聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。
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BLUE 3
皇太子の執務室を出た後、エースは真っ直にゼノンの屋敷へと向かった。ドアを叩くと、直ぐに開かれた。
「いらっしゃいませ。皆様御待ちです」
そう言ってエースを迎えたのは、レプリカだった。
「あぁ」
エースは勝手知ったる屋敷を進んで行く。ゼノンの自室の前までやって来ると、中から声が聞こえて来ていた。
「よぉ」
エースがそのドアを開けると、直ぐさま声が帰って来た。
「エースっ!許可は…」
その声は、期待と不安。
「勿論。貰って来た」
そう言ったエースの声に、ライデンが直ぐに反応した。
「やったぁ」
エースの首にしがみつき、嬉しそうに声を上げるライデン。その行動にすっかり慣れたエースは、ライデンの頭をポンポンと軽く叩いて、そっとその腕の中から逃れた。そして、ゼノンへと視線を向ける。
「だいぶ元気そうだな」
「御陰様で」
笑いを含んだ声。その声は当家の主、ゼノン。ベッドの上に半身を起こし、上着を羽織っただけの裸の上体には、まだ白い包帯が厚く巻かれていた。
「まだ、当分かかりそうだな…」
包帯を指差し、エースは尋ねる。
「しょうがないね。俺の注意力が足りなかった。反省してるよ。でも、具合は良いから」
そう言って苦笑するゼノン。しかしその包帯の厚さで、傷の状態がどんなであるかの見当ぐらい、エースにもわかってはいたが。
「で、ダミ様は何って?」
すっと真顔に戻ったルークは、エースに尋ねる。
「俺たちが地球へ行くのは、きちんとした任務と言うことで許可して貰った。その代わり、条件付」
「条件?」
「ゼノンは魔界に残ること。それが、ダミアン様からの条件だ。ま、ダミアン様から与えられた休暇とでも思って、この際だからゆっくり休んでろ」
「…まぁ…こればっかりはね。大人しく、御前たちに任せるよ」
ゼノンは僅かな笑みを零し、そうつぶやく。心無しか、その表情は寂しげであったが。
「任務より、自分の生命の方が大事だろう。今回は大人しく待ってるんだな」
「わかってる」
少しは気を取り直したらしく、ゼノンは微笑んだ。
「じゃ、詳しいことを相談しようか。ルーク、書類は?」
「あぁ、ここにある」
エースの声に、ルークは書類を持ち出して来た。テーブルの上にそれを置き、皆は額を合わせ始めた。
「じゃあ、行くよ」
翌日の雷神界の雷王の神殿の地下室。そう言った声に頷く影が二つ。その姿を確認し、呪文を唱え始めた影が一つ。
呪文の声と共に輝き始める指先を巡らせ、彼は自分たちを囲むように魔法陣を描いた。それが出来上がると、一旦口を閉ざす。
「一応、結界は張ったままで行くよ。オーラを通り抜けた頃、消えちゃうとは思うけど」
「覚悟は出来てる。大丈夫だ」
その声に頷き、彼は再び呪文を唱え始める。瞬間、魔法陣は輝き出し、彼等は完全にその輝きに包まれた。
堅く目を閉ざした二名。尚も呪文の声は途切れない。
やがて彼等は、空中に投げ出された感覚をその身体全体に覚えた。目を開けると、真っ黒な空間。
「急いで。早くしないと、デーさん見つける前に閉じ込められるよ」
そう声がかかった。振り向いてみると、声をかけた主は既に足元のおぼつかない空間を走り出していた。
「ったく…何度来ても疲れる…」
小さくぼやき、彼は隣の悪魔と共に走り出した。身体を包むのは、僅かな力。外気に触れる部分は、余りの力の大きさに、既に崩れ始めていた。
地球と魔界を繋ぐ空間を走り抜けながら、彼等はその先にある大きな力に対して、不安を抱いていた。
何かを感じたのか、デーモンはピクンと反応した。
「来た…のか?」
何もない空間を見つめ、小さくつぶやいた声。僅かに感じる気配は、懐かしい魔族の気。
「…どうか致しました?」
デーモンの変化に気が付いたジーナは、声をかける。
「いや…」
曖昧に答え、デーモンは視線を逸らせる。
結論は未だ出ない。
地球を…ジーナを取るか。魔界を…エースを取るか。
もしデーモンが選ぶのが前者なら、その時はエースを失うことは目に見えている。
そして、後者を選んだのなら、地球は神に支配されるだろう。そして同じ過ちを繰り返すのだろう。
