざわざ、謝る為に…?」
 当初の用件を思い出したデーモンは、改めて口を開く。
 その言葉に、彼もここへ来た理由を思い出した。
「あぁ、そうだ。謝らなきゃ、と思って…」
「…謝られることはないと思うが…」
 再度聞いた言葉に、デーモンは溜息を一つ。だが、その表情はどう見てもすっきりしていない。その証拠に…視線が、合わない。
「誤解したと思って」
「…誤解…?」
「そう。俺は…吐き出しに来ても良いか、と…改めて、問いかけられる必要はないと思ったんだ。だって、現にデーモンが目の前にいて…俺に吐き出してくれていたから。改めて問わなくても…気を許してくれた、仲魔だと…思っていたから……でも、デーモンの表情は、そう受け取らなかったんじゃないかと思って…」
「…ゼノン…」
 その、金色の眼差しが彼を見つめた。
 彼の、碧の眼差しは、真っすぐにデーモンを見つめていた。
「不安にさせて御免ね。吐き出しに来てくれたんだから、俺がそれを一番わかっていなきゃいけなかったのに…」
 澄んだ碧色。そこに、誤魔化しや偽りなどは見えない。ただひたすらに、心配そうに。
「…変わっているな、御前。わざわざそんなことを言いに、ここまで来なくても良さそうなものを…それとも、枢密院との貴重な関係を切りたくないから、か?」
 思わず出たデーモンの言葉。それはある意味、自分以外にもこうして必死にしがみつこうとするのか?との意味を含んだ、あからさまな嫌味にも聞こえる。
 けれど…彼は、にっこりと微笑んだ。
「御前だから、ね。折角知り合った"同期"だもの。この縁を、大事にしたいと思っただけ」
「…そう、か…」
 その表情を見るに…多分、今までそういう扱いをされて来たのだろう。自分を追って来るものは、デーモン自身ではなく…彼の周りで甘い蜜を吸おうと考える者。自分の存在そのものを必要とされていなかったのではないか、との疑心暗鬼。だから…そんな憂いが、こんなにも惹かれるのだ。
「…誤解のないように、言っておくけれど…」
 彼は、小さく息を吐き出して少しだけ目を伏せる。
「上手いことは言えないけれど…俺は"デーモン"と言う悪魔に、興味を持った。もっと御前を知りたいし、親しくなりたい。変な意味じゃなくて…普通に"仲魔"として、ね」
「………」
 相も変わらず、真っすぐに彼を見つめる眼差しに、彼は再び顔を上げる。
「俺は、自然発生で生まれも普通だし、御前のように主席で卒業出来るほど勉学に長けている訳でもない。剣術や武術に長けている訳でもない。ただ、研究は好きで…呪術に関しては、多少他悪魔より扱える、という程度。他悪魔に自慢出来ることはない。でも…俺は自分で選んだ道だから、迷いはしない。だからこそ、自分に出来ることは精一杯やるよ。研究もそうだし、他にやりたいこともある。その為に、外部にも交友関係を広げるのも有りだと思う。自分にない知識を、広げることが出来るでしょう?専門職って言うのは、強みだからね」
「…成程、な」
 ほんの少し、その表情が緩んだ気がする。
 確かに、デーモンにも不得意な分野はある。それを補える仲魔がいるのなら。そう考えると…彼の言うことも尤もだと納得は出来る。
 そんなことを考えていると、彼はもう少し、踏み込んだ。
「ねぇ、デーモン…士官学校時代、そう言う仲魔はいたんでしょう?全くの一悪魔、って言うことはなかったんでしょう…?」
 完全に孤立していたのなら。寧ろ、その方が噂になっていただろう。主席で卒業したくらいの実力がありながら、ひっそりと過ごせていた理由は、きっとその存在を護っていてくれた仲魔がいたはず。そう踏んで問いかけた言葉に、デーモンは小さく頷いた。
「士官学校の時はな、一名…妙に世話を焼いて来る奴がいたんだ。ダミアン様のところに来る決断をしたのも、彼奴の後押しがあったからだ。だが、軍事局に入り、そのまま…郊外の部隊に移って行ってしまってな。それっきりだ…」
「そうだったんだ…」
