聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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Song for you
6月の中旬と言えば、梅雨真っ只中。当然、雨の日が多いんだけど…今日は、朝から日差しがあった。
束の間の晴れ間。仕事も休みなので、写真でも撮りに行こうかと準備をしている最中に、電話があった。
『俺、俺。今日、暇?』
発信者の名前が表示されるから、出る前からわかってはいたけど、一瞬、俺俺詐欺かと思ってしまう…。
「…暇だけど?でも、写真撮りに行こうかと…何か用?」
問い返した声に、相手は笑った。
『デートしよ。折角晴れたから、動物園!ほら、写真も撮れるし』
「…動物園って…別に俺は、動物が撮りたい訳じゃないんだけど…」
『たまには良いじゃん。誕生日でしょ?御祝いしてあげる』
「……わかったよ。何処行くの?」
多分…彼の中では既に決定事項で、残念ながら俺に拒否権はないんだ…。
今更、誕生日を祝われたところで、また一つ年を重ねるだけの話だもの。そんなに、感慨深いものでもないんだけどね…。まぁ、祝ってくれると言うんだから、大人しく応じようか…。
俺たちは待ち合わせ場所を決め、昼には無事に再会することが出来ていた。
簡単に昼食を済ませ、まだ割りと早い午後の時間に動物園に到着した。
流石に平日の動物園に子供の姿はなく、大人たちがちらほらいるくらいだった。
デートのカップルだったり、俺と同じようにカメラを持った人たちだったり。中には、独りでぼんやりとベンチに座って動物を見ているくたびれたおじさんの姿もあったり。
俺ももしかしたら、そっち側かも…と思いつつ、テンションの高い彼を追いかけて歩いていた。
「ねぇ、ほら見て。ぞうがう●●してる~」
げらげらと笑いながら報告してくる姿に、何がそんなに楽しいんだろう…と思わず苦笑する。
だって、う●●なのに。まぁ、動物だからね、羞恥心とか関係ないし。自然現象だから、それを笑うのもどうかと思うけど…。
ぼんやりと後を追いかけている俺にふと気が付いたのか…彼は、足を止めて俺を振り返った。
「…ねぇ…楽しい?」
「…まぁ…楽しいよ」
「…楽しそうに見えない…」
「………」
今更それに気付いたところで…この後ずっと、気まずいと思うんだけど…。
「…御免…」
ベンチに座り、大きな溜め息を吐き出す姿。その横に座り、俺も小さく溜め息を吐き出した。
「…そうじゃないよ。楽しいよ?でも、ちょっと疲れただけ。ほら、一杯歩いたでしょ?俺は、動物を見るより…楽しそうな御前を見てる方が楽しい…かな?」
「…石川くん…」
俺は、くすっと、小さく笑った。
だって、そうじゃない?興味の薄いモノよりも、興味があるモノを見ている方が楽しいのは当たり前だもの。
「有難うね。誕生日、覚えててくれて」
思わずそう零した言葉に、小さく笑う声。
「…ねぇ、覚えてる?最初に、"俺の誕生日"祝ってくれた時のこと」
「覚えてるよ。水族館、行ったよね。その後、ご飯食べて…屋敷で、みんなでパーティして…」
もう、随分前の話だ。その後はずっと、主たる悪魔と一緒だったから、多分…"人間"としての俺が祝った…最初で最後のお祝いだったはず。
「…あ、もしかして…あの時水族館だったから、今日は動物園?」
「…今頃気付いたの?鈍いなぁ~」
くすくすと笑う声に、俺も笑いを零した。
「何年越しだかもうわかんないけどね。俺の野望だった訳よ。誕生日に水族館と動物園行くの。何か、平和で良いじゃん?」
「…まぁ、ね」
ベンチに座ったまま、ぼんやりと空を眺めていたりなんかすると…時間が、のんびりと流れている気がする。
「あんたはまだまだ忙しいでしょ?だから、たまにはのんびり…ね」
「自分だって忙しいくせに」
忙しいのはお互い様だし、仕事があるだけでも有難いと思ってるし。
まぁ俺にしてみれば…半分趣味みたいなもので、変わらずに、色んなところで弾かせて貰って楽しませて貰っている、って言う感覚だけど。
「今日は俺んちでご飯ね。準備して来たから」
「…湯沢くんが作るの…?」
「…行ってからのお楽しみ」
くすくすと笑う横顔は、とても楽しそうで。
