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聖飢魔Ⅱです。(face to ace、RXもあり…) 完全妄想なので、興味のある方のみどうぞ。

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堕罪 4
こちらは、本日UPの番外編です
 ※番外編のメインは天界側です。本編の遠い伏線と言う感じです(苦笑)
4話完結 act.4

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◇◆◇

 すっかり闇が落ちた部屋に、薄明かりが灯る。
 その中で、"あのヒト"は不意に目覚めた。
「…おはようございます…」
 時間的には、全くおかしな挨拶だけど…タイミング的には、これしかかける言葉が見つからなかった。
 レイが声をかけると、その視線がゆっくりと彼の方へと向けられる。
 いつもの…醒めた、ヴァイオレッドの眼差し。
「…どうして貴方がここに…?」
 ゆっくりと身体を起こしながら問いかけた声に、レイは…一瞬答えに迷う。
「…貴方を、あのままあの場所に置いて来る訳には行かなかったので…運んで来ました…」
 困った挙句、それだけを告げる。
「…それで、ずっと今までここに…?」
「…心配…だったので…」
「……そうですか…」
 小さな溜め息を吐き出しながらベッドから起き上がると、窓辺へと近付き外へと視線を向ける。
「…もう、夜ですね。わたしはあのまま…眠り続けていた訳ですか?」
「…そうです。起こしても起きなかったので…ここまで来る間もずっと、眠ったままで…」
「…それは、御迷惑をおかけしました…」
 久し振りに、たっぷりと眠った感があった。そんなに眠ったのは…どれくらい振りだったか、思い出せないくらい前のことだった。
 小さな吐息を吐き出した"あのヒト"を、レイはじっと見つめていた。
 その姿に、大きな感情は見られない。それが…多分、"あのヒト"の常なのだろう。
「…あの…」
 思わず、呼びかける。
「何ですか?」
 振り返らず、返事が返って来る。
「…俺は…本気、ですから。俺は…本気で、貴方を愛しています。だから…」
「やめて下さい」
 レイの言葉を遮り、振り返った姿。その、ヴァイオレッドの眼差しは…真っ直ぐに、彼を見据えた。
「やはり…全部忘れて下さい。貴方を巻き込む訳には行きません。今からでも遅くはない。だから…っ」
「嫌だと、言ったはずです」
 矢継ぎ早に言葉を放つ"あのヒト"に、今度はレイの方が言葉を遮った。
 "あのヒト"の前へと歩み寄ると、手を伸ばして"あのヒト"の手をそっと握り締めた。
「幾ら、貴方が俺の記憶を封じたって、俺は必ず貴方を思い出す。最初に会ったあの時から、俺は貴方を…貴方の眼差しを、ずっと忘れられない。そう言いましたよね?貴方を、諦めるつもりはないし、貴方だけに…罪を、背負わせるつもりはありません。だから…」
 冷たい手。それは…夕べも、ずっと変わりはなかった。
 レイは、握ったその手の甲に、そっと口付ける。
 それは、誓いの証として。
「貴方の…傍に、いさせて下さい。ラファエル様…」
 名を呼ぶと…その頬に、すっと赤みが差した。
「…ラファエル様…?」
「………」
 様子が、可笑しい…。
 そう思って、じっとその瞳を覗き込むと…更に顔を染め、視線を逸らした。
 先ほどまで冷たかった手も…じんわりとした温もりを感じる。
 確か、夕べも…名前を呼んだ途端、体温が上がって、感情が露になっていた。
 ここに至って…レイは、初めて"あのヒト"が照れていることに気が付いたのだ。
「ラファエル様…名前を呼ばれることに照れているのですか…?」
 思わず問いかけた声に、耳まで真っ赤に染まる。
「…やめて下さい…」