 その唯一とも言える仲魔が、何を思って王都を去ったのか。理由は色々あるだろうが…本局はどうしても在籍数が多い。なるべく早く身位を上げ、強くなるには、在籍数の少ない郊外の部隊に入るのも一つの方法なのだ。暫く王都を離れることにはなるが…若しかしたら、その仲魔も、それを熟慮した結果だったのかも知れない。
 デーモンを…護りたいと、本気で思っていたのなら。
「…本当に大事な仲魔、って…どうやって見つけたら良いのか、俺にも良くわからないよ。だからこそ…直感力をね、大事にしようと思ったんだ」
「…直感…?」
 少し、首を傾げるデーモン。
「そう。仕事を始めてから、色々と出会いが増えたけれど、全員が俺に興味を持つ訳ではないし、それは俺も同じ。だからこそ…直感力。何日経っても気になる相手っているでしょう?この悪魔との縁を、切りたくない。そう思う相手には、全力で向かおう…とね。だから…ここに、来たんだ」
 にっこりと、微笑む。
「…全力、で…?」
「そう、全力で」
 その答えに…デーモンは、くすっと小さな笑いを零した。
「変わってるな、御前」
「ここに来て二回目、ね。その言葉」
「あ…そう、か…」
 だが、その表情は先ほどまでとは違って、随分和らいだように見えた。
「ここに来て、正直…俺が今まで立ち入ったことがないような雰囲気だと思ったよ。下の受付でそれだもの。仕事中なんてもっと大変なんだろうね。でも…だからこそ、その状況を良く理解出来る"仲魔"がいた方が良いと思う。俺も、御前の吐き出したいことは何でも聞くよ。でも…俺は、御前の仕事のことは良くわからない。持ち出せない話もあるでしょう?御前は、ダミアン様には色々話せないと言っていたけれど…本当は…話して欲しいのかも知れないよ…?」
「…どうしてそう思う?仕事以外に、厄介ごとを持ち込まれるんだぞ?望む理由がわからないだろう?」
 怪訝そうに眉を寄せるデーモンに、彼は小さく頷く。
「確かにね。普通はそうだろうけれど…でも、ダミアン様は違うと、俺は思った。そうでなければ…突然訪ねて来た俺を、ここへ連れて来ることはない。身位もない上に、初対面だよ?もし俺が、何かしようと企んでいたら?安易に中に引き入れることがどれだけ危険なことか、ダミアン様は良くわかっていると思うよ。現に、ルシフェル参謀長は、俺が近寄ったらダミアン様の前に立って盾になったでしょう?それが普通なんだ。でも、御前と関りがあると考えて、俺をここへ連れて来た。御前を…心配してたから、じゃないの?御前が、酷く高いと思っている目の前の壁は…思っているよりも、高くはないのかも知れない。一番傍で、心配してくれる相手がいるんだもの。その関係を、大事にするべきだと思うよ」
「………」
 目の前の壁は、思っているよりも高くはない。
 その一言に…デーモンの中で、何かが見えたような気がした。
 "直観力"。それを、身を以って感じた。
 何やら考え始めたデーモンの姿に、彼も一抹の不安を抱きつつ…それでも自分が蒔いた種だ、と腹を括って頭を下げた。
「急に来て、勝手なこと言って…御免ね。御前が俺に吐き出しに来てくれたから…俺も、俺なりの想いを御前に伝えたかったんだ。これに懲りず、仲魔だと思って貰えると有難いんだけど…」
 頭を下げたまま、上目遣いで視線を向ける彼に、デーモンは小さな溜息を一つ。そして。
「いや…こちらこそ、有難うな。持つべきものは…"大事な仲魔"、だな」
 くすっと、笑いを零す。そして差し出された手。
「今更だが…宜しく、な」
「デーモン…」
 にっこりと、笑う笑顔。その柔らかな眼差しと、少し照れたような笑顔に…彼も、にっこりと笑うと、居住まいを正して差し伸べられた手をしっかりと握った。
「宜しく」
 御互いに、何でも吐き出せる仲魔になれるように。その願いを込めて。
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