まぁ…楽しみにしていようか…。
すっかり日が落ちた頃、雨が降り出して来た。
家まであと少し…と言うところで雨に降られてしまって、ちょっと悔しい…。
玄関に入ると、彼は先に奥へと入り、タオルを持って帰って来た。
「シャワー入る?」
「大丈夫。思ったほど濡れてないしね」
「そう?じゃあ、ちょっとだけ空気の入れ替え」
そう言うと、一旦窓を開ける。
6月とは言えもう後半だし、梅雨時だし…窓を開けても湿っぽいし、結構蒸し暑い。でも…多分、煙草の臭いを気にしてくれたんだろう。
5分ぐらい空気の入れ替えをしている間、キッチンでは何やらガサガサと物音が続いている。何をやっているのか気にはなるけど…まぁ、大人しく待っていることにした。
すると、キッチンから声がした。
「ビールで良い?」
「…俺は何でも」
「OK~」
そう言うと、缶ビールとグラスを持ってやって来る。それをテーブルの上に置くと、窓を閉めてエアコンを入れた。
「御免ね、暑かったでしょ?」
「大丈夫。気にしないで」
実に甲斐甲斐しく準備をする姿を眺めながら、小さく笑いを零す。
確かに…悪魔でいる時は、大勢でパーティーだったから、こんな風に祝って貰ったことはなかった。
どっちが良いとか、そう言う問題ではないけれど…二人きり、と言うのもまた楽しいかも知れない。
「ほい、お待たせっ」
そう言いながら持って来たのは、小さなホールケーキ。それから綺麗に盛り付けられたオードブル。
「…おぉ…」
「メインはまた後で持って来るね。取り敢えずお祝い。ロウソク一杯刺さんないから、一本だけね」
笑いながらそう言って、ケーキの真ん中にロウソクを刺して火をつけた。そして電気を消すと、俺の前にちょこんと座った。
「…御免ね。デーさんみたいに上手に歌えないけど…」
前以てそう宣告すると、彼はハッピーバースデーの歌を歌ってくれた。数年振りに聞いた、その歌声。
リズムには強いけど、メロディーには滅法弱い。そう自負する彼は、多分自分で思っているよりも下手な訳ではないけれど…普段は絶対に歌なんて歌ってくれない。それなのに…今日だけは特別。それだけで、もう十分なプレゼントだった。
「…ほら、ロウソク消して」
久し振りに聞いた歌声に浸っていると、そう声がかかる。顔を上げてみれば、ロウソクの炎の向こうに、照れたような顔が見えた。
「うん」
ふっとロウソクを吹き消す。
「…おめでとう」
暗くなった部屋の中、そう声が聞こえた。そして、ぎゅっと抱き締められる。
「…湯沢くん…?」
「これからもずっと…祝ってあげるね」
その言葉と共に、そっと重ねられた唇。
それは、とても優しくて…温かくて。
「…有難う」
その一言を紡ぐのが、精一杯だった。
抱き返したその腕の中で、小さく笑った声が聞こえた。
顔は…うっすらとしか見えない。けれど、真っ直ぐに向けられた眼差しはわかった。
「"これ"…貰っても良い?」
小さくつぶやいた声に、再び笑いが零れる。
「あげるよ。幾らでも」
耳に届くのは、くすくすと笑う声と…窓の外から聞こえる雨の音。
そして…。
ぐぅ~~っ…。
「…御免…」
「ご飯…食べようか…」
思わず、笑ってしまった…。
電気をつけると、赤くなった顔が見えた。
「時間はあるんだから。取り敢えず食べよう。俺もおなか空いたし」
「…うん」
彼は笑って再び俺の前に座った。
「食べよっ」
「うん。頂きます」
取り敢えず…空腹を満たすことが先決か。
用意してくれた食事は、とても美味しかった。
まぁ色々あって…結局泊まることになったので、シャワーを借りて部屋に戻る。すると、テーブルの上にリボンの掛かった小さな箱が一つ置いてあった。
「それがホントのプレゼントね。開けて見て」
言われるがままに、俺はリボンを解くと箱を開けた。
中に入っていたのは、銀色の鎖の先に小さな輪が付いているネックレス。
「…ネックレス?」
「そ。リングホルダーネックレスって言うんだ」
「…リングホルダー…?」
何だそれ…?と、ピンと来ない俺の表情を見て小さく笑った。
「まぁ、見てて」
そう言うと、箱のネックレスを取り出すと、更に鎖から輪を抜き取って左右に開いた。
「おぉっ」
思わず感嘆の声を上げてしまった…。まさか開くとも思わなかったから。