 レイの視線から顔を背け、真っ赤になった顔を隠そうとする。
 それは…今まで見て来た姿とは、まるで違う。
 まるで…初心な、生娘のような…そんな姿。とても…"色欲魔"と呼ばれていた姿ではない。
 長いこと…自分の名前をこれほど愛しそうに呼ぶ者などいなかった。だからこそ…妙に恥ずかしさが前に出ているのだ。
 そんな姿が…レイには、とても愛おしくて。
 握っていた手を離し、その身体をそっと抱き寄せる。
「傍に…いても良いですね?」
 その耳元で、そう問いかける。
 すると。
「……名前…」
「え?」
 小さく零した声に、思わず聞き返す。
 すると、伏せていたその顔を僅かに上げ、レイの瞳をじっと見つめた。
「…貴方の名前…聞いていません…わたしの名前ばかり呼んで…不公平です」
「…あぁ…」
 そう言えば…名乗った記憶はなかった。そのことで、不公平だと言われるだなんて。
 可愛い過ぎるにも程がある。
 そんな思いで、レイはくすっと小さく笑いを零した。
「レイ、と言います。今は、事務員ですが…これから勉強して、貴方の傍にいられるように…強くなります。だから…もう、他の誰にも…渡しません」
「…貴方は…生きるべき選択を、誤ったんですよ?わたしなどに関わらなければ…そのまま、貴方の一生は安泰だったのに…全く、馬鹿なことを…」
 溜め息混じりにそうつぶやかれても、もう笑うしかない。
「馬鹿で良いんです。俺は…貴方に出逢えて良かった。例え、罪に堕ちたとしても…貴方がいるから」
「……レイ…」
 "あのヒト"の瞳の奥には、未だ、吹っ切れない何かがある。でも…少なくとも、もう拒否はされていない。それは、レイにとって…何よりも幸せなことなのだと思えた。
「俺は、貴方の秘密を知った上で、貴方を抱きました。だから、もう同罪です。忘れるつもりはないし、貴方から離れるつもりもない。だから…俺を、信じて下さい。貴方を置いて…何処にも、行かないから」
 そう言ったレイの言葉に…その眼差しの奥が揺らめいた。
 真っ直ぐに彼を見つめる、ヴァイオレッドの眼差しは…もう、醒めた色ではなかった。
「…約束…出来ますか?本当に…何処にも、行かないと」
 囁くように、か細い声。
「約束します。何処にも行きません。貴方の傍に、います」
 はっきりとそう言い切った言葉に、大きな吐息が零れる。
 それは、まるで覚悟を決めたかのような吐息だった。
「…愛しています。ラファエル様…」
 レイは、そう言うと頬を寄せる。しかし、唇が触れる一歩手前で…ふと、動きを止める。
 笑って…いたのだ。今まで、表情を露にしなかった、"あのヒト"が。
「あの……」
 ふと、我に返ってしまったレイは…戸惑って顔を離す。
 すると、"あのヒト"自ら僅かな微笑を浮かべたその頬を寄せ、彼の耳元で小さく囁いた。
「…貴方もわたしと同罪なら…二人の時は、敬称など、いりません。その代わり…」
「…その代わり?」
「手を…離さないで下さいね…」
「…え?」
「捕まえていて、くれるんでしょう…?」
 それが、レイが自分で言った言葉だと思い出すまでに、一瞬の間があったが…直ぐに、くすっと笑いが零れた。
「勿論。どんなに頼まれたって…離しません」
 レイは、大きく息を吐き出してそう告げる。
 そして、改めて。
「…ラファエル…」
 甘い声でその名を呼び、頬を寄せる。
 僅かに赤い頬が、目に入る。
「愛して、います。これからも、ずっと…」
 そうつぶやくと、そのままそっと、唇を重ねる。
 天界で…唇を重ねる口付けは、本当に心を許した相手だけ。
 夕べはレイから一方的にだったが、今日はちゃんと応えてくれる。心から受け入れて貰えたと言う事実は、何よりも胸の奥が熱くなる。
 例えそれが…禁忌であったとしても。共に、歩むことが出来るのなら…罪に堕ちても、悔いはなかった。