だから、彼には選べない。それをわかっていながらどうすることも出来ずにいる自分を責めることも、ここでは出来なかった。
どれくらいの距離を進んだことだろう。果てしなく続く白い大地。白い空、白い、白い…
「いい加減、気が狂いそうだ…」
そうつぶやいたのはルークだった。エースはかつて一度体験した。ライデンもルーク同様初めてのはずなのに、弱音を吐く気配はない。毅然とした眼差しは、誰の為か。
「…御出ましだ、少しは気晴らしになる」
エースは前方を見つめ、つぶやいた。数名の…いや、十数名と言った方が無難だろうか。とにかく、それに値する数の武装天使が、彼等の行く手を阻んでいた。
「良い度胸ではないか。神の支配する地に、たった三名で乗り込んで来ようとは。それに、一名は…雷神族の奴か…」
そうつぶやいた一天使は、ライデンを見て嫌らしく笑った。それを侮辱と取ったライデンが、ムッとした表情で睨み返したのは言うまでもない。
「とにかく…良い餌食が出て来た。少し身体を慣らしておかないとな」
小さく笑い、エースは腰の剣に手を伸ばす。
「同感だね。いつまでもこんな世界にいると、気分が悪くなる」
楽しげにつぶやき、ルークも剣を手にする。
「御前は?」
尋ねられ、ライデンは思案に暮れた表情を浮かべる。
「俺はパス。俺の場合、無駄な労力を消費しない方が…下手すると、帰れなくなる可能性があるから…」
その声を聞き、エースは溜め息を一つ。そしてライデンの頭に手を置き、自分の後ろに押し込んだ。
「帰れなくなったら大変だ。精々、傍観者になってるんだな」
「んじゃエース、行こうか」
「OK」
二名はにやりと顔を見合わせると、同時に駆け出す。
「ひるむなっ!相手はたった三名だ!」
一天使は、自分の回りにいた武装天使にそう声をかけ、自ら先頭を切って駆け出した。それに続く武装天使たち。
「聞こえなかったみたいじゃん。戦うのは、俺たち二名だけだって」
ルークは剣を裁きながら、そうつぶやく。しかしその声も、彼等にはロクに聞こえていないだろう。エースとルークの前、皆一様に塵と化して行く。
「…残るのは、あんただけみたいだけど?」
あっと言う間に十数名の武装天使を片付けた、エースとルーク。そして一名だけ残された例の武装天使の前で、ライデンはそう言葉を放つ。そして、その武装天使の背後で、くすくすと笑うルークの声。
「御前、来るならもっと大勢で来いよな。物足りない…」
エースは彼の正面で、剣に着いた血を振り払い、つまらなそうにつぶやいていた。
「ば…馬鹿な…」
信じられないとばかりにつぶやく武装天使。
「そう言う奴が、馬鹿って言うんだよね」
くすっと笑ったライデンは腰の短剣を素早く抜き取り、彼の胸元に突き刺す。声もなく、武装天使は息絶えた。
「つまんねぇなぁ。もっといたぶってやりゃ良いのに…」
心底、つまらないと言わんばかりのエースの声。
「無駄な労力は、使わない方が身の為ってこともあるんと違う?ほら、天界の気が強過ぎるからさ、こっちの身も、うかうかしてると直ぐに塵になっちまうぜ」
「それもそうだ」
エースはルークの声に、納得したようにつぶやく。
「さ、早いとこ、デーさん捜しに行こ」
ライデンの声に一同は頷き、再び足を進めた。
それからどれくらいの数の武装天使を切ったのか、もう覚えてはいなかった。
流石に何時間も天界の強い気の中にいる所為か、息は上がり、行動もスムーズには行かなくなって来た頃。
そこにいた最後の武装天使を切り捨てたエースは、遠くに見える、見慣れた姿をその視界の中に入れた。
「…デーモン…」
乱れた呼吸を整え、エースはじっとその姿に見入る。間違いはない。確かに、デーモンだった。
「…エース、あれ…」
その視線の先の存在に気が付いたらしく、ルークもライデンも同じ方向を見つめていた。彼等の前まで後数メートルと言う所まで来て、デーモンは立ち止まる。
「デーモン…」
つぶやき、歩み寄ろうとするエースの腕を、不意にルークが掴み、押さえる。
「…待って…」
その声で我に返ったエースは、目の前に立っているのはデーモンだけでないと言うことに初めて気が付いた。
デーモンの胸程までの背丈で、しっかりとデーモンの服の裾を掴んでいる姿。そして、じっとエースを見据えている。
「…デーさん、こいつは…」
そう尋ねたライデンの声に、デーモンは答えを返す。
「…こいつは大地の精(ノーム)だ。地球(ガイア)に唯一許された生命体で、名前はジーナ」