「…でね。これを…填める」
そう言うと、ポケットから何かを取り出して小さな輪にそれを通し、元通りに閉じて鎖を通した。
そして、俺の首に腕を回すと、そのネックレスを留めた。
「…こう言うこと」
そう言った顔は、ちょっと赤い。
「…成程…」
俺の胸元にあるのは、輪を通してネックレスの先に付いた指輪。
「だから、リングホルダーね」
それ専用のモノがあるとは露知らず。でも、俺のその反応は…彼には不服だったようだ…。
「…ってかさぁ、もっと他に気になるところがあるでしょ?」
「…まぁ…」
…何と、答えて良いか…。
「えっと…この指輪は…?って聞くのが正しい…んだよね?」
「…鈍いっ」
「…御免…」
本当のことを言えば…わかってはいた。ただ…どう言えば良いのかわからなくて。
そんな俺の顔を眺めながら、彼は小さく息を吐き出した。
「俺ね…デーさんとエースが、ちょっと羨ましかったんだ」
「…デーモンとエース?ゼノンとライデン、ではなくて…?」
思わず問いかけた声に、頷きが帰って来る。
「デーさんとエース。ほら、やってたでしょ?誕生日に指輪。凄いベタだけどさ、何か良いじゃん?ライデンはともかく…俺がやりたかったの。でも、ゼノンも石川くんも…俺もだけど…指輪しないし…邪魔になるでしょ?だから…こうなったのさ」
「…そうなんだ…御免ね、気付かなくて…」
アクセサリー自体、そんなに気にしたことがなかったし…ゼノンも、魔力を制御すると言うピアスはつけていたけど、指輪とかネックレスとかはつけてなかったし。
「…貰ってくれる?"全部込み"で」
「…うん。有難う」
ほんの一瞬考えたけど…にっこりと微笑む。全部込み、と言うことは…まぁ、"全部"、なんだろう。問いかけた方も、当然その意味で…ちょっと赤くなっていたりする。
「…じゃあ…お前の分は、次の誕生日で良いかな…?」
俺だけつけているって言うのも…ねぇ。だからそう問いかけると、更に顔を赤くして俯いてしまった…。
「…まぁ…それは、あんたに任せるから…」
「…わかった。じゃあ、楽しみにしててね」
いつもの、無邪気で大胆な姿も好きだけど、こんな風に急に初心みたいに真っ赤になる姿も、とても愛おしい。
もう一度、この顔を見る為には…忘れないようにしないと。
小さく笑いを零した俺は、改めて首から下がっているネックレスと指輪に視線を向けた。
「似合う?」
問いかけた声に、暫く俺を眺めていたけれど…やがて笑いを零した。
「見慣れないから、チャラいおっさんみたい~」
「どうせ似合いませんよ」
「いやいや。似合うよ~。見慣れないだけで」
くすくすと笑う姿に、俺も思わず笑いを零す。
俺は腕を伸ばし、その身体を抱き寄せた。
「…有難うね。大事にするよ」
「…大事にしてね」
くすくすと笑いながら、その視線を合わせる。柔らかいその眼差しに…思わず。
「じゃあ…さっきの続き」
「良いよ」
笑いながら、頬を傾ける。
「…そうだ。もう一つ、御願い」
「…何よ」
唇が触れる寸前で口を開いた俺に、目の前の彼は当然奇妙な顔をする。
「…あのね…」
耳元に口を寄せ、小さく囁いた。
「後で、もう一回歌って」
「…何でさ…」
からかわれている、とでも思ったんだろう。でも、そうじゃないんだ。
「嬉しかったから。勿論、指輪とネックレスも嬉しかったけど…普段は絶対に歌わないのに、お前自ら、俺の為に歌ってくれたんだもの。凄く嬉しかったんだ」
「…しょうがないな…」
流石に満更ではない様子。でも多分、他のところでは絶対に歌わないだろうとは思う。だからこそ、特別感があるのだ。
「特別、だよ?」
そう言って、今度こそホントに唇を重ねた。
眠りに落ちる寸前に…その歌声を聞いた。
甘くて…優しい。自分だけに、送られた歌。
それはきっと…物品にはない、付加価値がある…一生モノの、プレゼントだった。
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COMMENT
プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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