◇◆◇

 数日後。レイは、異動願いを出していた。
 希望の部署は、ラファエル軍。どんなに下っ端でも、強くなる為にはとにかく軍に入ることがまず第一だった。そして、それが無事に受理されたのは…多分、運が良かったから、だけではないと思う。
 剣など、士官学校の時以来一度も握ったことのない事務員。当然、戦地に立った経験もなければ、例え有翼種であったとしても空を飛ぶことが何よりも苦手だった。そんな彼が、何故軍を希望したのか…当然、同僚たちには問われることとなったが…そこは、経験を積む為だと言えば深追いはされなかった。

「……それにしても、最近面白いことないよな~。ちょっと前まで旧礼拝堂にいた"色欲魔"も、最近はいないみたいだし…一体誰だったんだろうな?」
 荷物の片づけをするレイの背中に向かって、小さな声でそう話しかける同僚。まぁ…未だに出没されたら、彼の立場もないのだが。
「…興味がなくなったんだろう。いい加減、忘れたらどうだ?」
 背中を向けたままそう答えると、相手は大きく溜め息を一つ。
「…そう言えば、旧礼拝堂も取り壊されるんだってな」
「…え?」
 その言葉には、レイも手を止めて同僚を振り返った。
「取り壊し?」
「あぁ。正式に決まったらしい。まぁ、旧神殿ももうないしな。礼拝堂だけあってもしょうがないだろうし。"色欲魔"も、それを知ってたのかもな」
「………」
 旧礼拝堂を取り壊す話は、彼には初耳だった。
 現在は別の礼拝堂が使われているのだから、旧礼拝堂に何の役割もないことは確かだった。
 レイは、溜め息を一つ。
 その意味を問わなければ…と思ったのは…どうしてだろう。