「…大地の精(ジーナ)…」
小柄な彼女は、真っ直に彼等を見つめていた。ダミアンが言っていた生命反応は、多分彼女のモノだろう。そして彼女の態度からするに、ジーナもガイア同様、デーモンのことを……
溜め息を吐き出したエース。その胸は重く、暗い。
「……そう言うことか…」
エースはデーモンに向け、小さくつぶやく。その言葉の指す意味は、デーモンにも良くわかっていた。
地球か、魔界…ジーナかエースか。彼等にとっては至って簡単な選択でも、デーモンには決断出来なかったのだ。
「…吾輩は…」
つぶやきかけたデーモンの言葉を遮るかのように、ジーナは大きな声で叫んだ。
「行かないでっ!」
「…ジーナ…」
ハッとしたように、皆はジーナの姿を見つめた。
「…行かないで下さい…閣下に行かれてしまったら…彼女(ガイア)はまた、独りになってしまう…」
ジーナはデーモンを見つめ、そう訴える。
「独りにはならないじゃん。あんなに武装天使がゴロゴロいたんだ。それに、あんたもいるし」
皮肉を込めて、ルークはつぶやく。
「ルーク…っ」
その脇腹を小突くライデン。
「御前たちが倒したのが最後だ。後は天界人の気は感じない」
確信を込めて、デーモンはつぶやく。
「と、言うことは…神もそろそろ、諦めるんじゃない?たった三名の悪魔に、こっぴどくやられたんじゃ…ねぇ」
「…かも知れん」
ルークの声に、デーモンは小さく答えた。そしてその眼差しをエースに向ける。
エースに対して言いたいことは沢山あった。でも、上手く言葉が出て来ない。
「…エース…」
名前を呼ばれ、視線を合わせる。思い詰めた表情に、彼がまだ迷っていることを感じた。
デーモンから視線を背け、エースはうつむく。
魔界が、彼を必要としているのは確かなことだった。デーモンの代わりになる悪魔など、魔界広しと言えどもそう易々と見つかるモノでもない。
しかし…エースの恋悪魔としては、どうだっただろう?そう考え始めてから、エースは一つの答えを見付け出していた。
迷うと言うことは、不安があるから。
ふと、ダミアンが言った言葉が甦る。
ならば…自分から、答えを出してやろう。自分の選んだ道に…後悔は、しない。
全ては、愛する恋悪魔の為に。
「デーモン、この際だからはっきり言っておく。大切なモノは…二つ同時には護れない。どちらかを取るのなら、その片方を犠牲にしなければならない」
「…わかって…いる。そんなことは…」
デーモンからの答えの声は冷静で、全てをわかっていることが明らかだった。だが、それを行動として取ることが出来ないだけで。
俺は…と、エースは顔を上げてデーモンと、そしてジーナの姿を見つめた。
「誰よりも、御前を愛してる。例え、どんなに御前のことを好きだって言う奴が現れても、その誰よりも俺の想いが上廻っているって言う自信はある。どんな奴が現れても、俺の想いに勝る奴がいるはずがない」
その強い想いの丈に、ジーナは唇を噛み締める。
「簡単なこと、だよな。俺かこいつ等か、どちらかを選ぶだけだろう?」
「…それはそうだが……」
デーモンは目を伏せた。
失いたくはない。そのどちらとも。
躊躇いの表情を見せるデーモンを見つめ、エースは小さく溜め息を吐いた。そして。
「…簡単なことだと言っただろう?どれだけ長い間、一緒にいたと思ってる?気の遠くなるくらい長い間、これからだって一緒にいると言っただろう?でも万が一、御前が選べないのだとしたら…俺が答えを出してやる」
「…エース…?」
ハッとしたように、エースを見つめたデーモン。ルークもライデンも、息を飲んでエースの行動を見つめていた。
「ルーク、御前の剣を貸せ」
「へ…?」
「早くしろっ」
訳がわからないと言った表情を浮かべたままのルークの腰から、エースは無理矢理剣を引き抜く。そして、それをジーナの前に抛る。当然、ジーナは息を飲んでエースを見つめていた。
「決着、着けようぜ」
「エースっ…何を…」
「うるせぇ!黙ってろ!」
エースはルークを制して言葉を続ける。
「それが一番、良い方法だろう?勝った奴がデーモンを…」
「止めろよっ!!」
鈍い音がして、エースが地面に投げ出される。
「ルーク…っ!やめて…っ」
ライデンがその腕を取る。
「デーさんはモノじゃないんだっ!そんなカタチで結論をつけるのが無謀だって、あんただってわかってるクセにっ!!」