 その夜レイは、"あのヒト"の執務室を訪れていた。
「…旧礼拝堂を取り壊すと言う話を聞きました。それは…事実なんですか?」
 問いかけた声に、"あのヒト"は書類に落としていた視線をレイへと向ける。
「わたしも、何日か前にミカエルから聞きました。どうやら、正式決定のようですね。まぁ、利用価値のない建物ですから。隣にあった旧神殿はとっくに解体されているのに、旧礼拝堂だけ今まで残っていたのが不思議なくらいです。まぁ、上には上の事情があるので仕方のないことですけれどね」
「…それはそうですが…」
 言われてみれば、確かにそうなのだが…その辺りの事情はレイにはわからない。
 暫し、考えを巡らせている間も、"あのヒト"は、じっと彼を見つめていた。
「解体に関しては…我々が関与することではありませんよ」
「…ラファエル様…」
「貴方も…軍に入るのなら、関与するべきことと、しないことの区別をきちんとつけなければいけません。何でもかんでも首を突っ込むことは、自分自身の首を絞めることにもなりますからね」
「…はい…」
 その言葉は尤もであり、単なる事務員として働いていたレイにはその線引きは難しいことでもあった。
「元々…ミカエルは、旧礼拝堂を残すことに反対でした。けれど、礼拝堂は神の領域と言う意識は未だに根強く残っているのです。熾天使のいない今、勝手に手出しが出来なかったと言うのが現状なんです。ミカエルは、時間をかけて…やっと、解体の許可を得たんです。我々は…彼の功績を、称えるべきなのだと思いますよ」
 "あのヒト"の言葉に、レイは小さな吐息を吐き出す。
 反論するつもりはない。勿論、彼自身には旧礼拝堂はない方が良いのは当然。
「…申し訳ありませんでした…」
 レイは素直に頭を下げ、踵を返す。
 ここにいる"あのヒト"は、レイの良く知っている"あのヒト"とは、また別の顔を持っている。正直、ここにいる姿とは、今まで接点がなかったのだから…どう接して良いのか、わからないところでもあるのだが。
 背中を向けたレイに…小さな溜め息が届く。
「…不満…ですか?」
 そう声がかかり、思わず足を止めたレイ。すると"あのヒト"は扉へと歩み寄ると、その鍵を閉める。そして、小さく呪を唱えた。
「…結界を、張りましたから…話し声も、外へは漏れないはずです」
「…はぁ…」
 何を言わんとしているのか…彼には未だわからなかったが…"あのヒト"は、再び溜め息を吐き出す。
「…わたしは…正直、ホッとしていますよ。やっと…その時が来ると」
 目を伏せ、そう言葉を紡ぐその唇は、僅かに震えていた。
「あの旧礼拝堂には…未練はありません。あの旧礼拝堂を取り壊せば、あの祭壇の悪魔も、ルシフェルの記憶も…全て、消えることになるのでしょう。今、あの旧礼拝堂にあるのは、歴代の熾天使の肖像画だけ。それだけでそこに何があるのかは、誰も知りません。壊してしまえは…何も残らない。そして…"色欲魔"の風評も消えるでしょう。全てを丸く治めるには、取り壊すことが一番良い事では…?」
 目を伏せたまま、そう言葉を紡ぐ。
「貴方にとっても、その方が良いでしょう?あの旧礼拝堂がある限り…わたしがまた、いつあの場に戻ってしまうか…そんな心配をする必要もなくなるのですから」
「…確かにそれはそうですが…全てが取り壊され、なかったことにされても…罪の意識だけはずっとそこに残ります。目に見える"カタチ"を取り除いたところで、何も変わらない…」
 小さくつぶやいた声に、"あのヒト"は顔を上げた。
「…気持ちはわかります。でも…それが、貴方が背負った罪の大きさでもあるんです。貴方は…それを背負うと、自ら誓ったのですよ?覚悟を…決めたはずでしょう?」
 そう口にした"あのヒト"の声が、僅かに低く感じた。
 不安がない訳ではない。けれどそれは…自分自身のことではなく…"あのヒト"が抱えている、心の傷の大きさ。
「確かに、覚悟は決めました。でも…わたしはともかく…後どれくらい時間が経てば…貴方の傷が癒えるのですか…?」
 問いかけた声に、"あのヒト"は一瞬間を置いてから、小さく笑った。
「…それは、多分…一生無理、です。傷の痛みを感じなくなる時は…わたしが、死ぬ時です。わたしは、一生この地に捕らわれ…逃げることも叶わず、その罪に捕らわれて生きて行くのですから。もしかしたら…死んでも尚、その罪に捕らわれているかも知れませんけれどね。それはまだわかりませんけど」
「…ラファエル様…」
 その微笑みは、まさに天使の微笑み。けれど…その奥の想いなど、誰も想像はしない。
 その心は…一生消えない傷の…今でも流れ出る血と、痛みに耐えているなど。
 レイは、大きく息を吐き出した。
 それは…彼が、踏み込んでしまった世界。
 罪を背負い…罪の中で、生きて行く。
 それが、運命なのだと。
「…強くなります。貴方を…支えて行けるように。これ以上、貴方が罪を重ねる必要がないよう…護って行く為に…」
 小さく吐き出した言葉に、"あのヒト"は彼の手を握った。
「貴方が何処まで強くなれるかは、貴方次第ですけれど…わたしの側近の役職は空けて置きますからね。せめて、そこまでは頑張って上がって来なさい」
「…頑張ります…」
 まだまだ、道は遠い。けれど…目指す目的があるのなら、きっと…頑張れる。
 否、頑張らなければならないのだ。
 この…目の前の微笑みを、護る為に。
 二度と、消さない為に。

◇◆◇

 数年後。約束の場所に、レイは立っていた。
 けれどそこは、まだ出発地点でしかなかった。
 進む道は…先などは見えないくらい、ずっと続いていた。

 そして…熾天使の身位は、未だに空白のまま、だった。
 多分…この先ずっと、その身位が埋まることはないのだろう。
 それが、"熾天使"を捨てた"総帥"の強い望みであるのなら。
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趣味は妄想のおバカな物書きです。
筋金入りのオジコンです…(^^;
但し愛らしいおっさんに限る!(笑)
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