「ルーク、落ち着けって!!」
ライデンに押さえられ、ルークはやっと勢いを納めた。殴られた頬が僅かに赤くなり、その口元から一筋の血が流れ出る。それを拭い、エースは立ち上がった。
「わかってる。そんなことぐらい。でも他にどんな方法がある!?デーモンは、どちらかを選ぶことは出来ないんだ」
「だって…っ!だって、そんなの…」
ルークにもわかっていたことだった。わかっていても、きっと躊躇わずに自分たちの元に帰って来てくれるのだと思いたかったのだ。
その想いは、誰でも同じであった。ただ、エースのように、無理矢理の結論を望まなかっただけで。
エースはジーナを一瞥して、つぶやく。
「ガイアも御前も…俺を、憎んでいたんだろう?昔っから嫉妬の目を向けられていたことはわかってた。だからこそ決着を着けた方が良いんだ。その方が…後腐れがなくて良い」
エースがそう言い放った瞬間、ジーナはデーモンから離れ、目の前に落ちていた剣を手に取った。その表情は真剣そのものだ。
「ジーナ、止せっ!」
慌てて止めようとしたデーモンの手を振り払い、ジーナは真っ直にエースだけを見つめていた。その眼差しは、完全に敵対する者としての光が宿っている。
「言っておくが…俺は、勝つ自信はある」
エースは小さく笑って、己の剣を鞘から抜いた。何処か自嘲気味のその表情の奥に、何かを感じる。
----エース…御前、何を…
その言葉は、口から出て来ない。その思いを代弁したのは、ライデンだった。
「エース…何をするつもり…?」
明らかに、いつものエースではない。その不安が口にした言葉に、ルークも息を飲んでいた。
尋常ではない。それは、誰もがわかっていたことだった。ただ動くことが出来ないだけで。
一瞬の隙を付いて、ジーナが動いた。その刃は真っ直にエースの脇腹に吸い込まれる。
「エースっ!!」
「…ジーナっ!!」
二名を呼ぶ声は悲鳴のようだった。エースの後ろに立っていたルークとライデンは、その剣先を背中に見た。
何故エースが動かなかったのかなど、その時はまるで理解出来ない。ただ、全てがスローモーションのようにゆっくりと起こり、真実ではないようにさえ思えていたのだ。
エースの手から剣が滑り落ちる。それと同時に、ジーナは震える手を柄から放した。エースの身体から抜けた血に濡れた剣が、乾いた音を立てて地面に落ちた。
「…どう…して…?」
震える声を紡いだ、ジーナの唇。
「…どうして…なんて、聞くな。狙ったのは、ここじゃ…なかったのか…?」
エースは己の胸を指差す。無言で、ジーナは首を横に振る。刹那。エースは傷を押さえ、地にその膝を落とした。
「エース!!」
背中に回されたルークの手を振り払い、溢れる血に手を汚したまま、エースはデーモンに視線を向ける。
「…ルークの言う通りだ。御前は、誰のモノでもない。だから、魔界に縛り付けておく必要もないだろう…?御前がここにいたいのなら…いれば良い。気が済むまで、ジーナと…ガイアと、一緒にいれば良い。それが…御前の、選んだ道なら…悔いを、残すな」
「エース…」
「…一つの惑星を大切に思う気持ちは、俺にもわかる。だからこそ、護れなかった時は死ぬより辛い。二度もそれを味わう必要は御前にはない…俺は…御前に愛して貰って…満足だ…」
エースは僅かに目を伏せた。その口元に、柔らかな笑みを浮かべて。
「今まで…有り難うな…デーモン…」
「…エー…」
その声は続かない。胸につかえている何かが、たまらなく苦しくて。
「…悪い…立たせてくれ…」
「あ…うん…」
ルークとライデンの手を借りて立ち上がったエースは、デーモンに背を向けて小さくつぶやいた。
「…じゃあ、な…」
支えていた彼等の手を離れて歩き出したエースを、ライデンは急いで追いかけた。
「俺、着いて行くっ」
ルークにそう言い残して。
ルークもデーモンも…その場を、動くことが出来なかった。
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プロフィール
HN:
如月藍砂(きさらぎ・あいざ)
性別:
非公開
自己紹介:
がっつりA宗です。(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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